福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

低温環境の科学事典

2016-08-04 14:41:46 | 本と雑誌
朝倉書店より、『低温環境の科学事典』が刊行されました。全169項目の解説の中で、私が特にお勧めしたいのが「好雪性変形菌類」(加茂野晃子)です。

変形菌(粘菌)は南方熊楠が魅せられた生き物として良く知られていますが、その生態や分子系統進化に関しては研究が進んでいません。そのパイオニア研究を行ったのが、加茂野晃子さんです。同事典での彼女の言は、下記の通り。

現在のところ、分子生物学的手法を用いた変形菌類の生態学的研究は数報にとどまる。好雪性変形菌類を対象とした研究も行われている。エアロゾル粒子の解析では、春の雪解けの頃に空気中での存在が認められた。土壌における群集構造もとらえられており、これまで明らかにされてこなかった多様な変形菌類の生息が示されている。また、研究の基盤となる子実体標本の塩基配列データの蓄積も進められつつある。今後、こうした方向での研究が、自然界における変形菌類の生態解明に大きく貢献するものと期待される


好雪性変形菌類の研究もまだまだこれから、と思うこの頃です。


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