第1回 / 第2回 / 第3回 / 第4回 / 第5回 / 第6回 / 第7回 / 第8回
第9回 / 第10回 / 第11回 / 第12回 / 第13回 / 第14回 / 第15回
---
中谷のチョークが8の上で止まり、大きく○を書いた。
「はっちばんで~す」
「8番ってことは」
「おっ、染田じゃん」
「染田涼子嬢に決定です」
「決定って」
〈なんだ、この気持ち。すごく、いやだ。悔しい〉
隣の教室
「うぅっ」
(こんなの…)
胸のリボンをギュッと掴み、苦しむかおりん。
元の教室
「あ~、染田か~。俺も、一時期気になってたからな」
「今日から、染田のこと好きになれよ」
「んでだよ」
「いいから、そうしとけ」
「やだよ」
〈俺、吉川さんのこと、好きなのか〉
隣の教室
「う、う」
(もう、ダメなのか)
かおりんが胸を押さえたまま、動かない。
「ねえ、保健室行った方がいいんじゃない?」
山元が心配顔で覗き込む。
「たぶん、すぐ、大丈夫だから」
(なんか、どっか、浮いてきそう)
元の教室
「もう、決まったことなんだから」
「勝手に決めたことだろ」
「いや、意外と運命ってやつかもよ」
「運命なんて、あるわけねえよ」
「いや、あるんだって」
「そうそう、あるある」
「んなん、お前らにだけだって。俺にはないもん」
「ま~た~、照れんなよ」
「別っ、照れてねえって」
「もう好きになっちゃったか、染田のこと」
「んなわけねえだろ」
「もう、この、お似合いさん」
「勝手に決め付けんなよ」
キィンコォンカァンコォン、キィンコォンカァンコォン
「お、やば、授業始まるじゃん」
「あ、次、実験じゃん」
中谷と守田が、各々の席の元へと、小走り、散らばっていった。
「おい、待っ、消してけよ」
男が、銀色の隅にあった黒板消しを持ちながら、そう言った。
「自分のことだろ」
「そうそう」
「んだよ」
男は、右手に持った黒板消しで、黒い制服の袖に降りしきるチョークの粉を気にしながら、アミダを消し続けた。
そして、9を消そうとしたとき、カミキリムシのため息声で呟いた。
「吉川さん、」
〈でも、工藤さん。より、好き…、好きだ〉
隣の教室
「くぁ」
僕は見た
夢を見た
浮いていた
タータンチェックのパジャマを着て浮いていた
一瞬間、かおりんが青白く輝いた。
「かおりん」
山元が、かおりんの体を揺さ振った。
「あ、山元、どうしたの」
顔を上げたかおりんは、『かおりん』のままであった。
「え、どうしたって、体、大丈夫なの?」
山元が、かおりんの左肩に右手を軽く置き、そう言った。
「全然、なんともないけど」
かおりんは少し口を尖らせ、不思議の瞳で山元を見つめた。
「ならいいんだけど…、ほんと、大丈夫?」
山元は少し左に頭を傾け、見開きの瞳でかおりんを見つめた。
「うん」
かおりんは、口元の笑みを浮かべた。
もう、一人。
---
「神(god)」
全てを創れる力が欲しい
全てを壊せる力が欲しい
そのふたつを持ってる奴がいるらしい
“神”って呼ばれてる奴なんだ
俺達も奴に創られたんだって
俺達も奴に壊されるんだって
ふざけるんじゃねえつ~の
俺達が奴を創ったんだ
俺達が奴を壊せるんだ
ってことは
俺達は全てを創れる奴を創ったんだぜ
俺達は全てを壊せる奴を壊せるんだぜ
だからさ
全てを創れなくても
全てを壊せなくても
それで十分じゃん
な、そうだろ
---
第16回あとがき
[当時]
今回は、ようやく“かおりん”編が、
途中、ノリで付け足された部分もありましたけど、
ほぼ当初の予定通りの展開で終わり、
少しホッとした回でもあります。
あまりに最後があっけな過ぎると思う方が多いと思いますが、
本当の、中学生の恋愛事なんて、あんなものです。
これから読む方が減るとは思いますが、
もうしばらく、お付き合いください。
きっと、もっと読みたくなくなると思います。
[現在]
当時のあとがき通り、今回で第1部完という感じです。
よくこれで終わりにしましたね、この人は。
では、第2部はどうなるのか、
と次回を期待する方もいるかもしれませんが、
実は、この回までしか書いていません。
正しくは第17回は書いたんですけど、
方向性が定まらず、2つの話が出来てしまったんです。
で、そのままお蔵入り、と。
この先は8年経った私が受け継いで書かなくてはいけません。
いつになるのかわかりませんが、
ご希望があれば早まるかもしれません。
とりあえず今は、どうぞおやすみなさい。
第9回 / 第10回 / 第11回 / 第12回 / 第13回 / 第14回 / 第15回
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中谷のチョークが8の上で止まり、大きく○を書いた。
「はっちばんで~す」
「8番ってことは」
「おっ、染田じゃん」
「染田涼子嬢に決定です」
「決定って」
〈なんだ、この気持ち。すごく、いやだ。悔しい〉
隣の教室
「うぅっ」
(こんなの…)
胸のリボンをギュッと掴み、苦しむかおりん。
元の教室
「あ~、染田か~。俺も、一時期気になってたからな」
「今日から、染田のこと好きになれよ」
「んでだよ」
「いいから、そうしとけ」
「やだよ」
〈俺、吉川さんのこと、好きなのか〉
隣の教室
「う、う」
(もう、ダメなのか)
かおりんが胸を押さえたまま、動かない。
「ねえ、保健室行った方がいいんじゃない?」
山元が心配顔で覗き込む。
「たぶん、すぐ、大丈夫だから」
(なんか、どっか、浮いてきそう)
元の教室
「もう、決まったことなんだから」
「勝手に決めたことだろ」
「いや、意外と運命ってやつかもよ」
「運命なんて、あるわけねえよ」
「いや、あるんだって」
「そうそう、あるある」
「んなん、お前らにだけだって。俺にはないもん」
「ま~た~、照れんなよ」
「別っ、照れてねえって」
「もう好きになっちゃったか、染田のこと」
「んなわけねえだろ」
「もう、この、お似合いさん」
「勝手に決め付けんなよ」
キィンコォンカァンコォン、キィンコォンカァンコォン
「お、やば、授業始まるじゃん」
「あ、次、実験じゃん」
中谷と守田が、各々の席の元へと、小走り、散らばっていった。
「おい、待っ、消してけよ」
男が、銀色の隅にあった黒板消しを持ちながら、そう言った。
「自分のことだろ」
「そうそう」
「んだよ」
男は、右手に持った黒板消しで、黒い制服の袖に降りしきるチョークの粉を気にしながら、アミダを消し続けた。
そして、9を消そうとしたとき、カミキリムシのため息声で呟いた。
「吉川さん、」
〈でも、工藤さん。より、好き…、好きだ〉
隣の教室
「くぁ」
僕は見た
夢を見た
浮いていた
タータンチェックのパジャマを着て浮いていた
一瞬間、かおりんが青白く輝いた。
「かおりん」
山元が、かおりんの体を揺さ振った。
「あ、山元、どうしたの」
顔を上げたかおりんは、『かおりん』のままであった。
「え、どうしたって、体、大丈夫なの?」
山元が、かおりんの左肩に右手を軽く置き、そう言った。
「全然、なんともないけど」
かおりんは少し口を尖らせ、不思議の瞳で山元を見つめた。
「ならいいんだけど…、ほんと、大丈夫?」
山元は少し左に頭を傾け、見開きの瞳でかおりんを見つめた。
「うん」
かおりんは、口元の笑みを浮かべた。
もう、一人。
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「神(god)」
全てを創れる力が欲しい
全てを壊せる力が欲しい
そのふたつを持ってる奴がいるらしい
“神”って呼ばれてる奴なんだ
俺達も奴に創られたんだって
俺達も奴に壊されるんだって
ふざけるんじゃねえつ~の
俺達が奴を創ったんだ
俺達が奴を壊せるんだ
ってことは
俺達は全てを創れる奴を創ったんだぜ
俺達は全てを壊せる奴を壊せるんだぜ
だからさ
全てを創れなくても
全てを壊せなくても
それで十分じゃん
な、そうだろ
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第16回あとがき
[当時]
今回は、ようやく“かおりん”編が、
途中、ノリで付け足された部分もありましたけど、
ほぼ当初の予定通りの展開で終わり、
少しホッとした回でもあります。
あまりに最後があっけな過ぎると思う方が多いと思いますが、
本当の、中学生の恋愛事なんて、あんなものです。
これから読む方が減るとは思いますが、
もうしばらく、お付き合いください。
きっと、もっと読みたくなくなると思います。
[現在]
当時のあとがき通り、今回で第1部完という感じです。
よくこれで終わりにしましたね、この人は。
では、第2部はどうなるのか、
と次回を期待する方もいるかもしれませんが、
実は、この回までしか書いていません。
正しくは第17回は書いたんですけど、
方向性が定まらず、2つの話が出来てしまったんです。
で、そのままお蔵入り、と。
この先は8年経った私が受け継いで書かなくてはいけません。
いつになるのかわかりませんが、
ご希望があれば早まるかもしれません。
とりあえず今は、どうぞおやすみなさい。
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