〈外〉にこだわり続けること、一方的に。
それが一方的であるから、多方の〈外〉を孕み持とうとするのだ。
〈外〉とは何か。或る者はこう言い、又、或る者はかく言う。
かく言う〈外〉とは、それらの複数の声によって照射されるところの、
すなわち絶対的に、単一的に名指されることから外れてゆくところのなにものか。
未名の〈常闇形〉。非文の「肉体」。
なぜ「舞踏」をはじめたのかとしばしば問われた。
かつて何度か〈土方巽を見たから〉と答えた。
その土方は死んだ。一九八六年が明けて、唐突に掻き消えるようにして亡くなった。
今、彼によって始まった〈舞踏〉は彼とともに葬り去られてよい。
慎んで〈舞踏の祖〉という冠名を戴いた彼の晩年の不本位に、哀悼の意を表したい。
それと同時に、彼が〈土方巽〉の名に於て、あるいは〈暗黒舞踏〉の名に於て、
語り継がれてゆくことの〈外〉で、その固有名詞によって代名されえなかったものにこだわること。
看板は外されたが、外されたことによって露らわになるもの、
看板がかかげられた時、既にその看板の外へとはみ出してゆく匿名のものの交通によって、
無名に於てこそ、私は舞踏を選んだ…。
ゆえに〈外〉にこだわることは、その無名、未だ名をもたないものの生成の、
その刹那にこだわるということなのだ。
他ならぬ土方が「肉体の叛乱」の舞台で誰にも突き付けるというのではなく、
自己の肉体に宣告したものがそれだと思うからだ。
(中略)
あらゆるものの声が消音するところの、
あらゆる雑音を許容したまま未だ名ざされることのない
〈外〉があることを証すかのように…
その葬送し切るなどということの到底不可能なものに殉じて。
…すなわち〈外〉に殉ずること。〈外〉が伝承される。
(室伏鴻)
#photobybozzo
それが一方的であるから、多方の〈外〉を孕み持とうとするのだ。
〈外〉とは何か。或る者はこう言い、又、或る者はかく言う。
かく言う〈外〉とは、それらの複数の声によって照射されるところの、
すなわち絶対的に、単一的に名指されることから外れてゆくところのなにものか。
未名の〈常闇形〉。非文の「肉体」。
なぜ「舞踏」をはじめたのかとしばしば問われた。
かつて何度か〈土方巽を見たから〉と答えた。
その土方は死んだ。一九八六年が明けて、唐突に掻き消えるようにして亡くなった。
今、彼によって始まった〈舞踏〉は彼とともに葬り去られてよい。
慎んで〈舞踏の祖〉という冠名を戴いた彼の晩年の不本位に、哀悼の意を表したい。
それと同時に、彼が〈土方巽〉の名に於て、あるいは〈暗黒舞踏〉の名に於て、
語り継がれてゆくことの〈外〉で、その固有名詞によって代名されえなかったものにこだわること。
看板は外されたが、外されたことによって露らわになるもの、
看板がかかげられた時、既にその看板の外へとはみ出してゆく匿名のものの交通によって、
無名に於てこそ、私は舞踏を選んだ…。
ゆえに〈外〉にこだわることは、その無名、未だ名をもたないものの生成の、
その刹那にこだわるということなのだ。
他ならぬ土方が「肉体の叛乱」の舞台で誰にも突き付けるというのではなく、
自己の肉体に宣告したものがそれだと思うからだ。
(中略)
あらゆるものの声が消音するところの、
あらゆる雑音を許容したまま未だ名ざされることのない
〈外〉があることを証すかのように…
その葬送し切るなどということの到底不可能なものに殉じて。
…すなわち〈外〉に殉ずること。〈外〉が伝承される。
(室伏鴻)
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