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ユニットケアを見る

2005-05-17 20:34:41 | 福祉
 現場実習の授業で恒例にしている、老人施設の見学を、学生たちと共にした。その施設は大学の近くにあるが、特養(ユニットケアも含む)、デイサービス、グループホーム、ケアハウス、老健など老人施設をおおよそ備えている老人総合施設である。
 それぞれ性格の異なった施設を合築しているので、内部から職員の往来は可能である。しかし玄関はそれぞれ別であり、風呂等の設備も完全に独立させている。また老健は、道を隔てた病院と隣接した別棟である。
 人口2万台の町でそれだけの施設を備えているのは、少ないのではないだろうか。

 特養の建物は、一般的に病院をモデルにしており、居室に4~6人の利用者である。04年度から厚労省が、ユニットケア実施に踏み出した。そこのユニットケア施設は、去年の7月から発足させていた。一人部屋を10部屋単位とし、4ユニットであった。初めて見たが、わたしからすれば快適な暮らしだろ、と思った。特養の歴史的転換を、実感したのだった。
 実際は一人部屋を好まない人もいるとのことだが、4人同居の場合その人たちどうしの交流はないのが一般的のようだ。
 厚労省がユニットケア普及のために、補助をどのぐらいしているか定かではないが、ゆきわたっていくには相当な歳月を要するだろう。介護保険後、施設経営は市場原理にさらされて大変のようである。経営だけでなく、介護職員の労働条件もきびしく(低賃金、労働強化)なっている。
 見学した施設は、病院も併設されていることもあってだろうが、かなり整っている。補助金システムなど詳細は知らないが、特養単独の施設ではとてもできないだろう、という点が随所に見られた。人的配置を、基準(特養3:1、ユニット2・8:1)より多くしているようだった。基準自体が、利用者を尊重してケアをするには、あまりにもきびしい条件である。
 施設設備では、風呂を十分備えており、しかも温泉である。それにケアステーションの1階と2階が部屋から回り階段で接続している、床が弾力性のあるアームストロング張りとしてケアワーカーのからだへの負担を少なくしている、といった質的高さが随所にあることが理解できた。

 老人施設の学生の見学では、暮らしの場にひとかたまりの人数が入り込むことになるので、細心の心遣いが必要である。わたしはそのことへの気遣いを、いつもしている。利用者の日常の暮らしに波紋を起こさないよう注意をしつつ、観察も怠らないようにせねばならない。
 そのことの象徴的例として、スリッパの音を立てないで歩くよう学生に注意をうながす。今年は事前に喚起したので小さめの音だったが、なくならなかった。どうもスリッパの音を立てないで歩くこと自体を、できない学生がいることが分かった。かかとから足を下ろして足指をすぼめる感じで床を踏むという動作をしたことがないのだろう。足裏の前後に力を入れて抜くことを、両足でタイミングよくできないので、ベターと足をついてスリッパを引きずってしまうようである。生活様式の変化の反映として理解できるが、それだけではなさそうだ。
 わたしは子どもの頃、階段の上り下りと2階を音の出ないように歩くことを、祖母から注意を受けて育ったことを思い出した。また、ぬきあし、さしあし、しのびあしとかつて言われていた、周囲に気づかれないぐらいそっと忍び込む歩き方のこと、聞かれなくなって久しいな、といったことに思いをめぐらしたのだった。

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