人生アラカルト

どうせ過ごすなら楽しくね。

まあ、まあ、よう来てくれはった

2013-11-09 21:13:47 | 不思議な話

忙しそうだったので、名乗らずカウンター席にyさんと

私は座った。テーブルをはさんで調理場。客席はカウ

ンターに10席くらい、廊下をはさんで畳にテーブル席

が4つ。以前とまったく変わらない。以前は奥の調理場

で、おやじさんが、油ものを揚げていたが、その姿はな

かった。

生ビールを二つ注文。私は口をつけただけ。しばらく

yさんとおしゃべりしたあと、雑炊を頂く。これが滅法お

いしかった。今日は私がお祝いさせてもらう、とyさん

は私に勘定をさせない。

私は席を立つと、初めて「ykです」と言った。

それを聞くやいなや、女将は急いで私に寄って来て「や

っぱり、ykさんやった。そうやないかな、思うてました」

と手を握った。

9年ぶりの再会であった。

 

妻が亡くなった時、女将はマンションまで来てくれて、お

参りするやいなや、骨壷を胸に抱くと「しんどかったん?」

よしよし、と語りかけた。そして、「いっしょにご飯食べた時、

うなぎの骨がささって、お医者さんに取ってともろうた、いう

てはった」と思い出を話した。

当時は店でも、おばあちゃんが亡くなって不幸があった。

二人は仲がよかった。だから、妻が亡くなった時は、女将は

大層悲しんだ。

 

「娘さんはどないしたはる? 今もお一人で?」

店の玄関口で質問責めにあう。

「今度、また来るし」

「ぜひ、来てください」と見送る「くいしんぼ」の親子。

「行く所が増えましたな」とyさんぽつり。