或日祖母が私の手をひいて砂利を敷きつめた、大変に広いところへ伴れて行った。
黒い蟻のような群衆が真中辺に円陣になって固まっている。
その中では何かやっているらしいが、祖母は私の手をひいてその円陣の廻りをうろうろ廻っているばかりだ。
すると親切そうな兵隊が来て、二人を一番前列に連れ出してくれた。
そうしてひそめた声で(そこに居られるのが陛下です)と言った。
一間位離れて、猫背の老いた軍人がいた。それは明治天皇だった。
明治天皇は、胸の厚みの辺りの、釦と釦との間が少したるんでいて、そこに内容が詰っているような、愛情があるような、大変に懐しい人間像を、私に感じさせた。
それは観兵式だったと、後でわかった。
『記憶の繪』より。
日本の少女が当時自分が生きていた時代(明治~昭和)の実体験に残る記憶がこうやって綴られてるのは貴重だなぁ、って思いながら読めるんだよね。
純粋な感想でしょ、何も混じりけのない。
仮に空想が入っていたとしても、写生してる感じ。
ちなみに俳句は空想とか妄想が入っちゃいかんのだよね、一応。
写生でなくちゃいけないのだ。
黒い蟻のような群衆が真中辺に円陣になって固まっている。
その中では何かやっているらしいが、祖母は私の手をひいてその円陣の廻りをうろうろ廻っているばかりだ。
すると親切そうな兵隊が来て、二人を一番前列に連れ出してくれた。
そうしてひそめた声で(そこに居られるのが陛下です)と言った。
一間位離れて、猫背の老いた軍人がいた。それは明治天皇だった。
明治天皇は、胸の厚みの辺りの、釦と釦との間が少したるんでいて、そこに内容が詰っているような、愛情があるような、大変に懐しい人間像を、私に感じさせた。
それは観兵式だったと、後でわかった。
『記憶の繪』より。
日本の少女が当時自分が生きていた時代(明治~昭和)の実体験に残る記憶がこうやって綴られてるのは貴重だなぁ、って思いながら読めるんだよね。
純粋な感想でしょ、何も混じりけのない。
仮に空想が入っていたとしても、写生してる感じ。
ちなみに俳句は空想とか妄想が入っちゃいかんのだよね、一応。
写生でなくちゃいけないのだ。