奇想庵@goo

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感想:『狼と香辛料XIV』

2010年03月22日 21時41分07秒 | 本と雑誌
狼と香辛料〈14〉 (電撃文庫)狼と香辛料〈14〉 (電撃文庫)
価格:¥ 599(税込)
発売日:2010-02-10


ストーリー的にはレノスの街に戻って来て出発するまでにも届かない。正直、些細なことに1冊丸々費やしただけという印象。
確かにホロとロレンスのやり取りがこのシリーズの妙味なのだが、どうでもいいことをグダグダしているだけで、面白いとは感じられなかった。
ロレンスが自分の気持ちに向き合わない。それに対して行商人だからというエクスキューズを使い過ぎる。その同じ状況をこのところずっと持続し、変化に乏しい。今作のような巻き込まれ型の事件だと更にそんな印象を強くしてしまう。

これまでにも感想で書いてきたが、二人のやり取りをメインにするのならつまらない展開を削って短編のような作りでもいいと思う。もちろんそれでストーリーを展開させるのは難しいが、できないものでもないだろう。今の展開ではあまりにも針小棒大な感じがあって、読むのが辛い。
コルやエルサもあまりストーリーに絡んでこないし、特にエルサは登場させた意図が一面的すぎるように感じられた。シリーズ全体として序盤にあった広がっていく予感が中盤以降完全に失速し、本当に些細な感情のやり取りだけになってしまった。13巻のノーラが主人公の中編のように面白い話が描ける作家なのだから、もっと頑張って欲しい。これで満足するファンが少なくないことが作者の成長を阻んでいるのだとしたら残念だ。(☆☆☆)




これまでに読んだ支倉凍砂の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

『狼と香辛料』(☆☆☆☆)
『狼と香辛料II』(☆☆☆☆)
狼と香辛料III』(☆☆☆☆☆)
狼と香辛料IV』(☆☆☆☆☆☆)
狼と香辛料V』(☆☆☆)
狼と香辛料VI』(☆☆☆☆☆)
狼と香辛料VII Side Colores』(☆☆☆☆)
狼と香辛料VIII 対立の町〈上〉』(☆☆☆☆☆)
狼と香辛料IX 対立の町〈下〉』(☆☆☆☆)
狼と香辛料X』(☆☆☆☆☆)
狼と香辛料XI Side Colors II』(☆☆)
狼と香辛料XII』(☆☆☆)
狼と香辛料XIII Side Colors III』(☆☆☆☆☆☆)


感想:『とらドラ!2』

2010年03月22日 21時13分54秒 | 本と雑誌
とらドラ〈2!〉 (電撃文庫)とらドラ〈2!〉 (電撃文庫)
価格:¥ 578(税込)
発売日:2006-05-25


1巻が青春小説風の葛藤や煩悶を抱いていたのに対して、この2巻は少女マンガ風。ヒロイン大河とこの巻から登場の亜美の内面がメインに描かれ、語り手たる主人公竜児は蚊帳の外に置かれている感じに。下手な内面描写を入れないことがこの巻では成功しているとは思うが。

ところで、竜児は家事万能の主人公。この系譜は『Fate/stay night』の衛宮士郎や『天地無用!』の柾木天地が挙げられる。他にもいそうな感じだけれどパッと浮かばない。ハーレム系主人公だと自身で家事をこなすのは一つの類型かと思うが。(☆☆☆☆☆)




これまでに読んだ竹宮ゆゆこの本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

とらドラ!』(☆☆☆☆☆☆)


感想:『武士道セブンティーン』

2010年03月22日 19時39分39秒 | 本と雑誌
武士道セブンティーン武士道セブンティーン
価格:¥ 1,550(税込)
発売日:2008-07


『武士道シックスティーン』の続編。前作は続編を想定して書かれたものではなかったので、エピローグ部分へ至るところからスタート。

早苗は転校し、東松よりも更に剣道の実績のある学校へ。そこは勝利至上主義的な剣道が行われ、そんな剣道に違和感を覚える。
対する香織は剣道部への仲間意識を持てるようになり、すっかりチームに馴染んだ。しかし、早苗の抜けた穴は大きく団体戦では結果を残せない。後輩とのやり取りなどが主体だったが、後半にいくつかの大きな事件に遭遇する。

前作でしっかりと確立した二人の主人公のキャラクター性がさらに生き生きと描かれ、それだけで十分に楽しめる作品になっている。離れ離れとなったことで序盤はやや話の展開の振れ幅が大きく(二人の主人公視点が章ごとに入れ替わるので)、どうかなと思うところもあったがそれが終盤上手く収束していく様は見事だった。

今回新キャラとして登場したレナ。彼女は剣道をスポーツとして捕らえ、精神性を排除し、練習などもそうした考えで行っている。前作での香織と早苗の対立が、勝敗にこだわるか自身の目指す形にこだわるかだったという目標レベルのものだったのに対して、今作では剣道そのものの考え方、武道かスポーツかという面での対立に及んでいる。
ストーリー展開の上でスポーツとしての剣道には否定的な描かれ方となっているが、それには大いに不満が残った。レナや福岡南の部活方針の問題点はスポーツ的に剣道を捉えているから起きたものとは言い難いのに精神性の無さを元凶のように描いている。もちろん、ストーリーの構成上そうした必然性があったのは理解できるし、それで作品的には面白くなっているので作品の評価とはほとんど関係ないが。
ただスポーツの意義や精神性との両立のあり方をどれだけの読者が汲んでくれるかというと頼りない気がする。完結巻となる『武士道エイティーン』で安直な落とし方だとちょっとがっかりしそうだが。

そんな欠点をものともせず、グイグイと惹きつける魅力満載。次巻を早く読みたいと思わせる出来。次も期待に違わぬ作品であって欲しいものだ。(☆☆☆☆☆☆☆)




これまでに読んだ誉田哲也の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

武士道シックスティーン』(☆☆☆☆☆☆)