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感想:『彩雲国物語―緑風は刃のごとく』

2009年09月30日 21時04分19秒 | 彩雲国物語
彩雲国物語―緑風は刃のごとく (角川ビーンズ文庫)彩雲国物語―緑風は刃のごとく (角川ビーンズ文庫)
価格:¥ 500(税込)
発売日:2006-09-30


蘇芳(タンタン)編後編と言ったところ。

これでもかと言うくらい秀麗の甘さを糾弾した話となっている。常識的な立場から指摘する蘇芳や、敵対する者、批判的な者、観察する者、そればかりか身内である黎深や絳攸からさえも彼女の甘さは語られる。この甘さは主人公としての彼女の魅力の一部でもあるわけで、それを須らく否定してしまっては身も蓋もないが、それでもここまで熾烈に書き綴ったことは作者の思い入れ故のことであろう。ライトノベルだから甘くても許される。しかし、甘さを許さない世界で、いかに彼女の魅力を描くかという高い目標を設定している。

これが、政事だ。御史台では甘さも綺麗事も一切許されないと思え。どんなことでもする気があるなら、くるがいい。内偵のために必要なら、人殺しを見逃すことも、不正に荷担することも、家族を切り捨てることも、男と寝ることも命じる。それを黙って実行する覚悟でこい。お前が今もっている正義も理想も全部捨てろ。そんなものでは政事は動かん。正義を口にしたいなら、官吏をやめろ。何かを成し遂げたければ、相応の官位につくまで理想は捨てろ。金と権力の中枢で、そんなことを一人叫んでも無意味なことは、清雅が立証したはずだ。相手を蹴落とさなければお前が落ちる。落ちればお前の存在は無意味だ。女官吏など、やはり役立たずだったと言われるだけだ。官吏ごっこがしたいなら、そこらの子供相手にやるんだな

御史台長官葵皇毅が秀麗に言った台詞。御史台編のスタートはここからとなる。



感想:『胡蝶の失くし物―僕僕先生』

2009年09月29日 18時49分00秒 | 仁木英之
胡蝶の失くし物―僕僕先生胡蝶の失くし物―僕僕先生
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2009-03-19


僕僕と王弁の命を狙う暗殺者劉欣の登場。苗族の内部対立や面縛の道士とストーリー性がアップ。それが面白さに繋がらないところに難がある。
確かに僕僕の活躍の場面は増えた。王弁は微妙だが。物語も糸が絡み合い、それ自体は確かに面白くはなっている。ただその分、本来の僕僕と王弁とのやり取りの楽しさは減り、この作品らしさという意味では魅力が減じたと言えるだろう。

特に本書では劉欣の視点が非常に多い。新たな視点の導入によってこのパーティのユニークさを引き出そうという意図かもしれないが、成功しているとは言い難い。冒頭で彼は幼い皇子を殺害している。単純な因果応報を求めるものではないが、それがカタルシスに繋がることも確かだ。僕僕の優しすぎる性格と相容れがたい劉欣の罪をどう昇華するのか。
大きな物語よりも小さな日常に輝きを見せる作品だけにその良さが失われないように望む。


感想:『彩雲国物語 紅梅は夜に香る』

2009年09月29日 18時46分30秒 | 彩雲国物語
彩雲国物語 紅梅は夜に香る (角川ビーンズ文庫)彩雲国物語 紅梅は夜に香る (角川ビーンズ文庫)
価格:¥ 480(税込)
発売日:2006-08-31


新章開幕。新キャラ蘇芳編といったところか。

冗官として謹慎中の身の秀麗。それでもあれやこれやに首を突っ込み、常に自分のやれることを探す毎日。蘇芳はだらけ過ぎかもしれないが、それでも普通の人の感覚からしても秀麗は働き過ぎであり頑張り過ぎである。傍から見ている分にはいいが、積極的に関わりたくない気持ちは分からないでもない。決して秀麗はそれを他人に押し付けたりはしないけれども。

蘇芳がなかなか掴みづらいキャラクターだったのに対して、明快かつ男前なのが碧幽谷こと歌梨。芸術家ということもあってかかなりぶっ飛んだ造型となっている。ただ秀麗を除いて、香鈴、春姫が男とくっつき出番もなくなり、残るは胡蝶に歌梨とオバサン!ばかりというのもいかがなものか(苦笑。

ストーリー的には反秀麗の門下省の登場を描いた形で、パターンではあるが今後の展開が気になるところだ。


アニメ感想:真マジンガー 衝撃!Z編

2009年09月28日 20時42分39秒 | 2009春アニメ
今川節炸裂ではあったが、それが面白さに繋がったかというとかなり微妙。最大の問題は兜甲児だろう。作品の主人公を担うには周りのキャラクターが個性的過ぎて影が薄くなってしまった。それはヒロイン弓さやかも同様だ。

ストーリーは、くろがね屋のおかみ錦織つばさとあしゅら男爵の二人が中心で、それに絡んでくるのが甲児の祖父十蔵や父剣造、ドクターヘルといった面々。キャラクターの個性としても、くろがね屋の面々を始め甲児よりも目立つキャラクターが多かった。
燃えを担うべき甲児=マジンガーZが存在感の薄い状態ということで、戦いの盛り上がりに欠けてしまった。甲児の物語ではないので、熱さも伝わってこない。
場面場面は演出の面白さでなんとか見ていられるが、ストーリーを通した面白さはなかった。これではマジンガーZが必要だったかどうかも怪しいほどだ。

例えば、同じように多彩なキャラクターが数多く登場した『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』では、大作少年の成長と葛藤という話の軸があった。
小説はストーリー、コミックはキャラクター、アニメは演出が最も重要だと考えてはいるが、それでも演出だけでは楽しみは膨らんでいかないことがよく分かる作品となった。演出を効果的にするための仕掛けが上手く機能していなかった。4番バッターやセンターフォワードばかりを並べてもチームが機能しないように、目を引く演出ばかり並べてもダメだということだ。積み上げていく行為なしに盛り上がることはないのだろう。
出来ることならば、続編を期待したい。

真マジンガー 衝撃!Z編 1 [DVD]真マジンガー 衝撃!Z編 1 [DVD]
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2009-08-25



感想:『町長選挙』

2009年09月27日 15時44分32秒 | 奥田英朗
町長選挙町長選挙
価格:¥ 1,300(税込)
発売日:2006-04


精神科医・伊良部シリーズ第3弾。第1作『イン・ザ・プール』の患者たちは普通の人々、第2作『空中ブランコ』の患者たちはちょっと変わった職業の人々だったのに対して、本書では現実の有名人をなぞった人々が患者となっている(表題作を除く)。彼らのアクの強さのせいか、伊良部はちょっと目立たない印象になってしまった。看護婦のマユミは際立っているが。

「オーナー」の主人公のモデルはナベツネ。球界再編騒動時が舞台。小説ではいい話でオチているが、現実を振り返るといい話で終わらないところがなんともはや。

「アンポンマン」の主人公のモデルはホリエモン。平仮名が思い出せないという症状はなかなかユニーク。ただ話としてはもう一つ面白みに欠けるきらいも。

「カリスマ稼業」は黒木瞳がモデルらしい。読書メーターのコメントで知った。伊良部の影が非常に薄く、オチも落ちてないというか……。マユミの存在感ばかりが目立つ話だった。

「町長選挙」は他の3作とは気色の違う作品。小さな島を二分して争われる町長選挙。買収や利益誘導なんでもありといった有様。研修として訪れていた若い公務員の目を通して町の姿が描かれる。今の日本では珍しいが、実際に存在する光景である。二ヶ月だけ診療所にやって来た伊良部とマユミ。騒ぎが大きくなるにつれて伊良部の存在感が薄れたのが残念。

伊良部を使って何を描くかが問われていて、同じ切り口で書き続けることはできなかったのだろう。ただ本書で見せた切り口は面白くはあったが残念ながら物足りなさも強く残った。伊良部である必然性と、何を見せたいのかという両面で腑に落ちるものがなかった。伊良部という個性は強力であるがゆえに、簡単に縮小再生産できてしまう。それに陥らずになおかつ伊良部を使うのは相当な戦略が必要だ。今回はそれが成功したとは言い難い。それでもチャレンジの姿勢は評価できる。難しくともまだまだ伊良部を引退させずにいて欲しいものだ。


感想:『薄妃の恋』

2009年09月27日 14時56分03秒 | 仁木英之
薄妃の恋―僕僕先生薄妃の恋―僕僕先生
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2008-09


綺譚亭にも書いたが、「僕僕先生」シリーズ3冊目の『胡蝶の失くし物』を2冊目と勘違いして借りてしまい、慌てて借りたのが本書だ。前作よりも連作短編集という構図がはっきりとしていて読みやすくなった。

「感想:『僕僕先生』」では、「小説に対してはどうしても物語性を強く求めてしまうがゆえにやや物足りなく感じたのも事実だ」と書いた。エピソードの羅列がストーリーとあまり結び付かず、気の抜けた炭酸飲料を飲んでいるような感じだった。本書は、ストーリー性を求めず、あくまでエピソードをエピソードとして書こうとしているので楽しむことができた。
日本ファンタジーノベル大賞応募作であった前作はその性質上ストーリー性を無視することができなかったが、既に世界観やキャラクター性、何より書き手の位置付けが定まり、ストーリー性を排除する余裕が生まれたということだろう。
極端にユニークなエピソードはないが、僕僕と王弁のやり取りの妙は楽しく、個性的なキャラクターは味わい深い。


感想:『復活の地』

2009年09月27日 14時40分03秒 | 小川一水
復活の地 1 (ハヤカワ文庫 JA)復活の地 1 (ハヤカワ文庫 JA)
価格:¥ 756(税込)
発売日:2004-06-10
復活の地 2 (ハヤカワ文庫 JA)復活の地 2 (ハヤカワ文庫 JA)
価格:¥ 798(税込)
発売日:2004-08-06
復活の地〈3〉 (ハヤカワ文庫JA)復活の地〈3〉 (ハヤカワ文庫JA)
価格:¥ 840(税込)
発売日:2004-10


エンターテイメントとしては一級品である。最終巻である3巻は、図書館から借りて来て真っ先に手に取った。そして、一気に読了。それだけの面白さは確実にある。
SFとしては、アイデアは面白いがあくまで仕掛けであって本作の面白さの核心ではない。SFとして楽しむというより、あくまでエンターテイメントとして楽しむ作品だろう。
作品の性質上、小松左京との比較という視点が出て来るが、これは酷と言うべきかもしれない。もちろん、キャラクターを描くという意味では優れてはいるのだが。

エンターテイメントは基本的に「嘘」を信じ込ませることから成り立っている。たいていの場合、作り手と受け手のお約束の共通認識が形式化されていて、そこは語られなくても不問にされることとなっている。それ以外の、作品のオリジナルな点に関しては、緻密にリアリティを描いてみたり、もっともらしい説を並べたりすることでカバーする。また、作品の密度や速度によって強引に納得させる手法もある。
本書は後者にあたる。読んでいていろいろと気になる点は満載だったが、密度と速度でとりあえずそれを無視して読み進むことができた。それを成し遂げたのは作者の力量であり、それ以上に勢いの力だろう。

以降、ネタバレを含む。

帝都を見舞った大災害。予想外の出来事に大混乱が生じた。政府は崩壊し、救援活動も想定外の危機にままならない状況となる。主人公セイオは死んだ上官の権力を譲り受けて、この災害に懸命に立ち向かった。その壮絶振りを描いた第1巻は、物語の序に過ぎなかった。
摂政となったスミルの後見を受けたセイオだったが、政府や官僚との軋轢、そして何より被災した人々との対立が目立つようになる。権力は必ず腐敗する。それは汚職や独裁といった形ではなく、民衆との乖離という形で襲ってくるものだ。第2巻を通してどんどんと空回りしていくセイオ。批判の矢面に立ったのは政府の狙いによるものではあるが、明らかにセイオ自身の失態でもあった。
再び襲った災害によって九死に一生を得たセイオ。だが、スミルもセイオも権力を失い、宰相のサイテンが権勢を振るい始める。一方、帝都に再び大災害が起こるという情報が齎される。セイオたちはどうそれを乗り切るのか。列強の星の介入など更なる危機も懸念される中、ついにスミルが動く。

2巻が上手い転機として描かれている。主人公が失敗する姿を描くのは難しい。頑張っていても、頑張っている内容が伴わなければ決して評価されることではない。概して、日本では頑張ることが美徳とされるが、実際はそれは免罪符に過ぎない。
3巻はかなり無理を通した。主人公と対峙するサイテンやグレイハンがいきなり愚か者に成り下がっている。彼らを主人公たちが取り込むくらいのことができれば、傑作と呼べる作品になっていただろう。
大災害は防げなかった。確かに最初の震災に比べれば飛躍的に被害の規模は縮小したが、1万有余の死者をして防げたなどと言えないだろう。本当に主人公たちの選択は正しかったのか。疑問の余地があるというより、はっきりと間違いだったと言いたいほどだが、それでも読ませるだけの勢いが作品にあった。

この作品で一番興味深いイフは、サイテンがスミルに遷都を宣言させたらどうなっただろうということ。再び帝都に災害が襲うことが自明となっている以上、最も確実な救済策は帝都放棄であることは間違いない。少なくとも、人命に代えられる都市の価値は存在しない。スミルにそう迫れば受け入れただろう。皇制廃止をサイテンが望んでいるのは事実だが、それが最大の目標ではない。住民との折衝はそれこそセイオにでもやらせればいい。政府が無策を決め込んでいないというパフォーマンスにもなる。
セイオが目指した草の根の活動はどうしても理想論に見える。他にも、スミルの成長の早さや、人々の皇室への感情の変わり方の早さも納得いくものではない。陸軍兵士の作戦行動中の作戦放棄もどんな理由を繕っても在り得ないものだ。言い出せば数限りなく欠点は出てくる。ストーリー上やむを得ないものもあれば、そうでないものもある。それでも、エンターテイメントとして面白かったから許容の範囲内だ。些事にこだわってつまらなくなるよりも、ご都合主義でも面白ければ問題ない。作者がどこまで自覚しているかこの作品だけでは読み取れないが、自覚の有無に関わらず結果が全てというものだろう。


感想:『Papa told me~私の好きな惑星~』

2009年09月27日 02時55分56秒 | Papa told me
Papa told me~私の好きな惑星~ (クイーンズコミックス)Papa told me~私の好きな惑星~ (クイーンズコミックス)
価格:¥ 440(税込)
発売日:2009-04-17


コミックダッシュ!」で新刊(と言っても今年4月刊行だが)の存在を知り、アマゾンで購入した。
『Papa told me』は私が最も好きなコミックであり、私にとって「ファンタジー」が指し示す世界がこれだ。「現代の東京」が舞台ではあるが、それがリアルかどうかはたいした意味を持たない。確固とした世界があり、そこに暮らす人々がいて、哀しみも喜びも普遍に在り、ひとつひとつは小さいけれど煌きのある物語が語られている。
その物語はお菓子のようで、細部まで丁寧に煌びやかに飾られ、時にひたすら甘く、時に上品な味わいで、時にほろ苦く、洋菓子のシャープさや、焼き菓子の暖かさや、和菓子の風流さを味わうことができる。主食のような力強さや、スナック菓子のような軽やかさには欠けるが、宝物のような輝きが満天の星のように降り注いでいる。

クリスマスを舞台とした「ローズキャンドル」は「マッチ売りの少女」をモチーフにした作品。”私はマッチ売りの少女の夢のこっち側に住んでるんだなあ”と言う知世の言葉はとても切ない。

「コレクションボックス」は知世が可愛い箱を集めるように、信吉が亡き妻の想い出や彼女の印象に近い雰囲気を持ったものを集めずにいられないという話。「熱い」愛というよりも「深い」愛を示すもの。書き下ろし。

「ラウンドテーブル」は信吉の大学時代の仲間で、世界中を放浪している男が訪ねて来る話。信吉と知世の家族の姿に、自分が手に入れなかったものを見る。”いったん選択したらそれに関わるすべてを受け入れなきゃならないけどね”という信吉の言葉は、エピソード51「ピンク ストローハット」で語られた”たぶん我々は何かを得れば何かを失うんだよ””大きなものを得れば失うものも大きい”と同じ理念によるものだ。何かを選ぶということは、選ばなかったものを失うということ。それは一念発起しての選択であろうと、日々の出来事の中の些細な選択であろうと変わらない。その選択を自分で引き受け、他人のせいにしないために、読書や様々な芸術に触れ、人々の心を知り、日常の中から様々な発見をして、自分を磨き上げる必要がある。もちろんそれは決して楽な生き方ではないし、常にそうできるものでもない。それでもなお、そうした生き方を目指すこと、それがこの作品のテーマと言えるだろう。書き下ろし。

「コズミックランチ」は博物館で、未来から現代にやって来たという設定で会話する信吉と知世を描いた8ページの短編。知的な会話遊びが楽しい。

「フラワーハンドル」は、「親子いっしょのケーキ教室」に参加する約束をしたのに照れくさくなってキャンセルした信吉が、代わりにケーキを焼こうとする話。母と娘のケーキ作りというメディアの刷り込みを気にする姿はどう見ても親ばか。参加できなくて落ち込む知世だが、その訳はお得だったのにといういかにも彼女らしい理由だった。書き下ろし。

「エンジェルズアイ」はレトリーバー系の犬たちが人々を癒す姿が描かれる。宇宙のWHOから派遣されたエイリアン説を唱えるとろこは知世の面目躍如。すっかり宇佐美氏のカウンセラーとなっている知世も可愛い。

全国コンクールで金賞に輝いた知世のポスターが盗まれた話を描く「スノースケープ」。悲しい気持ちを振り払うために、宇宙船ごっこをする知世。雪の惑星にたどり着いた彼女にポスターが見つかったという知らせが届く。

「フラワークロック」は転んで膝に大きな青あざを作った知世の話。大騒ぎする信吉に対して、全く平気な顔をしている知世。知世の想像はノーベル賞授賞式にまで達するのだった。書き下ろし。

「ストロベリーキャンドル」は「フラワーハンドル」と同じように知世と信吉の想いの差を描いている。二人で美術館のはしごをして、信吉は自分の好きな作家の作品を知世が気に入ったことに喜ぶが、知世は父が喜びそうな言葉を言ってあげたに過ぎない。知世のこのような態度は、西原理恵子が『毎日かあさん』で娘の他人に自分を良く見せようとする言動を描いているのに通じている。これもまた女の子らしいと言うべきだろう。


北原さんの出番がなかった!といった不満はあるものの、いつものこの世界に触れられてただただ嬉しい限り。現在は不定期連載&書き下ろしという形になっていて、単行本も巻数明記のものとは違う形式になってしまった。次が読めるのがいつになるやらさっぱり不明で、刊行ペースも相当遅いが、それでも終わってしまったわけではないから希望は持てる。
何度も何度も繰り返し読んだ作品ではあるが、最近は読み返していないので、久しぶりに一からちゃんと読みたいという気持ちは募っている。しっかりと感想を書くことができれば尚いい。ただそれだと時間が掛かるので、時間の確保の問題ができてしまうが。機会があれば……。


アニメ感想:咲-Saki- 第24話「夏祭り」

2009年09月26日 21時50分23秒 | 2009春アニメ
ラス前。全国大会前に県予選団体決勝で戦った4校が合同合宿を行うことに。TVアニメ版スラムダンクを思い起こさせる展開。

ストーリー自体は既にエピローグ(団体決勝が終わって以降ずっとそうだとも言える)。ダラダラとエピソードの羅列って感じではあるが、キャラクターが非常に立っているので安心して見ていられる。まあパターン化しすぎではあるのだけれど。エピローグだからベタで十分ってところか。

咲-saki- オリジナルドラマ第1局咲-saki- オリジナルドラマ第1局
価格:¥ 2,500(税込)
発売日:2009-08-26



感想:『しゃばけ』

2009年09月25日 18時19分39秒 | 本と雑誌
しゃばけしゃばけ
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2001-12


日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。江戸時代を舞台としたミステリ色の強いファンタジー。シリーズの第1作。

主人公は病弱な大店の若旦那。とても身体が弱く、周囲からはとかく心配される。心配されすぎて出来ることもままならないが、実際すぐに寝込んでしまうので度が過ぎた心配も決して杞憂と呼べなかったりする。そんな主人公は妖たちにも囲まれて暮らしている。中でも力を持つ犬神・白沢は手代として店で働きながら主人公の世話もしている。
この二名、決して主人公の忠実な下僕ではない。本編中に何度も書かれているように、妖たちは人間の感覚とは少しズレている。この二名もそれが窺える。彼らにとって主人公さえ助かれば他の人間のことはどうでもよかったりする。他の妖たちのことも同様だ。
主人公の一太郎にしてみれば、信頼できるが一方で融通の利かない彼らの存在は時として鬱陶しかったりする。両親や店の者たちの過剰な愛情も重い負担に感じることもある。前半では彼の世間知らずな面や状況判断の悪さが気になったが、後半には真っ当な人間としての判断を見ることができた。

手代二名の活躍の場があまりなかったり、敵役に道理が感じられなかったりと、小説の完成度はあまり高くは感じなかった。キャラクターの個性も類稀とまでは言えないだろう。ストーリーの運びは悪くない。デビュー作だしもう少し読んでから判断すべきだろう。時代物としての世界観の構築は悪くないだけに、もう少しこなれてくれば楽しめる作品となるかもしれない。