Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

ツィメルマン ピアノ・リサイタル 6/10 2010 サントリーホール

2010-06-11 01:38:18 | その他のライブ
Krystian Zimerman クリスチャン・ツィメルマンの語録、
「一回一回、死ぬつもりで演奏している」
「命を掛けて演奏する作品でなければ弾かない」
「自分の本当に目指したい道は何なのか、
音楽への強い愛情をいかにしたら聴衆に伝えられるのか、
完璧なる演奏をするためには何が必要か、ずっと悩んでいました。
もちろんこの答えはいまだ出ていません。
だからこそ私は自分を律し、練習へと駆り立てるのです」
http://ja-pianist.seesaa.net/category/4356797-1.html
(すべて上記インタビュー記事よりの抜粋)

6月10日 サントリーホールのプログラム:
オール・ショパン
ノクターン 第5番 嬰へ長調 Op.15-2
ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.35 「葬送」
スケルツォ 第2番 変ロ短調 Op.31
<休憩>
バラード 第4番 ヘ短調 Op.52
ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 Op.58
<アンコール>
ワルツ 第7番 嬰ハ短調 Op.64-2

楽器、音の反響にこだわり、ピアノを持ち運ぶことでも有名なツィメルマン。
1956年生まれでポーランド出身、18才でショパンコンクールに優勝した後、
'81年からはスイス、バーゼルに居を移している。

今回の来日は約1カ月。
全国をツアーする。
5月中旬から始まり、終盤の東京、横浜へとやってきた。

期日が近くなってからのチケット購入。
残席はSとAのみ。
最初はAで捜していたが、残っているA席は末席。
それなら¥3000の違い、S席でと捜し始めると、
一人分の席ならまだ選択肢がある。
ステージに向かい右ブロック11列の右端を購入。

ツィメルマンにはコアなファンの方々がたくさんいらっしゃるかと思うので、
各々の曲の感想はご遠慮させていただく。
全体的な印象のみになるが、最初に感じたのは弱音の美しさ。
計算され尽くし、それを体現し、隅々まで神経が行き届いているのに、
楽器や演奏者、楽曲を超越して、自然界の音を聴いているような心地良さを感じる。
それがツィメルマン・ワールド、ショパンのピアノ曲の演奏という枠に収まらない。

ツィメルマンのこだわるピアノの状態、調律、音色も完璧だ。
演奏のみならず、観客への心遣いもたっぷりと感じさせてくれる。
そして観客も演奏中、微動だにしない。
2000人が心を一つにして一人のピアニストの演奏に聴き入る様子は祈りに近いものがある。
終了後はスタンディングで拍手する人達もいた。

ピアノから離れても残響が続くように感じる瞬間があった。
「葬送」が終わった時、ツィメルマンが息をはずませているのがわかった。
ほんとうに全身全霊を込めて演奏している。

休憩後の演奏、ツィメルマンは雄弁になる。
自分の世界を構築しているだけではなく、観客へと心をぐっと開いてくる。
ピアノ・ソナタの途中で一瞬、顔を客席へと向ける。
ツィメルマンから"What do you think?"「君にこの曲の心がわかるかい?」
と問いかけられたような気がした。
これだけの大きさのホールでありながら、ツィメルマンと対話しているようにさえ感じる。
(ツィメルマンはコンサート中、一言も言葉を発していないにもかかわらず)

終了後、別世界だったサントリーホールから、夜の地下鉄に乗り込むと、
一気に現実に引き戻される。
静かなコンサートの後は、帰りもしばらくは余韻に浸っていたかったのだけど。