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イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

【てつどう】‰(パーミル)会は伊達じゃない!普通に見えて実は登山電車 神戸電鉄

2010-10-29 | てつどう。


‰(パーミル)って単位、ご存知ですか。


1/100を1とする%(パーセント)に対して、パーミルは、1/1000を1とする単位です。
百分率に対する、千分率、といえばなお分かりやすいでしょうか。


鉄道を趣味とする方々では、「パーミル」と聞けばそれは、「坂の勾配の角度」と即答する方が多いと思います。
鉄道に関わらず勾配を表す単位によく用いられるのですが、
でも一般的に「この道路は300パーミルだ」とはあまり言わないですよね(道路は%で示すことが多い)。


鉄道(ゴムタイヤ式やモノレール除く)は、鉄と鉄の摩擦で走っているので、
クルマのタイヤ+アスファルトなどと比べて、粘着力が弱いのは想像に難くないと思います。
なので、鉄道の坂の勾配は、道路に比べてずっとゆるやかです。
そのため、パーミルという単位を用いるのです。



鉄道の歴史はこの「勾配との戦い」でもあったのですが、
わが日本は、基本的に平地の少ない「山岳国家(大げさ?)」なので、
鉄道も様々知恵を絞り、その困難を乗り越えてきた歴史を持ちます。


では、鉄道にとって「キツイ坂」というのは、どのくらいか。


長野新幹線の開業で廃止になった、JRでいちばん勾配のきつかった区間。。。
信越本線 横川-軽井沢間では、66.7‰。1000m進むのに対して66.7mあがる、という坂です。
ぱっと聞くと大したことないようですが、電車に乗ってみると
座っていて電車が傾いているのがわかったほどの、急傾斜でした。

ここを通すために、わざわざ専用の電気機関車を開発、連結して
上るときは後押し、下るときはブレーキの役割を担わせるほど、たいへんだったのです


専用の峠越え補助機関車はいくつかありますが、いちばん有名なのはこのEF63です。




キツイ勾配は、鉄道にとっては上ることだけでなく、降りることもたいへん厳しい。
下り坂では、少ない摩擦故、どんどん速度が上がってしまう。

とくにブレーキについては専用とも言える二重三重の重装備を持ち、坂道を転げ落ちることの無いよう開発されていました。



さて、前振りが長くなってしまいましたが、
前述のように山岳路線・急勾配が多い日本。
有名なところでは箱根登山鉄道。ここはなんと80パーミルの路線を持ちます。
80パーミルは、3両で45mの電車の前と後ろで高さが3.6mも違う、と聞けば、いかに急勾配かわかるかと。
ほかにも山岳路線はいくつかあって、それらはみな急勾配と戦っている会社ばかりです。


これら急勾配な山岳路線を持つ鉄道会社が結成したのが、全国登山鉄道‰会(パーミル会)
加盟しているのは、南海、神戸電鉄、富士急行、大井川鐵道、叡山電鉄、箱根登山鉄道。
中には車輛に勾配に対する特殊装備をしていない会社も含まれてはいますが
(例:富士急。でも40‰の連続勾配が続く立派な山岳路線)。







ああ、まだ前振りじゃないかw


ということで、この間の関西出張の際に時間を作ってちょい訪問したのが、
パーミル会加盟の私鉄、神戸電鉄です(出張時テツの話も引っ張るなあw)。


神戸市中心部と有馬温泉を結ぶ観光路線の側面と、神戸市への通勤通学路線の性格を併せ持つ
有馬線などで構成される69.6km(神戸高速鉄道の湊川-新開地間含む)の中小私鉄です。



ここの最大の特徴は、六甲山地をかけのぼる50パーミルの勾配を持つこと。
全路線69.6kmのうち、勾配区間は8割、35パーミル以上の区間は3割、
さらにさらに50パーミル区間は2割という、いうならば「ほぼ急勾配」の鉄道。
そして、ここに立ち向かうのは見た目完全に通勤向けの電車でありながら、
実は山岳路線専用の装備を持っていること。
しかも有馬線の急勾配は、一般的な「山岳部に向かうほど急峻な路線となる」のではなく、
新開地・湊川を出てから間もなく、一気に50パーミルの坂を駆け上ることです。
これは平地が少なく、いきなり山になるこのあたりの地形も影響しているのでしょう。


新開地駅。厳密には神戸電鉄の駅では無いのですが、そのあたりも
神戸高速鉄道が無くなることで解消していくでしょう。
名物、高速そばを食べなかったのは不覚。


2000系のVVVF制御バージョン、5000系。
起動加速度は3.0km/h/s、最高時速100kmを誇る高性能車。これは山岳用としては高い。
回生ブレーキを持ちますが、回生ブレーキがの失効した際のために電気ブレーキを持ち、
ブレーキ系を二重化して安全性向上を図っています。




訪問した日はもう夜も遅く、新開地~鈴蘭台を往復しただけでしたが、
それでも前述のごとくこの区間ですでに急勾配なので、
上り下りする電車を堪能できました。


途中鵯越駅(ひよどりごえ)で降りて駅撮り。


1370系。1300系列の中間車1320系に運転台をつけたもの。このクラシカルな外観がいい。


鈴蘭台に向けて勾配を上っていく。電車が去った後は、ただ虫の声と漆黒の闇。






鈴蘭台にて。
2扉と3扉車が混ざって使用されています。内外装は、クラシックな雰囲気。
やっぱりどうも、こういう昭和30~40年代の電車が好きなようです。


1100系。昭和44(1969)年から製造の2扉車。
外観的にはすでに廃車になっている800系や1000系の流れをついだ、いかにも高度成長期なグッド・デザイン。




鉄道が勾配に挑む姿が好きな方は多いと思いますが、自分もそのひとり。
そんなファンたちにとっては、坂を登るだけでなく、降りるときのほうが実はハイライト
だったりするかもしれない。

電車には、クルマのフットブレーキ多用によるブレーキ力の低下を防ぐエンジンブレーキのような、
「電気制動」というものを持っているのですが、神戸電鉄の場合下り坂はほぼ電制を多用するので、
その独特の「加速時とは違うモーター音」がたまらないんですね。



ウルトラマン電車ともいわれる3000系。


登場は昭和48(1973)年。いまみても斬新。1991年まで長く製造が続けられたのも特徴。



神戸電鉄の車輛は先に紹介したEF63のように、急勾配に対する様々な対策が行われています。
それは、登坂能力を高めるための高い電動車比率、勾配区間での焼きつきを抑えるべく容量の大きくなった抵抗器、
高い減速性能と天候の変化に強い鋳鉄ブレーキシューの採用、
また、「非常電制」といわれる「最後の手段」も用意されています。
これは、通常の車輪を停める空気ブレーキが故障して使用できなくなった場合でも、
モーターをブレーキとして限界まで使用する装備。ちなみに、これを使った場合、モータは壊れるそうです。



そんなこんなで、上りも下りもそこそこ堪能。あ、でももう22時!帰らなきゃ、と、
後ろ髪惹かれる思いで、新開地から山陽電車に乗り込んだのでした...。





>>阪急・阪神系列の会社なのですが、電車は阪急の色が濃いです。
とくに内装はマホガニー壁、シックな緑色のシートなど、かなり上質なものもあります。


>>3000系車内。


>>そして関西私鉄では珍しく、ステンレス車(6000系)を持ちます。
でもさほど冷たい感じがしないのは、さすが関西というべきでしょうか。

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5 コメント

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頑張れ!通勤登山電車 (Gu)
2010-10-29 23:31:47
沿線主要駅は三宮直結の神姫バスにやられるわ、車両は特別仕様だから製造コスト下げられないわ、曲線急勾配だから軌道保守にカネ掛かるわ・・・現在神鉄の置かれた立場は危機的だと思います。

鋳鉄シューから放たれた鉄粉がプラットフォームを赤く染め上げている姿を見ると、定期的なクリーニングも出来んのか?と、なんとも悲しい気持ちになりますが、そんな危機的な状況の中で作り上げた6000系を見ると、ちょっとでも前向きに進もうとしている神鉄の姿を見れたような気がして、少し嬉しくなります。
Unknown (ぱとらしゅ)
2010-10-30 10:31:41
補機がないと走れないセノハチを有する会社は
パーミル会には入れないんでしょうかねぇ?

#入ったところで何も(利用者に)メリットはなさそうですけど・・・
Unknown (ie)
2010-11-01 12:17:57
Guさま>
>沿線主要駅は三宮直結の神姫バスにやられるわ、車両は特別仕様だから製造コスト下げられないわ
話を聞くとほんと厳しそう...状況は良くないのですね。
>そんな危機的な状況の中で作り上げた6000系を見ると
その話を聞いてから6000系をみると、たしかに感銘受けました!

ぱとらしゅさま>
>セノハチを有する会社はパーミル会には入れないんでしょうか
なんでも「観光」「山岳」という縛りがあるようなのできびしいのかな?(^^;
 (nek《》 )
2010-11-04 10:11:40
‰って何気なく使っていましたが(どこで!?^;)、
1/100に対して1/1000の意味だったのですね!
全然気が付きませんでした~(笑

ところで神戸電鉄の1100系の
フロントマスクは、
茶色くなって富士急の写真にもなっている
京王の5000系によく似ていますね~^^

独特の「電制音」聞いてみたいです!
Unknown (ie)
2010-11-04 14:34:32
nek《》 さま>
>‰
めったに使わない単位ですものね(^^
>フロントマスク
京王5000などをはじめとした昭和中期のマスクってほんと魅力的で、大好きなんです!

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