レインツリーの国 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:2006-09-28 |
まさに直球勝負。
本書は『図書館内乱』におけるエピソードから書かれた作品である。そのエピソードでは、聴覚障害者の恋愛を描いた本「レインツリーの国」を聴覚障害のあるキャラクターに薦めた図書館員が、メディア良化委員会に拘束され厳しい取調べを受ける。その本を現実に書いたものが本書ということになる。
聴覚障害者の女性と健聴者の男性との交際。捻りもなにもなく、まっすぐにそれを描いた。キレイゴトで済まさない鋭い踏み込みを持って。その痛々しさを緩和するために、男性キャラクターの関西弁が有効に使われている。時にきつく、しかし、感情豊かな表現を持った言葉が、救いとして機能している。これが標準語だったなら、読み進めるのが苦痛になっていたかもしれない。文章としての関西弁はくどく感じられてしまう。それは本書でも免れてはいない。それでも必要だったということだ。
物語のきっかけはブログの書評。ひとつだけ言いたいことが。
感想のメールの題が「はじめまして」だと数多あるスパムメールと一緒に読まずに削除しちゃうよ!
それはともかく。
「ひとみ」じゃなくともブログの記事に感想をもらえればとてもとても嬉しい。うちみたいな毒舌成分豊富なブログだとハッピーエンディングを迎えるような展開は望むべくもないけれど(苦笑)。
本書が『図書館内乱』に登場した本だったように、本書にも本が登場する。「フェアリーゲーム」。参考文献から、笹本祐一の「妖精作戦」シリーズが元ネタだと分かる。惜しむらくは、それを読んだことがないということ。これまで縁が無く笹本祐一の作品は読んだことがない。それを読んでいれば更に楽しめたかもしれないという点は心残りにも思う。(☆☆☆☆☆☆)
これまでに読んだ有川浩の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)
『図書館戦争』(☆☆☆☆☆☆☆)
『図書館内乱』(☆☆☆☆☆☆☆)
『図書館危機』(☆☆☆☆☆☆)
『図書館革命』(☆☆☆☆☆☆☆☆)
『塩の街』(☆☆☆)
『別冊 図書館戦争I』(☆☆☆☆☆☆☆)
『空の中』(☆☆☆☆☆)
『クジラの彼』(☆☆☆☆)
『ラブコメ今昔』(☆☆☆☆)
『阪急電車』(☆☆☆☆☆☆☆)
『海の底』(☆☆☆☆)
『別冊 図書館戦争II』(☆☆☆☆☆☆)