Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

フランス 山下農園

2010-06-03 00:13:09 | Weblog
フランスで農業を営む山下朝史さんからメールが来た。
TBS「情熱大陸」という番組に5/30、11時から山下農園の様子が放映されるという。
「夜遅くて申し訳ないですけれど、良かったら見て下さい」

録画をセットするが、そのままオンタイムで見る。
フランスで山下さんは日本の野菜を作っている。
小松菜、辛子菜、ミョウガ、辛子大根、そしてカブ。

それを買うのはフランスの三ツ星レストラン。
「アトラス」「ル・ブリストル」「ラ・トゥール・ダルジャン」
「ル・ムーリス」「ジョルジュ・サンク」「ルドワイヤン」
山下農園の野菜はフランスの市場の5倍の値段。
だがシェフたちは目を輝かして山下さんの運び込んだ野菜を見て、摘まんで、
料理を創作する。
「取れた時、獲れただけ持ってきてくれればいい。」と言われている。

作っている野菜は年間で47種、15年前に独学で始めた。
きっかけはパリの日本料理屋から日本野菜を作って欲しいと依頼されたこと。
フランスの土を研究しながら試行錯誤で今の野菜たちが生まれた。

2010年3月、山下農園の有名なカブ作りが始まる。
その1か月前の2月、山下さんは東京に里帰りをされていて、その時にお会いした。
ビニールを土にかぶせ、一つのうねに400個の穴を開け、、2粒づつ種をまく。
地道な作業。「華々しいとはいえませんね。」と山下さん。
「悔いを残すようなすっきりしない作り方では美味しい物はできない。」
2週間後に二つはえた苗から一つを間引く。
「もし三つあれば、強いのと弱いのを取って真ん中を残す」

種まきから2ヶ月後、90個のカブが収穫される。
お会いしてから3ヶ月後にフランスで山下さんはカブの収穫に至った。
種から緑の葉をつけて大きく育ったたくさんのカブの様子に、
私はこの間に何をしていたのかなぁと思う。

収穫した野菜をレストランに届けるのは「娘をお嫁に出す心境。
幸せになって欲しいという気持ち。」

パリのシェフたちは山下さんが届けたカブでそれぞれ趣向を凝らした試作品を作る。
カブの皮からスープをとるシェフ、昆布出汁を使うシェフ。
山下さんからパリのシェフが昆布出汁に凝っていると聞いていたが、ほんとうに使っていた。
りんごのピュレとワサビを合わせたソースなども出てくる。
料理を作るシェフの表情は嬉々としている。
良い食材を前にすると創作意欲、イマジネーションが広がっていくのだろう。
いくつか試作してその中からメニューにどれをいれるか検討している。

腰を屈めて、日々続ける農作業は辛い。
最初に作ったほうれん草、出荷できるようなものができるまで3年かかったという。
でもその中で「見ているのは野菜でも実は自分と向き合っている」と山下さん。
「根性ということば、根が張るとは頑張るとかではなくて、風が吹いても耐えられるかということ」

剪定すること、水をぎりぎりのところで与えることで、根が水を求めて張り、
糖分が野菜に満ちるそうだ。
山下農園のカブ、シェフたちは「柿やりんごのような味がする」

「隣の畑を買って生産性を上げるよりも今の生産者とシェフの心が通じ合っている状態、
野菜の質を維持していきたい」と話されていた。

最後に奥さんが家の前に立ち、「ごはんよ!」と叫ぶ。
山下さんは畑から腰を上げて、「は~い。」と手を振り走っていく。

お会いした時も飄々とした方だと思ったが、
自然体でフランスにも農業にも溶け込んでいる姿がテレビを通して伝わってきた。
簡単ではないことを、さりげなく気負わずにひとつひとつこなされている。

山下農園
http://a.yamashita.free.fr/