ANAの「翼の王国」で紹介されていた記憶だけを頼りに
関子嶺温泉街にある「旅社」をつぶさに探す。
日本人が日本人のために作った木造の建築物だから、
その雰囲気だけで、それとなくわかりそうなものだが…。
バス停から坂道をくだり、「関子嶺温泉旅社」と書かれた紙片を持って
レストランの売り子や出店でしゃべくりまくってる老婆に場所を尋ねる。
下り坂を指さし、「500m」と日本語で応える老婆。
にっこりとしわくちゃな笑顔を向け、無言の壁を作る。
ま、そんな大きな温泉街じゃないし、きっと見当たるだろう…と高をくくって坂を下る。
2つめのカーブを下った辺りに大きな駐車場を備えた、それらしき建物が。
「関子嶺温泉大旅社」
なんてことはない「関子嶺温泉ホテル」としっかり日本語で書いてある。
しかし、イメージしていた日本家屋な木造建築物ではない。
見た目も「翼の王国」にただよう気品が感じられない。
「歓迎光臨」
ここまで来て、今更引き下がれない。片道4時間、新幹線代も馬鹿にならないのだ。
意を決して、受付のおじさんに尋ねる。
「ここは関子嶺温泉旅社か?泥湯で有名なところか?」
「yes.Do you wanna take a spa? 200dollar each.」
…英語で返ってきた。しかも流暢だ。
さっそく案内されるままホテル内に踏み込む。
館内には川が流れ、太鼓橋が架けられている。
完全に「雅叙園」的志向。日本人が作ったに相違ない。
奥へ進むと、白いタイル貼りの装飾で個室が続く。
廊下の壁には、大きな数字で「←203,204」などと記されている。
案内されるまま一番奥の個室へ。
いきなりバスルームに入り、蛇口をひねる案内人。
「This is a mud-water」
ほほ、泥湯が蛇口から?これはまたどういうこと?
しかも、個室のこんな小さな湯船に入れ…とでも?
ボクたちが求めているのは、温泉街にありがちな露天の公衆風呂。
とにかく広くて温泉がこんこんと沸き上がっているような、そんな解放感。
「もう少し大きくて外に設置してある温泉は?」
「outside?…ok, Come wth me」