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感想:『レインツリーの国』

2009年11月27日 18時25分43秒 | 有川浩
レインツリーの国レインツリーの国
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2006-09-28


まさに直球勝負。
本書は『図書館内乱』におけるエピソードから書かれた作品である。そのエピソードでは、聴覚障害者の恋愛を描いた本「レインツリーの国」を聴覚障害のあるキャラクターに薦めた図書館員が、メディア良化委員会に拘束され厳しい取調べを受ける。その本を現実に書いたものが本書ということになる。

聴覚障害者の女性と健聴者の男性との交際。捻りもなにもなく、まっすぐにそれを描いた。キレイゴトで済まさない鋭い踏み込みを持って。その痛々しさを緩和するために、男性キャラクターの関西弁が有効に使われている。時にきつく、しかし、感情豊かな表現を持った言葉が、救いとして機能している。これが標準語だったなら、読み進めるのが苦痛になっていたかもしれない。文章としての関西弁はくどく感じられてしまう。それは本書でも免れてはいない。それでも必要だったということだ。

物語のきっかけはブログの書評。ひとつだけ言いたいことが。
感想のメールの題が「はじめまして」だと数多あるスパムメールと一緒に読まずに削除しちゃうよ!

それはともかく。
「ひとみ」じゃなくともブログの記事に感想をもらえればとてもとても嬉しい。うちみたいな毒舌成分豊富なブログだとハッピーエンディングを迎えるような展開は望むべくもないけれど(苦笑)。

本書が『図書館内乱』に登場した本だったように、本書にも本が登場する。「フェアリーゲーム」。参考文献から、笹本祐一の「妖精作戦」シリーズが元ネタだと分かる。惜しむらくは、それを読んだことがないということ。これまで縁が無く笹本祐一の作品は読んだことがない。それを読んでいれば更に楽しめたかもしれないという点は心残りにも思う。(☆☆☆☆☆☆)




これまでに読んだ有川浩の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

図書館戦争』(☆☆☆☆☆☆☆)
図書館内乱』(☆☆☆☆☆☆☆)
図書館危機』(☆☆☆☆☆☆)
図書館革命』(☆☆☆☆☆☆☆☆)
塩の街』(☆☆☆)
別冊 図書館戦争I』(☆☆☆☆☆☆☆)
空の中』(☆☆☆☆☆)
クジラの彼』(☆☆☆☆)
ラブコメ今昔』(☆☆☆☆)
阪急電車』(☆☆☆☆☆☆☆)
海の底』(☆☆☆☆)
別冊 図書館戦争II』(☆☆☆☆☆☆)


感想:『刀語 第二話 斬刀・鈍』

2009年11月27日 18時16分33秒 | 本と雑誌
刀語  第二話  斬刀・鈍 (講談社BOX)刀語 第二話 斬刀・鈍 (講談社BOX)
価格:¥ 1,155(税込)
発売日:2007-02-02


TVアニメの1話分という印象が残る。毎月1冊ずつ刊行ということで、意図的に狙ったものだろう。
意図的な狙いとしては、もう一つ目に付くことがある。他の作品と異なる文体である。過剰にして冗長な饒舌、独特の言語感覚を示す言い回し、会話のみならず地の文でもユニークな比喩が次々と繰り出される。そんな西尾維新らしい文体は本書では影を潜めている。
この第2話で気になったのが、メタ的な視点がところどころで使われていたこと。1話から「現代風に言えば」のような使われ方はあったと思うが、2話では著者によるツッコミが増えている気がする。このシリーズ用の新たな文体の構築を試行錯誤しているのかもしれない。

内容に関しては、キャラクターの内面描写を削ぎ落とし、テンポ良くストーリーを展開していて読みやすい。ストーリー自体の面白さはさほどではないが、バトルに関するケレンの妙味に著者らしさがあって楽しめる。伏線を張るのではなく、著者の言葉として先の内容に言及するのはどうかと思うが。(☆☆☆☆)




これまでに読んだ西尾維新の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い』(☆☆☆☆☆)
新本格魔法少女りすか』(☆☆☆☆☆☆)
新本格魔法少女 りすか2』(☆☆☆☆)
クビシメロマンチスト―人間失格・零崎人識』(☆)
クビツリハイスクール―戯言遣いの弟子』(☆☆☆☆☆)
サイコロジカル〈上〉兎吊木垓輔の戯言殺し』(☆☆☆)
サイコロジカル〈下〉曳かれ者の小唄』(☆☆☆)
ヒトクイマジカル―殺戮奇術の匂宮兄妹』(☆☆)
ネコソギラジカル(上) 十三階段』(☆☆)
ネコソギラジカル(中) 赤き征裁VS.橙なる種』(☆☆)
ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い』(☆)
新本格魔法少女りすか3』(☆☆)
零崎双識の人間試験』(☆☆☆☆)
零崎軋識の人間ノック』(☆)
化物語(上)』(☆☆☆☆☆)
化物語(下)』(☆☆☆☆☆☆)
刀語 第一話 絶刀・鉋』(☆☆☆)