夢かよふ

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研修レポート「現代文ワークショップ講座」 (その1)

2013-07-16 23:43:55 | 教育
7月13日(土)、河合塾横浜校で受けた研修のレポートを以下にアップする。

グループワークをどのように現代文の授業に取り入れ、生徒の能動的な取り組みを育成するか、という講座のテーマに興味を惹かれて参加を決意した。先般改訂された高校国語「学習指導要領」では、従来にも増して言語活動を充実させることが重視され、現代文でも、生徒の「読む能力のみならず、読んだことをもとにして考え、判断・評価し、それをまとめて論理的に表現する能力を育成する」ことが求められている。生徒同士が授業の中で発表・報告をしたり、話し合い伝え合う力を養う場面を設けることも大事だとは思いながら、しかしその授業のモデルが実際には見出しがたく、今まで自分ではなかなか実践できずにいた。

この講座では、講師の指導に従って、実際にグループワークを体験しながら、生徒の協同学習をどのように組み立て、仕掛け、指導したらよいのか、段階を踏んでスムーズに学べるように工夫されていた。

講師の成田秀夫先生は、河合塾に勤めて二十年以上のベテラン講師であり、授業だけでなく教材や指導法の開発も行っている。大学にも出講し、高校・大学・社会間の学びの連携ということにも取り組んでおられる。高校や大学の教育現場の事情にもよく通じており、協同学習についてもさまざまな知見をお持ちである。今回は、そうした優れた専門家の指導の下で、参加者が説明や助言を受け、ピア(仲間)と協力しながら問題を解決していく、というワークショップ型の講座で、きわめて密度の濃い実践的な学習を体験することができた。

午前中は、「①他者紹介」「②日本ダービーの入賞馬」の課題にグループで取り組むことで、グループワーク(以下、GW)を体験し、また、その後のレクチャーを通してGWの意義を理解することができた。

GWは、いきなり生徒にやらせると崩壊する恐れがある。他者と協力して問題解決を図るという本来の目的を達成するためには、守るべき手順がある。
成田先生が、「鉄板の法則」と言われていたGW授業の組み立ては、次の通り。

  レクチャー(講義)   習得すべき内容を提示する(誘発)
   ↓
  個人作業(例題)    個人による内面化を促す(内発)
   ↓
  グループ作業(課題)  考えを拡げる、気づき合いを促す(拡散)
   ↓
  まとめ(講義)     講義内容や気づきの確認をする(収束)
   ↓
  リフレクション     各個人が学びを確認する

河合塾では、GWの指導法を開発するプロジェクトチームを作り、その研究の成果について、こうすれば成功/失敗するというノウハウを凝縮したマニュアルを作成している。(今回の講座のテキストにその抜粋が掲載されている。)
誰でもこの、成功体験の集積たるマニュアルに従って実施すれば、一定の成果が上げられる、というところまで法則化しているのは、やはり目的に叶った合理的行動を求める企業ならではの発想だと思う。(これは、高校教育には不足しがちな視点だと思う。)

たとえば、「他者紹介」のような小さな活動にも、GWへの導入として様々な知恵が蓄積されている。二人一組になって、相手を取材し、人物像を発表する、というだけの活動だが、そのやり方や手順が細かく設定され、これによってどのような目的を達成するかが明確に想定されている。
成田先生が言われるには、「他者紹介」は〈聞く・話す〉を学ぶ教材であり、相手を取材して人物像を把握する活動を通して、具体的な情報をもとに総合的な判断を促す国語力の育成につながっているそうだ。GWの入口のハードルを下げて、スムーズに活動に入っていける仕掛けになっているということを説明され、GWには〈ねらい〉と〈仕掛け〉が必要であり、設計がないとうまくいかないことがよくわかった。

「教員はコーディネーター(調整者、進行係)であり、ファシリテーター(まとめ役、世話人)。主人公は生徒だが、ヘゲモニー(主導権)は教員が持たなければいけない。」

近年、ともすれば、生徒におもねった"学び合い学習"が見受けられる中で、ここまではっきり言い切る人は珍しい。
やはり、生徒任せにせず、授業で起こることの責任は教師が負わなければならない。
GWも、それを通じて、どのように生徒が学び、その結果、どういう力がついたかを検証できるものでなければならない。
以前から自分が考えていたように、学習者参加型の協同学習は、力量ある教員でないとできない、とても難しいものなのだ、ということを改めて感じた。
「話し合わせるだけでは、協同学習にならない。」
効果は大きいが、トレーニングを積んだ教員が正しいやり方で行わないと失敗の危険も大きいことがよくわかった。

午後の部については、また次回に取り上げる。

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