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感想:『地球移動作戦』

2009年12月02日 00時58分22秒 | 山本弘
地球移動作戦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)地球移動作戦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2009-09


くそっ!面白いじゃねえかっ!!!

なんて、はしたない言葉が最後のページを読み終えた瞬間に喉から出てしまった。

地球に接近する巨大な星。人類の危機。これ以上ないくらいオーソドックスな物語。
もちろん、細部は様々なSF的仕掛けが繰り広げられている。対象となる星は人間には手を出せない。SFのお約束タキオン粒子とそれを利用した未来予知。『アイの物語』でも描かれていた人工知能と人類との共存を巡るやり取り。
ベタな話を手垢の付いた設定で描いただけのはずなのに。

キャラクターだってお世辞にも深みがあるとは言えない。いかにもなキャラクターは多いし、計画への反対者が典型に陥ってるきらいはある。主人公の魅波がこの物語を背負っているとまでは言えないだろう。
それでも、それなのに、悲しいかな、クライマックスで心を揺り動かされた。

『さよならピアノソナタ』の感想にも書いたように、小説で音楽を表現することは非常に困難だ。本書の冒頭にも歌が描かれているが、パッとしなかった。
それが。
「突撃行軍歌ガンパレード・マーチ」以来かも、と思わず感じてしまった。曲なんてなくても、詩が脳を揺さぶり歌が耳に届く。そんなことは。

細かな不満は全て吹っ飛ばされた。読んでる途中ではいろいろとあったのに。それが、エンターテイメントの真髄なのかもしれない。文句なしに、ただ面白かったと読み終えて思えれば他には何もいらない。

それでも、一つだけ。

結城ぴあのはどこ行った?w

伏線と思っていたのに、回収されることもなく終わってしまった。別作品で語られるのだろうか。それだけが最後までちょっと心残りだった。ホント些細な事なのだけれど。(☆☆☆☆☆☆☆)




これまでに読んだ山本弘の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

アイの物語』(☆☆☆☆☆)