![]() | 医学のたまご (ミステリーYA!) 価格:¥ 1,365(税込) 発売日:2008-01-17 |
海堂尊による中高生向け小説。横書きで書かれている。いつも通り、桜宮が舞台だが設定は2020年代と未来になっている。
主人公は普通の少年で、彼が中学生でありながら医学部に通う話。ゲーム理論の権威である父親が作った潜在能力試験をすらすらと解いてしまったことで、東城大学医学部の藤田教授の目に留まり中学校と並行して医学部でも勉強することになった。
医学部内の辛辣な人間関係や、研究費目当てでの論文投稿、大人たちの無責任振りが如実に表現されている。ただ単純に子供は善、大人は悪の構図にはなっておらず、主人公の未熟さやいい加減さ、大人の中にも信頼できる人物を配するなど読み応えはあった。
子供の側4人の構図は、主人公の周りに委員長タイプの女の子、がり勉タイプの男の子、番長タイプの男の子とドラえもんパターンだったりするが。
レティノブラストーマ(網膜芽細胞腫)をメインに扱っていて、医学に関する部分は決して容易なものではない。その意味では読み手が大人でも子供でも関係ないと言えるだろう。それをサラッと読ませる腕はさすが。
ストーリーはめでたしめでたしで終わるタイプではない。これは海堂作品に共通するもので、医学の問題と同様、万全の解決は無く、ある種の問題提起的な終わり方となっている。
主人公の造形や子供たちのキャラクターに難を感じるが、読めないというレベルではない。お馴染みの舞台、お馴染みのキャラの登場というサービスもあって楽しめる作品ではある。(☆☆☆☆)
これまでに読んだ海堂尊の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)
『チーム・バチスタの栄光』(☆☆☆☆☆)
『ナイチンゲールの沈黙』(☆☆☆)
『ジェネラル・ルージュの凱旋』(☆☆☆☆)
『螺鈿迷宮』(☆)
『ブラックペアン1988』(☆☆☆☆☆☆)
『夢見る黄金地球儀』(☆☆☆)
『ジーン・ワルツ』(☆☆☆☆☆☆☆)