福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

南極大陸ラングホブデ:極域生態系における微生物進化適応

2017-06-29 13:41:01 | 研究
今朝、久しぶりにJAMSTECの高野博士にお会いいたしました。低温科学研究所で開催されている研究集会に参加されているとのこと。本当に懐かしい限りです。

つい先日、南極大陸ラングホブデから単離した微生物のゲノムに関する論文が受理されたばかりでしたので、彼との再会は一層嬉しく感じられました。

2006年1月末、昭和基地からおよそ37km離れた露岩地帯ラングホブデで研究観測を行いました。メンバーは総勢3名で、高野さんと環境省の桝厚生さん。約2週間、彼らと楽しく、かつ充実した日々。



ラングホブデは、南極特別保護地区に指定され、立ち入りが制限されています。許可を得て研究観測を進めていたところ、思わぬ発見が多々ありました。



その一つが、赤雪現象です。帰国後、高野さんの窒素安定同位体比の解析結果は驚くものでありました。微生物群衆構造解析、赤雪藻類の色素分析等の結果を含めて、発表した論文は下記の通り。

*. Masanaori Fujii, Yoshinori Takano, Hisaya Kojima, Tamotsu Hoshino, Ryoichi Tanaka and Manabu Fukui. Microbial community structure, pigment composition, and nitrogen source of red snow in Antarctica. Microbial Ecology 59: 466-4775.2010.

今回、ラングホブデの観測小屋近くで採取した海洋沿岸堆積物から発見した新規微生物ですが、まだ未記載です。ゲノム解析が進み、先に発表することになりました。きっと、この菌のゲノム情報は、南極海洋生態系において微生物の進化・環境適応を解明する上で重要になると思われます。



*. Miho Watanabe , Hisaya Kojima and Manabu Fukui. Complete genome sequence of Marinifilacea bacterium strain SPP2, isolated from Antarctic marine sediment. Marine Genomics: in press

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