Scarving 1979 : Always Look on the Bright Side of Life

1979年生な視点でちょっと明るく世の中を見てみようかと思います。

「犬(dog)」第7回

2004年06月12日 12時04分52秒 | 物語
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 一つの体育館に、二つの男女がそれぞれ集まった。


 二つの男。

「女子、また卓球だぜ。いいな~」

 前で体育座りしている小原。

「バレーなんかやりたかねえよな」

「でも、他んとこが試合してる時、休めるからいいじゃん」

「まあ、そうだけど、練習がうざいんだよな」



 二つの女。

「かおりん、今日もダブルス、組もうね」

 前で体育座りしている山元。

「うん」

(僕かなりうまいよ。ついてこれるかな?)

「ねえ、かおりん。返事、今しちゃいなよ」

 斜め前で体育座りしている天川。

「え?」

(向こうに手紙の男子がいるってことか?)

「チャンスだよ、ねえ」

「い、いや、まだいいよ」

(僕が決めちゃまずいって)

「ねえ、返事ってなに?」

「あ、あの体育の出席の返事だよ」

(ばれたら、めんどくさくなりそうだからな)

「天川さん、ほんと?」

「え、うん。早く返事すれば、早く卓球始められるじゃない、だからね」

「あ、確かにそうだね」

「ね、そうでしょ」

(は~、頭弱くてよかった)



 二つの男の一つの試合。

「だ~、疲れた~。練習つまんねえよ」

 あぐらの小原。

「ああ、最悪だったな」

 同じくあぐらの“窓側の後ろから二番目の男子”。

「あ~あ、やっぱ卓球いいよな~、ちくしょ~」

「典子と一緒にいたいからだろ」

 足を放り出して座ってる“窓側の後ろから三番目の席の男”。

「あ、そうか。それでおまえ、スパイクの練習んとき女子の方にばっか打ってたのか」

「ちげえよ、偶然だよ」

「いいじゃん、別に。みんな知ってんだから」

「なんだよ」

「早く告白しちゃえばいいじゃんよ」

「そうだよ。だって、こいつなんか、工藤にラブレター10枚も書いたんだぜ」

「え、あの、隣のクラスの?」

「そうそう、あいつ」

「おい、変なこと言うなよ」

「ほんとに?」

「いや、嘘だよ、嘘。俺がそんな事するはずないだろ」

「ほんとだよ、ほんと。さっき、こいつ、天川と話してて注意されたじゃん。あん時このこと話してたんだよ」

「うわ、やば。ラブレター10枚って、おまえ」

「やってないって、ほんとに、も~。あ、そういや、守田。おまえ安部が好きなんだよな」

「え、そうなん?」

「だって、さっき着替えん時、言ってたもん。結婚したいくらい好きだって」

「おい、それ、おまえじゃねえかよ。嘘つくなよ」

「そうか、やっぱ安部が好きだったのか」

「だから、違うって。こいつが勝手に言ってるだけだって」

「照れなくてもいいって、事実なんだから。あ、せっかくだから、おまえ、女子んとこ行って、卓球、ダブルス組んでくればいいじゃん」

「待てよ、それは、小原だろ」

「馬鹿言うなよ。なんで俺がそんなことしなきゃいけねえんだよ。それに、できるわけねえじゃねえかよ」

「でも、できたらやりたいんだろ」

「ま、できたら、やりたいな。あ、でも、卓球をって意味だぞ。典子とって意味じゃねえぞ」

「だから、もういいって。おまえが典子のこと好きなのと、中谷が良子のこと好きなのって、みんな知ってんだから」

「そうそう、でもさ、中谷って、あいつ、毎日のように好きな奴が変わってんじゃねえの?こないだまで朋子だって言ってたじゃん。あいつって、女なら誰でもいいんじゃねえのか?」

「そういやそうだな。典子一筋の小原君、と比べちゃ悪かったな」

「も~、うるさいよ。安部一筋の守田君」

「おい、待てよ、それ違うって。10枚君の嘘だって」

「10枚君って、おまえ、なんだよそれ」

「工藤にラブレター10枚渡した君って具体的に言うよりはいいだろ?」

「なんだよ、この~、・・・あべべのくせに」

「え、あべべ?」

「そ、阿部好きだから、あべべ。いいでしょ」

「なんだよそれ」

「あ、いいじゃん、あべべ。これからよろしくね~、あべべ~」

「うるせ~な。の、のりお」

「のりおってなんだよ」

「典子好きの正雄君の略で、のりお。どうこれ?」

「あべべ、いいよそれ。な、のりお」

「おい、10枚君。あべべってのはやめろよ」

「おまえも、10枚君はなしだろ。ま、でも、あべべはアリだよな、のりお」

「ちょっと待ってよ、のりおは違うよ、10枚君も、あべべもアリだけど」

「違わねえよ、のりおと10枚君だけは、アリだ」

「いや、のりおとあべべだけだって」



―もう、いいですよね。どうせ、こいつらのあだ名は、“窓側の後ろから二番目の男子”は“10枚君”、小原は“のりお”、守田は“あべべ”になるんでしょうからね―



 音楽室の片隅で、コントラバスを持つかおりん。

(まいったな、こんなの使い方わかんないよ)

「かおりん」

 聞いたことのない女の子の声が、うしろ髪をひいた。

「ん、なに?」

(だれ?)

 振り向くとそこには、写真で見た裕子がフルートを持って立っていた。

「あ、裕子」

(って、呼び捨てした方がいいんだよな。それにしてもかわいいな~。写真よりもいいよ。うあ~、なんか一目ぼれって感じ。こんなの初めてだ。僕って、ロリコンか?でも、中2と高2なら別に、大丈夫だよな。ああ、こんな子、彼女にしたいな~。ま、せっかく女になって、気兼ねなく話せるんだから、仲良くなっちゃおうっと)

「…じゃない。ねえ、聞いてる?」

「え、いや、ごめん。ちょっと考えごとしてて」

(裕子のことをね)

「そう、で、今回の曲って、うまくできる?」

「あ、まだ、よく」

(使い方わからない、なんて言えないよな)

「だよね。私もまだ、うまくできないんだ」

「今回の曲、難しいからね」

(わかんないけど、適当に話しあわせておこう)

「そうそう、特に、あの盛り上がりの、ブラスとティンパニーが入ってくるところが難しいんだよね」

「本当、あれは人間業じゃないよね」

(ちょっと言い過ぎか?)

「でも、練習すれば、きっとできるようになるんだよ」

「そうだね」

(僕も練習しなきゃまずいのかな?)

「じゃ、私、今日塾あるから、先帰るね」

「うん、それじゃ。また明日」

(え、もう帰るの?もっと話したいのにな)

「また、明日ね」

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『言葉』

言 葉 は 軽 く

息 を 吐 く よ う に

響 い て

息 を 吸 う よ う に

取 り 入 れ ら れ る

 



言 葉 は 重 い 時 も あ る

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第7回

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第7回あとがき

[当時]
大失敗です。台詞だけで、
同地域、同い年の三人を分けるのは無理がありました。
それでも描写を使わず、最後まで行ってみました。
この作品はいろんな要素を含んだものだって公言してますから、
失敗したとしても、こういう試みもOKですってことで。

[現在]
そんなにも失敗してないです。今読むと。
頭に思い浮かんでる映像をくっつければ、
きっと面白い画になることでしょう。
ちなみに文中の「典子一筋の小原君」をクリックすると、
同時期に書いた、恐るべき文章作品を読むことが出来ます。
リンク先のリンクをクリックしながらお読みください。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (eiji)
2004-06-13 21:31:42
全然わかりません、、、
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描写嫌い (aliz)
2004-06-13 23:08:06
やっぱり。ごめんなさい。



でも私が本を読めない理由が、

変に凝ろうとダラダラしてる、

行動描写やら心理描写やらなので、

私の読めるように書くとスッキリこうなるのです。
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