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感想:『オオカミさんと七人の仲間たち』

2010年03月19日 23時10分24秒 | 本と雑誌
オオカミさんと七人の仲間たち (電撃文庫)オオカミさんと七人の仲間たち (電撃文庫)
価格:¥ 599(税込)
発売日:2006-08


7月からTVアニメ化ということもあり、興味を持っていたシリーズに手を出した。
学園もので、事件を解決する一種の部活もの。私立御伽学園の御伽学園学生相互扶助協会が舞台。御伽の名が示す通り、登場人物は御伽話や童話にちなんでいる。ヒロインはオオカミさん(大神涼子)で、赤ずきん(赤井林檎)、猟師(森野亮士)がメインキャラクター。
小さな章による連作短編に近い作りが特徴的。読みやすい文章、分かりやすいキャラクター、ストレートな展開、ライトノベルらしい設定と、いかにもラノベらしい作品だが、オーソドックス過ぎてインパクトには欠ける。下ネタに関してはややラノベから逸脱気味だが、ラノベの平均が大人しすぎるだけの話なのでエロいというほどではない。

シリーズの評価としてはもう1冊くらい読んでみないととは思う。この1巻だけでは小さくまとまってしまった感じが強い。やはり突出した何かがないと作品の個性が感じられない。(☆☆☆)


『ライトノベル最強!ブックガイド―少年系』

2010年03月19日 22時48分05秒 | ライトノベル
ライトノベル最強!ブックガイド―少年系ライトノベル最強!ブックガイド―少年系
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2009-11-26


2005年1月に刊行された『ライトノベルデータブック 【作家&シリーズ/少年系】』をベースに、ライトノベル100シリーズ及び新作・注目・近縁作品26シリーズを取り上げたブックガイド。
1作品は見開き2ページで、作家・イラストレーターの簡単なプロフィール、物語のあらすじ、チェックポイント、キーワードなどで紹介されている。新作などの26シリーズはそれぞれ1ページで紹介。
ライトノベルめった斬り!』がライトノベル史的な観点で選出されていたのに比べると、単純に人気作品を集めた感じにはなっているが、主だったものは全て押さえてある印象だ。

☆厳選100シリーズ

悪魔のミカタ/うえお久光
アリソンシリーズ/時雨沢恵一
EME/瀧川武司
いぬかみっ!/有沢まみず
イリヤの空、UFOの夏/秋山瑞人
ウィザーズ・ブレイン/三枝零一
えむえむっ!/松野秋鳴
お・り・が・み/林トモアキ
狼と香辛料/支倉凍砂
終わりのクロニクル/川上稔
陰陽ノ京/渡瀬草一郎
風の聖痕/山門敬弘
風の大陸/竹河聖
学校の階段/櫂末高彰
キーリ/壁井ユカコ
気象精霊記/清水文化
キノの旅-the Beautiful World-/時雨沢恵一
狂科学ハンターREI/中里融司
狂乱家族日記/日日日
銀盤カレイドスコープ/海原零
KLAN/田中芳樹ほか
クリスタニア/グループSNE
紅/片山憲太郎
クレギオン/野尻抱介
鋼殻のレギオス/雨木シュウスケ
ゴクドーくん漫遊記/中村うさぎ
GOSICK-ゴシック-/桜庭一樹
ザ・サード/星野亮
円環少女/長谷敏司
戯言シリーズ/西尾維新
されど罪人は竜と踊る/浅井ラボ
ザンヤルマの剣士/麻生俊平
時空のクロス・ロード/鷹見一幸
七人の武器屋/大楽絢太
しにがみのバラッド。/ハセガワケイスケ
灼眼のシャナ/高橋弥七郎
銃姫/高殿円
神曲奏界ポリフォニカ/榊一郎ほか
涼宮ハルヒシリーズ/谷川流
ストレイト・ジャケット/榊一郎
スレイヤーズ/神坂一
星界シリーズ/森岡浩之
星書シリーズ/荻野目悠樹
ゼロの使い魔/ヤマグチノボル
戦塵外史/花田一三六
創世の契約/花田一三六
総理大臣のえる!/あすか正太
ソード・ワールド/グループSNE
空ノ鐘の響く惑星で/渡瀬草一郎
タクティカル・ジャッジメント/師走トオル
戦う司書シリーズ/山形石雄
DADDYFACE/伊達将範
ダブルブリッド/中村恵里加
デルフィニア戦記/茅田砂胡
天国に涙はいらない/佐藤ケイ
伝説の勇者の伝説/鏡貴也
とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
都市シリーズ/川上稔
図書館戦争/有川浩
とらドラ!/竹宮ゆゆこ
トリニティ・ブラッド/吉田直
9S〈ナインエス〉/葉山透
七姫物語/高野和
バイトでウィザード/椎野美由貴
バカとテストと召喚獣/井上堅二
鋼鉄の白兎騎士団/舞阪洸
爆れつハンター/あかほりさとる
バッカーノ!/成田良悟
薔薇のマリア/十文字青
半分の月がのぼる空/橋本紡
フォーチュン・クエストシリーズ/深沢美潮
ブギーポップシリーズ/上遠野浩平
BLACK BLOOD BROTHERS/あざの耕平
フルメタル・パニック!/賀東招二
”文学少女”シリーズ/野村美月
封仙娘娘追宝録/ろくごまるに
蓬莱学園シリーズ/新城十馬ほか
撲殺天使ドクロちゃん/おかゆまさき
僕にお月様を見せないで/阿智太郎
魔獣戦士ルナ・ヴァルガーシリーズ/秋津透
魔術士オーフェン/秋田禎信
まぶらほ/築地俊彦
護くんに女神の祝福を!/岩田洋季
Missing/甲田学人
ムシウタ/岩井恭平
無責任シリーズ/吉岡平
メイド刑事/早見裕司
メルヴィ&カシム/冴木忍
ヤングガン・カンナバル/深見真
妖魔夜行・百鬼夜翔/グループSNEほか
よくわかる現代魔法/桜坂洋
吉永さん家のガーゴイル/田中仙年堂
ラグナロク/安井健太郎
ランブルフィッシュ/三雲岳斗
召喚教師 リアルバウトハイスクール/雑賀礼史
リバーズ・エンド/橋本紡
ルナル・サーガ/友野詳
レンタルマギカ/三田誠
ロードス島戦記シリーズ/水野良
我が家のお稲荷さま。/柴村仁

☆注目作ピックアップ

復活の地/小川一水
ブラックロッド三部作/古橋秀之
若草野球部狂想曲/一色銀河
AVION/富永浩史
ショットガン刑事/秋口ぎぐる
クレイジーカンガルーの夏/クレイジーフラミンゴの秋/誼阿古
〈骨牌使い〉の鏡/五代ゆう
タイム・リープ あしたはきのう/高畑京一郎

☆新作チェック

ベン・トー/アサウラ
ライトノベルの楽しい書き方/本田透
生徒会の一存/葵せきな
影執事マルクシリーズ/手島史詞
俺の妹がこんなに可愛いわけがない/伏見つかさ
大正野球娘。/神楽坂淳

☆ライトノベルの近縁作品

隣り合わせの灰と青春 ∥ 風よ。龍に届いているか/ベニー松山
翼の帰る処/妹尾ゆふ子
クレヨン王国/福永令三
ズッコケ三人組シリーズ/那須正幹
ガンパレード・マーチ/広崎悠意,榊涼介
「ぼくら」シリーズ/宗田理
十二国記/小野不由美
マリア様がみてる/今野緒雪
黒魔女さんが通る!!/石崎洋司
星虫年代記/岩本隆雄
マルドゥック・スクランブル/冲方丁
彩雲国物語/雪乃紗衣




ほとんどの作品は「奇想庵の100冊」ライトノベル・ブックガイドに掲載済み。あらすじの紹介などでの情報量も豊富とは言えないが、ネタばれなしにどういった作品かを知る手がかりとしてはネットよりも安心できるだろう。


感想:『屋上ミサイル』

2010年03月18日 22時54分54秒 | 本と雑誌
屋上ミサイル (このミス大賞受賞作)屋上ミサイル (このミス大賞受賞作)
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2009-01-10


伊坂幸太郎はまだ2冊しか読んでいないが、本書が非常に伊坂的であることは感じ取れた。

アメリカ大統領が監禁され、テロ集団に核ミサイルの発射ボタンが委ねられた世界。本書冒頭はそんな非常時にも関わらず、人々はまだ危機感に晒されていない東京から始まる。高校の屋上でたまたま顔を合わせた4人が「屋上部」として屋上の平和を守ろうとする物語。
物語の進行に合わせて犯罪の増加や東京からの脱出といったパニック状態が現れる。一方、屋上部の4人は一見関わりのない事件に首を突っ込みながらそれがやがて繋がっていき急展開を迎えることになる。

伊坂幸太郎は一見無関係に見える様々なパーツを組み合わせ、やがて一つの絵として描き出す絶妙な構成力を武器としている。本書の場合、偶然性がどうしても目に付く。いわゆる御都合主義。ただそれは結果的なものではなく、著者も理解してあえてそうしている面がある。しかし、それは読み手を選ぶことになるだろう。少なくともそこにリアリティはない。
大森望は選評でゲーム的リアリズムという東浩紀の言葉を使って本書を評している。物語的なリアリティの追求ではない、ゼロ年代的な物語構造に従って作られた作品なのは確かだろう。御都合主義に鼻白む場面は何度もあったが、それ自体が本書の評価を貶めるとは思わない。

後半の展開の勢いはむしろ伊坂よりも好ましく感じるほどだった。主人公たちが高校生でその若さがうまく描かれた結果だろう。ただし、その若さは未熟さでもあり、キャラクターの魅力に繋がったようには見えなかった。
ひとつ気になったのは暴力の描き方。暴力を否定しないが、本書では不良的な暴力の価値観を提示しただけでそれ以外の価値観が見えてこなかった。ガキの論理だけが肯定されているような描き方は不快に感じられた。

”戯言”シリーズの模倣のような『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』がやがて独自の世界を築いたように、伊坂幸太郎スタイルから独自性を築いていけるのかどうか。それが提示されるまでは本書の評価も低くならざるを得ない。(☆☆☆)


感想:『傷物語』

2010年03月18日 22時18分15秒 | 本と雑誌
傷物語 (講談社BOX)傷物語 (講談社BOX)
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2008-05-08


『化物語』の続編にして前日譚。主人公、阿良々木暦が春休み吸血鬼と出逢った物語。

私にとって『化物語』の魅力の大半が戦場ヶ原ひたぎによって構成されているということを実感した作品とも言える。戦場ヶ原というキャラクターの発見が『化物語』全体を貫いていたからこそ他の西尾作品と比べても楽しむことが出来た。彼女と出会う前の物語である本書は、主人公阿良々木暦というキャラクターが前面に現れていて、そのキャラクターがゆえにイライラとした感情を呼び起こされた。

西尾維新の代表作”戯言”シリーズへの評価にどうしてもついて回るゼロ年代的主人公像がある。「りすか」でも2巻以降はその傾向が強まっている。『刀語』は例外となっているが、それは主人公の内面を極力描かなかったから出来たことだった。
『化物語』でも「するがモンキー」でそれが顕著に現れていたが戦場ヶ原の登場によってギリギリ回避された。
しかし、本書には彼女は現れない。

結局、主人公の内面に微塵も共感できない。ヒロイン羽川翼は内面が存在しない記号的なキャラクター。忍野メメという狂言回しの存在で最後まで読ませた作品ではあるが、『化物語』で味わった楽しさはなかった。
西尾維新らしい文体が少し精彩を欠いた印象を受けたが、たまたまなのか、狙ってなのか、この一冊では判断できない。その点も楽しめなかった一因と言える。

偶然同時に読んでいた『シュガーダーク 埋められた闇と少女』が設定がよく似通っていて比較してしまった。文章の腕ではもちろん西尾維新が抜きん出ているが、キャラクターの内面としては新井円侍の方が好感を持って読めた。
西尾のゼロ年代型主人公に対して、新井の主人公は古いタイプのものだっただからだが。10年代型の主人公像は更に共感できない方向へ進んでしまうのか、それとも揺れ戻しのようなものがあるのか気になるところだ。(☆☆☆☆)




これまでに読んだ西尾維新の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い』(☆☆☆☆☆)
新本格魔法少女りすか』(☆☆☆☆☆☆)
新本格魔法少女 りすか2』(☆☆☆☆)
クビシメロマンチスト―人間失格・零崎人識』(☆)
クビツリハイスクール―戯言遣いの弟子』(☆☆☆☆☆)
サイコロジカル〈上〉兎吊木垓輔の戯言殺し』(☆☆☆)
サイコロジカル〈下〉曳かれ者の小唄』(☆☆☆)
ヒトクイマジカル―殺戮奇術の匂宮兄妹』(☆☆)
ネコソギラジカル(上) 十三階段』(☆☆)
ネコソギラジカル(中) 赤き征裁VS.橙なる種』(☆☆)
ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い』(☆)
新本格魔法少女りすか3』(☆☆)
零崎双識の人間試験』(☆☆☆☆)
零崎軋識の人間ノック』(☆)
化物語(上)』(☆☆☆☆☆☆)
化物語(下)』(☆☆☆☆☆☆)
刀語 第一話 絶刀・鉋』(☆☆☆)
刀語 第二話 斬刀・鈍』(☆☆☆☆)
刀語 第三話 千刀・鎩』(☆☆)
刀語 第四話 薄刀・針』(☆☆☆☆☆)
刀語 第五話 賊刀・鎧』(☆☆☆)
刀語 第六話 双刀・鎚』(☆☆☆☆)
『刀語 第七話 悪刀・鐚』(☆☆☆☆☆)
『刀語 第八話 微刀・釵』(☆☆☆☆)
『刀語 第九話 王刀・鋸』(☆☆☆)
『刀語 第十話 誠刀・銓』(☆☆)
『刀語 第十一話 毒刀・鍍』(☆☆☆☆☆)
刀語 第十二話 炎刀・銃』(☆☆☆☆)


感想:『シュガーダーク 埋められた闇と少女』

2010年03月17日 21時02分18秒 | 本と雑誌
シュガーダーク  埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫)シュガーダーク 埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2009-11-28


角川書店のスニーカー大賞大賞受賞作。過去、大賞は吉田直、安井健太郎、谷川流の3名が受賞し、新井円侍は4人目となる。『涼宮ハルヒの憂鬱』以来6年ぶりの大賞受賞作。

偶然だが同時に読んでいた西尾維新『傷物語』と非常にシンクロしていると感じた。

主人公は上官殺しの冤罪により終身刑となった少年。囚人として墓地の墓掘りの仕事に着かされる。彼は軍隊で塹壕掘りをしていた。そこで彼は化物の死骸を見る。そこは人と化物の共同墓地だった。
彼はまた墓守りの少女とも出会った。自らの脱走を手伝ってもらうという口実で彼女を籠絡しようとする。夜間だけ墓地を歩く少女。彼女は化物を狩る存在だった。

少女は人でありながら化物でもある存在。吸血鬼のように太陽の光を浴びると死ぬが、それ以外では不死だった。化物に体を切り刻まれ、その苦痛に喘ぎながらも、彼女の血を浴びせることで化物の動きを封じることが出来る。彼女の前任者はその境遇に耐え切れず日に焼かれて死んだ。
『傷物語』も吸血鬼の話であり、吸血鬼曰く彼らの大半が日に焼かれ自殺することが死因だという。

典型的なボーイミーツガールの物語。主人公の少年は化物の存在を知り、少女の真実を知り、己の気持ちを知る。ゼロ年代的主人公ではなく、古いタイプの正統派の少年だ。ひねりはないが素直に読める。

新鮮さは感じない。文章も特に上手いわけではない。キャラクターもそれほど傑出しているわけではない。謎も安直な部類。ストーリーは真っ直ぐ。大賞受賞作という割にインパクトに欠ける。ただ読後感は悪くない。しかし、続編を読みたいと思わせるものがあるかと問われれば疑問だ。できれば、別の物語を書いて欲しい。登場人物が少ない作品だったのでキャラクターの引き出しがどれだけあるのかも心配だし、この世界観で話を広げてもそう斬新な何かが期待しにくい。悪くはないが突出したものが感じられず、評価しにくい作品と感じただけに、なぜ大賞なのか謎に感じる作品となった。(☆☆☆☆)


感想:『MM9』

2010年03月17日 19時47分48秒 | 山本弘
MM9MM9
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2007-12


自然災害として怪獣が存在する世界。気象庁でその対策を担当する部署「気象庁特異生物対策部(気特対)」の活躍を描く。とはいえ、実際に怪獣と戦うのは自衛隊の仕事。気特対は避難勧告や作戦立案などを担当する。
平成版ガメラやパトレイバーあたりからリアリティのある怪獣ものという切り口が登場し、ジャンルとまでは言えなくとも珍しいものとは感じなくなった。そのため本書も新鮮味があるとは言い難い。SFとしての理論付け、特に人間原理の使い方は面白かったが。
キャラクターは公務員色が強い。同じ公務員色のあるパトレイバーと比べても顕著で、地味な印象だ。リアリティはそれにより確実に強まったが物語としては淡白な印象を強めることとなってしまった。

SFとしてはケレンに溢れ雑学の塊のような作品に仕上がっている。巨大な幼女、しかも全裸とか映像化できないじゃん!と思わせるエピソードなどひねりも効いてはいるのだが、エンターテイメントとしては盛り上がりに欠けるのも事実だろう。『地球移動作戦』のようなストレートな熱さがもう少しあっても良かったのではないか。
以下ちょっとネタばれ。
最終章にクトゥルー神話が出てきて笑った。このノリで☆ひとつ追加(笑)。ただし、『這いよれ!ニャル子さん』を読んだあとなのでインパクトはそう強くはなかったが。(☆☆☆☆☆)




これまでに読んだ山本弘の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

アイの物語』(☆☆☆☆☆)
地球移動作戦』(☆☆☆☆☆☆☆)


感想:『武士道シックスティーン』

2010年03月16日 01時34分19秒 | 本と雑誌
武士道シックスティーン武士道シックスティーン
価格:¥ 1,550(税込)
発売日:2007-07


文庫が平積みになっているのを見て興味が湧き、ハードカバーを借りて読んだ。16歳、高校一年生の二人の少女を主人公とした剣道もの。4月に映画が公開される。

短い章ごとに、二人の主人公交互に視点が変わる。片や全中2位という実力を持つ香織。勝負に徹して、勝つためなら反則スレスレも平気でやってのける。片や中学から剣道を始めた早苗。勝敗にこだわることを恐れ、マイペースで上達している。中学最後の大会でたまたま二人は対戦し早苗が勝ってしまったことで物語は始まる。早苗を追うように彼女のいる高校へと進学した香織。相反するような性格の二人が出会い、ぶつかり合ううちに友情を育む正統派の青春小説に仕上がっている。

剣道が個人種目なだけに個性と個性のぶつかり合う様は強烈だ。香織は周囲の反発も平然とやり過ごすし強さしか認めない。しかし、自分を負かした早苗が強くないことに苛立ったり、怪我をしたことがきっかけで自分を見失ったりする。彼女を受け止める早苗の存在がこの小説を成立させている。日本舞踊から剣道に転向した変り種で、性格的にも柔らかさを持っている。香織が一本気な剛構造なら、早苗はしなやかな柔構造の精神をしている。

小説としては早苗の傑出したキャラクター性に頼ったところも感じられた。青春小説として十二分に楽しめたけれども。小説ならではかどうかは微妙なところもあるが、剣道のシーンだけは小説でこそ描ける世界に感じられた。まあ剣道なんてコミックだと描くのが大変という面もあるが(苦笑。

スポーツの面から言えば、香織のような勝負に徹するタイプは日本ではあまり評価されないが、それでも強いのは確実にこのタイプだと思う。自分の満足のいく動きや勝ち方にこだわるのは確かに一つの美学ではある。武士道といった精神面を強調する場合それが優先されるのも理解はできる。だが、それではなりふり構わずかかってくる相手に勝つのは難しい。もちろん、それを貫いて勝つ者もいる。
剣道の場合は主に日本のみなのでそうした違いが際立つことが少ないかもしれないが、柔道ではそれが顕著に現れる。野村忠宏や谷本歩実は勝ち方にこだわり、それを貫いて勝者になった素晴らしい柔道家だ。一方で、谷亮子や石井慧は勝負に徹するタイプだと言えるだろう。私自身は武道家ではないので、そんな勝負師にこそ魅力を感じる。勝つためにあらゆる手段を尽くしてこそ。それはもちろん柔道などの武道だけでなくあらゆるスポーツ、そしてスポーツ以外でも現れる局面ではある。美学を優先するか勝負に徹するかはその局面ごとにどちらがいいか違うだろう。もちろん両立できればベストだが、常にどちらが優先すべきかは考える必要があるのではないかと思う。
高校の部活レベルでは勝負よりも美学優先でいいと思うが。(☆☆☆☆☆☆)


感想:『医学のたまご』

2010年03月15日 21時27分12秒 | 本と雑誌
医学のたまご (ミステリーYA!)医学のたまご (ミステリーYA!)
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2008-01-17


海堂尊による中高生向け小説。横書きで書かれている。いつも通り、桜宮が舞台だが設定は2020年代と未来になっている。
主人公は普通の少年で、彼が中学生でありながら医学部に通う話。ゲーム理論の権威である父親が作った潜在能力試験をすらすらと解いてしまったことで、東城大学医学部の藤田教授の目に留まり中学校と並行して医学部でも勉強することになった。

医学部内の辛辣な人間関係や、研究費目当てでの論文投稿、大人たちの無責任振りが如実に表現されている。ただ単純に子供は善、大人は悪の構図にはなっておらず、主人公の未熟さやいい加減さ、大人の中にも信頼できる人物を配するなど読み応えはあった。
子供の側4人の構図は、主人公の周りに委員長タイプの女の子、がり勉タイプの男の子、番長タイプの男の子とドラえもんパターンだったりするが。

レティノブラストーマ(網膜芽細胞腫)をメインに扱っていて、医学に関する部分は決して容易なものではない。その意味では読み手が大人でも子供でも関係ないと言えるだろう。それをサラッと読ませる腕はさすが。
ストーリーはめでたしめでたしで終わるタイプではない。これは海堂作品に共通するもので、医学の問題と同様、万全の解決は無く、ある種の問題提起的な終わり方となっている。
主人公の造形や子供たちのキャラクターに難を感じるが、読めないというレベルではない。お馴染みの舞台、お馴染みのキャラの登場というサービスもあって楽しめる作品ではある。(☆☆☆☆)




これまでに読んだ海堂尊の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

チーム・バチスタの栄光』(☆☆☆☆☆)
ナイチンゲールの沈黙』(☆☆☆)
ジェネラル・ルージュの凱旋』(☆☆☆☆)
螺鈿迷宮』(☆)
ブラックペアン1988』(☆☆☆☆☆☆)
夢見る黄金地球儀』(☆☆☆)
ジーン・ワルツ』(☆☆☆☆☆☆☆)


『ファイナルファンタジーXI リーダースタイル Ver.091110』

2010年03月12日 01時00分32秒 | FF11
ファイナルファンタジーXI リーダースタイル Ver.091110 (BOOKS for PlayStation2)ファイナルファンタジーXI リーダースタイル Ver.091110 (BOOKS for PlayStation2)
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:2010-03-03


ソフトバンククリエイティブによる「リーダースタイル」シリーズ3冊目。1冊目がVer.061019、2冊目がVer.070828、そして本書がVer.091110になる。2冊目は所有していないので、1冊目と比べながら見ていこう。

総ページ数は320。1冊目の240、2冊目の256(Amazonに掲載されている情報)に比べるとかなりの増ページだ。
目次2ページに続いて「本書を読む前に」として略語・用語の紹介に1ページ。

CHAPTER 1 ミッションを極めろ!(68P)

ミッションの進め方として概要に2ページ。
三国ミッション及び三国共通ミッションに各2ページ。ミッションリストの説明はほぼ変わってないが、バトル攻略は全面的に書き直されている。
ジラート6ページ、プロマシア18ページは1冊目と同じ量。1冊目では完結していなかったアトルガンは10ページ、アルタナはミッション6ページと過去三国連続クエが各国2ページずつ。
追加シナリオは概要として入手できるカギと報酬、オーグメントアイテムの装備品と付与される可能性のあるステータスの表が掲載。各シナリオは3ページずつとなっている。

CHAPTER 2 バトルフィールドを極めろ!(58P)

印章BFに36ページ。準備、作戦に各1ページ、各BFへの行き方に2ページ、その後1ページ2つずつのBF戦が掲載されている。全てにマップと初期配置図が書かれている。作戦のレベルに応じたオススメの食事の表や各種状態異常と対処法は他の場面でも活用できそう。
ENMクエストに14ページ。概要1ページ、準備(行き方やだいじなもの入手法など)に3ページ。その後、1ページ2つずつ紹介されている。マップ・配置図付き。
特殊BFは2ページで、概要1ページと、應龍来来、帝龍降臨の2つを1ページで紹介している。BF内のマップは無し(行き方のマップはあり)。ただ「帝龍降臨」でメイン攻撃役にクラクラ持ちの暗/忍4人以上なんて書いてあるのはどうかと思うが。
皇国軍戦績BFに5ページ。概要、行き方に1ページずつ。各BFは1ページに2つずつ。マップではなく画面写真だが1冊目と同じものを使用している。

CHAPTER 3 特殊バトルフィールドを極めろ!(134P)

デュナミスは18ページ。概要1ページ、基本戦術はジョブ別の獣人名一覧など2ページ、報酬はレリック武器強化データ、レリック防具と打ち直し品データで5ページ。1冊目ではボスディンとザルカバード以外は1ページ2エリアだったが、本書では1ページ1エリアとなっている。マップ付きで、それに記されたポイントを用いて攻略法を述べている。
リンバスは14ページ。概要では各エリアとジョブ別素材の対応表、AF打ち直し後の性能と必要な素材、ホマム・ナシラ装束の性能などに4ページ、エリア攻略は1ページに1ないし2エリア。その内訳は1冊目と同じ(内容もほぼ同じ)。
アサルトは1冊目の段階ではまだ全ては出来ていなかった。34ページ。概要及びシステムに1ページ、交換品に1ページ、クエストとして傭兵ランクアップクエストに2ページ。アサルトは1ページに2つずつ。中尉を除いてマップが掲載されている。ナイズルについては簡素な内容で、攻略3ページに戦利品1ページというもの。最後にミシックウェポンの作り方に1ページ。
サルベージは18ページ。概要、共通戦術に各1ページ、入手した装備の加工に2ページ。各遺構は1ページ2層ずつ、マップ付きで敵配置も書かれている。
エインヘリヤルは8ページ。概要、構造、準備、戦術、報酬までで4ページ、各ウイング1ページずつ、ヴァルグリンドに1ページ。
花鳥風月は10ページ。概要及びシステムで1ページ、Step1~3まで各2ページ(???の位置マップ付き)、Step4は1ページ、パンデモニウム・ウォーデン戦について2ページとなっている。
モブリンズメイズモンガーは14ページ。概要及びアイテム交換で2ページ、各メイズバウチャーについて半ページから2ページを割いている。配置例も掲載。メイズルーン一覧に3ページとなっている。
連合軍戦績NMは9ページ。概要に1ページのほか、1ページ2エリアずつ紹介している。Shredded Labelの位置マップ付き。
獣人将領は7ページ。概要1ページ、各過去獣人拠点2ページずつ。
コラムとして「オーグメントアイテムを狙おう」に1ページ。連合軍戦績NMと「とある契約」で付与される可能性のあるステータス候補がアイテムごとに掲載されている。

CHAPTER 4 クエスト&トリガーNMを極めろ!(43P)

トゥー・リアNMが8ページ。基本情報、システム、準備までで2ページ。8体のトリガードロップNMが出現場所(行き方)のマップ付きで2ページ、四神が1ページ2体ずつ、麒麟1ページ、免罪符について1ページ。
ルモリアNMが6ページ。基本情報、攻略、準備までで2ページ。出現位置や行き方のマップ付きで、1/4ページまたは1/2ページでNMが掲載されている。Absolute Virtueは1ページ。
クエストバトルが8ページ。アシュタリフ号関連クエスト(各半ページ)、とある契約(各1/3ページ)から成る。
フィールド・オブ・ヴァラーは20ページ。概要、サポート、装備品強化までで2ページ、経験値稼ぎではレベルごとの自主訓練メニューとして経験値入手可能上限レベル順にリストされた訓練メニュー表が掲載されている。1ページ2エリアでマップには訓練メニューの討伐モンスターの主な配置が記されている。

戦利品データベース

BF戦、花鳥風月、獣人将領で得られる戦利品のリスト




1冊目に比べて、レベル上げに関する要素はFoVを除いてかなり消えてしまい、各種コンテンツ攻略がより強調されている。1冊目にあったジョブの紹介などもなくなった。狩場情報もない。それでもこの厚さになってしまったわけだが。
レベルキャップ解放というビッグニュースによって、各種コンテンツやレベル上げに新たな変化が訪れようとしている。ただBF戦などは75制限となる可能性も高く、得られる装備品の価値という点を除くとあまり変化しないかもしれない。
価格ほどの価値があるとは思わないが、コンテンツ系を楽しむのに際しては便利な攻略本とは言えるだろう。現状では、多くのコンテンツに参加するプレイヤーとほとんど参加しないプレイヤーとの格差ができていて、その両方にとって中途半端な感じがしないでもないが。


『天地明察』算術の問題

2010年03月11日 21時43分38秒 | 天地明察
感想:『天地明察』」の記事で取り上げた算術の問題が解決したので改めて記事を書く。解決はcobozeさん、Fakirさんの多大なご協力があってが故のことである(というか、私自身は確認するだけだった orz)。改めて両氏に感謝の意を記しておきたい。

冲方丁の小説『天地明察』の20ページ前後に記された問題は以下の通り。

『今、図のごとく釣(高さ)が9寸、股(底辺)が12寸の勾股弦(直角三角形)があり、内部に直径が等しい円を二つ入れる。円の直径はいくらか。』

Ten01_2

答えは30/7寸と書かれていた。また、その答えを導いた計算方法も書かれてはいたが、問題を見たときに考えた解き方とその式とはかけ離れていた。

図をまず以下のものとする。青字は線分の長さを示す。

Ten02

計算方法は、{ 2ab / ( a + b + c ) } ・ { c / ( a + b ) }というものだった。

■面積を分割して解く方法

cobozeさんがOKWave質問の中から見つけてくれた方法。質問は直角三角形ではないが、解法は変わらない。

Ten03

△ABCの面積は ab / 2 = 54

△ABC = △AOC + △COO' + △BCO' + □ABOO' ・・・①

△AOC = br / 2 = 6r
△BCO' = ar / 2 = 9/2・r
□ABOO' = ( 2r + c ) * r / 2 = r^2 + 15/2・r

△COO'はOO'を底辺とすると、△ABCで底辺をABとした場合の高さから r を引いたものが高さとなる。△ABCで底辺をABとした場合の高さを h とすると、ch / 2 が△ABCの面積となる。15/2・h = 54 なので、h =36 / 5 。よって、△COO'の高さは、36 / 5 - r となる。

△COO' = 2r( 36/5 - r ) / 2 =36/5・r - r^2

①に代入すると、

54 = 6r + 9/2・r + r^2 + 15/2・r + 36/5・r - r^2
126/5・r = 54
r = 270/126 = 15/7

求めたのは直径なので、これを2倍した 30/7 で明察となる。

しかし、解法の式とは合致しない。

■相似から解く方法

Fakirさんが示してくれた△ABCと△OO'Zの比から解く方法。

Ten04

OとO'からACとBCに垂線を下ろす。OからBCへの垂線とO'からACへの垂線の交点をZとする。△OO'Zは△ABCと相似である。OZを x 、O'Zを y とする。また、OからACへの垂線とACとの交点をPとし、線分APの長さを p 、O'からBCへの垂線とBCとの交点をQとし、線分BQの長さを q とする。

辺AC = p + x + r = 12
辺BC = q + y + r = 9
辺AB = p + 2r + q = 15 ・・・①

p = 12 - x - r 、q = 9 - y - r として①に代入すると、

( 12 - x - r ) + 2r + ( 9 - y - r ) = 15
x + y =6

相似から、x :y = 9 :12 なので、y = 12/9・x となる。代入すると、

x + 12/9・x = 6
21/9・x = 6
x = 54/21 = 18/7

これより、y =24/7 となる。

三平方の定理より、

x^2 + y^2 = (2r)^2

(18/7)^2 + (24/7)^2 = 4r^2
r^2 = ( 324 + 576 ) / 49 / 4 = 225 / 49 = ( 15 / 7 )^2
r は正なので、r = 15/7 となる。直径は2倍なので30/7で明察。

■辺の長さから解く方法

これは相似から解く方法をシンプルにしたもので、Fakirさんが提示してくれたもの。

Ten04_2

図も相似のものと同じ。x と y を相似から r と a 、b を使って表す。

x :2r = b :c
x = 2r・b/c

y :2r = a :c
y = 2r・a/c

これにより、
辺AC = p + 2r・b/c + r = 12
辺BC = q + 2r・a/c + r = 9

p = 12 - 13/5・r
q = 9 - 11/5・r

辺AB = p + 2r + q = 15 に代入して、

12 - 13/5・r + 2r + 9 - 11/5・r = 15
14/5・r = 6
r =30/14 = 15/7

■三角形の内接円の公式から迫る

Ten05

図のように内接する円が1つの場合、

△ABC = △ABO + △BCO + △ACO

ab / 2 = cr / 2 + ar / 2 + br / 2
ab = ( a+ b + c ) r
r = ab / ( a+ b + c )

これは、解法の式 { 2ab / ( a + b + c ) } ・ { c / ( a + b ) } と全く同じである(直径なので2倍されている)。

ここでcobozeさんの鋭い洞察があった。

Ten06

この黄色い部分を合わすと、

Ten07

片方の円だけを内接する三角形と同じものとなる。

△ABCに一つだけ内接する円を想定し、その半径を R とする。

R :r =c :c - 2r
r = ( c - 2r ) / c ・R
cr = cR - 2rR
( c + 2R ) r = cR
r = cR / ( c + 2R )

Ten08_2

上図より、

c = a - R + b - R = a + b - 2R

これを代入して、

r = cR / ( a + b - 2R + 2R )
r = R ・ c / ( a + b )

R = ab / ( a+ b + c ) より、

r = { ab / ( a+ b + c ) }・{ c / ( a + b) }
2r = { 2ab / ( a+ b + c ) }・{ c / ( a + b) }

となり、式の謎が解けた。

答えは一つでも、その解き方は多種多様。それが数学の面白さでもある。今回の問題では考えるのは人任せになってしまったがそれでも楽しめた(笑)。数学的ひらめきと論理の積み重ねで答えに迫っていく喜びは悩んでこそ得られるものだろう。
小説の本筋ではなかったせいか、中学レベルの問題(?)だったせいか、小説内で詳しい説明がなかったことが結果として楽しみの種となった。そこまで著者の仕掛けだとは考えにくいが、いい問題だったのは確かだ。




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Sanjutsu00

Sanjutsu01

図9
Ten09_3