▼ 昨日函館市内で、脱原発を訴える作家広瀬隆さんの講演会に出席した。歯に衣を着せぬ、白黒のはっきりした発言は、あらためて原発事故の恐ろしさが、心と骨にまで浸透したような内容だった。
▼ 国は原発から30キロ圏内の自治体に、避難計画の作成を求めているが、福島第一原発事故の避難状況は、盆暮れの帰省状態かと思われる車の渋滞ぶりだ。
▼ 私の地域は大間原発より、津軽海峡を挟んで約30数キロに位置する。避難経路は北上して札幌方面に向わなければならないが、その道は国道278号線一本だけである。私の地域から約1時間走ると、函館から札幌への大動脈、国道5号線に合流するが、その間3つの町があり、それらの住民が一斉に車で避難したら、5号線までに出ることは不可能だ。5号線は函館や周辺の市民もその道に殺到する。函館市が避難計画など作れないというのは、誰もが理解できる。
▼ 世界初のフルMOX燃料(ウラニウム+プルトニウムの混合)を使用する大間原発、実験炉での検証もないままの、行き当たりばったり原子炉だ。それも電源開発という、水力・火力では日本のトップ企業だが、原発は初めてだ。そこまでは私も知っているが、大間原発の運転を担当するのが“事故処理も無能な東京電力”だ。しかも、燃料のプルトニウムの半分は、東京電力からの購入だという。
※対岸には大間原発。♪誰もいない海で遊ぶ親子
▼ ウラニウムとプルトニウムは、広島と長崎に投下された原子爆弾だ。大間原発は、運転開始のスイッチを入れた瞬間から、原子爆弾の時限装置を作動したと同じことだ。爆発時間に向け、刻々と時間を刻む秒針の音が聞こえてきそうである。
▼ 広瀬さんは、国と電力会社を相手取って、函館市が自治体初の提訴したことは、市長も市民も素晴らしい自治体であり、尊敬しているという。日本中からはそう注目されているのだ。しかし、27万余の函館市民は、命を賭けた戦いと考えているだろうか。市長や一部の市民団体の活動を見守っているだけではないだろうか。訴訟費用のカンパが3000万円以上になったという報道に、安堵しているだけではないだろうか。
▼ 広瀬さんはいう。原発をやめない理由は、我が国は原子爆弾を保有しようとしているからだと断言する。函館市民の戦いだ。ゲリラ戦を展開しようじゃないかとエールを送る。原発工事が、すでに50%を超えたという報道がされた。全国から期待される函館市だ。勇気を奮って、大間原発の工事を阻止しなければならない。市内最大のゲリラ組織は、函館市町会連合会だ。まずはどんなゲリラ戦術をたてるかが問題だが、その前に、部隊の市民戦に向けた、モチベーションの高揚を図らなければならない。
▼ 12月25日。大間原発訴訟の第3回口頭弁論が行われる。この日に、函館市民から国と電源開発に、どんな素敵なクリスマスプレゼントをするか、現在、市町連部隊で作戦会議中である。昨夜の講演は、会場のボルテージが上がり過ぎ、帰宅したのは午後10時を過ぎていた。冷めやらぬ心に、冷たいビールも効果がなかったようだ。
▼ 私は完全武装し、市町連部隊と共に下北半島の山中に立てこもっていた。私は“チェ・ゲバラ”に変身していた。建設中の大間原発を眼下き眺めながら、部下たちに、こう命令を下した。
『青函の興廃この大間原発にあり。本日天気晴朗なれど津軽海峡波高し。オソレザンノボレ』。
最後の波高しが私の中では、広瀬さんの「隆」となっていたのが、熱くなりすぎて感化されやすい、私の弱点でもある。久しぶりでヒーローになった夢を見て、気分爽快な朝を迎えた。