地球移動作戦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) 価格:¥ 1,995(税込) 発売日:2009-09 |
くそっ!面白いじゃねえかっ!!!
なんて、はしたない言葉が最後のページを読み終えた瞬間に喉から出てしまった。
地球に接近する巨大な星。人類の危機。これ以上ないくらいオーソドックスな物語。
もちろん、細部は様々なSF的仕掛けが繰り広げられている。対象となる星は人間には手を出せない。SFのお約束タキオン粒子とそれを利用した未来予知。『アイの物語』でも描かれていた人工知能と人類との共存を巡るやり取り。
ベタな話を手垢の付いた設定で描いただけのはずなのに。
キャラクターだってお世辞にも深みがあるとは言えない。いかにもなキャラクターは多いし、計画への反対者が典型に陥ってるきらいはある。主人公の魅波がこの物語を背負っているとまでは言えないだろう。
それでも、それなのに、悲しいかな、クライマックスで心を揺り動かされた。
『さよならピアノソナタ』の感想にも書いたように、小説で音楽を表現することは非常に困難だ。本書の冒頭にも歌が描かれているが、パッとしなかった。
それが。
「突撃行軍歌ガンパレード・マーチ」以来かも、と思わず感じてしまった。曲なんてなくても、詩が脳を揺さぶり歌が耳に届く。そんなことは。
細かな不満は全て吹っ飛ばされた。読んでる途中ではいろいろとあったのに。それが、エンターテイメントの真髄なのかもしれない。文句なしに、ただ面白かったと読み終えて思えれば他には何もいらない。
それでも、一つだけ。
結城ぴあのはどこ行った?w
伏線と思っていたのに、回収されることもなく終わってしまった。別作品で語られるのだろうか。それだけが最後までちょっと心残りだった。ホント些細な事なのだけれど。(☆☆☆☆☆☆☆)
これまでに読んだ山本弘の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)
『アイの物語』(☆☆☆☆☆)