Scarving 1979 : Always Look on the Bright Side of Life

1979年生な視点でちょっと明るく世の中を見てみようかと思います。

「犬(dog)」第15回

2004年07月13日 13時00分00秒 | 物語
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 隣の教室

「ふぅぁ、ふぅぁ」

(なんだ、すごい気持ち悪い)

 かおりんは、右手で胸の臙脂リボンを掴み、大口で息を吸い込みながら、うつむいた。

「ねえ、かおりん、大丈夫」

 山元が左手でかおりんの頭を撫で、右手でかおりんの背中をさすった。

「え、うん、たぶん、すぐ治ると思う」

(心臓がどうかしたのか)



 元の教室

「よし、っと。まだか、守田」

 中谷は銀色の上に白チョークを置き、両袖のチョーク粉を掃いながら、そう言った。

「ちっと待って、もうすぐ終わるから」

 守田はアミダの線を、細かく、大まかに、引いていた。

「いや、終わんなくていいって。昼休み終わるまで、ずっと」

 男は守田の方を向き、両手を使って意味のわからないジェスチャーをした。

「お、わかった。じゃ、もっと速く書こっ」

「おまっ、違げえだろ」

「よし、いいぞ、速くしろな」

「は~い~」

「おい、それ、俺のイクラちゃんだろ」

「ば~ぶ~」

「ほんと、ずりぃよ」

「いいじゃねえかよ、ギャグのひとつぐらい」

「だめだよ、俺のだもん、それ」

「ほんと、セコイって言うか、わけわかんねえとこ、細かいな」

「だっ、それ、俺のだもん」

「おまえ、そんなんだから、返事もこねえで、ふられんだよ」

「おい、守田、そこまで言ってやんなよ」

「ほんと。結構、痛いとこきたぜ、今の」

「わりぃわりぃ、悪気があったんだよ」

「やっぱ、あったのか」

「あったじゃねえだろ」

「おしっ、こんなもんでいいだろ」

 守田が黒板から目線とチョークを外し、振り返った。

「お、いい、いい」

「いや、まだ、線が全然足りねえよ」

 男が、守田のアミダを指差しながら、そう言った。

「これっ、じゅうぶんじゃねえかよ」

「いやぁ、ダメだな」

「守田、相手にしなくていいよ。どうせ、時間稼ぎなんだから」

「あ、そっか」

「時間稼ぎって、別に、そんな戦場じゃねえんだからよ」

「いや、絶対、時間稼ぎだ」

「まあいいじゃん、早く始めちゃおうぜ」

 守田は黄チョークを銀色の上に置くと、短めのピンクチョークを持って、そう言った。

「おっ、そうだな」

 中谷も、銀色の端にあった短めのピンクチョークを持った。

「お前ら、本気でやんのか」

「当たり前だろ」

「そのために、これ書いたんじゃん」

 守田が、左手に持ったピンクチョークで、書き終えたアミダを指しながら、そう言った。

「ちっと、今日はやめとかない?」

「んでだよ」

「やっぱ、アミダはおかしいって」

「おかしかねえよ」

「じゃ、守田、これで決められっか?」

「俺は、別に関係ねえだろ」

「そうだよ、こいつは安部一本なんだから」

「まあ、そりゃそうだけどさ」

「おまえら、それのがもっと関係ねえだろ」

「いや、大アリだろ」

「守田、そんなん気にしないで、早いとこやっちまおうぜ」

「おう。で、どうやってやんの?」

「なあ、この4つの線の中で、どれがいい?」

 中谷は1、2、3、4の番号が書かれたアミダを、右手に持ったピンクチョークで指しながら、男にそう尋ねた。

「え、俺?」

 男は瞳を大きめに見開き、右手の人差し指で自身の顔を指しながら、半上がりの声でそう答えた。

「当たり前だろ、おまえの好きな奴決めんだから」

「ほんとにか」

「ま、とりあえずさ、どれにする?」

 中谷は1、2、3、4の番号が書かれたアミダを、右手に持ったピンクチョークで指しながら、男にそう尋ねた。

「ああ。じゃ、一番右でいいや」

「一番右っと」

 中谷はアミダの一番右の線上に、×を書いた。

「じゃ、次は?」

 5、6、7、8アミダを指す。

「一番左」

「一番左ね」

 アミダの一番左の線上に、×を書いた。

「で、次」

 9、10、11、12アミダ。

「左から二番目」

「二番目さんサン」

 アミダの左から二番目の線上に、×を書いた。

「お、じゃ、今度、俺んとこか。どれにする?」

 守田は、中谷と同じように、13、14、15、16の番号が書かれたアミダを、右手に持ったピンクチョークで指しながら、男にそう尋ねた。

「え、右から二番目」

「おしっと」

 守田はアミダの右から二番目の線上に、×を書いた。

「じゃ、最後は?」

 17、18、19、20アミダを指す。

「真ん中」

「どっちの」

「真ん中は真ん中だろ」

「おまっ、これ、4人ずつなんだから、あるわけねえだろ」

「じゃ、左のでいいよ」

「左の方っと」

 アミダの左から二番目の線上に、×を書いた。

「おし、これで後は、アミダるだけだな」

「もう、アミダっていいのか」

「おう、アミダれ」

 中谷と守田が、×印から、アミダの流れに沿って、線を下に引く。

「えっと、まず、4番の加藤由貴里嬢」

「こっちは、14番高原」

 隣に移り、線を下に引く。

「今度は、8番の染田涼子姫」

「えっと、18番は、あ、斎木」

 中谷だけが、更に隣に移り、線を下に引く。

「で、最後は、9番吉川由佳里君」

「おっ」

〈残ったじゃん〉



 隣の教室

「ふぅ」

(寝不足過ぎたかな)



 元の教室

「どうですか、お気に入りはいましたか」

「知らねえよ」

「あ、その顔はいたな」

「いいじゃねえか、どうだって」

「あ、ヤベ、時間ねえから、早く決勝戦行くぞ」

「おいっす」

「決勝って、別に試合じゃねえんだから」

〈なんで俺、こんなにドキドキしてんだ。単なる遊びだろ、こんなの〉



 隣の教室

「あっ」

(アツイ)

 右手で瞳を押さえる、かおりん。



 元の教室

「これ再利用でいいっしょ」

 中谷が9、10、11、12アミダをチョークで指した。

「おお、そんで十分」

「ダメだよ~、ちゃんと書いてくれなきゃ~」

「また、時間稼ぎ作戦だよ」

「もぅ、相手にすんな」

 中谷は、アミダ下の数字を消し、線を一本縦に引き、横に複数引いた。

「ほんっとにやる気か」

「もう、後には引けねえだろ」

「全然引けるって」

「いいから早く、どこにする?」

 中谷が左から順に4、8、9、14、18と線下に番号を書きながら、男にそう尋ねた。

「あぁ、じゃ、今度こそ真ん中」

「真ん真ん中っすね」

 中谷は、右手に持ったピンクチョークでアミダの真ん中に×印をつけた。

「よし、いこぞ」

「いこぞって」

「イ・ク・ゾ」

 中谷がアミダの流れに沿って、線を下に引く。

「さあ、どうなるんでしょうか」

 守田が簡単な実況を始める。

「別に、どうでもいいって」

〈いや、でも〉

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『鼓動』

気 付 く に は

少 し 遅 す ぎ た と

嘆 く 前 に

自 分 の 鼓 動 を

感 じ 取 れ れ ば

そ れ が い い

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第16回

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第15回あとがき

[当時]
今回は、おふざけが過ぎたかなって感じです。
あまりに、くだらない会話が多すぎて、
その割には、核となる台詞が少なくて、
正直、なにがなんだかわからなかったと思います。
だけど、わかりあった男同士の会話っていうのは、
本来こういうものだと思い込んでいるんで、
その辺は、勘弁していただきたいです。

[現在]
頭で思い浮かんだ映像を文章化するのが、
いつまで経っても上手くならないですね。
映像でカットインカットアウトしまくるのは、
私の頭ではわかってても。。。
けれど言葉の使い方は、とても好きです。
日常会話なんてみんな下手だったり言葉足らずなんですもん。
こんなもんです。

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