彩雲国物語―白虹は天をめざす (角川ビーンズ文庫) 価格:¥ 540(税込) 発売日:2007-08-31 |
本編としては12冊目。短編集も加えると14冊目。
秀麗や劉輝が藍州へと向かう話だが、事前事後が丹念に描かれる。戦いや一つの出来事で全てが解決したりするのではなく、積み上げられるやり取りが少しずつ物事を動かしていく。それを証明するかのような一冊となっている。
愛さえあれば幸せになれる。そんな言葉とは対極に位置する世界。これが少女小説として描かれることにある種の驚きを覚える。少年向けライトノベルがいまだ幻想にあることを思えば尚更だ。
頑張ることが大切なのではなく、結果が全てとも言えるそんな価値観もまた、同じように感じられる。秀麗の甘さに対する厳しい評価や、秀麗自身の自覚。もちろん甘さの全てを否定するわけではないが、彼女はそれを乗り越え、著者もそれを乗り越えるのが当然だと見なしている。
甘さを糾弾するコメントを述べることの多い私が、時に砂糖を加えたくなるほどの作品。私自身の甘さが浮かび上がる。それでも劉輝には……。
本書の影の主役とも言えるタンタン君が卒業。登場時の不人気から大飛躍を遂げた彼。凄いキャラクターだらけの中で、数少ない「普通」の部類だったことが存在感を増したわけだが、地位に見合う行動や責任を果たす人々を見ているとそこまで地位に汲々としようとは思わないのも当然かもしれない。