別冊 図書館戦争〈1〉 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2008-04 |
「図書館戦争」シリーズ最終巻『図書館革命』で郁と堂上の二人が交際を始めて、エピローグで結婚しているその間を描いた番外編。メインストーリーは完結しているので、恋愛要素がこれまで以上に前面に出ている。こっ恥ずかしいノリではあるが、恋愛の王道という感じでもある。少女マンガっぽいとも言える。
そのためシリーズのどこに楽しみを見出していたかによってこの別冊に対する評価も変わってきそうだ。元からキャラクターメインの青春小説風に楽しんでいたので、こういう展開は私にとっては望むところ。相変わらず素直にただ楽しむ、それだけで満足できるシリーズ。残り1冊となってしまったことだけが切なかったりするのだが。
付記。
書こうと思って忘れていたこと。どうでもいい話なのだけれど。巻頭の人物紹介、中澤毬江に大学一回生とある。昔、講談社学術文庫の『生きている日本語』という本を読んで初めてこの「一回生」という言い方がほぼ関西地方に限定された方言であることを知った。急に廃れたということがなければ、今も関西では大学生の場合「一回生、二回生、……」という言い回しが一般的だろう。少なくとも、くだけた会話において「大学一年生」と言うのには違和感がある。
有川浩は高知県出身だが、著者略歴によると関西暮らしが長いようだ。図書館戦争の舞台は東京なので、一回生という表記は誤りと言える。でも、これが方言だなんて、指摘されないとまず気付かない。詳しくは分からないが戦前頃より京都大学あたりから広まった表現で、関西では一般的に普及してしまったがゆえにそれが当たり前だと思い込んでしまっている。
方言に限らず、誤った使い方で覚えている言葉などけっこう気付きにくい。出版物の場合、校正によって誤用は訂正されているはずだが、見落としが決してないわけではない。近年は関西の方言が若者言葉として全国に広まるパターンもあるが、「一回生」はそれに当たらないだろう。
なんにせよ言葉は難しい。当ブログでも相当の誤記誤用があると思われる。気にしていては書けないから、そこはもう諦めるしかないんだけれどね。
参考:NHK 気になることば