昨年度より集計方法が変わった『このライトノベルがすごい!』。HPのウェブアンケートが増え、人気投票になっているとの問題意識から変更されたということだが、人気投票の何が悪いという考え方もあるわけで。
そこで、昨年に引き続き、1票の格差を是正して再集計してみた。協力者50人、HPアンケート1363人、モニター103人ということなので、それぞれの得点が掲載している60位までの作品を、HPアンケート分は1363/50倍、モニターは103/50倍で再計算したランキングが以下となる。
■1位 ソードアート・オンライン
総合1位/HP 125.09(1)/協力者 57.61(5)/モニター 108(1)/再集計 3690.04
著者:川原礫/イラスト:abec/電撃文庫
1巻発売:2009/4【既刊10巻】
[TVアニメ] 2012年7月(2クール)
[コミック] アインクラッド/作画:中村貯子(電撃コミックス)全2巻,そーどあーと☆おんらいん。/作画:南十字星(電撃コミックスEX)既刊1巻など
[2011年度] 2位(総合1位)
[2010年度] 4位
[2009年度] 14位
女性キャラ 2位:アスナ,7位:シノン
男性キャラ 1位:キリト
イラストレーター 1位:abec
『このライトノベルがすごい!』史上初の連覇ではあるが、昨年度集計方法が変更されていなければ「とある魔術の禁書目録」シリーズの連覇が達成された可能性が高いため、ラッキーな名誉とも言える。ただ人気は圧倒的で、今年度に関してはぶっちぎりの1位獲得だ。
■2位 「とある魔術の禁書目録」シリーズ
総合2位/HP 84.08(2)/協力者 6.52(45)/モニター 71(3)/再集計 2444.8
著者:鎌池和馬/イラスト:はいむらきよたか/電撃文庫
1巻発売:2004/4【22巻+「新約」既刊5巻】
[TVアニメ] 1期2008年10月(2クール),2期2010年10月(2クール)
[コミック] 作画:近木野中哉(ガンガンコミックス)既刊10巻,とある科学の超電磁砲/作画:冬川基(電撃コミックス)既刊8巻
[2011年度] 1位(総合2位)
[2010年度] 1位
[2009年度] 9位
女性キャラ 1位:御坂美琴,12位:インデックス,26位:打ち止め(ラストオーダー)
男性キャラ 2位:上条当麻,3位:一方通行(アクセラレータ),28位:浜面仕上
イラストレーター 3位:はいむらきよたか
御坂美琴の四連覇達成などまだまだ勢いは衰えなていない。1位との差は広がっているが、3位との差も大きい。ただ刊行ペースが落ちてきているのは気になるところか。
■3位 俺の妹がこんなに可愛いわけがない
総合5位/HP 40.28(4)/協力者 23.91(21)/モニター 43(6)/再集計 1210.52
著者:伏見つかさ/イラスト:かんざきひろ/電撃文庫
1巻発売:2008/8【既刊11巻】
[TVアニメ] 1期2010年10月,2期2013年4月予定
[コミック] 作画:いけださくら(電撃コミックス)既刊4巻,俺の後輩がこんなに可愛いわけがない/作画:いけださくら(電撃コミックス)既刊2巻
[2011年度] 7位(総合11位)
[2010年度] 8位
[2009年度] 12位
女性キャラ 6位:黒猫,9位:高坂桐乃,15位:新垣あやせ
男性キャラ 5位:高坂京介
イラストレーター 9位:かんざきひろ
■4位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
総合6位/HP 40.79(3)/協力者 44.57(9)/モニター 9(24)/再集計 1175.05
著者:渡航/イラスト:ぽんかん⑧/ガガガ文庫
1巻発売:2011/3【既刊6巻】
[TVアニメ] 時期未定だがアニメ化決定
[コミック] 作画:佳月玲茅(『月刊ビッグガンガン』連載中)
[2011年度] 12位(総合15位)
女性キャラ 8位:雪ノ下雪乃,21位:由比ヶ浜由衣
男性キャラ 4位:比企谷八幡,24位:戸塚彩加
イラストレーター 6位:ぽんかん⑧
■5位 「ココロコネクト」シリーズ
総合15位/HP 38.88(5)/協力者 0(48)/モニター 32(9)/再集計 1125.79
著者:庵田定夏/イラスト:白身魚/ファミ通文庫
1巻発売:2010/1【既刊9巻】
[TVアニメ] 2012年7月
[コミック] 作画:CUTEG(ファミ通クリアコミックス)既刊3巻
[2011年度] 10位(総合12位)
[2010年度] 14位
女性キャラ 3位:稲葉姫子,29位:永瀬伊織
男性キャラ 17位:八重樫太一
イラストレーター 4位:白身魚
■6位 アクセル・ワールド
総合11位/HP 37.34(6)/協力者 0(48)/モニター 40(7)/再集計 1100.29
著者:川原礫/イラスト:HIMA/電撃文庫
1巻発売:2009/2【既刊12巻】
[TVアニメ] 2012年4月(2クール)
[コミック] 作画:合鴨ひろゆき(電撃コミックス)既刊3巻,あくちぇる・わーるど。/作画:あかりりゅりゅ羽(電撃コミックスEX)既刊2巻など
[2011年度] 11位(総合21位)
[2010年度] 24位
[2009年度] 26位
女性キャラ 4位:黒雪姫
男性キャラ 19位:有田春雪
イラストレーター 29位:HIMA
■7位 僕は友達が少ない
総合17位/HP 34.48(7)/協力者 9.78(41)/モニター 23(15)/再集計 997.08
著者:平坂読/イラスト:ブリキ/MF文庫J
1巻発売:2009/8【既刊8巻】
[TVアニメ] 1期2011年10月,2期2013年1月予定
[コミック] 作画:いたち(MFコミックスアライブ)既刊6巻,僕は友達が少ない+/作画:田口囁一(ジャンプコミックスSQ)全2巻など
[2011年度] 3位(総合6位)
[2010年度] 2位
[2009年度] 23位
女性キャラ 5位:柏崎星奈,10位:三日月夜空,25位:志熊理科
男性キャラ 15位:羽瀬川小鷹
イラストレーター 2位:ブリキ
■8位 魔法科高校の劣等生
総合12位/HP 33.24(8)/協力者 10.87(37)/モニター 31(10)/再集計 980.85
著者:佐島勤/イラスト:石田可奈/電撃文庫
1巻発売:2011/7【既刊7巻】
[コミック] 作画:きたうみつな(Gファンタジーコミックススーパー)既刊1巻など
[2011年度] 27位(総合29位)
女性キャラ 20位:司波深雪
男性キャラ 7位:司波達也
イラストレーター 18位:石田可奈
■9位 バカとテストと召喚獣
総合4位/HP 22.67(12)/協力者 7.61(44)/モニター 86(2)/再集計 802.75
著者:井上堅二/イラスト:葉賀ユイ/ファミ通文庫
1巻発売:2007/1【既刊15巻】
[TVアニメ] 1期2010年1月,2期2011年7月
[コミック] 作画:まったくモー助・夢唄(角川コミックス・エース)既刊7巻,バカとテストと召喚獣 SPINOUT! それが僕らの日常。/作画:namo(ファミ通クリアコミックス)既刊6巻
[2011年度] 6位(総合5位)
[2010年度] 3位
[2009年度] 1位
女性キャラ 27位:木下秀吉
男性キャラ 13位:吉井明久,18位:木下秀吉
イラストレーター 26位:葉賀ユイ
■10位 ベン・トー
総合14位/HP 25.46(9)/協力者 38.04(13)/モニター 8(26)/再集計 748.56
著者:アサウラ/イラスト:柴乃櫂人/集英社スーパーダッシュ文庫
1巻発売:2008/2【既刊12巻】
[TVアニメ] 2011年10月
[コミック] ベン・トー zero Road to witch/作画:柴乃櫂人(スーパーダッシュコミックス)全1巻など
[2011年度] 5位(総合3位)
[2010年度] 5位
[2009年度] 8位
男性キャラ 8位:佐藤洋
イラストレーター 27位:柴乃櫂人
■11位 GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン
総合10位/HP 23.99(11)/協力者 22.83(23)/モニター 31(10)/再集計 740.66
著者:川上稔/イラスト:さとやす/電撃文庫
1巻発売:2008/9【既刊12巻】
[TVアニメ] 1期2011年10月,2期2012年7月
[コミック] 作画:武中英雄(電撃コミックス)既刊2巻など
[2011年度] 30位(総合26位)
[2010年度] 23位
[2009年度] 17位
女性キャラ 29位:ネイト・ミトツダイラ
男性キャラ 10位:葵・トーリ,25位:長谷川昴
イラストレーター 20位:さとやす(TINKY)
■12位 ヒカルが地球にいたころ…
総合22位/HP 24.28(10)/協力者 23.91(21)/モニター 3(40)/再集計 691.96
著者:野村美月/イラスト:竹岡美穂/ファミ通文庫
1巻発売:2011/5【既刊5巻】
[コミック] “葵"ヒカルが地球にいたころ……/作画:CHuN(ガンガンコミックスONLINE)既刊1巻
[2011年度] 29位(総合33位)
女性キャラ 17位:式部帆夏
男性キャラ 12位:赤城是光
イラストレーター 7位:竹岡美穂
■13位 「物語」シリーズ
総合41位/HP 22.52(13)/協力者 0(48)/モニター 7(29)/再集計 628.32
著者:西尾維新/イラスト:VOFAN/講談社BOX
 | 憑物語 価格:¥ 1,365(税込) 発売日:2012-09-27 |
1巻発売:2006/11【既刊13巻】
[TVアニメ] 化物語/2009年7月,偽物語/2012年1月
[2011年度] 4位(総合34位)
[2010年度] 12位
[2009年度] 2位
女性キャラ 18位:戦場ヶ原ひたぎ
男性キャラ 6位:阿良々木暦
イラストレーター 34位:VOFAN
■14位 デュラララ!!
総合7位/HP 17.02(16)/協力者 0(48)/モニター 69(4)/再集計 606.11
著者:成田良悟/イラスト:ヤスダスズヒト/電撃文庫
1巻発売:2004/4【既刊11巻】
[TVアニメ] 2010年1月(2クール)
[コミック] 作画:茶鳥木明代(Gファンタジーコミックススーパー)全4巻,罪歌編/作画:茶鳥木明代(Gファンタジーコミックススーパー)既刊2巻
[2011年度] 14位(総合30位)
[2010年度] 9位
[2009年度] 27位
男性キャラ 20位:折原臨也,27位:平和島静雄
イラストレーター 17位:ヤスダスズヒト
■15位 「生徒会の一存」シリーズ
総合19位/HP 18.78(15)/協力者 6.52(45)/モニター 35(8)/再集計 590.56
著者:葵せきな/イラスト:狗神煌/富士見ファンタジア文庫
1巻発売:2008/1【既刊17巻】
[TVアニメ] 1期2009年10月,2期2013年1月予定
[コミック] 作画:10mo(角川コミックス・ドラゴンJr.)既刊7巻など
[2011年度] 15位(総合32位)
[2010年度] 7位
[2009年度] 5位
男性キャラ 9位:杉崎鍵
イラストレーター 23位:狗神煌
■16位 シュガーシスター1/2
総合39位/HP 20.91(14)/協力者 9.78(41)/モニター 0(46)/再集計 579.79
著者:鷹野新/イラスト:シロウ/電撃文庫
1巻発売:2012/4【既刊2巻】
女性キャラ 11位:比売守ユツキ
イラストレーター 32位:シロウ
■17位 人類は衰退しました
総合25位/HP 15.63(18)/協力者 10.87(37)/モニター 24(14)/再集計 486.38
著者:田中ロミオ/イラスト:戸部淑/ガガガ文庫
1巻発売:2007/5【既刊7巻】
[TVアニメ] 2012年7月
[コミック] ようせい、しますか?/作画:吉祥寺笑(MFコミックスアライブ)既刊2巻,のんびりした報告/作画:見富拓哉(IKKI COMIX)全1巻
[2009年度] 55位
女性キャラ 13位:わたし
■18位 デート・ア・ライブ
総合40位/HP 16.65(17)/協力者 0(48)/モニター 14(20)/再集計 482.72
著者:橘公司/イラスト:つなこ/富士見ファンタジア文庫
1巻発売:2011/3【既刊5巻】
[コミック] 作画:ringo(角川コミックス・エース)既刊1巻,デート・ア・ストライク/作画:鬼八頭かかし(ドラゴンコミックスエイジ)既刊1巻
イラストレーター 21位:つなこ
■19位 六花の勇者
総合3位/HP 12.91(25)/協力者 106.52(1)/モニター 2(43)/再集計 462.57
著者:山形石雄/イラスト:宮城/集英社スーパーダッシュ文庫
1巻発売:2011/8【既刊2巻】
[コミック] 作画:戸流ケイ(スーパーダッシュコミックス)既刊1巻
[2011年度] 42位(総合31位)
イラストレーター 36位:宮城
■20位 緋弾のアリア
総合32位/HP 14.89(19)/協力者 0(48)/モニター 27(13)/再集計 461.52
著者:赤松中学/イラスト:こぶいち/MF文庫J
1巻発売:2008/8【既刊13巻】
[TVアニメ] 2011年4月
[コミック] 作画:こよかよしの(MFコミックスアライブ)既刊6巻,AA/作画:橘書画子(ヤングガンガンコミックス)既刊4巻など
[2011年度] 19位(総合40位)
[2010年度] 26位
[2009年度] 28位
男性キャラ 16位:遠山キンジ
イラストレーター 10位:こぶいち
■21位 問題児たちが異世界から来るそうですよ?
総合23位/HP 14.45(22)/協力者 19.57(28)/モニター 17(19)/再集計 448.5
著者:竜ノ湖太郎/イラスト:天之有/角川スニーカー文庫
1巻発売:2011/4【既刊5巻】
[TVアニメ] 2013年1月予定
[コミック] 作画:七桃りお(角川コミックス・エース)1巻発売予定など
女性キャラ 27位:黒ウサギ
男性キャラ 11位:逆廻十六夜
イラストレーター 56位:天之有
■22位 変態王子と笑わない猫。
総合52位/HP 14.67(20)/協力者 0(48)/モニター 9(24)/再集計 418.44
著者:さがら総/イラスト:カントク/MF文庫J
1巻発売:2010/10【既刊5巻】
[TVアニメ] 時期未定だがアニメ化決定
[コミック] 作画:お米軒(MFコミックスアライブ)既刊3巻
[2011年度] 13位(総合17位)
女性キャラ 16位:筒隠月子
男性キャラ 22位:横寺陽人
イラストレーター 5位:カントク
■23位 さくら荘のペットな彼女
総合55位/HP 14.53(21)/協力者 0(48)/モニター 8(26)/再集計 412.57
著者:鴨志田一/イラスト:溝口ケージ/電撃文庫
1巻発売:2010/1【既刊10巻】
[TVアニメ] 2012年10月
[コミック] 作画:草野ほうき(電撃コミックス)既刊3巻
[2010年度] 16位
女性キャラ 23位:椎名ましろ
イラストレーター 30位:溝口ケージ
■24位 のうりん
総合20位/HP 13.43(23)/協力者 36.96(14)/モニター 2(43)/再集計 407.18
著者:白鳥士郎/イラスト:切符/GA文庫
 |
10月9日必着と。
危ない危ない。8月頃に一度チェックしたのに、そのあとは完全に失念。危うく投票できなくなるところだった。
ただここ1年あまりライトノベルを読んでいないし(特に新作は)、2012年版からインターネット投票のランキングへの比率が低下したので、心持ち期待感が薄れているのは否めないかも。
2012年版の記事でも書いたけど、私自身はランキングは単純に人気投票でいいと思っている。専門家の評価の高い作品は別枠で扱えば十分なはず。2013年版を買うとしても、インターネット投票の結果を知りたいからになると思う。
『ゲート1 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり <接触編>』を読んだ。現代の東京に突然ゲートが現れ、そこから大量のモンスターを含む軍勢が人々を襲った。それを退けた上で、自衛隊がゲートの先の異世界へと侵攻していく物語。
設定的に「迷宮街クロニクル」に近い。こちらは舞台が京都で、ゲートの先にあったのはダンジョンだったという設定。自衛隊ではコストがかかり過ぎるため志願者を募り探索に当たらせる。現代版ウィザードリィで群像劇を描くための設定だが、よく練られていた。
「ゲート」の場合、自衛隊をはじめとする現代パートの設定は著者が元自衛官ということもあり、ツッコミ所もあるものの比較的受け入れやすい内容だったが、問題は異世界の部分だ。
「ゲート」を読んで自覚したことだが、ハイ・ファンタジーのように異世界丸ごとを創作している場合はそれほどでもないが、現実世界と異世界をリンクさせているような作品だと異世界の世界構造への不満を強く感じてしまう。
これは高く評価されているような作品でも変わらず、「十二国記」に対しても世界観に関しては納得していない部分が多々ある。「ソードアート・オンライン」もWeb版を読み通せなかった原因はその辺にある。
「ゲート」の場合、異世界はあまりにもお約束の世界観になっている。何らかの狙いを持って意図的にそういう世界観なのだとしたら構わないのだが、少なくとも1巻を読んだだけではそうした意図は感じられない。
現実世界の描写は非常にステレオタイプなものではあるが、現実ゆえの世界の強度を保っているのに対して、異世界はとても薄っぺらに感じる。専制的な皇帝や無力な村人たちといったファンタジー像は確かにゲームなどでお馴染みではある。
だが、ゲーム的なお約束の世界をそのまま描かれても読むに耐えなくなってしまう。
例えば、盗賊。ファンタジーではお馴染みでも現実的に考えれば盗賊だけで食っていくのは難しい。現代社会なら盗みだけで生計を立てられるかもしれないが、文明レベルが低い世界では生活を維持するのは大変だ。
食糧と言っても保存が利くものばかりではない。アジトや山や森の中であれば輸送も大仕事だ。ある程度の集団になれば、戦闘員以外のメンバーも必要となる。
歴史上、海賊や山賊は存在するが、それらは略奪行為がメインなのではなく、交易を始め様々な仕事をしており、略奪はその中の一部に過ぎない。
また農業を始めとする一次産業従事者は体力があり、彼らが武装することで兵隊となった。日本では秀吉の兵農分離によって分けられたが、江戸期においても村の戦闘力は決して低いものではなかった(農具は武器となりうるし、害獣駆除のため猟銃も所有していた)。
「ゲート」の中では村民は領主から守られない存在として描かれているが、魔法で食べ物が無尽蔵に取得できるのならいざ知らず、そうでないのなら村からの徴税の安定確保は領主の最大の関心事である。
詳しくはないが、中世ヨーロッパでは領主と教会という異なる二系列の統治があった。『狼と香辛料』はその辺りをうまく描いている。
『スレイヤーズ!』のようなハイ・ファンタジーでは細かなツッコミを入れだしたらキリがない。特に魔法を扱う場合、その社会的影響力は計り知れず、細部まで気にしていたら物語を描いていられないだろう。
「ゲート」などもライトノベルなのだから細部に目をつぶるのが当たり前と言えば当たり前である。ただ繰り返しになるが現実世界の描写があるため、どうしても気になってしまうのだ。
「ゲート」内でもチラッと触れられている『七人の侍』の歴史設定は正しくないと言えるだろう。そのことが作品の質を貶めるものではない。映画史に残る傑作であることは間違いない。それでも、いや、それだからこそああいったことが歴史的にあったと人々に広まることは良くないのではないか。
お約束だから。それを分かった上で、ツッコミたい。例えば長命のエルフの村が古代龍の棲息圏にあるとかどうなのよ?
ご都合主義まで批判したりはしないし、細部に目をつむって読むべき作品だとは理解しているけど、ところどころに見られる著者のメッセージに信頼感が皆無となってしまうのはどうしようもない。
『まおゆう』はWeb版をチラッと見ただけでちょっと合わないかなと思ってまだ読んでいないが、『ログ・ホライズン』はどうやら世界の構造が物語の軸になりそうなので今後の展開をとても楽しみにしている。大地人とモンスターと冒険者の間のパワーバランスにやや疑問を感じていたりもするが、さすがに世界の構造に関してはよく考えられてはいる。「ゲート」にこのレベルを期待するのは間違っているけれど、間違いだと分かっていてももう少しどうにかならないのかと思うのは致し方ない。
昨年9月ごろにいろんなブログ等で「ライトノベル32選」とかそんなのが流行っていたらしい。半年遅れで知るくらいの情弱なわけだが、まあ折角だし乗ってみようと。
古い作品まで含めれば32作品を挙げることもできるかもしれないが、あんまり古い作品を入れても仕方ないし、最近はそこまでの気力もない。だから、10選と思ってだらだらと考えたら今度は10に収まり切らない。
所詮適当に生きているのだから、ここも適当でいいやということで12選に(ぉぃ
ライトノベル語るのならせめてこれくらいは読んでおけや!って割と乱暴に。或いは、たいして読んでないのに偉そうにあえて。
★フルメタル・パニック!
エンターテイメントの王道。とはいえ、キャラクター等は古いタイプで、ゼロ年代的ではない。でも、完結までエンターテイメントを貫き通した貴重な作品。
★ソードアート・オンライン
エンターテイメントの王道ゼロ年代版。キャラクター造型やハーレム的配置なんかはまさに現代的(笑)。ライトノベルのエンターテイメントの最先端と言っていいだろう。
★涼宮ハルヒの憂鬱
ライトノベルというジャンルの代表作。ゼロ年代のサブカルチャーとしても絶対に押さえておくべき作品。ゼロ年代的主人公像、独特の文体、SF性など語るべきことは山ほどある。
★戦う司書
ライトノベルはシリーズ化が前提であり、シリーズとしての構成を見た場合この作品ほど終盤の展開のダイナミックさを感じた作品を他に知らない。ただシリーズ前半に難があるのは欠点。
★図書館戦争
ライトノベル、ラブコメ、SF、恋愛小説、こうしたジャンルの境界線上に打ち立てた優れたエンターテイメント。ジャンルは所詮読者を楽しませるためにあるものだと伝わってくる。
★化物語
オタク向けに特化したエンターテイメント。こちらもジャンルの枠を超えている。ストーリー性よりもキャラクターや文体、細部を重視している点はゼロ年代らしさである。
★僕は友達が少ない
更にストーリー性を薄め、キャラクターを中心とした会話劇がメインとなっている。オタクネタと残念系ヒロインでいま最も人気のあるライトノベルと言える。
★GJ部
四コマ小説を目指し、一話4ページでぬるい会話劇を楽しむ作品。「空気系」の構成要素を満たしているわけではないが、それに近いものを小説で生み出している。
★羽月莉音の帝国
現在最も熱いライトノベル。シリーズ序盤はクセが強いが、徐々に密度と速度が増大し、ストーリーのスケールアップに心地よさを感じるようになる。
★砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
ライトノベルはこの作品を生み出したがゆえにその存在の価値があったとさえ思う作品。少女小説として、またこの時代の小説として、読み継ぐべき作品。
★マリア様がみてる
少女小説として高い完成度を誇る作品ではあるが、様々な読まれ方を許すものでもある。最近の「百合系」ブームの直近のルーツと言えるだろう。
★彩雲国物語
バトルヒロインの系譜を引き継ぐ少女小説。戦うといっても官僚としての仕事ぶりとしてだけど。ゼロ年代の少女小説の頂点のひとつ。
以下は単なる好み。すべてゲーム系という特徴があるのが私らしさw
☆迷宮街クロニクル
ウィザードリィを現代京都を舞台に移した作品。群像劇であり、非常に数多い登場人物を誇る。そして、よく死ぬ。
☆ログ・ホライズン
MMORPG内に閉じ込められたという設定は『ソードアート・オンライン』に類する。死の危険がないためぬるく感じられるが、だからこその面白さを作り出している。
☆高機動幻想ガンパレード・マーチ(榊版)
元はゲームのノヴェライズだがそれを越えて続く架空戦記もの。原作の良さを残しながらオリジナルの展開やキャラクターも魅力的。死なないのが不満と言えば不満。
|