![]() | シュガーダーク 埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫) 価格:¥ 580(税込) 発売日:2009-11-28 |
角川書店のスニーカー大賞大賞受賞作。過去、大賞は吉田直、安井健太郎、谷川流の3名が受賞し、新井円侍は4人目となる。『涼宮ハルヒの憂鬱』以来6年ぶりの大賞受賞作。
偶然だが同時に読んでいた西尾維新『傷物語』と非常にシンクロしていると感じた。
主人公は上官殺しの冤罪により終身刑となった少年。囚人として墓地の墓掘りの仕事に着かされる。彼は軍隊で塹壕掘りをしていた。そこで彼は化物の死骸を見る。そこは人と化物の共同墓地だった。
彼はまた墓守りの少女とも出会った。自らの脱走を手伝ってもらうという口実で彼女を籠絡しようとする。夜間だけ墓地を歩く少女。彼女は化物を狩る存在だった。
少女は人でありながら化物でもある存在。吸血鬼のように太陽の光を浴びると死ぬが、それ以外では不死だった。化物に体を切り刻まれ、その苦痛に喘ぎながらも、彼女の血を浴びせることで化物の動きを封じることが出来る。彼女の前任者はその境遇に耐え切れず日に焼かれて死んだ。
『傷物語』も吸血鬼の話であり、吸血鬼曰く彼らの大半が日に焼かれ自殺することが死因だという。
典型的なボーイミーツガールの物語。主人公の少年は化物の存在を知り、少女の真実を知り、己の気持ちを知る。ゼロ年代的主人公ではなく、古いタイプの正統派の少年だ。ひねりはないが素直に読める。
新鮮さは感じない。文章も特に上手いわけではない。キャラクターもそれほど傑出しているわけではない。謎も安直な部類。ストーリーは真っ直ぐ。大賞受賞作という割にインパクトに欠ける。ただ読後感は悪くない。しかし、続編を読みたいと思わせるものがあるかと問われれば疑問だ。できれば、別の物語を書いて欲しい。登場人物が少ない作品だったのでキャラクターの引き出しがどれだけあるのかも心配だし、この世界観で話を広げてもそう斬新な何かが期待しにくい。悪くはないが突出したものが感じられず、評価しにくい作品と感じただけに、なぜ大賞なのか謎に感じる作品となった。(☆☆☆☆)