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イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

【セダン蒐集癖】Vol.278 BMWの高級化の嚆矢、7シリーズの前夜・BMW3.0S(E3系)

2011-11-28 | セダン蒐集癖。


今日の一台は、BMWの高級車、7シリーズの先祖ともいえる、BMW3.0(E3系)を取り上げます。


いまでこそメルセデスのSクラスと並ぶ世界の高級車メーカーで、
各セグメントに車種をもつメーカーであるBMW。

でも第二次世界大戦後は、502や503などのV8エンジンの超高級車と、
イタリアのイソ社からのライセンスで生産していたイセッタ、そしてそれの発展型のBMW600などのいわゆる
「バブルカー」だけという、シトロエンもびっくり(DSと2CVしかない時期があった)の
両極端のラインナップしか持っていなかった時期があったのです。

いまのBMWの隆盛が信じられないくらいですよね。



これがBMW600


戦後経済が安定してきた中、そのラインナップしかないBMWは、深刻な経営危機に陥ります。
しかし倒産も寸前のところで、大富豪ヘルベルト・クヴァントによって買収されて、危機を免れたのでした。

再生なったBMWは、まず、当時需要が高まっていた小型車として、BMW700を送り込みます。
これはBMW600をベースとし、イセッタと同じ形式の空冷水平対向2気筒エンジンはリアに積まれていましたが、
それまでの「ふつうの自動車」の形や乗降方法ではなかったBMW600とくらべて極めてコンベンショナルな「クルマ」
として登場しました。ちなみに、デザインはミケロッティ。わかりやすいですね(^^



BMW700。高級車メーカー(@日本の認識)というイメージとは違う小型車がBMWの当時の売れ筋


このBMW700は商業的に一定の成功を納め、その資金や開発期間を持って、いよいよ「ノイエ・クラッセ」と呼ばれる、
BMW1500/1600/1800/2000(E1系)を1961年に登場させるのです。
この一連のシリーズは、現在に通ずる「高性能なスポーティサルーン」というBMWのイメージを作り上げ、
好評を持って迎え入れられました。



BMW1500。700に比べて、一気にサイズアップ&モダナイズ。


そして2002などで有名な「02」シリーズも、このノイエクラッセをベースに追加されます。
そう、「02」とは、1500/1600/1800/2000シリーズの2ドアモデルという意味なのです。



妙に出来が良かったバンダイの1/20キットを思いだす2002ターボ




このE1系も、高品質・高性能によって十分な売れゆきとイメージを確保したことにより、
BMWはついに、再びメルセデス・ベンツの象徴である高級車市場に挑戦すべく、ひとクラス上の6気筒モデルを
ラインナップに用意することにしました。


それが、今回紹介のE3系です(ってやっとここまで辿りついた)。デビューは、1968年のことでした。



うはー、たまらん、おめめまっ黄色のフランス仕様w


E1系をさらにモダナイズしたようなクリーンなデザインのボディは4.7m×1.75mの大きなサイズを与えられ、
その長いノーズには、静粛性とスムーズさで他を圧倒し、その絹のようなフィーリングから
「シルキー・シックス」とさえ呼ばれた直6エンジンを搭載。

これらE3系は当初2494ccの2500(150PS)、2788ccの2800(170PS)でしたが、のちに2985ccの3.0S(180PS)、
さらにインジェクションを装備し200PSを誇った3.0Si、3295ccの「3.3L」(190PS)が順次追加され、
メルセデスの対抗車としての地位を確立していきました。


1977年に「7シリーズ」にフルモデルチェンジ。
ご存知の通り、7シリーズは現在でもBMWのトップモデルになっています。
つまりこのE3系は、BMWを高級車ブランド化した嚆矢(こうし)とも言える一台なのでした。




>>なお、このE3系にはクーペ(E9系)が追加されます。
その後「世界一美しいクーペ」と言われることになった初代6シリーズの前身です。
3.0CSや3.0CSLが有名ですね。ちなみにこのE9系、デザイナーはガンディーニおじさんです。


コメント (8)
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