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函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

人の最期に思うこと

2008年06月27日 10時26分36秒 | えいこう語る
最近読んだショートストリーに、こんな話があった。
女友達の90歳になる父親が病院で亡くなった。父親は癌の末期で食事制限をされていたし、食欲もなかった。或る日「玉子かけ御飯が食いてえなー」と呟いたと言う。「玉子かけ御飯なら、退院したらいくらでも食べさせてやるよ」と言ったが、もう一度「食いてえなー」としみじみ言ったそうだ。その翌日父親は亡くなった。
「あの時玉子かけ御飯を食べさせてやればよかった。父も自分の寿命がもうないことを知っていて言ったんだと思うから、なおさら辛い」と話したそうだ。
それを聞いてその友人も、32年前に亡くなった自分の父親の事を思い出した。
腎不全状態の父親は、絶食しての治療が施されていた。絶食が始り3日後「何か食わしてくれ」と言ったが、お医者さんに止められているから我慢するようにと言った。日に何度も同じ事を言っていたが、1週間もたつと食べ物のことは一切言わなくなり、点滴を受けながらじっと病室の天井や壁を見つめていた。
そんな父がかわいそうになり、父の好きな自分が作ったアイスクリームを持っていったという。父親は「作ってきてくれたのか」とうれしそうな顔をした。その時点滴を持って看護婦が入ってきた。「食べさせてもいいですか」と聞いた。隠して食べさせると言う考えが浮かばなかったという。
「何言ってるの、先生は水以外だめだって言ったでしょう。ちょっとだからって、そのちょっとがお父さんの命を値締めることになるんだよ」
父親は諦めて目を閉じたと言う。それから1週間後に亡くなった。
私はこの文章を読み、北海道のある診療所の医師が書いたコラムを思い出した。
入院しているおじいさんが、先生に相談があるからとやって来た。
「隣の病室にいるAさんとは、年も同じで家も隣で、学校も一緒で、戦争も同じ部隊だった。仲間がたくさん死んだけど、自分たちは生きて帰れた。そして病院まで一緒でずっと親友でいた。最期に二人で酒を飲みたいので、先生の許可を得に来た」と言ったそうだ。
先生は、Aさんはもう酒など飲める状態ではないのを知っていて「ただし消灯時間になったら、と許可したそうだ」。おじさんは深々と頭を下げた。
翌朝、Aさんは亡くなった。
死に行く人を目の前にして、私たちは意外と無力である事を感じる。本当に相手の心を汲んでやっているのかと自問する。
私も両親を亡くしている。最期に親への感謝の気持ちを、素直に口に出せなかったような気がする。あれもしてやれば良かった、これもしてやれば良かったと言う、悔いのほうが残っている。


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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (やまちゃん)
2008-06-27 11:19:15
今日は
好い話ですね。 もう治る見込みがない 癌などは何を食べてもいいと思います。素人判断ですが 食べる気力があれば治ります。もしくは長く生きます。食べられないのが ホンネです。
それはそうと ぶっかけご飯 大好きです。私も最後はぶっかけご飯 食べたいかもしれません。以前は寿司を腹いっぱい食べたい と言ったそうです。
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Unknown (うたのすけ)
2008-06-27 14:33:38
今日は。
母は病床のもうそろそろだという祖父を見舞ったとき、飲みたいというビールを飲ましたと言います。祖父は美味いなあと言って幾日かの後死にました。祖父の面倒を看ていた叔父や叔母が、母のしたことを義姉さんだから出来たことで、あたしたちにはとても出来ない。お義父さんあんなに美味しいと言って喜んでと、母に感謝していたそうです。
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Unknown (■かわぐち えいこう)
2008-06-28 11:10:55
やまちゃんへ。この話を見てからタナゴご飯を食べてみました。美味しかったです。以前は自分の家にも鶏かっていたのですが、今は狐にやられてしまいます。関東で、卵農家が卵ぶっ掛けご飯を出してる食堂がありました。田舎なのに並んでいましたね。
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Unknown (■かわぐち えいこう)
2008-06-28 11:17:10
うたさんへ。家族親戚が同じような思いやりの精神を持っていれば、このようなあたたかい気持ちになれますね。人さまざまで、勝手に自分の主張だけして、回りにいやな思いをさせる人がいますね。田舎の葬式でもたまにいますよ。マチに出て少しお金をもうけた人に多いようですが。
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Unknown (志村 建世)
2008-06-28 22:43:53
考えさせられますね。本当の最後になったら、もう医者の管轄範囲ではなくなると思います。医者は医療の限界を知っているべきだし、本人も家族も、人としての権利を自覚していいのではないでしょうか。
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Unknown (■かわぐち えいこう)
2008-06-29 13:11:12
志村さんへ。私の母も医師ががよくなっているので退院も出来そうだといいましたが、長いこと一緒に暮らしていた母です、私はもう寿命が尽きると思っていましたがそのとおりでした。
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