世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●安倍の雲上人政治は、”反共”嵩じて、社会主義への裏声応援歌

2016年03月16日 | 日記
さようなら! 福沢諭吉 日本の「近代」と「戦後民主主義」の問い直し
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●安倍の雲上人政治は、”反共”嵩じて、社会主義への裏声応援歌

筆者は、日本のエスタブリッシュ層に胡坐をかく面々は、意外に、トランプ候補がアメリカ合衆国の大統領になることを望んでいるのではないかと、フト思うことがある。何故かと云うと、「誰かの所為にする」と云う理屈が成り立つからだ。日米欧各国が、中国経済の減速で、世界経済全体が冷え込んだと云う理屈づけと同じ手法で、自己弁護出来るからだ。最近では安倍首相も「津々浦々」口にしなくなって久しい、懐かしい言葉だ(笑)。春闘もチンケなものだし、誰も本気で首相に賛同していない。気の毒でさえある(笑)。

黒田日銀総裁は、15日の日銀金融政策決定会合で、現状の緩和策を維持することを決めた。「企業向け貸し出しや住宅ローン金利ははっきりと低下し、金利面では政策効果が表れている」。黒田はそのような事を発言しているが、岡目八目な解釈の方が、こう云う場合正しいわけで、住宅ローンが繁盛しているのは、借り換え特需であり、新規ローンが現実に増加しているわけではない。企業向け貸し出し金利が下がるのは当たり前だが、新規貸し出しが目に見えて増加しているとは言っていない。つまり、効果は確認できていませんと云うのが事実だ。

異次元金融緩和が、まったくの不発だったゆえに、マイナス金利を導入し、企業の内部留保や個人の貯蓄から、様々な投資や消費を喚起しようと云うのが狙いなのだろう。最近、非常に目につくことは、政権にしても、日銀にしても、霞が関にしても、個々の企業や個人の本音が見えていない政策を立て続けに連発する傾向がある。このような現象は、どのような時代にでも多かれ少なかれ見られたが、安倍自民党政権以降は、一般市民や企業の生計実態が全然見えていないのじゃないか?という疑問の連続になっている。単に、筆者が意地悪な性格だから、それだけではない。

安倍自民党政権に関わる全員が無知蒙昧だと言うのが簡単だが、多分、多くの人は、それなりに正常なのだと思う。では、どうして、ここまでピント外れな結論に至るのか、不可思議だ。筆者が、悪口半分に「棄民政策」に血道を上げている、と揶揄することがあるが、そこまでの悪意もないと見るべきである。バカでもない、悪意でもない。そうなると、どうしてだ?と云う疑問に突き当たる。この疑問にヒントを与えてくれたのが「例えば、奥さんがパートに出て25万円貰うとして…」と安倍首相が予算委員会で解説した時だ。“この人は雲上人だからな”と一笑にふしたが、首相だけが運上人なわけではなく、日本のエスタブリッシュ陣営にいる人々の多くが“雲上人”なのではないかと疑い出している。

雲上人現象は、政治行政だけではない波及的影響があり、社会全体の問題になる。エスタブリッシュ層にいる人々が、国家やその他組織のリーダーとなり、操舵を握っているわけだが、自分たちが指揮指導命令している被支配層の人々の実態を、20世紀後半レベルのまま把握しているとしたら、これは、トンデモナイ悲劇である。1970年代の「一億総中流」のイメージのまま、今日に至っているとなると、これは重症だ。あれだけ言論空間で「中間層の分解」が唱えられているのに、日本人のほとんどは「中流だ」と云う認識で、あらゆることを行っている疑惑だ。

中間層の崩壊などは、ありゃ、アメリカのことだよ。日本のエスタブリッシュ層は、その辺りで思考が停止しているのだろう。たしかに、アメリカ人の殆どは、ハッキリ言って貧乏人だなと思う。これが世界一の経済大国の現状?そんな素直な疑問が出るような国である。それに比べれば、幾分症状は軽いが、同じ病に罹患している点は疑いようがない。まして、安倍自民党政権は、アベノミクスで、格差拡大を助長し、TPPに驀進中となれば、早晩、アメリカ同様になるのは目に見えている。今の、アメリカ大統領選挙の情勢を眺めれば、同じことがわが国でも起きつつある事実に気づく筈だ。

それに、まったく気づかないのは、雲上人の所為なのか?まさか、自覚を持って“生かさず殺さず”の為政を行う、などと考えている筈はないと思いたいが、どうなのだろう?筆者は、前者も、後者も正しいのではないかと感じるようになっている。アメリカでは、共和党と民主党が明らかに二分し、4大政党制の方向に流れている。11月の本選で、一応はクリントンか、或いはトランプ?が2大政党の看板を背負って決定されるのだが、今後のアメリカ大統領は、1期毎に交代する運命になりそうだ。そして、2大政党制は機能不全に陥るのだろう。

クリントンが大統領になったとしても、バーニー・サンダース的政治色も出さないと政治を実行できなくなる。今までのように、ウォール街の代弁者一本槍では、持たないだろう。トランプがなった場合でも、共和党本流の意向にも配慮しないと、今度は議会が持たなくなるので、Wスタンダードが四つのスタンダード国家に変貌してゆくことになりそうだ。わが国でも、「共産党でも良いじゃないか現象」が明確に起きている。安倍自民党が時代遅れな「レッドパージ」と云う時代錯誤プロパガンダに固執しているが、中間層の減少途上にあることに気づいていないようだ。

官僚機構と大企業優先政策は、より貧困層を増やすわけだから、国民の意志を、限りなく反資本的方向に導く。逆説的に言えば、社会主義的思考を助長することに繋がる。もしかすると、強気の攻める姿勢が、実は資本主義や自由主義を追いこんで行っているようにも見えてくる。安倍さんの本音は、もしかして、迂遠的だが「社会主義よ抬頭せよ!」と裏声で応援歌を歌っているのかもしれない。全体主義、軍国主義が、一層嫌われる地固め政治をしているように思えてならない。

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●「優しい社会」だってさ(笑) 増税、年金カット、正規の非正規化

2016年03月15日 | 日記
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●「優しい社会」だってさ(笑) 増税、年金カット、正規の非正規化

安倍自民党の今夏参議院選挙の公約の基本方針が決まったのだそうだ。何もかもが嘘八百は先刻承知だが、国民を痛めつけ、格差を拡大させ、安全を守ると言いながら、国民監視体制を強化し、自衛隊員を戦場に送ろうと画策する。このような国家に、一億総出で鋭意努力せよ。赤ちゃんから爺ちゃん婆ちゃん、お母さん、勿論少年の君も、社会貢献、活躍ですよ!無論、物価は何%でも上げますよ、日銀があらゆる手を尽くします。ですから、必ず諸物価を上げます。インフレです!でも、そのインフレに見合って賃金は上がりません。

インフレは、国家の借金を小さくするためです。そうして、我が国国債は格付けが上がるのです。つまり、日本の皆様への、国際評価が上がるのです。巡り巡って、過疎地の津々浦々まで、その評価は滴り落ちます。気持ちの良いものですよ。褒められるって。いいですか、介護保険の保険料も青天井で上げますから、控除額が増えるのです。そうです、その分、介護施設を増やして、建築産業を活発にしなければなりません。介護士は殆どいませんけれど、冷暖房完備、高級ホテル並みの介護施設です。隣接した火葬場の裏には、太陽燦々の墓苑も用意いたしました。是非ご贔屓に。

一億人をこき使わないと、どうにも元気な日本ではいられなくなります。皆さまが、血の出る奮闘をしないと、職場を難民の皆様に埋めて貰わなければなりません。いえ、永久なんて、過酷なことは望んでません。優しい社会を目指しているのですから、そういう危険はありません。精々、4,50年、「欲しがりません勝つまでは」その程度のことです。女性の方には、幾分お忙しくなりますが、良妻賢母で美しい女性で、尚且つ、税金を払う程度の労働をお願いします。大丈夫です。保健所、いや、保育所も完備しております。子供なんて、強く育てなければなりません。泣いても、腹が減っても、一日で生死にかかわるような事はありません。保育所は所長さえいれば、何とかなります。5千円も増額したのに応募がないんですよ。この際、頑強なお子さんを育てましょう。

経済も再生しますよ!株式市場を見てください!何せ、薄商いですから、日銀とGPIFの独壇場ですよ!一カ月半ぶりの高値水準です。機械の受注が伸びてきました。そうです、日本企業の設備投資がようやく目覚めたのです。ジム・ロジャーズが株高は持続しないなんて言っていますけど、大丈夫、買いです。日本の輸出企業は盤石です。もう少し、国民が日本経済に自信を持って、消費を怖れなければ、もっともっと日本経済は伸びるのです。GDP600兆円は夢ではありません。

中央集権統治が根強い我が国ですが、国家財政負担の多い仕事は、どんどん地方に押しつけます。これが、地方創生です。しかも、その事業の実行の結果生まれた利益は、中央に還元する流れも強化します。ですから、地方は、一時ですが、現業労働の雇用が増えます。そして、箱物が残りますので、その維持管理に汲々となるのです。それでも、維持管理には業務が伴いますから、当然雇用も生まれるわけです。それ以外の、地方創生もあります。それは、地域の知恵です。そして、努力次第です。中央から助けられるのではなく、自らの力で、地域産業を生み育てることは、子供を産み育てるのと同様です。自助が主体だからこそ、堅牢な産業が生まれるのです。

 ≪「やさしい社会」目指す…自民の参院選公約案
自民党が夏の参院選で掲げる公約の基本方針案が11日、明らかになった。
 「経済再生」を中心に据える一方で、野党による「アベノミクス」批判などを念頭に、社会保障の強化や格差解消への取り組みによって「やさしい社会」を目指す方針も打ち出す。
 基本方針案は「3年間の実績を踏まえ、アベノミクス第2ステージへ」と経済再生に引き続き取り組むとし、「1億総活躍社会への挑戦と安倍外交の推進」で「世界で輝く日本」を目指す姿勢を強調している。
 具体的な政策は〈1〉経済再生〈2〉女性活躍〈3〉地方創生〈4〉安全安心・やさしい社会〈5〉国の基本――の五つの柱で構成する。「安全安心・やさし い社会」では、社会保障の充実強化や治安・テロ対策などのほか、差別問題や格差社会への対策も盛り込む。安倍首相が意欲を示している憲法改正は、2014 年衆院選など過去の選挙公約と同様に、末尾で触れる方針だ。各部会で公約の具体案を検討し、5月中頃までに決定する。  ≫(読売新聞) *赤字、筆者加筆

一昨日の朝日新聞の、安倍自民党公約は、
≪これは安倍政権が繰り返してきた手法だ。首相が重視し、国論を二分しかねない政策について、選挙が近づくと「ブレーキ」を踏むように発言や公約での表現を抑制。選挙で勝利すると、白紙委任を得たかのように一気に進めるやり方だ。
 特定秘密保護法や集団的自衛権の行使を認める閣議決定は2013年参院選の公約に直接触れず、選挙後に推進。安全保障法制も14年衆院選の公約ではわずかに言及しただけで、翌15年の国会で成立させた。≫
という特徴を持つと揶揄されたことを意識したのだろう。以下のように、意地になり出した。やはり、安倍さんイジメは、名指しでイジメるのが一番だ。イジメと云うと印象が悪いので、「批判」としても、同じ効力を持つ。

しかし、最後まで、自民党公約から目を話してはいけない。特に、公約の末尾が曲者だ。いつの間にか、国会答弁が引っ込んで小文字・細字になり、保険約款の如く、お客様、第何条の第何項の、但し書きに、ちゃんと書いてあります。そう云うことを言いかねないのが、安倍自民党なのだ。特定秘密保護法、集団的自衛権の閣議決定、TPP協定……。特に、閣議決定は党の公約には関係ないと言い出す政権だから、最後まで、気は抜けない。野党五党は「争点は改憲だ!」と選挙運動中は叫ばなければならないだろう。

≪ 首相「改憲を公約に」 参院選3分の2目標も改めて表明
安倍晋三首相は14日午前の参院予算委員会で、憲法改正について「必要な改正は行うべきものと考えている」と答弁し、強い意欲を改めて示した。「今後とも公約に掲げて訴えていく」とも述べ、夏の参院選で自民党の公約に掲げる方針も示した。
 首相はさらに、衆参各院の3分の2以上の賛成による発議に向け、「与党のみならず多くの党・会派の支持をいただかなければならない」と答弁。参院選で、与党と一部野党の改憲勢力による「3分の2」の議席確保を目指す考えも改めて表明した。
 首相はその上で「決めるのは国民だ。新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民的な議論と理解が深まるよう努めていきたい」とも述べた。最終的に国民投票で過半数の賛成を得て、改憲の実現を目指す考えを示した。
 一方、国連女子差別撤廃委員会が発表した日本に対する最終見解の案に、皇位を継げるのは男系男子のみとして女性天皇を認めない皇室典範を問題視し、見直しを求める内容の記述があったことについて、首相は「全く適当ではない」と答弁。「我が国の皇位継承のあり方は、女子に対する差別を目的とするものでないことは明らかだ」と強調した。
 自民党の山谷えり子氏への答弁。
 ≫(朝日新聞デジタル)


以下は消費増税の延期に関する報道だ。「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施する」が常とう句だったが、今度は「税率を上げても、税収が上がらなくては元も子もない。日本経済自体が危うくなるような道を取ってはならないのは当然だ」が付け加えられた。つまり、これも消費税凍結を暗示する言葉で、今月16日の国際経済分析会合に、米コロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツ氏を招く時点で、消費増税凍結は既定路線になっている。同教授を財務省が招くわけはなく、安倍晋三のご指名なのだから、決定だ。

財務省の代弁者、東大経済学者を黙らせるには、ノーベル経済学賞受賞者の権威が必要だと云うことだ。14年の増税延期の時は、同じくノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンを指名した。アベノミクス日銀異次元緩和の開始時には、たしか浜田宏一だった。此処までお膳立てをする点を考慮に入れれば、「消費増税再延期・衆参同日選挙」への弾みになる。参議院選だけの為に、ここまで手は尽くさないと読むべきだ。時事通信の田崎が「W選はないと読んだ」と云うコラムを書いているのが非常に怪しい。長谷川幸洋もW選なし、と書けば官邸広報部が出揃うが、まだ、書いていないようだ(笑)。

安倍晋三の絵図がどこまで出来上がっているか、現時点では定かではない。ただ、衆参W選(場合によると、衆議院選前倒し)が打てる政治状況を作りたいと考えているのは間違いない。非公式訪露、プーチン会談による経済協力と北方領土交渉の進展のバーターはあり得る。伊勢志摩サミットでは、世界経済の牽引役宣言なんて、ウルトラ馬鹿宣言をしないとも限らない。中国、ブラジルなどBURICSの経済停滞は顕著。中東経済も苦しんでいる。EUも苦しんでる。アメリカは大統領選たけなわだ。いまこそ、日本が世界経済を牽引する国際的責務を感じる。なんて、迷宰相ぶりを発揮しそうだ。まあ、この宣言を国民がどのように受け止めるか、それは開けて吃驚なのだろう。


 ≪ 税収減なら増税延期も排除せず 消費税10%引き上げに首相
安倍晋三首相は14日の参院予算委員会で、来年4月の消費税率10%への引き上げに関し、増税で景気が大きく悪化し、税収全体が落ち込むと想定され る場合は、延期も排除しない考えを示唆した。「税率を上げても、税収が上がらなくては元も子もない。日本経済自体が危うくなるような道を取ってはならない のは当然だ」と強調した。
 同時に「現在、そうした重大な事態が発生しているとは考えていない」との見解も示した。  日本経済の現状について「成長軌道に戻ってきている」と説明。「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、(再増税を)確実に実施する」と重ねて表明した。 ≫(共同通信)

幼児化する日本は内側から壊れる
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●市民が出来る“安倍カウンター” 事実を語る言論人を応援しよう

2016年03月14日 | 日記
「憲法改正」の真実 (集英社新書)
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●市民が出来る“安倍カウンター” 事実を語る言論人を応援しよう

以下は朝日新聞の安倍自民党の、公約と、その実行に齟齬のあることを指摘した、手厳しい記事だ。あきらかに、衆議院選挙後は「憲法改正」にひた走るだろう。「アベノミクス不況」とまで言われ始めた日本経済を、好況だと嘯くのだから凄い。ファシズム政権と云うのは、ウッカリすると、このようにして成立する典型例を、我々は目撃させて貰っている。再び、有権者が騙されるのか、大変に興味深い。朝日も、報道の自由を束縛されている中で、精一杯の記事を書いている。しかし、見出しは「安倍首相、野心封印、白紙委任に争点絞る」とすべきなのだが?

 ≪ 首相、参院選に向け改憲封印か 党大会で一言も言及せず
安倍晋三首相は13日の自民党大会で、国会答弁などで再三意欲を示した憲法改正には一切触れず、夏の参院選に向けてアベノミクスの「成果」を強調した。これまでも選挙前には経済対策を中心に訴え、選挙後に集団的自衛権の行使容認や安全保障法制など肝いりの政策を一気に推し進める手法を繰り返してきた。
自民党内にも「参院選後の改憲推進」を前提とする空気が広がっている。 安倍首相は党大会の演説で、国会議員や参院選の立候補予定者、地方組織幹部ら約3500人を前に声を張り上げた。「アベノミクスとは何か。雇用を増やし収入を増やすことだ。経済政策は間違いなく結果を出している。名目GDP(国内総生産)600兆円に向かって歩みを進めていく」
 約20分間の演説ではアベノミクスの効果を訴える数字を並べた。「デフレ不況で失われた国民総所得を40兆円奪還」「110万人以上の雇用増」「有効求人倍率は24年ぶりの高い水準」「最低賃金は3年連続大幅増」……。
 演説の最後に持ち出したのは、民主など5野党の連携に対する牽制(けんせい)の言葉だった。「今年の戦いは、政治に国民に責任を持つ自民・公明の連立政権対、民主・共産の勢力との戦いになる」と強調。安保法廃止を求める野党を批判し、「廃止したら日米同盟の絆は損なわれる」と訴えた。
 首相は経済政策や野党批判を能弁に語る一方、意欲を見せている憲法改正については一言も触れなかった。党大会での言及は、谷垣禎一幹事長が党運動方針の説明で「憲法改正に向けた国民的な議論を深める」と述べた部分だけだった。
 ただ、これは安倍政権が繰り返してきた手法だ。首相が重視し、国論を二分しかねない政策について、選挙が近づくと「ブレーキ」を踏むように発言や公約での表現を抑制。選挙で勝利すると、白紙委任を得たかのように一気に進めるやり方だ。
 特定秘密保護法や集団的自衛権の行使を認める閣議決定は2013年参院選の公約に直接触れず、選挙後に推進。安全保障法制も14年衆院選の公約ではわずかに言及しただけで、翌15年の国会で成立させた。
 民主党の岡田克也代表は13日、記者団に「いつものことじゃないですか。秘密保護法も集団的自衛権の行使もそう。公約の中に小さく書いてあって、それを根拠にやる時はやるということだ」と語り、政権側を批判した。
 官邸幹部の一人も、首相が意欲を見せる憲法改正の議論を加速させるのは選挙後とにらむ。「参院選で憲法改正は前面に出さない。しかし、参院選は憲法改正の入り口になる。本格的なスタートは参院選が終わってからだ」
 ■自民内に異論唱える空気なく
 首相は年明けから、夏の参院選後を見据えて、改憲への布石を打つような発言を繰り返してきた。
 年始のNHK番組では、改憲に前向きなおおさか維新の会を挙げて「自公だけではなく、改憲を考えている責任感の強い人たちと3分の2を構成していきたい」と述べ、「改憲勢力」で憲法改正の発議に必要な3分の2以上の議席を確保することを参院選の目標に掲げた。
 今月2日の参院予算委員会では「自民党は今年で立党61年を迎えるが、当初から党是として憲法改正を掲げている。自民党総裁として目指していきたい」と答弁。さらに「私の在任中に成し遂げたいと考えている」と踏み込んだ。
 こうした首相の発言には与党内から参院選への影響を懸念する声が出ていた。
 13日の自民党大会でも、来賓として出席した公明党の山口那津男代表が、介護や医療、子育てなどを挙げて「国民の期待する課題、直面するテーマに向き合い、着実に実行することが使命だ」と訴えた。公明内や支持母体の創価学会には憲法改正に慎重な意見も少なくない。山口氏は参院選をにらみ、身近な社会保障などの政策を優先するようクギを刺したとみられる。
 首相の演説を会場で聴いた自民の安田優子・鳥取県連幹事長は「憲法改正を下手に出すと、(参院選で)自民党(候補)は落ちる。女性だけでなくお年寄りも、憲法改正というとすぐに9条を連想する。大変なことになる」と語った。
 夏に改選を迎える参院議員も「党員も候補者も憲法改正を争点にしてほしいなんて思っていない。求められるのは景気回復や医療福祉で、憲法改正の意識はぐっと低い」と話す。
 しかし参院選後に、首相が改憲への「アクセル」を再び踏んだ時、自民内にあえて異論を唱えようとする空気はなさそうだ。
 自民内にはかつて、安倍首相の祖父・岸信介元首相ら「自主憲法制定」を唱えるグループに対し、「軽武装・経済重視」路線を掲げて改憲には慎重なグループがあった。高度成長を促す「所得倍増計画」を打ち出した池田勇人元首相が創設した派閥「宏池会」はその象徴的な存在だ。
 しかし、宏池会の流れをくむ谷垣氏は野党時代、党総裁として憲法改正草案を手がけた。「自主憲法の制定が我が党の基本的な考え方。そういう旗をきちっと掲げるのは当然のこと」と首相に歩調を合わせる。
 今月開かれた別の派閥の会合で、改憲に慎重な議員がこぼした。「自民党の議員は、立党の原点と言われたら憲法改正に反対できない。しかも、草案をつくったのは谷垣氏だとなるとなおさらだ」  ≫(朝日新聞デジタル)*赤太字は筆者加筆

このファシズム政権は、“太字の嘘公約と細字の本音”で選挙を行い、勝利すると「白紙委任だ」と云う、ナチスの手法をなぞっている。このファシズム体質に異を唱える人々の多くが、官房長官、総務大臣らの圧力や首相の懐柔。企業論理の前に忖度報道、人事を行い、多くの言論関係者を封印している。

消えた言論人、ジャーナリスト達と表現すると大袈裟だが、報道の自由、言論の自由に対する安倍政権の圧力に屈しないぞと云う表現を行った人々。或いは、安倍官邸に嫌われ、他の番組や部署に回された人々は、個別的には、考えの違いや疑念があるとしても、立憲の精神を守ろうとしている。ただその一点で評価したい。 幾分逃げ腰な人も含まれるが、安倍官邸に睨まれた人々の多くは、信頼に足る人々と云う、奇妙奇天烈なリトマス試験紙が、日本の言論界に誕生した点は、非常に面白い現象である。10日の朝日に、“金平キャスター、TBS執行役員退任へ”記事が出ていた。TBS「報道特集」のキャスターは継続するようだが、今までの反権力的、弱者に光を当てるドキュメントが出来るかどうか、注目するほかはない。TBSと言えば、NEWS23の後釜に、あの星浩をキャスターに起用するらしいが、岸井と膳場のいないNEWS23、筑紫哲也はどんな気持ちで、番組の変貌を見つめているだろうか?

個人的には、これら権力者の為政や言動を報道人、言論人などの立場から、冷徹に見つめ、阿ることなく表現する人々を、陰ながら応援しようと思っている。中には、個人的に趣味に合わない人も含まれるが、筋の通った姿勢を貫いている人々を認めたいと思う。イデオロギーは個人の思想信条なわけだから、その違いを、排除の理由にしてはいけない。積極的に支持するか、消極的に支持するか、温度差は出るだろうが、評価できる人物、主張している内容を吟味するに足る人物、そういう捉え方をしようと思う。

まあ、今夜は、何らかの意味で、認めることが出来る人々を羅列しておく。必ずしも、安倍官邸に睨まれている人々とは一味違う。筆者が、個人的に、考え方や主張に、何らかの評価抱く人々と理解して頂きたい。おそらく人によって、それぞれに違いは出てくるだろうが、“あいば”個人として、読む、聞くに堪えられる言論や精神を持っている人々を例示する。嫌な奴、認められない奴を書く方が沢山書けるのが何とも時代の酷さを物語る(笑)。

 ■陰ながら応援支持したい人々(敬称略・順不同)
*新刊が出たら、極力購読する程度の支援だが、時にはコラムで引用して、代弁しようと思う。

田原総一朗、鳥越俊太郎、岸井成格、青木理、金平成紀、古賀茂明、神保哲生、伊勢賢治、魚住昭、宮台真司、安富歩、山田厚史、佐高信、日野行介、池上彰、町田徹、佐々木俊尚、田岡俊二、野口悠紀男、真鍋昭夫、和田秀樹、寺島実郎、榊原英資、水野和夫、神野直彦、金子勝、井手英策、中島岳志、辺見庸、内田樹、内山節、小出裕章、斎藤誠、大澤真幸、佐藤卓己、上野千鶴子、広井良典、高橋源一郎、中野晃一、佐伯啓思、木村草太、小林節、國分功一郎、長谷部恭男、奥平康弘、白井聡、浜矩子、半藤一利、春名幹男、高橋哲哉、小熊英二、小田嶋隆、平川克美、小幡績、鈴木亘、山田昌弘、古市憲寿、中野剛志、西部邁、適菜収、島薗進、樋口陽一、柳沢協二、豊下楢彦、室井佑月、内橋克人、国谷裕子、膳場貴子、久米宏、柳田邦男、保阪正康、村上春樹、‥等。まだまだ、紹介しておきたい人々がいるのだろうが、俄かに思い出せないので、この辺にて……。

安倍政治と言論統制 (テレビ現場からの告発!)
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●偽装支持率に怯える安倍 トランプ・サンダース現象は金融経済の終焉

2016年03月13日 | 日記
始まっている未来 新しい経済学は可能か
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●偽装支持率に怯える安倍 トランプ・サンダース現象は金融経済の終焉 

本日はノンビリと日本の政局、世界の政局を意識しながら、思いのままに書いてみる。特に、テーマらしいものはない。昨日のコラムでも言及したが、20世紀的既存体制(エスタブリッシュメント)が成立不能だと知りながらも、生き永らえる手段として、“角試して牛殺す”ような様々な手段に出ている。日本でも、欧米でも似たり寄ったりの行為が繰り返されている。概ね、どの国、どの地域で行われている政治行政も、行くべき世界の姿が見えないので、慣性の法則に従い、のらりくらりと為政している印象だ。

世界最後のフロンティア地域として選ばれた、ミャンマーなどは、行くべき世界の見本が世界中に散らばっているので、のらりくらりと云う姿は見られない。ただし、彼らも、準先進諸国化した時には、行き先の表示が消えて、迷える国家になると云うのが、どうもグローバル金融経済の掟のようである。アジア最大のフロンティアだった中国も、胡錦濤の欧米金融経済に寄生するようなイケイケ経済から、習近平への代替わりで、中国独自のヘゲモニー戦略(世界なのか、ユーラシアなのか曖昧)とイケイケ経済の副作用の是正と腐敗撲滅への方針転換が経済成長を激しく鈍化させている。

世界経済の低迷に関する専門家の解説は、ことごとく、中国経済の減速が元凶だと云う言説に満たされている。たしかに、世界経済低迷の原因は中国の経済減速であったとしよう。しかし、それでは、世界経済の好況は、中国経済に“おんぶんにだっこ”だったと云う事を力説していることになるのだが、読者は、そこまで読み解く力がないと馬鹿にしているのだろうか。きっと、オバマの中途半端経済政策(金融経済と実物経済の2頭追い)が、実物経済勢力の勢いに水を差したと読む。

しかし、世界中が不況だと云うのに、米国だけが好況だと云うのは、世にも不思議な物語だと気づくべきである。種明かしは簡単で、金融経済が中心で国の経済を回している米国は、地上戦がないバーチャル戦争をしているようなものだから、偽り(見せかけ)の好況感は、幾らでも演出可能だ。米国の金融経済には、人もモノもいらない。金(マネー)もレバレッジを利かせることが可能なので、30倍60倍と高利潤を演出できる。この米国経済のマジックは、見てくれは良いのだが、エスタブリッシュメント層の中で循環している利潤なので、分配の法則に親しまない。ゆえに、分配の法則から取り残された人々が、ファシズムと社会主義の二手に分かれて、アメリカのエスタブリッシュメント層に反旗を翻している。

つまり、実は分配する実物を米国は持っていない証左である。換金不能なコインがザクザクと云うことである。おそらく、近習平はグローバル金融経済のサークルからの脱出を試みているのだろう。グローバル金融経済の蜜の味を放棄するのだから、かなりの禁断症状に陥るだろうが、バーチャル経済から抜け出すことに気づいただけでも、評価に値する。しかし、その世界秩序への挑戦は、ゆっくり死に際を迎えようとしていた金融資本主義に喝を入れた事にもなる。現状はそんなところだろう。

EUもロシアも、この米中の部分ヘゲモニー的な衝突につき合わされている可能性が高い。それでは、日本はどうなのかと云うことだが、この次元になると、どうも米中の部分ヘゲモニー対戦では、米国側一辺倒に掛けているのが実情だが、EUなどは、どちらに転ぶか判らないと、態度を保留している。あの、民主主義・資本主義の兄弟関係にあった英国さえも、態度保留になっているのにだ。未来展望を敢えて言うならば、50年、100年後は、米国でもなく、中国でもないグレートが小さくなり、スモールが大きくなる世界になってゆくだろう。俗に言う「G0」の世界に向かうだろう。

その結果は、当然、今までとは比べ物にならない程、国家のハンドリングが難しくなる。既存の事例に準えて裁量行政を行っている日本の官僚にとっては、一番苦手な仕事が回ってくる。たぶん、“ひっちゃかめっちゃか”になるだろう。そのような修行の連続は、次世代の官僚離れに繋がり、弱体化していくのだろう。その役割は、多くは地方自治体に丸投げされる。コアな、外務防衛などは、シンクタンクの役割が大幅に増えてゆくものと考えられる。場合によっては、外注などと云う驚くような時代が来るかもしれない。

まあ、それはさて置き、安倍自民党が焦っている。断トツの支持率に支えられている安倍政権が、泥縄状態になっている。ネット右翼が大好きな「レッテル貼り」に奔走し始めたようだ。「敵は民共だ!」たしかに、「立憲民主党」か「民進党」なんて言っている、民主・維新の新党問題は、ネット上であまり議論されていない。今回の夏の参議院選をターゲットにした野党連合は日本共産党の志位委員長が、小沢一郎の知恵も借り、歴史的決意をしたことから起きた野党連合であり、正直維新なんかどうでも良い。その意味では、安倍の貼りつけたレッテルは一部正しい。筆者の評価では、まさに志位と小沢一郎の野党連合と云うことだ。まあ、民主の連合分の票は期待するだろうが。

≪ 首相、参院選「自民・公明と民主・共産の対決」  
安倍晋三首相は12日、自民党本部であった全国幹事長会議で「夏の参院選は自公対民共の対決になる」と述べ、民主と共産の選挙協力に強い警戒感を示した。
 首相は「民主党は共産党と手を結び、平和安全(安保)法制を廃止する法律を通そうとしている。せっかく強化された(日米)同盟のきずなは、大きく損なわれてしまう」と強調。「共産党の究極的な目標は自衛隊解散、日米安保条約の廃棄だ。この共産党と手を結んで選挙を戦う民主党、民共勢力に決して負けるわけにはいかない」と述べた。 ≫(朝日新聞:河合達郎)

 ≪ 野党統一候補=民共合作候補 自民、ビラで野党共闘批判  
自民党は今夏の参院選に向け、野党5党が進める統一候補擁立を批判するビラを作成した。赤字の大きな見出しで「『野党統一候補』=『民共合作候補』」と主張し、理念も政策も違う民主、共産両党がタッグを組むと強調。参院選を「『自公の安定政権』か、『民共合作の革命勢力』かの選択」と位置づけている。
 ビラでは「『理念なき民主党』と『革命勢力・共産党』の打算と思惑の産物」と痛烈に批判したうえで、日米安保条約の破棄と自衛隊廃止という共産の主張を取り上げ、「どうやって日本を守るのか」と疑問を投げかける。
 党所属国会議員に配るほか、12日の全国幹事長会議などを通じて地方議員らへの周知徹底を図る予定だ。 ≫(朝日新聞)


米国大統領選の混乱を見れば一目瞭然で、「党の理念」に拘泥する方が、リスクを引きこむ時代に突入しているのだから、かなりの幅を持ったフレキシブルな理念になるのが当然である。このまま進むと、大きな滝がありますよ。左か右の支流に、一時船を退避させましょう。支流が大河に変ることもありますので……。それにしても、安倍自民党の慌て方は異常だ。余程、棄民政策に邁進している自己認識があるのだろう。充分にマスメディアを抑え込み、蜜月状態に持ち込んで、都合の良い情報を流し続けていても、どこかに不安がある。悪政が、実はバレバレなのではないのか?いま、安倍自民党は疑心暗鬼の罠に嵌りかけている。

おそらく、この夏の参議院選だけに限定して、選挙結果を占えば、野党善戦と云う線が濃厚だ。安倍晋三の望んでいた、衆参2/3議席獲得、憲法改正発議要件が見事失敗に終わる選挙結果が見えているのだろう。その、一人天下が眉唾だと、白日の下に晒される現実的恐怖が、今の安倍晋三の発言に滲み出ている。「なんだ、本当は弱かったんだ」いじめっ子大将が実は弱かった。そのような事実が、世間の空気になった時、安倍は、自分が地獄を見ると云う真実を知っているのかもしれない(笑)。心から、いじめっ子が、いじめに遭うことの辛さを、しみじみ味わうことは、世直しの一種、大いに結構である。マスメディアに期待するのはやめておくが、ジャーナリストの猛反撃も見てみたい。


外国人が見た 幕末・明治の日本
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彩図社

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●既得権の楽園・ニッポン 居直り強盗、泥縄・馴合い政治の権化

2016年03月12日 | 日記
原発はやっぱり割に合わない―国民から見た本当のコスト
クリエーター情報なし
東洋経済新報社


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●既得権の楽園・ニッポン 居直り強盗、泥縄・馴合い政治の権化

「保育園落ちた日本死ね!!!」が、ネットから、政府に慌ただしい、泥縄対策発言を引きだしたようだ。まあ、介護士の報酬引き上げ同様の、アリバイ作りになるのは必至で、保育園経営者の中ぬきに遭うのは目に見えている。野党の、保育士月額1万円増も、もの笑いのタネになりそうな金額に、筆者は目を剥いた。保育士の賃金は全産業平均より月9万から11万円低いと言われている公式データがあるのに、1万円と云う賃金増を、世間では“涙金”という。如何に、民主党と云う政権が駄目なのか、この議員立法で命取りにさえなるような按配だ。


≪ 保育士の待遇「今春にも具体的な改善策」 安倍首相  
安倍晋三首相は11日の参院本会議で、待機児童解消に向けた保育士不足への対策として、保育士の待遇改善の具体策を今春に示す方針を明らかにした。「保育園落ちた日 本死ね!!!」と題した匿名ブログに端を発した一連の問題を受け、首相が給与面での保育士の待遇改善に踏み込んだのは初めて。
 共産党の吉良佳子氏の質問への答弁で、安倍首相は「給与を含めた待遇の問題があると認識している。今春に取りまとめる1億総活躍プランで、具体的で実効性ある待遇改善策を示し、人材を確保していく」と述べた。
 安倍首相は、9日に塩崎恭久厚労相に届けられた、保育制度の充実を求める署名を読んだことを明かし、「子供が生まれたのに保育所に預けられない、仕事を続けられないという大変なご苦労、切実な思いが伝わってきた。仕事と子育てが両立できるよう、働くお母さんの気持ちを受け止め、待機児童ゼロを必ず実現させる決意だ」と語った。
 待機児童問題をめぐっては、「保育園落ちた」の匿名のブログをきっかけに保育制度の充実を求める署名活動が広がり、6日間で2万7千人分余りが集まるなど社会問題になっている。
 政府はこれまでも、保育所の整備拡充や配置基準の見直し、ICT(情報通信技術)化による保育士の負担軽減などに取り組んできたが、対応が不十分 との指摘があった。匿名ブログについて、首相が2月に「実際どうなのかというのは、匿名である以上、本当かどうか私は確かめようがない」などと答弁したことで批判がさらに強まっていた。民主党と維新の党が、保育士の給与を引き上げる法案を今国会に提出する方針を固めている。 ≫(朝日新聞)


経済諮問会議の連中が、本気で保育園問題や保育士の問題を議論する筈もない。お題目が並ぶ、スローガン政治に明け暮れている日本の政治。なかでも、安倍政権のスローガン政治はプロパガンダ手法に徹しているから、マスメディア支配は、必須のアイテムだったのだろう。悲劇を、すべからく、手柄にする手法を電通的に駆使する。そこに、霞が関の役人が介在することで、シロアリ集団の漁夫の利作戦が展開される。どうにも、手の施しようがない国になりつつある。与党は完全に駄目だが、野党も駄目っぽい(笑)。結局、官僚機構の出来が良すぎる所為なのだが、どんな政策も、役人たちによって骨抜きになる。不思議なシステムである。

おそらく、裁量行政と云う大きな幅を持たせる精神棒が注入されている、官僚機構と云う、魔界を壊すことは可能なのだろうか?修正などと云うものでは意味がない。一つの手段は、中央官僚制を壊すことなのだろう。より、市民に近い行政が、その殆どを担うように、仕組みを無理やりでも変える方法しか思いつかない。現在の都道府県は、地域の特性が曖昧だし、官製分割の臭いが残り、伝統文化を重視するのであれば、藩制度に戻す方が、流れはスムーズだろう。兎に角、中央集権官僚制から抜け出せない限り、日本が定常経済の中で、キラ星のような特異な地位を確立する国家にはなれない。

東日本大震災から5年が過ぎた。復旧も復興も道半ばで、何時終わるとも知れない。津波による災害は、残念ながら、日本列島に住んでいる限り、避けて通ることの出来ない、自然災害だと、歴史的には認識可能だ。日本列島の歴史の中では、このような惨事は、常に生活の一部として吸いとり紙のように引き受けてきた歴史が、あると云う現実も、我々は引き受けざるを得ない。しかし、この惨事の復旧復興は、安倍首相の「福島の復興、東北の復興は最重要課題だ」と云う空々しい決まり文句は別にして、本当に現地の住民の心に寄り添う復旧復興が行政によってなされているのかどうか。その点には、多くの疑問が残る。おそらく、このような現象も、中央集権統治体制の重大な問題点なのだろう。安倍首相や、大臣らは、都合のイイところを視察し、それをテレビ放映させることで、一件落着と云う流れ作業システムのルーチンワークになっているに過ぎない疑念は、何時までも払拭されない。この災害の復旧復興までが、政治のプロパガンダに利用されているとなると、漁夫の利にも思える。


≪ <震災5年>首相視察28回…「影」避ける?
安倍晋三首相は2012年12月の第2次安倍内閣発足以降、東日本大震災の復興状況の視察と被災者との対話を続けている。岩手、宮城、福島3県の訪問は計 28回に上る。ただ復興が一定程度進んだ訪問先も多く、東北選出の野党の国会議員からは「厳しい現実を直視してほしい」との指摘も出ている。
 「政権復帰の3日後に福島を訪問した」。首相は5日、12回目の視察となった福島県でこう強調した。
 東京電力福島第1原発事故による住民避難が各地で続く福島県。岩手、宮城より復興が遅れているだけに配慮する姿勢を示し、「福島の復興、東北の復興は最重要課題だ」と決まり文句を口にした。
 5日まで約3年3カ月間の視察回数は岩手8回、宮城10回、福島12回。月1回程度のペースで3県をほぼ順繰りに訪れ、一度に2県回るケースもあった。
 復興庁によると、視察場所は政府がアピールしたい事業の関係先や新機軸の発表機会に合わせることが多い。見て回る対象は完成間近の災害公営住宅や事業を再開した被災企業、新校舎が再建された学校など復興の「光」の部分が目立つ。
 2月は宮城県女川町にオープンしたテナント型商店街を訪問。昨年12月には遠野市であった東北横断自動車道釜石秋田線の一部区間の開通式に出たほか、一関市で事業再開を果たしたしょうゆ醸造会社を訪れた。
 更地のままの津波浸水域など復旧すらままならない「影」も被災地にはある。7日の参院予算委員会で、民主党の増子輝彦氏(福島選挙区)は「首相はいい所ばかり行く。大変な所にも足を運んでほしい」と注文した。 ≫(河北新報)


自然災害に関しては、その個々の悲劇には悲しみを感じるとしても、上述のような歴史的受けとめ方も出来るわけである。しかし、その自然災害に対して、東京電力福島第一原発の事故も、同じレベルで論じることは、どう考えても腑に落ちない。個別に、原発事故で被害に遭われた人々の此処を見つめるのも大事だろうが、大枠として、自然災害と「人災」の峻別を我々は求められているのだと思う。安倍首相が大嫌いな“日刊ゲンダイ”が、“高浜原発運転差し止めはヌカ喜び”との見出しで報じていた。経産省幹部は自信満々に「次はひっくり返せる」と嘯いたそうだが、その発言の確度は、司法が行政の下部組織である限り、かなり高いと言わざるを得ない。まさに、関電はじめ、原発行政に関わる連中は、居直り強盗にそっくりだ。この、原発事故の国会事故調元委員長・黒川清氏のコラムが、すべてを語っている。


 ≪ 福島原発「国会事故調」元委員長の告発!
  「日本の中枢は、いまなおメルトダウンを続けている」

■国会事故調委員長としての偽らざる思い
志が低く、責任感がない。
自分たちの問題であるにもかかわらず、他人事のようなことばかり言う。 普段は威張っているのに、困難に遭うと我が身かわいさからすぐ逃げる。 これが日本の中枢にいる「リーダーたち」だ。
政治、行政、銀行、大企業、大学、どこにいる「リーダー」も同じである。日本人は全体としては優れているが、大局観をもって「身を賭しても」という真のリーダーがいない。国民にとって、なんと不幸なことか。 福島第一原子力発電所事故から5年が過ぎた今、私は、改めてこの思いを強くしている。
日本人は福島第一原発事故から何を学んだのかー?続々進む原発の再稼働、遅々として進まぬ安全対策。このままでは、日本人はまた同じ災いを経験することになるかもしれない。
そんな状況に警鐘を鳴らすのが、国会事故調元委員長の黒川清氏だ。原発事故を「エリートたちによる人災」と暴いた黒川氏はいま、「揺り戻しが起きている原発政策をみていると、日本の未来に著しい危機を感じている」という。
 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震から9ヵ月後の12月、福島第一原発事故の根本的な原因を調査するために、国会に調査委員会が設置された。「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」、通称「国会事故調」だ。
国民の代表である国会(立法府)に、行政府から独立し、国政調査権を背景に法的調査権を付与された、民間人からなる調査委員会が設置されたのは、我が国の憲政史上初めてのことである。
私は、この委員会の委員長を務めた。冒頭に記した嘆きは、国会事故調委員長としての、また、一人の国民としての、偽らざる思いだ。

 ■日本の脆弱さは、世界にバレていた
国会事故調は、私を含めて10人の委員から構成された。それぞれの専門分野で調査を進め、その結果を、マッキンゼー出身で郵政民営化等にも関わった コンサルティング経験豊かなプロジェクトマネージャーが統括し、ほぼ6ヵ月で、本編だけでも600ページ近い調査報告書にまとめ上げた。
2012年7月に国会に提出した報告書では、福島第一原発事故は地震と津波による自然災害ではなく、「規制の虜」に陥った「人災」であると明確に結論付けた。
「規制の虜」とは、規制する側(経済産業省原子力安全・保安院や原子力安全委員会など)が、規制される側(東京電力などの電力会社)に取り込まれ、 本来の役割を果たさなくなってしまうことを意味する。その結果、「日本の原発ではシビアアクシデント(過酷事故)は起こらない」という虚構が罷り通ること になったのである。
たとえば、2001年の9・11アメリカ同時多発テロの後、燃料を満載したジャンボジェット機が原発に突っ込んできたらどうなるかについて、アメリカやフランス等の原発先進国では真剣に論じられた。
その防御策を、アメリカ側は日本の原子力規制機関に2度も伝えたが、日本は何の対策も取らなかった。もし、その対策を実行していたら、福島第一原発事故はギリギリのところで防げた可能性もあるのだ。
また、日本がIAEA(国際原子力機関)の指摘する「深層防護」(原子力施設の安全対策を多段的に設ける考え方。IAEAでは5層まで考慮されてい る)をしていなかったことは、国内外の関係者の間では広く知られているし、今もってその備えのない原発が幾つもあることも指摘されている。
IAEAの日本の担当者は、経産省の役人に「どうして深層防護をやらないのか」と聞いたところ、「日本では原発事故は起こらないことになっている」と言われ、まったく納得できなかった、と語っていた。
こうしたことは国民にはほとんど知らされていなかったが、世界の関係者の間では以前から知られていた。卑近な言い方をすれば、日本の脆弱さは世界中にバレていたのだ。
しかし、日本の「リーダーたち」にとっては、「不都合な真実」は「存在しない」か「記録等がなくて確認できない」ことが多い。「国民を欺いている」と海外で言われても、しかたのないことであろう。

 ■東電社長の「ゾッとする」発言の意味
国会事故調は報告書の中で、規制当局に対する国会の監視、政府の危機管理体制の見直し、電気事業者の監視など「7つの提言」をした。調査結果から導 き出された「7つの提言」は、本来、国会で充分に討議された上で、「実施計画」が策定され、その進捗状況は国民と共有されるべきものだ。ところが、事故か ら5年が経った今も、国会では「実施計画」の討議すら満足に行われていない。
にもかかわらず、九州電力川内原子力発電所(鹿児島県)の再稼働、関西電力高浜原発(福井県)と四国電力伊方原発(愛媛県)の再稼働計画、安倍晋三首相が推進する原発の輸出などが進められている。日本は3・11以前の原発政策に戻りつつある。
なかでも、2015年8月に再稼働した川内原発をめぐっては、九州電力が、原発事故時の対策拠点となる免震重要棟の建設計画を、再稼働後に撤回したことが問題となっている。
九州電力は、川内原発の免震重要棟新設計画の撤回の理由を、「免震重要棟を新設するよりも、現在ある代替施設に加えて、新たな支援施設を建設するほうが、早く安全性を向上できる」としている。
これに対して原子力規制委員会は、「どれだけ早く安全性を向上できるのか、具体的な説明がなく、最も重要な根拠を欠いている。撤回の理由は納得できるものではない」と指摘した。
しかし、九州電力は撤回の方針を変えていない(2016年2月現在)。さらに、規制委で再稼働の適否を審査中の玄海原発(佐賀県)に関しても、免震重要棟の新設計画を見直す考えを明らかにしている。
免震重要棟は、免震装置で地震の揺れを大幅に低減する構造で、被曝対策となる放射能管理機能と、自家発電機や通信情報施設等を備えている。原子力事故時の緊急対策所として、極めて重要な役割を果たす設備だ。
実は、国会事故調第18回委員会の参考人質疑において、福島第一原発事故当時に東京電力社長であった清水正孝氏は、免震重要棟の重要性について、次のように明言しているのである。
「今回の私どもの一つの教訓だと思いますが、免震重要棟、発電所の緊急対策室、あれは御案内のとおり、中越沖地震(2007年・新潟県)によって柏 崎刈羽が被災したあの(事務棟が使えなくなった)教訓を生かして実は福島第一・第二にも造ったものでございます。あそこはまさに、緊急対策室としての機能 を果たしているわけです。(中略)もし、あれがなかったらと思いますと、ゾッとするくらいのことでございます」
この発言は、2時間以上に及んだ第18回委員会参考人質疑の、最後のほうにある。今もウェブサイトで視聴することができるので、ぜひ確認していただきたい。(http://www.ustream.tv/recorded/23159673

 ■信用を失ったこの国
福島第一原発事故の当事者である東京電力のトップだった清水氏が、「もしあれがなかったらと思うとゾッとする」とまで明言した免震重要棟を、九州電力は「重要な根拠」も示さずに、「不要」と判断した。
福島第一原発事故の教訓は、どのように認識され、どのように受け止められているのだろうか。
「日本はいったい何を考えているのか?」と、世界は奇異の眼で見ている。3・11 以来、国際社会の中での信用を日本は失なっているのだ。
報告書では福島第一原発事故の事象ばかりでなく、再発防止に向けた提言を行った。事故の背景には日本社会のあり方が浮かびあがる。事故は「氷山の一 角」であり、氷山の下には「規制の虜」「三権分立の機能不全」「民主主義の貧困」など、日本の統治機構の問題が数多く存在する。
このように、報告書には日本社会のエスタブリッシュメント(既成勢力)にとってあまりにも都合の悪いことばかり書いてある。報告書は「不都合な真実」だったのだろうか。現在の状況は国会事故調などまるで「存在しなかった」かのようである。
 なお、国会事故調が参考人質疑を行った委員会やその後の記者会見、タウンミーティングの内容は、すべてウェブ上で、しかもほとんどが英語の同時通訳 つきで公開されている。報告書は徳間書店から出版されている他、ウェブサイトでフルテキストを見ることができるし、英語版のフルテキストもウェブ上に掲載 されている
(国会事故調HP http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/
 現在、それらを電子書籍にしようという動きも出てきている)。
日本社会の「病巣」を確認する上でも、ぜひ、委員会の様子や報告書の内容を多くの人々に見ていただきたいと願っている。

 ■警鐘を鳴らさずにはいられない
3・11によって、人々の世界観は劇的に変わった。しかし、5年が経過して、福島第一原発事故は徐々に風化してきてはいないだろうか。
事故を引き起こした当事者である東京電力、原子力関連省庁、規制諸機関、そして政府や国会、それらを構成し支える私たち国民一人ひとりは、事故の反省をすべて消し去ろうとしているように見える。このままでは、同じ過ちを繰り返しかねないように思える。
国会事故調の委員長を務めた者として、こうした思いから本書を出版するに至った。
国家の危機が目前に迫っていても対応できない日本の「リーダーたち」への歯痒さ。日本を支えている産官学のコアの部分が、メルトダウンしていることへの危機感。私は警鐘を鳴らさずにはいられない。
世界への影響が非常に大きな事故だからこそ、この事故から学び、そこで得た知見を世界と共有し、現在も続く汚染水処理やこれからも起こり得るアクシデントに生かしていく姿勢が重要だ。
しかし、日本という国には、その姿勢が欠けている。このままでは10年後、20年後の日本はダメになる。いや、すでにダメになっているのかもしれな い。原発事故に限らず、日本が再び大きな問題と直面した時に同じような失敗を繰り返し、決定的・不可逆的に国際社会で孤立し、信用をなくしてしまうだろ う。
福島第一原発事故は終わっていない。この事故を機に変わらなければ、日本の将来は極めて危うい。そのことを、国民一人ひとりに強く意識していただきたいと、切に願っている。 ≫(現代ビジネス:オトナの生活・賢者の知恵ー黒川清)

地球という星に棲み、その恵みを受けている以上、人類すべてが、自然災害のリスクを抱えている。そのことは、総論として受け入れなければならなのが、人類にとっての、自然の脅威だと言える。しかし、冷静に事実を見つめると、生命を維持する大気も水も、地球の脅威を含めた力から与えられているのだから、不承不承でも、受け入れるのが地球上に棲む生物の宿命と理解すべきだと、筆者は個人的に考えている。しかし、経済的事情で、人間の知恵程度では対抗できない放射能のリスクがある原発に固執する人間たちの心が判らない。

産業構造上、極めてすそ野の広い産業であることは認めよう。意外に、単純な作業の積み重ねで、津々浦々に万遍なく仕事が行きわたる事実も認めよう。しかし、とどのつまりは、人間には制御できないのが原子力利用の放射能問題だ。核問題にも同様なことが言えるが、その件は、日本がどうこう対処出来る問題ではない。もう、9割方、人類の運命論になってしまう。しかし、日本における原発問題は、如何様にも対応可能だ。つまり、選択肢が数多く残されているのに、敢えて政府も官僚も企業も電力会社も、それを望む。人間が死ぬかもしれない程度は、国家のリスクではないとでも思っているようだ。

これは、一種の「未必の故意」である。突き詰めて言えば、将来にツケを残すことであり、消費税云々などとは次元が違う問題だ。10万年放射能を封じ込めるのがやっとの世界において、放射能と云う糞尿を、日ごと夜ごと生産し続ける行為は、まさに、チンパンジーのマスターベーションと酷く似ている。また、原発のランニングコストの安さを電力会社も、原発村の学者も強調するが、電力会社から切り離された国家的コストは、莫大なもので、おそらく、最も高い発電に類別される。このことは、我が国の刑事司法が中世時代の遺物と揶揄されるのと同様に、静かに我が国の国際評価を貶めているのだと思う。

規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす
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講談社
小泉純一郎、最後の戦い ただちに「原発ゼロ」へ! (単行本)
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筑摩書房


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●アメリカ大統領選と参議院選挙 どちらが日本人に影響するか?

2016年03月11日 | 日記
時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか
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みすず書房


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●アメリカ大統領選と参議院選挙 どちらが日本人に影響するか?

以下は、“社会主義理論学会”の共同代表である、岡本磐男氏のコラムである。“社会主義理論学会”は、「社会主義」と冒頭に冠がついているが、“「自由で民主主義的な社会主義を共に志向する人々が、それぞれの立場の違いを認めあいながらも、たがいに学び、交流し、協同して新たな創造的研究に取り組むこと」(入会呼びかけ)を目的とする学会(Wikipedia抜粋)”というもので、所謂、ソ連邦的社会主義とは一線を画す。早い話が、我々が棲む日本と云う国の行政官僚組織行っている多くの社会保障制度の類は、極めて社会主義的な趣旨で実行されているので、社会主義=反民主主義と反応するのは間違いだろう。

その証左と云うわけではないが、岡本氏のコラムを読み進むと、根底に、アメリカ合衆国と云う国が、絶対的覇権国と云う考えがあるように思える。コラムで語られている個別の指摘は、概ね納得がいくのだが、上述の絶対的権力国家と云う印象部分は、「そうであれば、これ程の混乱を招くわけがない」と云う、感想を強く持つ。ここでは、アメリカ合衆国の外交軍事問題まで取り上げたら、「悪の枢軸」に言及することになるので、今夜は控えるが、経済問題だけでも、充分に弱り切った覇権国と云う印象を筆者は持つ。

たしかに、アメリカ合衆国の覇権主義は領土支配から、経済空間支配に変化した。これが、如何にも、平和的で、民主的で、新自由主義的だったので、口触りが良かった。しかし、現実は資本主義の基本である実物経済(人モノ金)を、金融商品化(金融経済)することで、一定の成果と、ヘゲモニーをわが物としていた。しかし、サブプライムローンに端を発するリーマンショックと云う金融危機以降、コントロール不能に近いウィングを拡張した結果、グローバル金融経済を自己制御することが難しくなっているようだ。

グローバル金融経済が出来たのは、ドル基軸通貨体制による世界経済の支配となる。この金融システムには、ドル基軸通貨体制の維持が味噌なわけだから、その危機に対して、地政学とは関わりのない、戦争や紛争をアメリカ合衆国乃至は、その傀儡勢力によって惹き起こされている。一番問題なことは、このドル基軸通貨体制による世界経済の支配には、当然だが財源が必要になる。米国債を、他国に引き受けて貰うために、それ相当の暴力装置の維持も必要になる。引き受けているのは、主に、日本、中国、サウジアラビアだ。今現在、この集金システムに大きな異変が起きている。

中国経済は、需給のバランスを崩し、踊り場にあるようだが、米国債保有に関しては、外交における交渉ツールと、有力な投資先の一つと云う位置づけで、日本が米国債を保有する責務は特に存在しない。いざと云う時には、その放棄も視野にある。シェール革命以降、アメリカ合衆国の中東外交は、完全に中東の大国イランにシフトしている。サウジアラビアは、イラクのフセイン政権同様の悲劇を感じているだけに、サウジなど親米中東国家保有米債は、今後不安定化する。つまり、日本を除く、米国債の引き受けての不安定化は顕在化している。中国は、習近平の「一帯一路」、「AIIB」などの流れの先には、ドル基軸への挑戦と云う構図もある。

以上のような事実関係から、アメリカ合衆国が絶対的ヘゲモニーを維持し続けることは、具体的現象からも、困難だと思われる。異なる側面から眺めれば、実物経済から遊離した金融経済は、グローバル経済に至ったわけだが、この経済空間は、常にフロンティア地域(中国、アフリカ)を求める続けるイタチごっこでもあるので、次のフロンティア地域を中東にセットしたのだが、おそらく、思うように行かず、フロンティア不足に陥る。宇宙をフロンティア地域にするのには、時間が掛かりすぎるので、グローバル金融経済のシステムは回らなくなる。

現在、アメリカ合衆国大統領選挙においても、嘗てのアメリカ合衆国ではあり得ない、候補者の抬頭現象が起きている。既に、共和党では、ティーパーティー現象が起きていたので、その流れがトランプ候補の優位性生んだ土壌になっているので、それ程驚きはない。驚くのは、岡本氏も言及しているように、民主社会主義者として「レボリューション!」演説するバーニー・サンダース議員の登場である。岡本氏が言うように、今回の大統領選では、クリントンに民主党大統領候補を譲ることになりそうだが、此のまま、グローバル金融経済をアメリカ合衆国が続けると云うことは、新しいサンダースを生むことは、ほぼ確実だろう。

ここで、20世紀後半から21世紀にかけての覇権国アメリカ合衆国は、自ら作り上げたグローバル金融経済システムによる副作用によって、「レボリューション!」を惹起することになる。非常に皮肉なことだが、トランプ氏も内向き国家だし、サンダース現象も内向き国家志向なのが非常に興味深い。クリントン候補だけが、グローバル金融経済システム堅持者なのだ。筆者の個人的感想だが、トランプ対クリントンの闘いになった場合、驚くべき結果に、世界中が腰を抜かすのかもしれない。アメリカ合衆国の政治の中核・ワシントンは、20世紀の遺物の管理人から抜け出していないようだ。

 まあ、トランプであれ、クリントンであれ、岡本氏は「TPP」に賛成のようだが、超反対の筆者にしてみれば、いい流れだ。アメリカ合衆国は、暫く内向きで、国内の格差問題の修正に、為政の限りを尽くすべきだ。ただし、国際通貨基軸ドルの地位は脅かされる。今や、ユーロの挑戦は、撃退したわけだが、元の挑戦はこれからだ。一時、「ビットコイン」が悪名を轟かせたのだが、最近では、息を吹き返している。案外、世界の基軸通貨が「ビットコイン」と云う一足飛びの革命に繋がるのかもしれない。まあ、日本の今年の国政選挙は、アメリカ合衆国大統領選に比べれば、その価値は、1/5と云う低度になるのだろう。


 ≪ 日本人は、7月の日本の参議院選挙と 11月の米国の大統領選挙のどちらに大なる影響を与えられるだろうか
<岡本磐男(おかもといわお):東洋大学名誉教授>
今日の日本の市民・大衆は今年7月の参議院選挙を前にして、どのような心構えでいるのだろうか。現在は安倍政権が推進してきたアベノミクスの成果が 幻想にすぎなかったことが明らかになりつつある。これによれば経済成長を唯一の目標としてきたが、実際にはこの半年余りはマイナス成長を記録してきたし、 雇用は拡大したとはいえ、賃金が低い非正規雇用者が増大したにすぎず正規雇用者との間の格差は従来以上に拡大しつつある。さらにまたアベノミクスではデフ レ(=物価下落)脱却を重視してきたが。世界的な原油価格の下落という要因がつけ加わることにより、デフレは依然として持続している。

 昨年秋に安保法制を強引な手法で国会を通過させた安倍政権は、その後は経済第一の姿勢で臨むと主張し、一億総活躍社会の成立などという理念を掲 げ、従来は大企業の利益増大にしか結実しなかったアベノミクスを、中小企業や地方経済にまで浸透させるとして強気の姿勢をとっているのは、いうまでもなく 今年7月の参議院選挙での勝利をもくろんでいるためである。これに対抗して民主党をはじめとする野党勢力は再編することによって立ち向かおうとしているが、劣勢であるとの感は否めない。

 今日の日本社会で貧困層が広がりつつあるというとき種々の側面から観察すべきであろうが、とくに次のような点を指摘したい。例えば母子家庭の貧困 である。母親が非正規雇用者であるため子供を養育するだけの収入がえられないといったケースが多いと聞く。また今日では小中校の義務教育を受ける子供の6分の1の家庭は極貧状態にあるといわれている。さらに高齢化した年金受給者の中でも一か月に10万円に充たない程の低い年金額のため生活に困窮する人がかなりいると指摘されている。種々の側面から考察されるべきであるとはいえ、私はとくに最近の目立っている傾向として、小中高の教育や大学・大学院の学問、 研究に携さわる教育者、学生および研究者における不遇な人達にも着目したい。それらの不遇な人達というのは、教育・研究者の採用における任期制の採用によって任期切れの半失業状態にある人達や、高等教育を奨学金の借入れによって受けることを企図したために、返済に苦しんでいる人達を含んでいる。このような人達が今日の日本社会で多数輩出されたのは、全く20年程前からの日本の普通教育・高等教育に関与する文部科学省の官僚達にも責任があると考えるが、その点はここでは立ち入らない。

  さて、昨今の日本のテレビ・新聞等のメディアは、来るべき7月の日本の参議院選よりも11月の米大統領選についての報道にもっぱら日本人の関心を惹きつけようとしている。これはなぜであろうか。これは7月の日本の参議院選より11月の米大統領選の方が日本人に対する影響が強いと考えているためであろうか。もしそうであるとするなら、私もその意見に賛同する。

 それというのは、今日のようなグローバルな政治、経済システムにおいては、最重要国米国の最大権力者たる大統領が誰になるかは、世界の政治経済シ ステムに最大の影響力を与えるからである。日本の経済情況も世界経済の情況によってつねに左右され支配されるようになっているのが現状である。日本の経済情況は、日本の政府の経済政策や金融政策によって左右されることは、副次的・短期的にはありえても、決して基軸的・長期的にはありえないであろう。世界経済の動向こそ日本経済の動向を左右するのであり、世界経済の動向は、米国政府および中央銀行によって強く影響されているのではあるまいか。それ故にこそ米国の大統領選は重大なのである。

 本年3月1日の『朝日新聞』朝刊では、「米大統領選 問われるもの」とのテーマでの論議を掲載しているが、この中で一論者は「『格差』、そして 『転落への恐怖』。この二つが、今回の大統領選を読み解くキーワードだと思います。」と指摘している点は興味深い。今日では共和党の候補者で優勢なのはトランプ氏であり他の2人の候補者を抑えているのに対して民主党ではヒラリー・クリントン氏とサンダース上院議員との対決になっているようである。ここにおいてクリントン氏が既成政治勢力としてのエスタブリッシュメントを代表しているのに対して、民主社会主義者を名乗るサンダース氏が格差是正の一環として公立大学の学費無償化等を唱えて登上したことは、きわめて意義深いと思う。彼は米国では1%の人達が巨額な富をえているのに対し大部分の人達が貧困でいるのはおかしいと述べ政治革命を求めている。この言説に対し多くの若者達が賛同し。熱狂的な指示を与えている。テレビでこの様相をみて私は米国も変化しつつあることを実感した。これは驚くべき現象なのである。それというのは従来の米国市民一般の価値観とは180度逆転したものだからである。その一般の価値観の代表は「富裕者が富裕なのは、それなりに努力してその地位を得たからに外ならない。貧困者が貧困なのはそうした努力を怠っているためだ」というのである。 だが今日の世界では、貧困者が富裕になろうとして努力しても簡単にはなれない、というケースも多いのではなかろうか。

 さて今日の日本人、とりわけ高校生、大学生、大学院生等の若い人達はどうみているだろうか。過日のテレビ番組では米国で歴史学を専攻する大学院生 が500万円の奨学金ローンをかかえていて、今後の返済が大変だというぐちをこぼしている画面がでてきたが、これは日本でもある程度共通する問題とみられた。日本でも20~30年程前から米国留学から帰国した学者や官僚が増えたせいもあろうが、教育・学問をめぐる環境が米国のそれに類似するようになり、 学金のローンを借りつつ学問研究に従事する学生が増えているのである。もとより学問研究、科学技術の研究等は一国の経済・社会の発展にとってきわめて重要であることはいうまでもない、それ故に日本政府は、EU諸国等を参考にして、教育・学問の発展により多くの多額の資金援助を行うべきであった。その点では、これまでの日本政府は全く理解がなかったという外はない。それ故日本では高度な人材が容易に育成されず、これに伴って日本の一人当りGDPの発展はのぞめなくなり、世界で20位以下に落ちてしまった。さらにつけ加えたいことは、日本では国会議員や内閣の閣僚で博士学位を取得している人などは限りなく少ないのではないか。こんな状況では学問・研究分野に理解がえられるはずはないであろう。

 少し話が横道にそれてしまったが、本来の道筋に戻りたい。日本の若者達はこの度の米大統領選をみてどう感じたか。私は米国の民主主義はすごいと思ったと考える。サンダースは民主社会主義という言葉を使ったが、これはソ連型の社会主義が国家を絶対視した国家社会主義であったがそれとは違うんだとい う意味で使用した言葉であろうと思う。日本の新聞、テレビ等のメディアでは、ソ連崩壊後は、市場経済あるいは資本主義のみが唯一の普遍的な経済システムであって、社会主義が復活するなど考えもしないためにこの言葉を使用しなくなった。だがそれでは米国や日本あるいはEU諸国の資本主義のシステムが現在ゆき詰まりつつあるとみていないのか。永遠にこのようなシステムが持続しうるとみているのか、あるいは、そうでなければこれに代りうるような経済システムをいかに構想しているのか。私はメディアに携わっている人達は、-例外はあるかもしれぬが- 不勉強で無責任であると思う。

 私は11月の米大統領選が日本人とくに若者達に与える影響は小さくないと思う。7月参議院選では18歳、19歳の若者が選挙権をえられるようになったが、彼等がどのような投票行動を示すのか、それを見守るのが楽しみでさえある。さらにつけ加えるなら、3年前には市民、大衆が、財界が喜こぶように 自民・公明の与党を圧勝させたのであるが、それ程に旧来からの保守的システムにしがみつこうとするのは何故であるのか。既成の勢力に政治を任せた方が経済的に成功し自らの生活が豊かになるとでも思っているのだろうか。憲法を改正した方が本当に日本は安全だと思っているのだろうか。そのようなことは単なる幻想にしかすぎないことに大衆は早く気づくべきだ。

 最後にいいたいことは、3月初旬の段階で既に米大統領選は、共和党候補はトランプ氏が、民主党候補はクリントン氏が優勢で、サンダース氏は劣勢に立たされているようだが、このことは私の文章に些かも修正を迫るものではないことである。私としては米国の現状打破のため、政治改革を迫るような候補者が出現したことに十分な意義があるとみている。現在のような情報社会においては、将来にわたって現在映像化されたものが、人々の脳裏から消え去ることはないからである。別言すれば変革を求めるような大統領候補者が将来必ずや出現するだろうということである。そうとすれば、世界は米国の変革から変わってゆくであろう。

 目下のところ、米大統領の有力候補者はトランプ氏とクリントン氏の2人に絞られてきているようである。この2人の何れかが大統領に選出されるとし た場合、日本の国民はかなりの逆風を受けるかもしれない。なぜならこの2人の候補者は日本に対してはかなり高圧的姿勢で臨もうとしているからである。トランプ氏は日本の防衛費が低いと不満をもらしその増額を要求するとしているし、クリントン氏は日銀の超金融緩和の政策や円安誘導を非難しているからである。 また2人ともTPPに対しては反対である。こうした米国大統領が現われたら、日本政府はいかに対応していくだろうか。日本の国民も政治経済上のいっそう厳しい環境におかれるようになることが予想されるのである。 ≫(〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/ 〔eye3324:160309〕)

私たちはどこまで資本主義に従うのか―――市場経済には「第3の柱」が必要である
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●潮目が変わった 野党は追い風と云う「空気」を感じられるか?

2016年03月10日 | 日記
家族難民 中流と下流──二極化する日本人の老後 (朝日文庫)
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●潮目が変わった 野党は追い風と云う「空気」を感じられるか?

驚いた。福井地裁に続き、大津地裁の判決でも、住民の安全を確保できているとは言えない。原子力規制委員会がお墨付きを出したから、安全などと云う言説はない。司法は、司法として、立憲精神に準じて、国民の生命財産を守る責務がある。昨日の、大津地裁の判決の意義は大きい。最も重要な点は、規制委員会の基準=司法の判断ではないと断定したこと。

≪ 高浜運転差し止め 「司法、勇気ある決断」原発に疑念示す
「司法が勇気ある決断をしてくれた」。新規制基準に合格して再稼働した関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止めた9日の大津地裁決定 に、仮処分を申し立てた住民らは興奮に包まれた。東京電力福島第1原発事故から11日で5年。国民の拭えない不信感を代弁するかのように、決定は電力会社 の説明や新規制基準への疑念を突きつけた。稼働中の原発の運転を禁止した初の仮処分決定に、関電や福井県の地元関係者からは戸惑いの声が聞かれた。
 「止めたぞ」「やった」。午後3時半過ぎ、申立人代表の辻義則さん(69)=滋賀県長浜市=らが「画期的決定!」「いのちとびわ湖を守る運転差し止め決定!」などと書かれた垂れ幕を掲げると、大津地裁(大津市)前で待機していた申立人や支援者ら約100人から歓声が起きた。 冷たい雨が降りしきる中、抱き合ったり、涙を流したりして喜んだ。
 申立人の一人で原発事故後に福島県南相馬市から大津市に避難してきた青田勝彦さん(74)は「天にも昇る気持ち」。この日が誕生日の妻恵子さん(66) は「高浜原発の再稼働は、福島の人たちの苦しみを無視している。福島第1原発の事故が収束していない中では当然の決定だが、今日は(震災後の)5年間で一 番うれしい日になった」と喜んだ。
 住民らは関電に対し仮処分異議や執行停止の申し立てをしないよう求める声明を発表。原子力規制委に新規制基準の見直し着手、政府に原発ゼロ政策への転換を求めた。
 住民らは午後5時半から大津市内で記者会見。辻さんは「『高浜3、4号機は運転してはならない』の文字が目に入り、鳥肌が立った。裁判長が今日決定を出したのは『3・11』から間もなく5年というタイミングを意識したんじゃないか」などと語った。別の申立人男性は「『避難計画は国家の責任』と言い切ってくれたことがうれしい」と話した。
 弁護団長の井戸謙一弁護士は金沢地裁の判事だった2006年、北陸電力志賀原発2号機(石川県)の運転差し止め判決を出した。今回の決定について「関電に対し、福島の事故を踏まえて、原発の設計や運転がどのように強化され、どう要請に応えたのかを立証するよう求めている点が、従来と異なっている」と指摘。「『避難計画をも視野に入れた規制基準が望まれる』と、新基準にも疑問を呈している。決定を出すには大きなプレッシャーがあったはずで裁判官に深い敬意を表したい」とまとめた。 ≫(毎日新聞:衛藤達生、村瀬優子)

産経は、  ≪今回の大津地裁の決定には「なぜ高浜原発が安全でないか」について明確な根拠が見られない。「関電側の説明が不十分」とするだけで、何が何でも原発の「ゼ ロリスク」を求めるという自らが設定した安全基準を押し付ける内容で、原発の安全性を判断する基準となってきた最高裁判例を逸脱している。≫ とトップ記事で報じ、判決の不服どころか、今回の大津地裁判決も、以前の福井地裁も、裁判長の個人的恣意に依る判決だと断罪している(笑)。原発産業に、どれだけ右寄りの既存勢力が虱のようにタカっているかの証左だろう。日経も、ハラワタが煮えくり返っているらしいく、これじゃあ、電力コストの見込みが立たない、と嘆く。命よりも儲けが大切に決まっている!と屁理屈捏ねているようだ(笑)。

 ≪ 原発再稼働 司法の壁 高浜原発3、4号機運転差し止め
関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県)の運転を差し止める大津地裁の仮処分決定は、原発の再稼働に高いハードルを課した。大津地裁の決定は原発の安全審査を担う原子力規制委員会の判断を否定する内容。再稼働したばかりの原発が止まる想定外の事態で電気料金の引き下げをめざしていた関西電力の目算は狂い、企業や家計にも打撃が及ぶ。同様の司法判断が続けば、国のエネルギー政策の立て直しも遅れかねない。 大津地裁は決定で、安全対策に関する関西電力の説明を「不十分」と断じ、規制委による安全審査の合格も「(住民などの)安寧の基礎」にならないと指摘した。
  意見が真っ向から対立した項目の一つが地震・津波対策。関電は周辺の活断層が連動して大規模な地震を起こす可能性なども踏まえ、揺れの想定を従来の550 ガル(ガルは加速度の単位)から700ガルに引き上げる対策をとった。だが大津地裁は活断層などの調査が「徹底的に行われたわけではない」とし、過去に大規模な津波が発生しなかったと主張する関電の立場も「疑問なしとしない」と否定した。
 決定では東京電力福島第1原発事故の教訓にも触れ、原因究明が不十分であるとの認識も示した。2013年に原発の新規制基準を導入した規制委の姿勢についても「不安を覚える」と指摘した。
 国を代表する専門家らが議論して精緻に練り上げた安全規制の基準や、2年以上に及ぶ高浜原発への安全審査や検査の結果を、司法が全面否定した形だ。  
「今の段階で申し上げることはない」。9日の記者会見で、規制委の田中俊一委員長は具体的なコメントは避けたが、規制委の権威が傷つけば、原発に対する信頼回復も望みにくくなる。 政府は表向き「世界最高水準の規制委の基準に合格した原発は再稼働する方針に変わりはない」(林幹雄経済産業相)と強調する。だがようやく再稼働にこぎ着けた原発の運転差し止めは15年、停止状態にあった高浜3、4号機に運転の差し止めを命じたとき以上に衝撃が大きい。
 原発の運転差し止めを求める訴訟や仮処分申請は各地で相次いでいる。今回の住民側弁護団によると運転の可否が争われているケースは全国で約20件ある。川内原発1、2号機の運転差し止めを求める仮処分申請の即時抗告審は、近く福岡高裁宮崎支部が決定を出す。
 安全審査に合格し、4月以降の再稼働を目指す四国電力伊方原発3号機(愛媛県)などに対しても、広島の住民らが近く運転差し止めを求める仮処分の申し立てと訴訟を起こす見通しだ。
  政府は福島原発事故後も原子力を天候にも左右されずコストも安い基幹電源と位置づけてきた。昨年6月にまとめた30年度の望ましい電源構成(ベストミックス)で、全電源に占める原子力の比率を20~22%に設定した。達成には運転期間が40年を超える老朽原発も含め、30基程度の原発を動かす必要があるが足元は4基にとどまる。
 エネルギーの安定確保や環境問題への対応をめざした国の目標の実現は大きく遅れる可能性が出てきた。
▼仮処分決定 
仮処分決定は、切迫した危険を止めることを目的にしてい るため、直ちに効力を持つ。決定を受けた「債務者」が決定の効力を取り消すには異議を申し立て、地裁の別の裁判長が担当する異議審で決定を覆す必要があ る。異議審で決定が覆った場合、「債権者」が不服として高裁に抗告する可能性がある。異議審で再び仮処分が認められた場合、債務者も高裁に抗告できる。高 裁が下した決定に対しても、特別抗告するなどして最高裁の判断を仰ぐことは可能だ。

 今回の大津地裁の仮処分決定では債務者が関西電力、債権者に当たるのが住民側。関電は高浜原子力発電所3、4号機の運転を停止しなくてはならず、「速やかに不服申し立ての手続きを行う」との方針を示している。
  住民側は仮処分とともに、運転差し止め訴訟も大津地裁に起こしている。この訴訟で関電側が勝訴し判決が確定すれば、仮処分決定の効力は失われる。ただ、差 し止め訴訟も仮処分決定を出した同じ山本善彦裁判長が担当しているため、判断が覆る可能性は低いとみられる。訴訟が高裁、最高裁まで争われる可能性もありそうだ。 ≫(日経新聞電子版)

この関電の老朽化原発の再稼働は、以下、週刊ダイアモンドでさえ、『まさかの老朽原発再稼働で関電が電撃復活か』と云う記事を書いていた。驚くほど皮肉な記事になっている。
≪高浜原発4号機で2月末、再稼働直後にトラブルが発生したのは痛かった。  原発に対する世間の目は依然として厳しい。こうしたトラブルが再び猛烈な反原発機運のきっかけになれば、復活シナリオどころではなくなることを、肝に銘じるべきだろう。≫ この一文が、正夢となり、関電は、「もう、電力料金の値下げは撤回だ。値上げしてやる!」こんな声を、社内では怒り心頭で語っているらしい。

≪ まさかの老朽原発再稼働で関電が電撃復活か
 原子力発電依存の体質があだとなって経営危機に陥っていた関西電力の経営が一転、“ロートル”の予期せぬ働きで急回復する可能性が高まってきた。
 そもそも関電は電力会社の中で最も原発比率が高い。震災後に原発への風当たりが激しくなっても、原発依存度を低くする姿勢を一切見せず、あくまで現在保有する9基の再稼働へ向けて、全経営資源を傾けてきた。
 この原発との心中戦略のおかげで、足元の原発再稼働の流れに乗って、業績回復の期待が高まっている。何とか再稼働にこぎ着けた高浜原子力発電所 3、4号機に加えて、大飯原発3、4号機も安全審査の合格が見えつつある。その上、さらに高浜原発1、2号機が、原子力規制委員会の安全審査に事実上合格 するという、うれしい誤算が舞い込んできたのだ。
 高浜原発1、2号機は1974、75年に運転を開始した老朽原発で、すでに運転開始から40年を超えている。原発は運転開始から40年経過で原則廃炉というルールがある。実際、同時期に運転を開始した他の電力会社の原発については、すでに廃炉が決定している。
 だが、基準を満たせば20年間の運転延長が1回だけ認められ、合計60年間の運転が可能となる。今回、この基準を満たす初のケースとなる可能性が濃厚なのだ。
 業界内では、今年7月の運転延長判断の期限までに、まさか安全審査に合格し、再稼働へ近づくとはみられていなかった。 そんな下馬評を覆したのだから、関電の原発に懸ける執念のたまものだといえる。ロートル原発の運転延長という“棚ぼた”によって、関電の電撃復活シナリオがいよいよ現実味を帯びているのだ。
■中電にとっては特に脅威
 関電にとっての経営改善効果は極めて大きい。
 今期第3四半期末をベースにすると、ベストシナリオが実現して原発が6基稼働すれば、月間の収益改善効果は330億円に上る。年換算で実に4000億円近い。
 これはそのまま、電気料金値下げの原資となり、価格競争が進む電力自由化の戦国時代には強力な武器だ。特にライバルの中部電力にとっては、大きな脅威となる。中電は浜岡原発4号機の再稼働を目指しているが、時期はまったく見通せないからだ。
 またエネルギー政策に詳しい橘川武郎・東京理科大学大学院教授は「再稼働で体力を付けた関電が、電力会社の買収など一気に攻勢に出る可能性もある」と指摘する。
 そんな中で、高浜原発4号機で2月末、再稼働直後にトラブルが発生したのは痛かった。
 原発に対する世間の目は依然として厳しい。こうしたトラブルが再び猛烈な反原発機運のきっかけになれば、復活シナリオどころではなくなることを、肝に銘じるべきだろう。 ≫(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

以下の翁長沖縄県知事の発言も、政権にとっては寝耳に水だろう(笑)。筆者も、翁長さんよ、そんな和解して大丈夫なのかと心配したが、和解受け入れの訴訟と、工事の変更等の承認手続きは別物だと、将来に噴出する問題まで、訴訟で争わない等と言えるわけもない、と翁長知事は狸ぶりを見せる。菅官房長官は、「読めば判る」と自己中な解釈に拘泥しているようだが、官邸の負けと云うことだ。

そもそも、4日に成立した代執行訴訟の和解条項は県側との「円満解決」に向けた協議をすることが盛り込まれていたが、国は、協議をすっ飛ばして、3日後に是正指示を出すと云う、倫理節操矜持にも劣る行為に出た。馬鹿にするのもほどほどにしろと云う怒りだろう。官僚任せの為政を繰り返し、「心」の欠如した、不道徳な保守などと云うものは、所詮この程度と云うことだろう。毎日と琉球新報は以下のように報じている。

≪ 「敗訴でも権限行使」移設阻止へ沖縄知事
沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事は8日の県議会で、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の県内移設先・名護市辺野古 の埋め立て承認取り消しを巡る新たな訴訟で国に敗訴しても、移設阻止に向けて知事権限を行使できるとの考えを示した。政府と県の和解を受け、政府は新たな訴訟で判決が確定すれば移設問題は最終決着するとの認識だが、早くも解釈の食い違いが表面化した。
 翁長知事は新たな訴訟の判決に「従う」としたうえで、「和解は埋め立て承認取り消しに伴う2件の訴訟についてのもの。今後の国からの設計変更などは、法令に従って適切に判断していく」と述べた。国による設計変更を知事が承認するかなどは和解の範囲外との解釈で、判決確定後も移設阻止に向けて対抗する構えをみせた。和解成立後に、移設推進の主張を繰り返す政府側をけん制する狙いがあるとみられる。  和解条項では、新たな訴訟で判決が確定すれば「(双方が)判決に従い、その後も(判決の)趣旨に従って互いに協力して誠実に対応する」と確約した。菅義偉官房長官は和解した4日の記者会見でこの文言の解釈を問われ、「あいまいではない。お互いがこれで合意した」と、判決後は対決がなくなるとの認識を示していた。
 菅氏は8日の会見で翁長氏の発言について、「(訴訟に)負けることを考えて発言されたのかと思う」と皮肉を込めた。そのうえで「国としては(裁判所の) 決定に従い、和解条項を順守していく」との姿勢を示し、「和解条項は明快に書いてある。読めば分かることだ」と改めて強調した。 ≫(毎日新聞:佐藤敬一、高本耕太)

 ≪ <社説>辺野古是正指示
 独善と強権に対抗しよう 分かりやすく構図を描こう。  仲介者に促され、もめ事は話し合いで解決することを目指すと約束してみせる。だが、舌の根も乾かぬうちに相手方に短刀を突き付け、あるいは足を踏 み付けながら、こちらに従えと威圧する。それでいて、世間には笑顔を見せて善人ぶる。そんな厚顔極まる神経を持っているとしか思えない。
 時代劇に出てくる悪代官の話ではない。沖縄を組み敷こうとする現代の為政者だから始末に負えない。  これは、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を伴う新基地建設をめぐる安倍政権の対応である。辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事に対し、国は取り消し処分の是正を指示した。
 4日に成立した代執行訴訟の和解条項は県側との「円満解決」に向けた協議をすることが盛り込まれたが、国は協議の段取りを一切踏まず、わずか3日後に是 正指示を出した。取りも直さず、「唯一の解決策」と印象操作する辺野古移設に向け、司法判断を得ることを最優先すると宣言したわけだ。
 中谷元・防衛相はすぐに米政府高官へ報告し「辺野古が唯一の選択肢」と確認した。米国に忠誠を誓う姿と沖縄への強硬姿勢の落差という見飽きた光景である。
 予想されていたとはいえ、国の是正指示は裁判所が示した「円満解決」を目指す和解条項や「オールジャパンで米国と協議すべきだ」と求めた和解勧告の趣旨 にもとる。敗訴を恐れ、県との歩み寄りを演出しようとしたよこしまな思惑を自ら掘り崩す挙に出たことで、世論の反作用を引き起こすだろう。
 それにしても、和解成立後、翁長知事と会談した際に浮かべた安倍晋三首相の笑顔は何だったのか。  再協議に入るはるか前段での是正指示に対し、県幹部は「協議設定は国にとって『刺し身のつま』のようなものか」と吐き捨てた。県は不服を申し立ててあらがう。新基地を止める手だては裁判以外にも多くある。県は臆せずに渡り合ってほしい。
 地域の民意を背負った自治体の長と対立した国が、手だてを尽くさず、いきなりその権限剥奪を図った。それが代執行訴訟だった。
 裁判所は日本の地方自治に禍根を残すと疑問視し、和解が成立した。だが、安倍政権には独善と強権性をとがめられた反省が全くない。逆に沖縄側の対抗手段がくっきりしたと言えるだろう。 ≫(琉球新報・社説)


GDP成長率を日本経済が、経済成長率の基準値にしている現状では、経済の好不況は、首相や官房長官や財務・経産省、日銀の総裁が、どのような抗弁をしようと、経済成長の実態を把握する数値基準は、GDP成長率と云うことになる。14年は-1.0%だったし、15年も、-1.1程度になるのは、必須の状況だ。これで、日本経済は好況だ、将来展望も開けている。世界の投資家の皆さん、日本は買いですよ!最低限の経済の理屈が判っていたら、到底口には出せないが、安倍首相は、平気で言う。無知の無恥とは、こう云う人物のことを言うのだろう。株価が好調…官製相場と異次元金融緩和による為替誘導が貢献しているだけ。失業率が下がった…正規雇用1人に対し、2人の非正規雇用で演出。有効求人倍率上昇…ブラッ企業の続出で、非正規が逃げてゆく。

実質GDP数値を見れば判るが、最悪の政権と言われている民主党政権下でも、GDP成長率は+2.0だからね。鳩山、菅、野田でこれだよ。為替と株が動かなかったのは、白川総裁が、世界経済全体を眺めると、定常乃至は縮小経済状態にあるので、株価が上昇しないのには、それ相当の経済理論がある、と判断したからだ。つまり、実は、頼りない白川前総裁は先見の明があっただけで、マスメディアによって叩かれていただけに過ぎない。

実質賃金は、2012年、安倍政権以降、決まりきったように下げ続けている。12年以降、たったの一回もプラスに転じたことがない。驚くだろう、これが日本の首相にとっては、好況であり、津々浦々に富が行き渡ると言うのだそうだ。更に、日銀の破れかぶれマイナス金利は、日本の都市銀行は、想像もしなていないかった経営破たんと云うシナリオまで見えてきている。日銀黒田には、その処方箋はまったく描けていない。筆者は、個人的に2000年辺りから、金の現物に投資しているが、虎の子の預金すら下ろせなくなる、ギリシャのような阿鼻叫喚は、他人事ではなくなりつつある。読売は、意味が判って報じたかどうか定かではないが、タンス預金増加か?と報じている(笑)。

≪ タンス預金増?…現金残高、13年ぶり高い伸び
企業や個人が現金を手元に置く傾向が強まっている。
 日本銀行が9日発表した2月のマネーストック速報によると、世の中に出回っている現金の月中平均残高は前年同月比6・7%増の90兆3000億円で、2003年2月以来、13年ぶりの高い伸びになった。
 日銀が2月16日に始めたマイナス金利政策の余波で、預金金利も軒並み低下した。お金を銀行に預けても利息がほとんど得られないことから、現金を手元に置く「タンス預金」が増えている可能性がある。  現金の残高は、日銀が2%の物価安定の早期実現を目標に13年4月から「量的・質的金融緩和」を始めて以降、金利低下を背景に増加傾向が強まった。マイナス金利の導入で、こうした動きに拍車がかかった可能性がある が、日銀は「マイナス金利の影響かどうかを判断するのは、やや時期尚早だ」(幹部)としている。 ≫(読売新聞)


このような諸状況は、安倍政権にとって追い風とは言い難い。日を追うごとに、安倍政権は追い込まれる可能性が高い。おそらく、内閣支持率を上昇させる手立ては、プーチン会談以外残っていないような有様だ。つまり、野党の連中、特に民主党及び連合と云う組織が、国や国民のことを思って存在しているのであれば、この空気感を感じ取るはずである。もし、そのような風を感じることなく、野田豚のような国賊的言説に明け暮れているのなら、安倍政権はじめ、民主党なども、日本と云う国を壊す圧力に与した政治集団だと言えるのだろう。

安倍の広報の一人、田崎史郎が衆参W選はないと云うコラムをぶっ放した。それ相当の揺さぶりが含まれる。現代ビジネスでの露出もめっきり減った、もう一人の広報担当長谷川幸洋がW選なしと書いてくれれば、完璧にW選以上のことがあるのだろう。ただ、急激な内閣支持率低下が起きると、北方領土くらいで、有権者はピクとも動かない可能性がある。安倍の周辺では、高評価になるだろうが、一般生活者にとって、防衛する面積が増えてだけじゃないの?と云う虻蜂取らずな結果もあり得る。

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●解散総選挙モード突入か リーマンショック以上の日本経済の危機

2016年03月09日 | 日記
これから始まる「新しい世界経済」の教科書: スティグリッツ教授の
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徳間書店


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●解散総選挙モード突入か リーマンショック以上の日本経済の危機 

今夜は、“「実体経済から金融経済」 次は「戦争経済」へ突入か?”と云う見出しを書きこんだが、やめた。どうも、野党の連中がウロウロしているのを尻目に、安倍晋三の周りでは、選挙公示日間近の空気感が漂っている。此処数日のマスメディアの関連記事を拾い出しただけでも、その臭いは窺える。以下に、拾い出してみよう。一番目に掲載した記事は、7日の予算委員会における、安倍晋三の発言だが、この発言の逆な現象が、安倍の心の中で起きていると解釈した方が、妥当性がある。

“解散は、まったく考えていない”これは周知のように、日本の首相が言って良いと公認されている「嘘」の一つである。だから、言葉通り受けとめるのはアホウということだ。次に、大震災は、どんな馬鹿でも認知できるので、その通りだが、“リーマンショック”でも起きない限りと云う発言は、曲者だ。なぜなら、既にアベノミクスの大失敗と世界不況の煽りを食い、日本経済は、経済成長どころか、経済縮小に入っていることが、GDPのマイナス成長から歴然としてきた。

これに、経済成長のカンフル剤として投入された、異次元緩和と為替誘導(円安)、官製相場(株高)は、国富を注ぎこんだのと同じ意味なので、にもかかわらず、経済成長どころか、経済縮小の状況になっている。更に、この国富の投入は、更に日銀黒田のマイナス金利と云う荒業まで投入させる事態を招いている。つまりだ、結論を急げば「日本経済はリーマンショック以上の危機にある」となるので、リーマンショック以上の事態が、アベノミクスと世界同時不況の中で起きている。

リーマンショックは頭を殴られた程度だが、あらゆる国富を投じても、日本経済が、根本的に縮小している事実は、これは、リーマンショック以上の経済危機が起きていると云うことになる。本質的、縮小国家の証明に近いのだ。だから、安倍の言葉には、嘘はないのかもしれない。リーマンショック以上に酷い経済状況なのだから、消費増税なんて出来るわけがない。世界のどこかの国が、けん引する経済リーダーとなるのなら、漁夫の利的アベノミクス効果も希望があるが、米国経済の好況感は、金融経済の世界の話で、実体経済主義な日本経済にとって、波及効果は望めない。公認された「嘘」と、リーマンショック以上の事態は、既に起きているのだから、「消費増税中止を争点で解散総選挙」と安倍首相は発言したつもりかもしれない。


≪ 首相、衆院解散は「全く考えていない」 
  消費税増税は「リーマン・ショックや大震災が発生しない限り予定通り…」
参院予算委員会は7日午前、「経済・財政」をテーマに集中審議を行った。安倍晋三首相は来年4月の消費税率10%への増税を先送 りしたうえでの衆院解散について「全く考えていない」と改めて否定した。増税については「リーマン・ショックや大震災の事態が発生しない限り予定通り引き 上げる」と従来の答弁を繰り返した。
 首相はまた、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)について「現下の世界経済を踏まえた対応が最大のテーマになる。世界経済の持続的な力強い成長に貢献するよう明確なメッセージを発出したい」と述べた。
 その上で、世界経済の問題を議論するために新たに設置する会議「国際金融経済分析会合」での有識者の意見を踏まえ、「(サミットの)議長国として各国首脳と突っ込んだ議論を行いたい」と意欲を示した。
 与党内で取り沙汰されている経済対策を盛り込んだ平成28年度補正予算案編成については「現段階で全く考えていない。28年度予算の早期成立が最大の景気対策だ」と述べた。 ≫(産経新聞)

≪ 厚労省、年金運用実績公表へ GPIFへの疑念払拭狙う  
公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)について、厚生労働省は、株式の個別銘柄など投資先の情報を一定期間後に公表する方針を決めた。今は市場への影響を理由に公開していないが、透明性を高めてGPIFによる投資方針が政治に影響されているという疑念を拭う狙いだ。今国会に提出する年金制度改革法案に盛り込む。
 法案では、運用実績や省令で定める事項を記載した書類を作成し、一定期間後の公表を義務づける。公表内容や時期、方法は社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会での議論を踏まえて決め、2017年中にも省令を改正する。  現段階では、個別の株式・債券の保有数や時価総額、運用方針を決める経営委員会の議事録の公開などを想定。議事録は10年後の公開を検討している。
 検討されていたGPIFによる株式への直接投資解禁は、労使の反発で今回の法案の施行から3年後に議論が再開されることになった。塩崎恭久厚労相は8日の記者会見で「関係がある話ではない」と述べ、直接投資の解禁を見据えた改正ではないと強調した。 ≫(朝日新聞:久永隆一)

≪ 「保育園落ちた」ネット世論で政権一転 首相も軌道修正  
「保育園落ちた日本死ね!!!」と題した匿名のブログが、政府・与党に波紋を広げている。政権幹部は当初、「議論しようがない」などと受け流していたが、ネット上でブログに共感する声が広がると一転して待機児童への政府対応を強調。世論の大勢が政権批判に転じないよう、神経をとがらせている。
「ブログを読ませていただきました。共鳴を呼んで広がっているのは承知しています」。加藤勝信・1億総活躍相は8日の閣議後の記者会見でそう語り、待機児童の受け皿拡充に取り組む考えを強調した。石破茂・地方創生相も「(ブログに)刺激的な表現が使われている。そこまで言う状況になぜ陥ったのか、虚心に分析しないといけない」と述べた。
 ブログの内容は2月29日の衆院予算委員会で民主党の山尾志桜里氏が取り上げた。安倍晋三首相に「社会が抱える問題を浮き彫りにしている」とただすと、首相は「実際に起こっているのか確認しようがない。これ以上議論しようがない」と突き放した。議員席からは「ちゃんと(ブログを書いた)本人を出せ」などとヤジも飛んだ。
 これに反発した市民らが、「保育制度の充実は必要」とする署名活動をネット上で開始。近く数万人規模の署名を山尾氏に提出する。今月5日には「保育園落ちたの私だ」と書いた紙を掲げた母親ら約30人が国会前に集結し、抗議の声を上げた。こうした動きに野党も呼応し、政権批判のボルテージを上げる。  政府内からは「保育とか介護の批判は分かりやすい」(官邸幹部)と、懸念する声が浮上。首相は7日の参院予算委で再びブログに対する受け止め方を問われ、「受け皿作りは、政権交代前の倍のスピードで進めている」と、政府の取り組みに理解を求めた。
 昨年、安全保障関連法案への国会前での抗議活動がインターネットなどを通じて広まったことから、政権幹部はネットで世論に火がつくことを警戒する。自民党の谷垣禎一幹事長は8日の記者会見で、待機児童対策の重要性を指摘した上でこう語った。「ネットを利用した社会運動がずいぶん出てきている。情報手段と世論の喚起の仕方、政治、社会運動のあり方も変化している。十分意識しなければならない」(石井潤一郎、高橋健次郎)   
   ◇  
「保育園落ちた日本死ね!!!」と題した匿名のブログが投稿されたのは2月15日。「一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。 どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」「(議員が)不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園増やせよ」などと、入所選考に落ちた怒りが つづられた。フェイスブックで共感を表す「いいね!」が押された件数は4万6千件を超え、同じ趣旨の投稿が相次ぎ、ツイッターなどでも議論が広がった。 ≫(朝日新聞)

≪ 安倍首相 非正規労働者と懇談 
1億総活躍でヒアリング 安倍晋三首相は8日、首相官邸で非正規雇用で働く男女9人と意見交換した。政府は今春にまとめる「ニッポン1億総活躍プラン」に正社員と非正規労働者の賃金格差を是正する「同一労働同一賃金」の実現を盛り込む方針で、現場の声を聴くことが狙い。
 この日はパート労働者や契約社員、定年退職後に継続雇用で働いている人から悩みや課題について意見を聞いた。参加者からは「仕事内容に大差がないのに福 利厚生などでは社員が守られ、非正規が守られていない」「パートでは時給が上がらない。年末年始や連休があると収入が減り、正社員との差は歴然としてい る」などの声が出た。
 首相は「日本は正規、非正規という言い方があるが、欧米ではこうした分類はしていない。(それぞれの)事情によって働き方を選択でき、その選択で不利益にならないようにしなければならない。その中で同一労働同一賃金に踏み込みたい」と応じた。  ≫(毎日新聞:加藤明子)

 ≪ 女性の再婚禁止期間、100日に短縮…閣議決定
政府は8日午前の閣議で、女性の再婚禁止期間を6か月から100日に短縮する民法改正案を閣議決定した。 離婚時に妊娠していないことが証明できれば、離婚直後でもただちに再婚を認めるよう改める。100日を超える再婚禁止期間を憲法違反とする最高裁の判決を受けた措置だ。政府は今国会での成立を目指す。
 再婚禁止期間の規定が見直されるのは、1898年(明治31年)の制定以来初めて。民法の再婚禁止期間に関する規定は、離婚した女性が産む子どもの父親が前夫か再婚相手かといった父子関係をめぐる争いを防ぐため設けられている。
 改正案は、女性が離婚時に妊娠していないことや、離婚後の妊娠であることが医師の証明書で確認できるなど、混乱が生じないことを条件に100日以内でも再婚を認める。離婚時に前夫の子どもを妊娠していたとしても、出産後は即再婚できる規定は変わらず残る。 ≫(読売新聞)

 ≪ 安倍首相、福島の除染強化を表明…参院予算委  
安倍首相は7日の参院予算委員会の集中審議で、東京電力福島第一原発事故に関し、「除染(作業で出た)廃棄物を生活現場から撤去し、(汚染土などを保管する)中間貯蔵施設へ速やかに搬入しなければならない。一層取り組みを強化する」と述べた。 首相は除染廃棄物撤去の進行状況について、8日に関係閣僚から報告を受ける考えを示し、丸川環境相は中間貯蔵施設の用地買収交渉の見通しについて、「年度内に工程表を示したい」と述べた。
 また、本格化している春闘交渉に関して、首相は「(経済団体か ら)賃上げの呼びかけを継続するとの回答を得た。4月の賃上げが実現されることを期待する」と述べた。首相は産業界の代表と意見交換する4日の「官民対 話」で、過去2年の賃上げの流れを推し進めるよう要請した。 ≫(読売新聞)

 ≪ 首相、春闘で「賃上げ実現を期待」…参院予算委
安倍首相は7日午前の参院予算委員会の経済・財政に関する集中審議で、本格化している春闘交渉に関し、「(経済団体から)賃上げの呼びかけを継続するとの回答を得た。4月の賃上げが実現されることを期待する」と述べた。 首相は4日に開いた産業界の代表と意見交換する「官民対話」で、過去2年の賃上げの流れを推し進めるよう要請した。
 5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に関しては、「(各国の)リーダーと現下の経済状況に対し、どのように協調できるか。明確なメッセージを発することで、世界の持続的で力強い成長に貢献したい」と語った。自民党の山崎力氏の質問に答えた。
 また、憲法9条改正について、「まだまだ国民的な理解、支持が広がっている状況にはないと認識している」と語った。民主党の藤末健三氏への答弁。 ≫(読売新聞)

 ≪ 首相「福島を水素エネ開発拠点に」…五輪で活用
安倍首相は5日、福島県を水素エネルギーの技術開発拠点とする「福島新エネ社会構想」を発表した。  風力発電などで燃料電池車1万台の年間使用量に相当する 水素を毎年製造できるよう、2020年までに体制を整える。福島で製造した水素は20年東京五輪・パラリンピックでも活用する。福島県や電力会社も加えた 官民合同の構想会議を月内に設置し、具体的な計画づくりに入る。
 構想では、同県内の風力発電所などから1万キロ・ワット級の再生可能エネルギーを集め、水を電気分解して水素を製造する。液化水素の効率的な輸送技術なども開発し、東京五輪で選手らを輸送する燃料電池車に水素を充填したり、選手村施設の電気エネルギーとして活用したりする。
 水素は燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない。しかし、水素の製造過程では現在、石油などの化石燃料が使われることが多く、CO2が排出される。風力など再生可能エネルギーで水を電気分解すれば、CO2削減につながる。 ≫(読売新聞)

 ≪ 辺野古代執行訴訟、国と沖縄和解…工事中断指示
沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る代執行訴訟で、国と県は4日、和解した。
 国が移設工事を中止した上で、国と県が解決に向けた協議を行うという福岡高裁那覇支部の和解案を受け入れた。ただ、辺野古移設を「唯一の選択肢」とする安倍内閣と、移設反対を掲げる沖縄県側が合意に達するのは容易ではない。
 和解を受け、安倍首相は4日、中谷防衛相に工事中止を指示した。その後、首相は沖縄県の翁長雄志知事と首相官邸で会談し、「訴訟合戦を延々と繰り広げる状況が続けば、普天間飛行場の移設も沖縄の負担軽減も進まず、現状が固定化されてしまう」と述べた。翁長氏は「和解が成立したことは、大変意義がある」と応じた。
 会談に先立ち、首相は記者団に「普天間飛行場の全面返還のため には辺野古への移設が唯一の選択肢であるとの国の考え方に変わりない」と強調。これについて、翁長氏は首相との会談後、「辺野古に基地を造らせないという ことは、これからも信念を持ってやっていく」と反発した。  ≫(読売新聞)

≪ 国際金融経済分析会合
  
16日開催 ノーベル賞学者のスティグリッツ氏招く
政府が5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け、世界経済情勢について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」の初会合を16日に開くことが7日、分かった。初会合には、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授を招く方針だ。
 スティグリッツ氏はこれまで、安倍政権の経済政策「アベノミクス」に賛意を示してきた。第2回会合は翌17日とし、デール・ジョルゲンソン米ハーバード大教授や、元日銀副総裁で日本経済研究センター理事長の岩田一政氏から見解を聞く。
 会合の設置は安倍晋三首相が主導。首相や石原伸晃経済再生担当相ら関係閣僚、日銀の黒田東彦総裁が参加して計5回程度開く。議論の結果は、来年4月の消費税増税の是非をめぐる政治判断に影響するとの見方が政府、与党内に出ている。≫(毎日新聞)


少々羅列し過ぎたきらいはあるが、強権安倍晋三が、マスメディアを掌握したことで、選挙モードへの号砲がなったような動きを見せている。キーポイントは、代執行訴訟における、唐突な安倍首相の和解受け入れ宣言にあるのだろう。和解受け入れが、号砲のように、安倍晋三は国民に揉み手をしながら接近している。これは、どう解釈すれば良いのだろうか。急にものわかりの良い、善政政治家に変身した。衆参W選なら、野党の連携もそれなりに陣容が整うだろうが、解散総選挙を、参議院選前に打つのが、与党としてはベストなので、「揉み手と懐柔」の度を増すに違いない。ファッショな安倍の姿は、当面マスメディアでお目にかかれない。そうなったら、いつ、どのようなキッカケでも、安倍は、解散を決意する様相を呈してきた。

経済学私小説〈定常〉の中の豊かさ
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●23区格差、自立と人情と共同体 社会的共通資本のあり方

2016年03月08日 | 日記

 

貧乏物語 (岩波文庫 青132-1)
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現代思想 2015年3月臨時増刊号 総特集◎宇沢弘文 -人間のための経済-
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●23区格差、自立と人情と共同体 社会的共通資本のあり方

現代ビジネスの『「東京23区格差」のウラ側 〜足立・葛飾・江戸川「下町三兄弟」の幸せな毎日』と云う、ルポ記事を読んでみた。このルポを読みながら、筆者は、故宇沢弘文氏を思い出さずにはいられなかった。宇沢氏の「社会的共通資本」の概念と、足立・江戸川・葛飾の3区に共通項があるかどうか、今ひとつハッキリしないが、思い出してしまったのだから仕方がない(笑)。おそらく、宇沢氏の高尚な学問的社会的共通資本の概念と、下町の持つ共同体意識の概念が、筆者のどこかで、重なり合っている所為なのだと思う。

■「社会的共通資本」とは―――
日本の経済学者・宇沢弘文が提唱した概念。具体的には、森林・大気・水道・教育・報道・公園・病院など産業や生活にとって必要不可欠な社会的資本を示すが、2000年11月に宇沢が刊行した『社会的共通資本』(岩波書店)で「一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する。」と定義しているように、単なる「社会資本」を超えた意味合いをもつ。社会的共通資本は、大きく「自然環境」「社会的インフラストラクチャー」「制度資本」の三つに分けられ、それらに属する全てのものは、国家的に管理されたり、利潤追求の対象として市場に委ねられたりしてはならず、職業的専門家によってその知見や規範に従い管理・維持されなければならないとされている。  ≫(コトバンク:知恵蔵miniの解説)

宇沢氏が経済学の枠を超えたリベラルなイデオロギーの持ち主であったろうが、学者として指摘した、市場原理に基づく経済政策は、人間の価値を低下させる重大な問題点を含むので、人間的生き方の基本部分は、政治や資本の道具として利用させてはならないアンタッチャブル領域と明示した視点は、先見の明がある。否、先見の明などと評論したら、宇沢氏から、先見ではなく、人間が社会を構成する基本だ、原点だと、お叱りを受けることになりそうだ。“森林・大気・水道・農業・教育・医療・・報道・公園など”において、現在の日本は、宇沢氏が最も嫌った、

宇沢氏が、36歳の若さで“市場原理主義の巣窟”シカゴ大学の教授に就任し、新自由主義のリーダ・ミルトン・フリードマン氏(ノーベル経済学賞受賞)と対立したことが、経済学は何の為にあるのかと云う哲学的領域に達した原点であり、ノーベル経済学賞を受賞しそこなった、遠因でもあったろうが、宇沢氏が間違いを指摘し続けた“新自由主義的経済”が、アメリカと云う国の国民を分断させ、2大政党制の危機にまで至らせていることを目撃すると、アメリカも惜しい学者を失ったものだ。まあ、師弟関係にあった、ジョセフ・スティグリッツ氏が反市場原理主義の理論でノーベル経済学賞を得たのだから、宇沢氏は充分満足していたかもしれない。

小泉政権以降、日本の政治は濃淡はあるものの、この悪しき新自由主義経済の、悪循環スパイラルに入っている。“森林・大気・水道・農業・教育・医療・・報道・公園など”の社会資本を眺めるだけで判るが、農業・教育・報道は、共通資本から遠ざかり、国家官僚の行政支配や、民営化、TPP参加等々で、風前の灯火だ。報道機関に至っては、利益集団になり下がり、政権の提灯記事掲示板と化しているのだから、情けない。菅官房長官に潰されたと噂の「NHKクローズアップ現代」のHPが残っていたので、参考引用しておく。最後に、宇沢弘文氏を思い出させてくれた現代ビジネスのルポも続けて掲載しておく。

ルポの方の話が、お座なりになったが勘弁いただこう。個人的には、下町の人情も悪くないな、と思うのだが、知り合いがいない、見てみぬふりをする、冷やかな街も嫌いではない。「孤独死」を悲劇と捉えるのが、世間の空気だが、孤独死と「孤高の死」の区別を誰がするのだろう?個人的には、そう云う思いもある。今の日本人の多くは、日常において通俗的美辞麗句を口にして、争いから逃れ、個人的生活を愉しむ傾向が強くなっているが、一歩、自分の考えはどうなのだと、問いかける生き方にも興味を持って貰いたいものだ。

≪ 人間のための経済学 宇沢弘文 格差・貧困への処方箋
天使にふんしたこの男性。
実は世界的な経済学者。
今、その存在が注目されています。
ノーベル賞受賞経済学者 「彼の研究は時代を先取りしていた。」
親交のあった経済学者 「社会の病を治す医者。」
先月(9月)、86歳で亡くなった宇沢弘文さん。

行動する経済学者で、経済成長が引き起こす問題の解決策を、現場に飛び込み提案しました。
すべての人々が幸せに生きられる社会を考え続け、その思想は世界から高く評価されました。
経済学者 宇沢弘文さん 「経済は単に富を求めるものではない。」
今、宇沢さんの思想は、地域再生や被災地の復興の現場にも息づいています。
・格差や貧困が深刻で出口が見えない日本。
今夜は、宇沢弘文・人間のための経済学に迫ります。

「人間のための経済学 知の巨人・宇沢弘文」
NHKは、金融危機のさなかの2009年、宇沢さんへのインタビューを行っていました。
経済学者 宇沢弘文さん 「経済学の原点は人間、人間でいちばん大事なのは、実は心なんだね。 その心を大事にする。 一人一人の人間の生きざまを全うするのが、実は経済学の原点でもあるわけね。」
研究室を飛び出し、現実の問題と向き合うことを大切にした宇沢さん。
公害問題に悩む水俣では、患者を訪ねてはその苦しみを聞き、空港建設問題に揺れる成田では、国と住民の調停役を買って出ました。
理論にとどまらず、現実の世界に貢献しようと考えていたのです。
東京大学名誉教授 神野直彦さん 「社会の病を治す医者になるんだというふうに決意された経済学ですので、その病理をいかに治すのか、処方箋まで書こうとした。」
宇沢さんが経済学を志したのは、戦後まもなくのころ。
東京大学で数学を学んでいましたが一冊の本との出会いが人生を変えたといいます。
 「貧乏物語」。
経済学者、河上肇が書いたものです。
世界の経済大国・イギリスで、貧困が深刻になっていく問題を明らかにしました。
すべての人が幸せに生きる社会を作りたい。
宇沢さんは経済学の道へ進みます。
研究のため向かったのは世界経済の中心、アメリカ。
経済成長の条件を数学的に分析した理論を構築。
36歳でシカゴ大学の教授に就任しました。

ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ教授。 宇沢さんに教えを受けた1人です。 ノーベル経済学賞 ジョセフ・スティグリッツ教授 「彼は最も大切な先生です。 研究だけでなく個人的にも教えられました。 1日中、数学や経済学について語りあったものです。 世の中を変えたいと経済学の世界に入った私には、刺激的でした。」
宇沢さんは大学で1人の同僚と激しく対立するようになります。 ミルトン・フリードマン。 市場競争を極めて重視する新自由主義の中心人物です。
・社会のすべてを極力、市場に委ね、競争させたほうが経済は効率的に成長すると主張していました。
・これに対し宇沢さんは、効率を優先し、過ぎた市場競争は格差を拡大、社会を不安定にすると反論しました。

 ノーベル経済学賞 ジョセフ・スティグリッツ教授 「教授の研究の大きな特徴は、格差の問題に注目したことです。 一方シカゴ大学には、格差は取り上げる問題ではないという人さえいました。 格差問題を全くかえりみない市場原理主義の考えと、教授は相いれなかったのです。」
・アメリカ社会が効率や競争ばかりを重視するようになったと感じた宇沢さん。
1968年、日本に帰ることを決意しました。
・しかし、日本で目にしたのも、経済成長が必ずしも幸せな暮らしにつながっていない現実でした。
・東大教授となった宇沢さんは帰国から6年後、急速に進む自動車社会に警鐘を鳴らします。
・当時、豊かさの象徴とされていた自動車。
・宇沢さんは、それが本来、歩く人のためにある道を奪っていると主張。
・事故の増加や大気汚染など、社会にばく大な負担を強いるという、新たな見方を提示しました。 経済成長と幸せな暮らしを両立させるにはどうしたらよいのか。
・宇沢さんが提唱したのが、社会的共通資本という考え方です。

 

・社会的共通資本とは医療や教育、自然など人が人間らしく生きるために欠かせないもの。 ・これらは市場競争に任せず、人々が共同で守る財産にします。
・その基盤を確保した上で、企業などによる市場競争があるべきだと考えたのです。

経済学者 宇沢弘文さん 「市場で取り引きされるものは、人間の営みのほんの一部でしかない。 医療制度とか、学校制度とか、そういうのがあることによって社会が円滑に機能して、そして一人一人の人々の生活が豊かになる。 人間らしく生きていくということが可能になる制度を考えていくのが、我々経済学者の役割。」

人間らしく生きる社会とは何か。 宇沢さんはみずから、ある実践をしていました。 リュックサックの中にいつも入れていたのはランニングシャツ。 大学と自宅の間を走って往復。 自動車に頼らない生活を心がけていました。 宇沢さんの生き方は多くの人たちの心に残っています。
弔問に集まった、かつての教え子たち。 政策立案や日本経済の第一線で活躍する人材になりました。
京都大学名誉教授 松下和夫さん 「宇沢先生は厳しい先生だったんですけれど、やさしいんですね、ものすごく。 主流派経済学者は、すでに出てるデータだけを見て処理するわけですが、(宇沢先生は)現場に出て行ってぶつかっていた。」
元環境省・大学教授 一方井誠治さん 「宇沢先生が心配していた環境の悪化を(環境省の)現役時代に止められなかった。 宇沢先生の遺志を継いで、なんとか少しでも貢献して死んでいきたいと思っています。」

今、宇沢さんの家族は遺品の整理を続けています。
宇沢さんが病に倒れたのは東日本大震災の10日後です。
パソコンに残されていたのは「東日本巨大地震」という空のフォルダ。
何を書こうとしていたのか。 家族は思いを巡らせています。

妻 宇沢浩子さん 「(被災地の)絆を取り戻してあげたい、みんなで地域で一緒に暮らすことが楽しいというところまで助けていきたいなと思った。 それはまとめさせてあげたかったなと思います。」

 経済学者、宇沢弘文。
人間のための経済学を追究し続けた人生でした。
・「人間のための経済学 知の巨人・宇沢弘文」 ゲスト内橋克人さん(経済評論家)

●宇沢さんはどんな方だった?

対談する相手が口を開きますね。 すると表情がね、とても穏やかになるんですよ。
そして相手、語り手の言いたいことを引き出していかれる、とても優しい方なんですけれどね、それだけではありませんね。
厳しく優しい方なんですね。
ですからご自身が信じていらっしゃること、信条となさってることですね、これについて、正確でない発言、それについては厳しく問いただす、そういう先生だったと思いますね。

 ●厳しさは、宇沢さんを語る上で欠かせないもの?

そうですね。 そして、その厳しさとは何かということが、大変、今ね、話さなければならないと思うんですね。
つまり厳しいっていうことは、誰に対して厳しいのか、誰に対して優しいのか。
例えば自然災害がある、被災者、被災した人がいますね。
しかし、自然災害だけではなくて、権力とか、経済、あるいは政治ですね、それによる被災者、政策の間違いによって被災する、そういう人々、いわば社会でそういう人々がさげすまれたり、あるいはまた忘れ去られたりする、そういう人々に大変に心を寄せられる。
本当に寄り添った経済学ですよね、それを追究された。
つまり、いつも社会的、政治的、経済的被災者に寄り添う経済学だったというのがね、私の率直な追憶のことばですね。

 ●人間のための経済学であった?

そうですね。 つまり、人が人らしく生きていける。 これ、とても難しいことですよね。
そして今は、ますますそれが難しい時代に入ってますよね。
世界化、経済の世界化、あるいはまたですね、利潤の追求の厳しさ、そういう競争の激しさ、そういう中でね、ますます人が人らしく生きていける。
これはね、それを裏付ける制度がなければならない。 最初に神野さんがおっしゃってましたね、お医者さんだと。 世界の病理を治す、癒やすお医者さんである。
その医師、名医、優れたお医者さんとは誰かといえば、絶えずこう、臨床、患者さんと向き合って得たいろいろな問題、それを基礎に変える。
基礎と臨床、現実と原理ですね。
その間を、本当に短いサイクルで、絶えず往還、往来なさる。
ですから、学理から見てどうなのか、そこを問われる。
そして現実を大事になさる。
こういう学理追究者だったと思いますね。

 ●社会的共通資本という考えに込められた宇沢さんの思いとは?

これはね、単なる公共財を意味してるんじゃないと思うんですね、経済学という。
そうではなくて、利益追求の対象にしてはならない、誰のものでもない、みんなのものだというね、こういうひと言で言えば、これはとても概念は難しいと思いますけれども、そうした新しい経済の在り方、つまり社会を転換しなければとても実現はできない。 そういう経済、あるいはその制度、これをどうあるべきかを、本当に具体的に、しかも理論的に追究なさった、珍しいけうの先生だったと思いますね。

 “多面的に見よ” 
宇沢氏の教え 学校で使われる社会科の教科書。
宇沢さんが長年監修してきました。
宇沢さんと一緒に仕事をしてきた、編集者の尾栢寛昭さんです。
宇沢さんから学んだのは、社会の表側だけでなく、その背後に目を向ける大切さだと言います。
東京書籍 尾栢寛昭さん 「20世紀の文化、これは私が編集長をやっていたときに作ったもの。」 サッカー・ワールドカップの写真。 尾栢さんは同じページに、子どもたちの労働によってサッカーボールが作られている写真も載せました。 華やかなイベントの裏にある社会の現実にも、思いをはせてほしいと考えたからです。
東京書籍 尾栢寛昭さん 「こういう写真を1枚示すことによって、違うものの見方ができてくる。 社会に対するものの見方というのを、このままでいいということでなく、さらに良くしていくためにはどうしたらいいのかという観点を常に持っていてもらえればいいなと思う。」

・“宇沢イズム”どう実現 教え子たちの模索 地域再生の現場にも宇沢さんの考えは息づいています。
都市政策が専門の、千葉大学大学院岡部明子教授です。
14年前に宇沢さんと出会った岡部さん。 社会的共通資本の考えに基づいた街づくりを模索してきました。 岡部さんが、その実践を続けている場所があります。
千葉大学大学院教授 岡部明子さん 「あれが、かやぶきの家です。」 築100年以上の古民家。
長年、地域に残るこの風景には、経済性だけでは計れない価値があると考えました。
 住む人がいなくなり放置されていた家。 岡部さんは学生と、傷んだ屋根の修理に取りかかりました。 作業を続けるうちに、単に風景を残す以上の効果が現れてきました。
・学生と住民の間に交流が生まれ、地域の課題を共に話し合うようになったのです。
・今ではこの家は、地域の外からも人を呼び込む拠点となっています。 男性 「いいですよ、最高。 昔のことを思い出す。 自分たちの気持ちの誇りになります。」
経済原理のもとで見放されつつあった建物でも、地域を育む共有財産になりうると岡部さんは感じています。
千葉大学大学院教授 岡部明子さん 「宇沢先生から教えていただきました『社会的共通資本』。
なかなか理論ではとらえどころのないものなんですけれども、この建物を見てそういうこと(社会的共通資本)を考えたときに、ふと本質の一端に触れた気がしました。」

・被災地の復興に宇沢さんの精神を生かそうという人もいます。 宮城大学で街づくりを研究する風見正三教授です。 宮城県東松島市は、津波で大きな被害を受けた集落の高台への移転を進めています。
風見さんはここに建てられる小学校の計画作りを任されています。
宮城大学教授 風見正三さん 「学校の教育というのも社会的なひとつの共通の財産なので、みんなでつくっていく仕組みをここから始められたら、東北から新しい道というか、未来が始められる。」
実は風見さんは6年前まで、大手建設会社で大型商業施設の開発などを手がけてきました。 そこで目にしたのは、開発の陰で寂れていく地元の商店。
次第に、利益だけを追求する都市開発に疑問を抱くようになりました。

その後、宇沢さんの社会的共通資本の考え方を知った風見さん。
本当に住む人のためになる地域開発とは何かを考えようと、会社を辞め、研究者の道に進んだのです。
小学校の設計で心がけているのは、できるだけ多くの人を巻き込むことです。
宮城大学教授 風見正三さん 「子どもたちや教員、校長先生、そういう人たちの意見を踏まえながら、何十回、百回と続けていきながらひとつの形にかえていった。」
さらに自然保護団体と協力し、学校の近くに遊び場も作りました。 作業したのは地元の人たちです。
宮城大学教授 風見正三さん 「宇沢先生がいちばん言われたのが現場主義。 現場の人たちにすばらしい知恵があって、それを脚光を浴びさせながら市民が主体的に街をつくっていく。 私たちの学校だと思ってくれることが、宇沢イズムの実現だなと思います。」

人間らしさ求めて 見直される宇沢弘文
 ●取り組みが多様な分野にまたがり、その影響が広がっている?

そうですね。 宇宙的といいますか、非常にユニバーサルですよね。
ですから、それぞれの分野に種をまかれた。 本当の理解者を見つけては、教えて、育てていかれたわけです。
そういう方々が今、現実社会、それぞれのところで種をまいていらっしゃる、実行していらっしゃるわけですよね。
そのことが、これからの本当の意味の社会転換に結び付いていく、これを望んでおられたと思いますね。

 ●今の日本にとって宇沢さんの考え方が持つ意味、意義はどこにある

大きいですね。 宇沢さんはね、国富、国の富ですね、GDPとかその他、これが大きくなるっていうことと、一人一人の国民が豊かになるということは違う。
これがますますかい離していく、離れていく。 そこに日本経済の、日本社会の病理があるということを、はっきり分析なさっているわけですよね。
そういう意味からいえば、本当の意味で一人一人が豊かになっていく。
そのために、人口減少社会、あるいはそのGDPそのものが減少していく。
もはや大国ではなくなった、一人一人が豊かになるためにどうするのか、その制度はどうあるべきか。
これは一人一人の、つまりお弟子さんといいますか、現実社会でおやりになってる方々が、種をまいてるわけですね。
その人々は、ある意味では、宇沢先生の存在、知らないかもしれない。
社会的共通資本ということばを知らないかもしれない。
それと知らず、しかし、全くそういう意味からいったら、継承者、実行者、実際にしていく人々、こういうふうにいえると思うんです。
そういう人が1人でも増えてほしいと、社会転換、目指すべきですね。
(脈々と受け継がれていく、古くて新しい考え方?)
そうですね。 まさに古くて新しい、これからさらに先を見たときに、サーチライトの光を前に照らしたときに、その前に見えるのが宇沢さんの姿。 こういうふうに思います。
 ≫(NHKクローズアップ現代:2014年10月30日(木)放送の書き起こし記事より)筆者注:テレビ画面の解説も入るので、多少読みづらさあり。



≪ 「東京23区格差」のウラ側 〜足立・葛飾・江戸川「下町三兄弟」の幸せな毎日
カネはないけど人情がある
東京23区はまるでひとつのクラスのようで、カネ持ちセレブや秀才がいれば、ヤンチャもいるし、できない子もいる。でも、他人に勝つだけが人生じゃない。三兄弟は、そのことをよく分かってる。

 ■スタバはないけど
2月のある昼下がり、江戸川区小岩の駅前には、のどかな陽光が降り注いでいた。どの町にもある牛丼屋や携帯電話ショップに混じって、ひなびたアーケードには個人商店もまだまだ残っている。
ある婦人服店の軒先には、ダウンのコートがぎゅうぎゅうに吊り下げられ、赤いマジックペンで「3000円」と書かれた値札が風に揺れていた。店主の老婦人がこう話す。
「安いでしょ。古着じゃありませんよ。みんな新品です。問屋から安く買ってきて、利益はほんのちょっとだけ。儲からなくたっていーのよ。 消費税が8%に上がっても、値上げしてません。とてもじゃないけど、お客さんからは取れませんから。とにかく安くしないと悪いでしょ。少しくらい辛抱しなくちゃね。 あらま、さっきのお客さん、商品忘れて帰っちゃった。ちょっと店番しててくれる?追っかけて渡してくるから。常連さんなんだけど、ボケてきちゃったのかしら」
そう言うと、彼女は初対面の記者に店を託して、走り去ってしまった。
商店街を抜け、駅から離れるにつれて、「何でもご相談ください」と書かれた質屋の看板や、ショッキングピンクで彩られた「タイ式マッサージ」といった看板が目につくようになる。
銀色のグリルをギラリと光らせながら、足立ナンバーの黒いミニバンが、「ブルン!ブルン!」と排気音も高らかに通り過ぎていった。ブロック塀に貼られた政党のポスターが、半分はがれて揺れている。
道の突き当たり、芝の土手を登ると、一気に視界が開けた。東京であることを忘れそうな広い空に、川面がまぶしい。目の前を流れる江戸川の向こうは、もう千葉県だ。
東京23区には、多くの都民が「そういえば行ったことがない」そして「正直に言って、あまり行きたいと思わない」と口を揃える場所がある。それが、東京都の東端にまるで防波堤のように陣取る、北から足立・葛飾・江戸川の3つの区、すなわち「下町三兄弟」である。
地方に住む人には、東京、しかも23区内ならばどこもそう大差ないのではないか、と思う人もきっと少なくないだろう。しかし都民の間では、23区には歴然たる格差がある。
この「下町三兄弟」は、他の区から「あの辺はもはや千葉でしょ」と、東京扱いしてもらえないことすら日常茶飯事の、哀しい地域なのだ。
特に六本木、麻布といった成金タウンを擁する港区や、ベンツやポルシェばかり走り回る目黒区などの住民は、「北千住なんか、昭和のヤンキーの巣窟」「葛飾? 寅さん以外に何かある?」「江戸川って、どうやったら行けるの?」と、好き放題言っている。
事実、葛飾区は地下鉄が通っていない「陸の孤島」といまだに言われるし、今どきどの県にもあるスターバックスコーヒーは、江戸川区にはなぜか出店していない。

 ■呑んで、寝ちまう
今回、本誌記者はこれら3つの区を自らの足で歩いて、住民たちの話を聞いた。はたして足立・葛飾・江戸川に住む人々は、本当に格差の下側の世界で、不遇をかこって暮らしているのだろうか——。
まずは、最も気になるのが台所事情。'12年度の総務省の調べによると、東京都内でトップの港区民の年間平均所得が900万円を超えているのに対し、最下位の足立区は323万円と、ほぼ3分の1。23区の西側を代表する住宅街の杉並や世田谷と比べても、150万円ほど差をつけられている。
ちなみに、葛飾区民の平均所得は下から2番目の330万円、江戸川区が下から5番目の347万円である。お世辞にも、「カネ持ちエリア」とは言えない。
こうした懐具合を反映して、当然のことながら物価は安い。冒頭に紹介した婦人服店の「コート1着3000円」も、ユニクロなんて目じゃないほどの安さだ。足立区北千住の街角にいた、50代男性が言う。 「あまり知られていませんが、イトーヨーカドーの1号店はこの近くにある北千住店なんですよ。もっとも、足立区民にはイトーヨーカドーよりも、その廉価版の店舗にあたる『ザ・プライス』のほうが親しまれています。1号店ですら、何年か前に『ザ・プライス』に衣替えしましたからね」
実際に『ザ・プライス』北千住店に足を運んでみると、コシヒカリ5㎏が1000円強、鶏もも肉100gが87円、牛乳1Lパック157円などなど、都内としては確かにかなり安い。
「他にも足立には、竹ノ塚駅の近くにある『さんよう』や『おっ母さん』など、ご当地の激安スーパーがいっぱいありますよ」(前出・50代男性) ・商店街も元気だ。葛飾区新小岩駅の南口を出ると、真正面に口を開けるのが、全長400mを超える大アーケード「ルミエール商店街」。その中にある八 百屋の店先で、段ボール箱に山と積まれた泥付きの野菜は、キャベツ1玉78円、ほうれん草1束98円など、やはり23区内とは思えない赤札価格だ。60代 の女性客が言う。
「このお店には、毎日来てますよ。主人には7年前に死なれたんだけど、商店街に来れば顔見知りがいっぱいいるし、一人でもさびしくないの。年金暮らしだから贅沢なんてできないけどね、この商店街はどこも安いから大丈夫。 それに買い物に出かけると、歩いて、笑って、人と話すでしょ。だから健康にもいいのよ」
下町におけるもうひとつの「人間交差点」は、至るところに店を構える銭湯だ。入り口の唐破風が立派な千住のとある銭湯は、まだ日のあるうちから、近 所の住民たちで大賑わい。脱衣所には、テレビをぼんやり眺める人、眉根を寄せて新聞を熟読する人、手拭いで真ん丸いお腹をパチン、パチンとリズムよく叩いている人……。
「オレが子供の頃は、この辺にはもっといっぱい銭湯があったよ。家に風呂なんかなかったからね。まあ今は家にも風呂はあるけどさ、オレはこっちのほうがいいんだな。番台のババアとも古馴染みだしな。 最近は、知り合いがどんどん死んでくのが悲しいね。だからサッと風呂入って、酒呑んで早く寝ちまうんだ」(70代男性)

■少子化? どこの話?
カネ持ちこそあまり住んでいない足立・葛飾・江戸川だが、意外と有名企業もある。 前出の50代男性が教えてくれたイトーヨーカドー以外にも、今は港区青山に本店を構えるお菓子メーカー・ヨックモックも足立が発祥の地。現在は合併 したおもちゃメーカーのタカラとトミーなど、葛飾区にはプラスチック系のメーカーが数多く残る。古くから住んでいる住人には、こうした工場勤めの人々が多い。大田区や板橋区と並ぶ町工場の集積地帯なのだ。
有名人もちゃんといる。俳優の故・蟹江敬三や元モーニング娘。の後藤真希は江戸川区出身。ビートたけしや元キャンディーズのスーちゃん(故・田中好子)、またNHKの朝ドラ『あさが来た』で主演を務める女優の波瑠は、足立区出身である。
一方で、学歴や社会的ステータスという点で言うと、文京区や世田谷区などの住民はおよそ半数が大卒なのに比べ、「下町三兄弟」の大卒者の割合は2割前後と23区で最低。同じく、管理職や会社役員の割合も、最も少ないといわれている。
さらに、昔から「ガラの悪い地域」と見られがちな東京東部にあって、とりわけ足立区の刑法犯認知件数は、'06年〜'09年のワースト1位だった。 葛飾区はまだしも、江戸川区も足立区とほぼ同等の「犯罪多発地域」とされている。江戸川区小岩の飲食店で働く、20代女性がこう告白する。
「私は生まれも育ちもこの近所ですけど、夜道を歩いてると、正直怖いときもあります。居酒屋が多いから、酔っ払いも多いでしょ? この前もそこで『ちょっと、ちょっと』と声をかけられて、振り向いたらおじさんがアソコを出してニヤニヤしてました。マジでキモくないですか?」
今となっては、山手線の内側や、杉並・世田谷などのいわゆる「山の手」に住む人々の間では、
「足立ナンバーの車が割り込んで来たら、ヤンキーだからすぐ譲るべし」 「いまだに小岩のコンビニには、パンチパーマのチンピラがウンコ座りでタバコを吸っている」 「足立区にある公園に行ったら『池に犬を投げ込まないでください』と書かれた立て看板があった」
などといった「都市伝説」まで、まことしやかに語られる始末だ。
しかし、東京23区の様々なデータを綿密に調査して話題の、『23区格差』(中公新書ラクレ)を著した池田利道氏は、「今や、そうしたイメージは当たりません」と話す。
「実はここ数年、都内で最も犯罪件数が多いのは、一般的には静かな高級住宅街と思われている世田谷区です。また、面積あたりの件数で言えば新宿区がダントツに多い。一方で、足立区の犯罪件数は減っているのです。
治安の悪さを揶揄するような噂は、住民の『自虐』も含めて、面白おかしく語られているだけというのが実情ではないでしょうか」
こんな興味深いデータもある。日本で最も出生率の低い東京都の中でも、全国平均と遜色ない出生率を誇るのが足立・葛飾・江戸川なのだ。
足立区立第十四中学校は生徒数850人以上と、この少子化の時代にあっては異例のマンモス校。江戸川区にも、700人越えの中学校が珍しくない。前出の池田氏が解説する。
 「足立・葛飾・江戸川の3区について特筆すべきは、東京の他の区とは『家族のあり方』が全く違うということでしょう。 若者も高齢者もひとり暮らしが少なく、子持ち世帯や3世代同居の世帯が他区に比べて圧倒的に多い。決して家の面積は広くないのに、1世帯の人数が多いんです」
確かに、葛飾区四つ木などの荒川の土手下、いわゆる「海抜0m地帯」には意外にもマンションやアパートは少なく、心なしかこぢんまりとはしているものの、戸建ての家ばかり建ち並んでいる。軒先にチャイルドシートが取り付けられた自転車が停まっている家も少なくない。
「足立・葛飾・江戸川の3区は、東京の中でも最後のほう、'60年代 以降に開発された区です。今もこの3区には鉄道があまり乗り入れていませんが、昔はもっと少なくて、足立には東武伊勢崎線、江戸川には国鉄総武線しか通っ ていない時代がありました。つまり、もともとは東京都市圏に含まれていなかったわけです。 しかもこの一帯は、以前は田んぼとして使われていた。米作りというの は一人の力ではできません。家族のみならず、近隣の人とも助け合わないと成功しない。そうした風土が無意識のうちに受け継がれているから、ご近所や家族の つながりが密で、子育てもしやすい環境が残っているのだと思います」(前出・池田氏)

■まさに、住めば都
葛飾区の京成立石駅周辺は、言わずと知れた居酒屋密集地帯だ。店によっては、昼過ぎから早くも杯を傾けるオヤジたちがいる。近年は若者にも人気の 「コの字カウンター」の店は、宵の口ともなれば老若男女がぎゅうぎゅう詰め。中には子連れの客さえいるが、子供も一緒になって店自慢の「煮込み」をつついているから微笑ましい。
ある居酒屋の、60代の男性店主が言う。
「この辺りにはね、人情ってのが生きているでしょう。浅草(台東区) みたいに、内心はお高くとまってるような『人情』じゃなくて、お節介というのかな。困っている人がいたら見て見ぬふりはできないっていう、そういう人情で すよね。どんなに東京が変わっても、ここだけは変わらないでいてほしいよ」
また、前出の、小岩に住む飲食店勤務の20代女性は、「イヤなこともいっぱいあるけど……」と前置きしてこう続けた。 「でも私、この町がやっぱり好きなんですよ。渋谷で別のバイトが終わって、小岩駅で降りたら『ああ、帰ってきた』ってホッとしちゃうんです。面白いところなんか全然ないし、道にゴミはいっぱい落ちてるし、古い店ばっかりなんだけど……どうしてなんですかね?」
カネや地位なんてなくても、見栄を張らなくても、この町でなら生きていける。東京砂漠の東には、「下町三兄弟」というオアシスがある。  ≫(現代ビジネス:オトナの生活・賢者の知恵「週刊現代」より)

宇沢弘文の経済学 社会的共通資本の論理
クリエーター情報なし
日本経済新聞出版社
世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠
クリエーター情報なし
徳間書店


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●トランプ旋風とアメリカ社会の歪み 金融経済の置き土産

2016年03月07日 | 日記
分断社会を終わらせる:「だれもが受益者」という財政戦略 (筑摩選書)
クリエーター情報なし
筑摩書房


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●トランプ旋風とアメリカ社会の歪み 金融経済の置き土産

以下のロイターとビデオニュースドットコムの、米大統領選に関するコラムと解説討論だ。ロイターコラムは共和党幹部が、トランプ氏の存在を見誤ったと云う、まあ、批評家コラムになっている。ビデオニュースドットコムの方は、政治学社会学的見地もあるので、深味はある。今回の、米大統領選の異変(大言壮語トランプ氏と革命と叫ぶサンダース氏の出現)を政局的に見ようとしている。たしかに、共和党・民主党と云う米2大政党制に慣れ親しんだ人々にとって、理に適った判断だったのだ。ゆえに、どちらの政党の幹部も、2大政党制と云う枠組みで間違は犯していないと思う。

ただ問題は、グローバル経済と云う経済イデオロギーの推進で、ネオリベラリズム(市場原理主義)が猛威振るう中で、社会イデオロギーの分断が起きていた。つまり、経済の方向性と社会の方向性が乖離しまっていたのだ。もっと具体的に言えば、共和党の上層部と多くの一般的共和党支持者の間に、深い社会的格差が生まれていたことになる。党の上層部の考える党と、一般的支持者層が考える党のイメージが違ってしまっていたのだ。要するに、上層部と一般の間に、二つか三つの党が存在する事態になってしまったと云うことだ。

このような現象は、民主党においても起きていることで、金持ちクリントンと貧乏人サンダースの構図である。同じ党内とは到底思えない対立軸を持っている。こちらも、党内は二分されており、民主党も二つの党になっている。今のアメリカ社会は、共和党が3つ、民主党が2つ目撃できるので、実質、5党乱立の2大政党制と云う、ヤヤッコシイ構造を生みだしている。アメリカ社会が病んでいることは、ワシントンの政治経済外交軍事の舵取りが、グローバル経済世界パワーの圧力を受け、操舵能力を失いつつあることを示している。自国の政治的方向性をワシントンが制御するには、米国民が、ワシントンを概ね支持している事が前提だが、そこが、グローバル経済世界によって、壊された。

無理に無理を重ねた、覇権国の末路と言えばそれまでだが、この米国の混乱は、安倍晋三が右だ右だ、明治だ、戦前回帰だと大騒ぎして、日本政治を騒乱状態にしているのとはわけが違い、世界的影響は、現時点ではドデカイ。米国民が、ワシントンを信じない、憎んでいる。しかし、世界は、ワシントンと政治外交をしなければならないのだから、無茶苦茶になりそうだ。1974年くらいから実物経済で充分な利益を得られなくなった世界資本(アメリカ中心だが日本なども含む)は、金融経済にシフトしてゆく。金融経済は、酷く知的なメカニズムを持つので、高度金融先進国に極めて有利な貿易条件の変更になる。また、その額も、レバレッジなど利かせると、4~60倍。それを幾つか繰り返せば1000倍でも理屈は成り立つ世界に入っていた。

1980年代になると、アメリカは、オイルショックやベトナム戦争で実物経済がボロボロになったので、この金融経済にひたすら傾斜してゆく。たまたま日本は製造業のパフォーマンスが良かったので、実物経済が存続したが、欧米の先進国では、完全に実物経済は疲弊の流れにあった。一番大きい要因は、オイルショックなのだろう。原油が1バレル20ドル時代が30年間近く続いたが、2003年には、20ドルだった原油が100ドルを超えた。これでは、資源国ナショナリズムの勃興で、貿易条件のイニシアチブが資源国に握られ都合が悪い。オイルショックは、原油価格を政治的武器に、利用することになる。

そこで、国際金融は、石油を商品化してしまえと云う方向に向かう。こうすれば、地政学的な枠組みから解放されて、正常な貿易条件が整う。そうして、NYやロンドンに石油先物取引市場の商品として価格が決定されるので、石油は領土から切り離され、資源国のイニシアチブは削減させられた。つまり、資源国が、自国の石油を国際市場の先物取引市場に決定権を握られることになる。ここにも、金融資本主義が浸透した。2001年のことだが、アメリカの全産業利益合計の5割を金融機関が占める状況にまでなった。その挙句が、サブプライムローンになり、金融機関の多くは、ワシントンによって救われた。

上記は一例だが、アメリカは、この金融経済が、最も効率よく資本の利益が出せる魔法の杖だと、没頭する。リーマンショックで、世界中に迷惑を掛けたにもかかわらず、凝りもせず、再び世界のマネーを掻き集めて、金融経済に再起した。オバマは、製造業回帰を真面目に考えたようだが、金融経済の効率には遠く及ばず、資本としては、魅力的ではないと云うことだ。そして、労働力を、貧困層に分け与えると云うよりも、より安価な移民労働を受け入れることで、蝕まれたアメリカ社会を、さらに一層蝕み、ワシントンや一部の企業家などの富裕層と貧困層、その予備軍層の分断が起きている。

こう云う国家の社会的断裂が、2大政党の両方で起きている。意図的な部分もあるが、アメリカの金融経済シフトは、知恵あるが故の道だったが、うわずみ社会を見ると上手く行っているが、一度、その上澄みを掬ってしまうと、残りは到底飲めない、トンデモナイどろどろの泥水と云う社会が、現実的にあると云う証明でもある。TPPに歓び勇んで加盟すると云うことは、実は、アメリカ社会の、このような断裂状況を充分に知らない、ワシントン外交だけでアメリカを見ている証左だろう。仮に、クリントンとトランプの本選になった場合、大統領にトランプが選ばれる可能性さえ見えてくる。今のアメリカは、こう云う国だと云うこと、日本の政治家たちは知っているのだろうか?

日本の自衛隊を、このような国の軍隊の傭兵になりますなんて、狂気でしょう?この国の為に、中国といがみ合うなんて馬鹿げた話だ。おそらく、日本のエリート層にも、敗戦のトラウマと、20世紀の強者アメリカの幻影を見続けている人々が多いと云うことだろう。面白いことだが、トランプ支持者とサンダース支持者が、重なっている。このような、現象を見ると、アメリカは病んでいるが、正当な道に戻ろうとするアメリカ人の肌感覚は、意外に正常なのかもしれない。まだ、対岸の話しだが、親米の人々は、もう少し、現実のアメリカを観察すべきだ。日本が親愛の情を向ける相手が、トランプ氏になる、シミュレーションをしておいて貰いたいものだ。

 ≪ 焦点:「トランプ旋風」見過ごした米共和党上層部の誤算
【 3月2日、共和党上層部の多くは、大統領選で党指名レースのトップを走るドナルド・トランプ氏が最終的には自滅するか、同氏の大言壮語、無責任な中傷、政策の不在に対して、国民が我慢しきれなくなると考えていた。だが、彼らは間違っていた。】
[ワシントン 2日 ロイター] - 昨年6月のある晩、一部の共和党大口献金者が、ユタ州ディアバレーの高級リゾートで催されたカクテルパーティーに参加していた。元マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー氏が主催した3日間の小旅行イベントの一部である。
・客たちは大統領選立候補予定者6人の話を聞いてきたばかりだった。工具メーカーであるポジテックツール社のトム・ダンカン最高経営責任者(CEO)は、翌年11月の大統領選に勝利するための夢のカードについて数人の出席者と語り合っていた。大統領候補にウィスコンシン州知事のスコット・ウォーカー氏、副大統 領候補にフロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員といった布陣である。
・ダンカン氏自身は、オハイオ州知事のジョン・ケーシック氏をひいきにしていたが、ヒューレット・パッカード元CEOのカーリー・フィオリーナ氏にも注目していた。だが、何カ月も前から出馬の意向をほのめかしていたドナルド・トランプ氏の名前を挙げる者は1人もいなかった。
・その4日後、ニューヨーク不動産業界の大物であるトランプ氏は正式に立候補を表明し、数週間のうちに、共和党内のライバルを蹴散らして世論調査のトップに躍り出た。
・トランプ氏の台頭は連日のようにテレビやソーシャルメディアで話題になったが、この時期、共和党上層部のあいだで、どのような会話がひそかに交わされていたのかは、あまり明らかにされていない。
・多くの場合にある共通点があった。トランプ氏を真面目に論じることが、かたくなに拒否されていたことである。その一方で、昨夏の数カ月、トランプ氏の姿を見るためにスタジアムにはファンが詰めかけ、メディアの選挙報道は彼の話題ばかり、世論調査では老若男女を問わず支持の広がりが見られたのである。
・その後数カ月、国内各地で、ディアバレーと同じような光景が、世間とは切り離された共和党のエリート層のなかで繰り返されることになる。共和党上層部の多くは、トランプ氏が最終的には自滅するか、同氏の大言壮語、無責任な中傷、「偉大なアメリカを取り戻す」という彼の約束を裏付ける確かな政策の不在に対して、国民が我慢しきれなくなると考えていた。 だが、彼らは間違っていた。
・トランプ氏は「スーパーチューズデー」に予備選を行った州の過半数で勝利を収め、共和党候補指名への歩みを加速している。
・トランプ氏がメキシコ国境に壁を築いて不法移民を締め出し、武装勢力の一員である可能性があるという理由でイスラム教徒の入国を禁じ、シリア難民を拒否すると約束した後でも、同氏を支持した有権者のムードを読み誤ったと、共和党の献金者や、戦略担当者、選挙運動担当者たちは認めている。
・本記事の取材に対して、トランプ陣営の広報担当者ホープ・ヒックス氏はコメントを拒否している。
<空気を読めなかった党関係者>
・トランプ氏の台頭は、共和党内の通常の指名プロセスの構造を完全に逸脱したところで起きているように思われた。
・例えば、昨年2月に開催された草の根活動家による集会、保守政治行動会議(CPAC)の参加者の多くは、大統領選出馬予定者であるウィスコンシン州知事のウォーカー氏や、テキサス州選出のテッ ド・クルーズ上院議員に熱狂していた。ホワイトハウスを目指す共和党候補者にとっては必ず顔を出すべき集会である。
・この集会でのスピーチでトランプ氏は、今や有名になった公約を試してみた。南部の国境に巨大な壁を築いて不法移民を阻止するという、その後彼の攻撃的な選挙運動の起爆剤となり、共和党の大統領候補指名レースで他候補を大きくリードする推進力となった、例の公約である。
・「彼のスピーチの評判は良かったが、模擬投票ではそこまで振るわなかった」と、毎年CPACを主催している全米保守連合のマット・シュラップ会長は語る。模擬投票で勝利を収めたのは、ケンタッキー州選出のランド・ポール上院議員だった。
・CPAC参加者の大半は、過去に選挙運動に参加したことのある保守的な政治活動家である。だが、トランプ氏の成功を後押ししている支持者たちはタイプが違う。CPACで人気を集めた候補者たちは勢いを失った。ウォーカー氏は公式の出馬表明後、2カ月でレースを降りた。ポール氏は2月に行われた最初の予備選で脱落した。クルーズ氏はこれまでに10回以上行われた予備選のうち3回しか勝っていない。
・選挙戦の序盤、トランプ氏は富裕な共和党支持者にとって謎でしかなかった。8月上旬の日曜日、大統領選について協議するためにニューヨークの高級避暑地であるハンプトンズに集まった人々も同じだった。彼らは、周囲に金融関係者の邸宅が集中していることから「ゴールドマン・ポンド」と名づけられた池に近い、ヘッジファンド経営者の邸宅で昼食を共にした。
・匿名を条件に話してくれた客の1人によれば、 このとき集まった客たちのなかには、元国防官僚、大手不動産企業のCEO、著名なプライベート・エクイティ・ファンドのパートナー、保守派の学者などが含まれていたという。この情報提供者は、他の客と同様に、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事を支持していた。
・「さまざまな話題が出たが、特に大きかったのは、トランプ氏の立候補に対する懸念と驚きだったと言えるだろう」と、同情報提供者は語る。ロイター/イプソスのデータによれば、この時点で全国世論調査におけるトランプ氏の支持率は、最も近いライバルの2倍だった。
・この情報提供者によれば、出席者たちはトランプ氏の台頭について議論し、同氏が多くの米国民の琴線に触れたという見方に達したという。彼らは、トランプ氏の存在によって他の候補者が消極的になるのではないかと懸念していた。あと1週間足らずに迫っていた共和党の最初の公開討論会の場がトランプ氏に牛耳られないことが彼らの願いだった。
・とはいえ彼らは、序盤戦がどのようなものであれ、世論調査でのトランプ氏の首位は長続きしないと判断した。 ・この情報提供者は8月6日のインタビューで、「自動車レースNASCARで疾走する車のような勢いだが、壁に激突するのは時間の問題だ。他のドライバーを巻き添えにしないことを願う」と語った。
・だが、トランプ氏はクラッシュしなかった。 そしてNASCARのブライアン・フランスCEOは2月29日、トランプ氏支持を表明した。

<見落とされた警告>
ジェブ・ブッシュ氏を支援する外部資金団体「ライト・トゥ・ライズ」は、指名獲得に邪魔になるかもしれないライバルを攻撃するために、1億ドル(約113億 8000万円)を超える巨額の選挙資金を用意した。だが、トランプ氏がブッシュ氏をリードしていたにもかかわらず、昨年の夏や秋にもトランプ氏を潜在的な脅威として認識していなかったことが、同団体の首脳陣の1人への複数回の取材で明らかになった。
・「トランプ氏がわれわれの敵になるとは考えていない」と、この幹部は昨年秋、匿名を条件に語った。1月か2月には、トランプ氏は指名獲得競争において取るに足りない存在になっているだろう、と彼は予言した。
・ブッシュ氏は、数カ月にわたる奮闘の末、サウスカロライナ州の予備選で惨敗し、2月21日に撤退を表明している。
・冒頭で紹介したポジテック社のダンカンCEOによれば、11月、12月になっても、3期にわたって大統領選の代議員を務めた人々との会話のなかでトランプ氏の話題はほとんど出なかったという。
・「まだ時間はたっぷり残っていた。正直言って、彼は自滅すると思っていた」とダンカン氏は言う。
・時間がほとんど残されていない今、党上層部には、見落としていた初期の警告を思い返すことしかできない。
・そうした警告の一つが、昨年1月の「アイオワ・フリーダム・サミット」だった。大統領選に向けた非公式のスタートとなる、共和党大統領出馬予定者の「集団オーディション」である。主催者がトランプ氏を候補予定者に追加すると、入場希望者が急増したのだ。
・この会議の主催者である保守派支持団体「シチズンズ・ユナイテッド」のデービッド・ボッシー会長は、「トランプ氏の名前をアナウンスすると、会場は自然に盛り上がった」と話す。
・「眠りこけていたのでもなければ、党上層部にせよ、メディアにせよ、地球上の誰にせよ、共和党の指名獲得競争でトランプ氏が優勢になることを見落とすなんて、とうてい考えられない」
(Emily Flitter記者、Luciana Lopez記者)(翻訳:エァクレーレン) ≫(ロイター)


 ≪ 偏見と憎悪に支えられたトランプ現象の危険度
  トランプ旋風が止まらない。
 米大統領選の民主、共和両党の候補指名争いは最大のヤマ場となる「スーパーチューズデー」で、民主党は前国務長官のヒラリー・クリントンが、共和党は不動産王のドナルド・トランプが、それぞれ圧勝し、指名獲得に大きく近づいた。
 共和党の指名争いでは、トランプが7州で勝利を収めたのに対し、対立候補のテッド・クルーズ上院議員は地元テキサス州など3州で、マルコ・ルビオ 上院議員はミネソタ州の1州で勝利するにとどまった。今回の勝利で、トランプが7月の共和党全国大会にトップで突入する可能性が非常に高くなり、残るは果 たしてトランプが投票権を持つ代議員の過半数の支持を得られるかどうかに移っているとの見方もある。
 今年の大統領選挙の候補指名争いは、民主・共和両党ともに、当初は泡沫候補に終わると見られていた候補が予想外の善戦を続けている。民主党で民主 社会主義者を自任するバーニー・サンダース上院議員が、大本命のクリントンを猛追する一方で、共和党では行政経験ゼロの億万長者トランプが、他の有力候補 を圧倒して序盤から大きくリードするなど、これまでの常識が通用しない異例の状態が続いている。
 一般的にはこの現象は、硬直化した旧態依然たるワシントン政治に辟易とした有権者が、異色の候補者に惹かれた結果だと説明されているし、おそらくそれは大筋では正しい評価だろう。
 しかし、トランプの下に集まる熱狂的な支持には注意が必要だ。なぜならば、それはトランプの支持者たちの多くが、彼の主張する政策そのものより も、そのスタイル、とりわけ人種や宗教、性別に対する偏見(bigot)や憎悪(hate)を剥き出しにした発言を口にすることを憚らないトランプの演説 スタイルに惹きつけられていることが、明らかになってきたからだ。
 反ワシントン政治という意味では、共和党の中でも最右翼と目され、ティーパーティから支持を受けているクルーズの方が、トランプよりもよほど反体 制的なスタンスを取っている。トランプが主張するメキシコとの間に壁を建てるとか、イスラム教徒の入国を禁止するなど、一部の暴論とも思える極端な政策を 除けば、政策的にはむしろトランプの方がクルーズよりもリベラル色が強いと言っても過言ではない。
 しかし、トランプにはクルーズも、他のどの候補も持たない特徴がある。それは彼が人種的、宗教的、性的な偏見を平然と口にし、これまでのアメリカ 政治の基準では許容されないとされてきたヘイトスピーチ的な言説を憚らないことだ。そして、トランプのそのスタイルが、むしろ大胆不敵(bold)、率直 (straight)、強いリーダーシップなどと持て囃され、彼こそが再び強いアメリカを取り戻してくれる真のリーダーだと一部の、とりわけプアホワイト と呼ばれる現状に不満を抱く白人の低所得層に、崇拝にも近い形で崇められているのだ。
 実際、トランプ支持者の集会では、他人種や他宗教、女性や性的マイノリティーを蔑んだり揶揄したりする言葉が当たり前のように乱れ飛び、そうした主張に批判の声をあげる反対派の市民が、会場から力づくで追い出されるシーンが繰り返し目撃されている。
 アメリカ政治が専門の渡辺靖慶応義塾大学環境情報学部教授は、アメリカの有権者の間に燻る既存の政治に対する不満が高まっていることは当初から認 識されていたが、少数派に対する憎悪や偏見に支えられたトランプ現象を目の当たりにして、それがここまで悪化しているとは専門家たちも予想できていなかっ たと語る。
 過去30年あまりの間、新自由主義的な政策によってアメリカ社会に格差が広がり、多くの白人が中間層から貧困層に転落した。と同時に、アメリカに おける白人の比率も減り続け、近い将来白人人口が全体の50%を割ることは必至の状況だ。独立以来アメリカの歴史を牽引してきた白人が、間もなくマイノリ ティに落ちようとしている。そうした状況に不満や危機感を抱くプアホワイトたちが、トランプ人気を支えていると渡辺氏は言う。
 とどまるところを知らないトランプ旋風にようやく危機感を持った共和党の指導部やメディアは、ここにきてトランプ批判を強めている。共和党にとっても、明らかに自分たちが主張してきた政策とは異なる主張を持つ候補を選ばなければならなくなると、党のアイデンティティが危機に陥る恐れもある。また、 既存のメディアも、ここまではトランプ旋風を、いずれ失速するだろうという前提で、面白半分で伝えてきたところがあったが、ここにきて批判の手を強めてい る。
 しかし、ワシントン・インサイダーと見られる共和党の指導層や既存のメディアがトランプを叩けば叩くほど、トランプ支持者が増えるという皮肉な現 象が起きている。実際、来る日も来る日もメディアがトランプの一挙手一投足を報じてくれるため、トランプは他の候補と比べてほとんどテレビCMを流さない でも、高い支持率を維持できている。しかも、億万長者である。いざとなればいくらでも自己資金から選挙資金は出せる立場にある。
 今やトランプがこのまま共和党の候補に指名される可能性が現実のものとなっている。そればかりか、トランプ旋風なるものにこのまま勢いがつけば、 11月の本選でトランプが大統領に選出されることも十分にあり得る状況となっている。しかし、これだけ偏見や憎悪を振りまくことで支持を広げてきた候補者 が、世界一の超大国アメリカの大統領になった時、アメリカ社会のみならず世界に与える影響は計り知れない。
 トランプ旋風を支えるヘイト(憎悪)やビゴット(偏見)の正体とその背景を、希代のアメリカウオッチャー渡辺靖氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。  ≫(ビデオニュースドットコム:マル激トーク・オン・ディマンド 第778回・渡辺靖氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)・神保哲生・宮台真司)

膨張する金融資産のパラドックス
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●消去法で5月解散の噂絶えず 経済、辺野古和解、プーチン会談 

2016年03月06日 | 日記
2050年の世界―英『エコノミスト』誌は予測する
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世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方
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●消去法で5月解散の噂絶えず 経済、辺野古和解、プーチン会談 

日経が珍しく、“参院選1人区はや火花 野党統一候補、全32区で狙う”の見出しで、政局展望を書いていた。読売も、「衆参同時選挙」との見出しで、永田町の噂を追いはじめた。衆参W選が今のところ、“オリーブの木”に向かう野党潰しの切り札として噂されているが、読売が衆参W選に触れたことで、逆に、解散総選挙の前倒し説も警戒水域に入ったようだ。

≪ 「衆参同日選」観測広がる…首相言動に野党警戒
安倍首相が、衆院選と夏の参院選を同じ日に行う「衆参同日選」に踏み切るのではないかとの観測が広がっている。 参院選で大幅な議席上積みが不可欠な憲法改正に意欲を示したり、「逆風」が予想される消費税率の引き上げを巡り発言を微妙に修正したりと、臆測を呼ぶ言動が目立つためだ。首相は早期の衆院解散を否定しているものの、野党は警戒を強めている。
 首相は2日の参院予算委員会で憲法改正について「在任中に成し遂げたい」と述べた。
 憲法改正の発議には衆参両院で3分の2以上の賛成が必要だ。与 党は現在、衆院では3分の2を確保するが、参院では満たない。首相の自民党総裁任期は2018年9月までで、「夏の参院選は首相にとって、改憲勢力の拡大 に向けたラストチャンス」(周辺)とされる。このため、自民党内では「首相が参院の議席を上積みしようと、衆参同日選に踏み切るのでは」(若手)との観測 がささやかれ始めた。 ≫(読売新聞)


5月末解散説の根拠として、安倍が唐突に、代執行訴訟の和解案を受け入れたことだ。この和解を受け入れた安倍政権と翁長県政の辺野古新基地建設に対する心の内は、現時点で見えない。なぜなら、和解を受けつけた双方が、自分たちに主たる主張を取り下げる気がない点である。なんの和解案にもなっていない“工事中断”が、和解の主たるないようで、後は、話し合えと云うのだから、双方の立場において、好き勝手に解釈出来る内容なので、「迷和解案」の誹りを免れない。朝日新聞と読売新聞の社説を読み比べてみると、この和解の趣旨解釈が180度異なっているのが、良く判る。どちらも、自分たちの好みの解釈になっている。つまり、判断放棄の和解案に過ぎなかった。

≪ 政府と沖縄 真の和解にするために
この和解を、今度こそ、政府と沖縄県の対話による事態打開につなげねばならない。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐる訴訟で、政府と県の和解が成立した。
 これにより、政府は埋め立て工事を中止する。政府と県はすべての訴訟を取り下げ、円満解決に向けて協議を進めることでも合意した。
 貴重な大浦湾の自然環境が破壊される前に、工事が止まる意義は小さくない。
 ただ、対立がこれで解消したわけでもない。
 最大の問題は、安倍首相が「辺野古が唯一の選択肢」との姿勢を崩していないことだ。その前提にたつ限り、「辺野古移設NO」の民意に支えられた翁長県政との真の和解は成り立ちえない。
 和解条項には、改めて訴訟になった場合、双方が司法判断に従うことが盛り込まれた。
 そうなる前に妥協点を見いだせなければ、問題の先送りに終わりかねない。
 新たな訴訟が確定するまでには一定の時間がかかる。丁寧な議論を重ねる絶好の機会だ。
 一方で、政府の狙いは6月の沖縄県議選、夏の参院選に向けて、問題をいったん沈静化させることではないか、との懸念の声もある。
 思い出すのは、安保法制の国会審議がヤマ場を迎えた昨年夏にも、政府が工事を中断して県と1カ月間の集中協議期間を設けたことだ。この時は、県の主張を聞き置くばかりで実りある対話とは程遠かった。同じ轍(てつ)を踏んではならない。
 首相はきのう、普天間の危険性の除去と、県の基地負担の軽減が「国と県の共通の目標」だとも強調した。
 ならば、政府がいま、なすべきことははっきりしている。
 首相が県に約束した普天間の「5年以内の運用停止」の実現に全力を尽くすことである。
 福岡高裁那覇支部が示した和解勧告文には、こうある。
 「本来あるべき姿としては、沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意して、米国に協力を求めるべきである。そうなれば、米国としても、大幅な改革を含めて積極的に協力をしようという契機となりうる」
 そのために、普天間の機能の県外・国外への分散を進める。政府と県だけでなく、本土の自治体とも話し合い、米国との協議に臨むべきである。
 「辺野古が唯一の選択肢」という思考停止を脱し、県との真の和解をめざす。そのための一歩を踏み出すべきときだ。  ≫(朝日新聞・社説)


 ≪ 辺野古訴訟和解 移設推進方針は堅持して臨め
米軍普天間飛行場の移設問題の根本的な解決にはほど遠い内容だが、司法の勧告である以上、和解もやむを得まい。
 普天間飛行場の辺野古移設を巡る代執行訴訟で政府と沖縄県が、福岡高裁那覇支部が新たに示した暫定案の修正案を受け入れ、和解した。
 沖縄県の翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しに対する政府の是正指示の是非を巡る争いは、まず総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」で審査される。
 審査結果に不服がある場合は、改めて訴訟に持ち込まれ、その判決には政府も県も従う。この間、政府と県は解決に向けて協議し、政府は埋め立て工事を中止する。これらが和解の柱である。
 辺野古移設を推進する政府と、これに強く反対する県の主張は、大きく隔たっている。
 安倍首相と翁長氏が和解後に会談し、円満な解決に向けて協議することを確認した。しかし、両者が妥協点を見つけるのは簡単ではあるまい。結局は、訴訟で決着を図ることになるのではないか。
 政府は当初、工事の中止が伴う和解には否定的だったが、受け入れに転じた。首相は「延々と訴訟合戦を繰り広げれば、膠着状態となり、普天間の現状が固定化されかねない」と語った。
 確かに、複数の裁判が同時並行で長々と続くよりも、裁判を一本化した方が手続きが円滑になる可能性はある。政府と県は今回、判決に従って互いに協力して誠実に対応すると「確約」した。この約束を順守せねばなるまい。
 安倍首相は、辺野古移設について「普天間飛行場の全面返還のためには、唯一の選択肢との考えに変わりはない」とも強調した。
 日米両政府と地元関係者が膨大な時間と精力を費やした末に、ようやくまとめた結論が辺野古移設である。米軍の抑止力の維持と基地周辺住民の負担軽減を両立させるため、政府は、今の立場を堅持することが重要である。
 訴訟対策などに万全を期すとともに、移設先の住民らの理解を広げる努力を続けたい。
 懸念されるのは、国地方係争処理委員会の審査や、その後の訴訟が長期化することだ。
 その間、工事は中断されるので、代替施設の完成が遅れ、普天間飛行場の返還がずれ込むことは避けられない。市街地の中心にある飛行場の危険な状況も継続する。
 係争処理委員会などには、迅速かつ公正な審査・審理を行うことが求められよう。  ≫(読売新聞・社説)


翁長知事が、この和解案を、早々に受け入れたことは、筆者には意外だった。なぜなら、この和解案には、≪ 辺野古沿岸部での埋め立て承認取り消しに関して新たな訴訟を提起して判決が確定した場合、政府も県も、その判決に従うとなっている≫からだ。翁長知事は、日本司法の性善説を信じていると云うことなのだが、筆者は、その点で、翁長知事とは真逆で、日本司法性悪説に近いものと理解している。ゆえに、辺野古移設に関する次なる訴訟において、国側が勝訴する可能性の方が高いので、3:7で沖縄県の分が悪いと云う印象を受けた。

和解受け入れ後、県が訴訟で敗れた場合、辺野古基地建設を阻止する行動を翁長知事が全面支援できなくなる惧れが出てくるので、司法判断に身を委ねた面がある。悪く言えば、政治姿勢の矛盾を、司法と云う塹壕に持ち込んだ印象は拭えない。埋め立て承認取り消しに対する政府の是正指示の是非を巡る争いは、まず総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」で審査される。審査結果に不服がある場合は、改めて訴訟に持ち込まれ、その判決には政府も県も従う。この間、政府と県は解決に向けて協議し、政府は埋め立て工事を中止する。係争処理委員会が、政府の意を受け、拙速に審査するのは明白で、辺野古移設方向の結果が出るだろう。

まさか、その政府よりな審査結果で、翁長知事が白旗を揚げてしまえば、これは狡猾な仲井真になってしまうので、取りあえず、改めて訴訟を提起するだろう。ただ、その訴訟の判決が、前述の3:7の確立で県に不利だと思われる。今回の、和解承認を是としてしまえば、ここで、沖縄県の抵抗は終わる。和解案承諾の撤回まで、視野に入れて、翁長知事が動いているかどうか、幾分疑わしさもあるので、長めに抵抗しましたと云う、アリバイ作りになってしまう不安はぬぐえない。

夏の参議院選、県議会選があるので、政府が柔軟な姿勢を見せておきたい事情があったろう。昨年秋の戦争法制強行採決時にも、政府は中断したわけで、臭いは似ている。もっと、穿った見方をすれば、夏の参議院選・県議選を意識してと云うことなら、和解案受け入れは、もう少し後の時点の方がインパクトがある。それなのに、なぜ、こんなに早いのか?ここは、政局的には意味深だ。筆者は既に書いているが、4~5月衆議院の解散総選挙を意識していれば、3月中に和解受け入れは理に適っている。安倍は、5日も、新しいスローガン、JR常磐線全面開通と燃料電池自動車1万台に相当する水素ステーション構想をぶち上げた。

アベノミクス津々浦々、日本は買いだ、一億総活躍社会…。全部頭打ちで二進も三進もいかなわけで、正真正銘の内閣支持率は30%強で、心もとない。野党の結集如何では、参議院選敗北の目もある。これが、安倍官邸の偽らざる現在の本音だろう。財務省、日銀も当てにはならない。経団連は協力的だが、各企業が踊ってくれない。老人への3万円買収作戦も、ポッポに入れられるだけで、金をどぶに捨てる羽目になる可能性がある。一世一代の、憲法改正の発議まで、もう一歩まで来ているのに、もう後には引けない。安倍は精神的に高揚していると同時に、強迫観念も同じレベルで強まっている。

こうなると、ウルトラCだかFだが知らないが、国中を唸らせるパンチの利いた「何かをしないと!」この気持ちは強くなるばかりだろう。そこで、浮上するのが、ロシア・プーチン大統領と5月の連休中にもソチを非公式に会談して、領土問題に大きな進展を導き出すくらいしか、選択肢が残っていない。この領土問題は、結構可能性があると読む。ロシアは米欧中心の経済制裁下にあり、経済は相当に痛んでいる。また、多くの原油をサウジ経由で輸入している日本にとって、石油確保のリスク分散は必須な状況になってきた。イランは欧米のツバがついているので、ロシア経由のルート強化はエネルギー安保上意味がある。プーチンも、極東開発には、日本の資金なしには考えにくい。これだけ、日ロ関係を前進させる条件が揃うことは稀だ。

オバマ外交が、行き詰り、レームダックして来た今こそ、対露外交はチャンスなのだ。経済対策は、正直、官製相場強化以上のことは出来そうもない。つまり、手詰まりなのだ。安倍が、強気一点張りでいられるのが不思議だが、対プーチン会談に、大いなる野望の運命を託している可能性がある。捕らぬ狸の皮算用なのだが、安倍の内部では、夢は拡大するばかりだ。訪問地がモスクワでなく、ソチであることや、非公式である点など、米国にも一定の配慮を示しながら、プーチンに経済的手を差し伸べる魂胆だ。当然外交である以上、プーチンも危急存亡の経済状況打開に、北方四島の二つくらい、正直どうでも良いだろう。安倍もプーチンも大勝負に出ている可能性が高い。

スケジュールはタイトだが、5月連休中にプーチン会談。領土問題大きく前進。伊勢志摩サミット前に、これも大勝負で、解散総選挙。そうでもしないと、一世一代の大課題、憲法改正発議という、祖父・岸信介もなしえなかった一大政治事業の達成は、安倍個人にとって悲願に違いない。このような、スケジュールを描いていれば、沖縄辺野古新基地の和解案を、唐突に受け入れた理由もはっきりする。今夜の、筆者の予測確率は、30%くらいだろうが、あり得る(笑)。


以下は参考の与太話。悪名高い米シンクタンク・経済戦略研究所所長のクライド・プレストウィッツ氏の、あっと驚く著書を紹介している。産経・古森義久氏の解説つきなので、半分冗談だと思って読んでみるには面白い。ただし、この著書が、アメリカで話題になっているは、嘘だろう(笑)。安倍晋三のブラフを聞き齧った“日本会議”の爺さんの世迷言のようだ……。

 ≪ 日本に厳しい米識者「2050年、日本は成長率4.5%」と予測
  「総人口1億5000万人」
「経済成長率は毎年4.5%。GDPは中国の2倍近い規模となり、アメリカに近づきつつある」 「IT分野やロボット関連技術、航空技術でも世界を引き離し、リードする存在になる」
 そんな「2050年の日本」を予測した本が、アメリカで話題になっている。
 今の状況を考えると非現実的に思える日本の将来像を描いたのは、『JAPAN RESTORED(日本復興)』だ。著者は、米シンクタンク・経済戦略研究所所長のクライド・プレストウィッツ氏である。
 同氏と交流のある産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏はこう解説する。
 「プレストウィッツ氏は、1980年代のレーガン政権で商務長官顧問として、自動車などの日米貿易摩擦の交渉の最前線に立った人物で、その辣腕ぶりから『タフネゴシエーター』と呼ばれました。
 また、日本は表向き自由な市場経済を標榜しながら、現実には官民が組んで閉鎖的であるとして、日本異質論をとなえ、日本を批判してきた人物でもあります。そのプレストウィッツ氏が“日本は強くなる”と書いたこともあって、注目を集めています」  
 ジャパン・バッシングの急先鋒が、ここに来て日本の“応援団”になったのだろうか。
 その内容は興味深い。  
 人口について触れた部分では、中国が高齢化により停滞する一方で、2050年の日本は出生率が2.3(現在は1.42)に大きく上昇し、労働力人口が増 え、経済成長に寄与すると指摘されている。その背景には「女性が働きながら子育てできる環境が充実する」ことがあるといい、出生率が高いことで知られるフランスやスウェーデン並みに上がることが想定されると記されている。出生率2.3は、第2次ベビーブームに匹敵する数字だ。 経済面では、ナノテクノロジー、IT分野など最先端産業が発展するほか、
 「Decentralization(地方分散)が進む」「農協がなくなる」「土地の効率的利用が進展する」といった理由によってGDPが大きく膨らむとされている。
 また、現在も世界をリードしている医療技術がさらに発展し、世界中から高所得の患者が集まる「医療大国」になると指摘されている。同書では、安全保障体制の未来についても予測している。
 そこでは、我が国の安全保障が大きな転換点を迎えるきっかけとして、中国の脅威が生々しく描かれている。  
 まず、尖閣諸島が中国によって奪われる。しかし、同盟国・アメリカは日本を守るためには動こうとしない。一方、日本独自で効果的な対抗策を打つこともできない。そうした中、沖縄が“独立”を宣言する。裏で手を引くのは、もちろん中国だ。それを受け、日本は憲法改正に踏み出す……。
 そしてゆくゆくは「防衛費がGDPの3%になる(現在は約1%)」ことに加え、「核保有」「弾道ミサイル保有」といった将来像まで描き出している。  
 安全保障については、中盤で一定の分量を割いて描かれており、著者のプレストウィッツ氏が、東アジアにおいて日本のプレゼンス維持が重要だと考えていることが見えてくる。
 出生率の低下と高齢化、農協など既得権益の存在、中国の脅威と安全保障体制の不備……同書で指摘された視点は、まさに今の日本が抱えている課題そのものだ。そして、簡単に解決できる問題ではない。
 日本批判を続けてきた著者が『日本復興』を描いた本心がどこにあるかは改めて触れようと思うが、我々が、同書で指摘された課題を正面から受け止める必要があることだけは確かだ。  ≫(NEWSポストセブン:SAPIO2016年4月号)

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●ブラック政権のスローガン政治 行政の行政による行政の為の…

2016年03月05日 | 日記
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●ブラック政権のスローガン政治 行政の行政による行政の為の… 

ブラック政権の女ゲシュタポ姉ちゃんが、また吠えている。電波停止総務大臣判断は「憲法違反じゃない!」と司法判断にまで首を突っ込んでいる。いつから、高市や菅官房長官は、最高裁判事になったのだろう?そんなに、立憲主義に反した行為がないと自信があるのなら、政府自ら、裁判所に「憲法違反でないお墨付きを」と、裁判所に異例の提訴してみたら如何か?現実には、このような提訴は、法に馴染まずと言われるのだろうが、それほど、違憲、脱法精神に富んだ政権だ。“問題ない官房長官”が典型例である。司法判断も、司法の手を借りないのだから、省エネブラック政権の名に値する。

しかし、良くもこれだけ出来っこない政策スローガンを並べ立てた政権は、嘗てあっただろうか。無論、ない。まだ、日本と云う国の課題について、安倍首相の口から出ていないものは、殆どないだろう。悪名高き、今井秘書官は、各省庁から提出された、国民が自分たちの利益と勘違いしそうな「目玉政策リスト」を眺め、野田豚同様、国士と勘違いしている安倍晋三が喰いつくスローガンを抽出し、耳元で囁く。今まさに、官邸内で起きていることは、そういう、茶番な話に過ぎない。

それら、多くのスローガンは、実際に有効に行政のルーチンに組み込まれれば、たしかに、国民の利益になるような政策ばかりだ。このスローガンを記者クラブを通じて、NHKはじめとするマスメディアに報道させる。そのスローガンには、省庁お得意のレクチャー解説文付きで、おバカ記者連中の手間を省かせる。記者連中は、幹部と官邸が蜜月状態なのだから、逆らうリスクなど取る奴はいない。しかも、官房長官や総務省が秘密警察紛いの監視体制下にある状況を作り上げることで、水も漏らさぬ体制が完成しつつある。

このような事態は、官僚機構が、中央集権体制の将来的綻びに気づいた結果、強い危機意識から生まれている。最近は、電通などと、マスに訴求する宣伝手法などを高度に組み合わせることで、一層巧妙かつ強引になっている。そもそも、そのスローガンは官庁の権益拡張に有効なものが多いわけだが、その政策趣旨に合致する実態は、アリバイ作りの範囲にとどめ、中央集権機構のシステムと云う、いわば、箱物的組織の拡張に利用される。俗っぽく言えば、天下り先の拡充と云うことだ。首相や官房長官は、実効性はないが、国民のためのスローガンを「ドヤ顔」で語れるし、官僚は自分たちの権益拡充で貢献できるし、電通は漁夫の利を得、マスメディアは「楽ちん」に紙面を埋められる。

このような現象は、過去においても、それぞれの政権が行ってきた、既成の事実だが、安倍政権においては、「禁じ手」と云う感覚がなく、日常的なルーチンワークとして存在している点が特徴的だ。こうなると、或る政治目的の為に、スローガンを語ると云うよりも、スローガンが最終目標となり、スローガンが繰り出されることになるので、殆どが意味をなさなくなってくる。しかし、NHKなどテレビから流される、そのスローガンは国民の記憶に残り、さも有効に実行されているような錯覚に陥る。余程の国民でない限り、その実施状況を検証分析することはない。

こういう状況になると、最近話題になっている激白文「保育園落ちた日本死ね!!!」など、パンチの利いた「カウンターメッセージ」は有効なのだろう。感情の露呈ではあるが、「本音の怒り」が述べられている。政治や行政が、日常的に欺瞞プロパガンダを意図的に操作する時代になった場合、論理的反駁は、長文になり易く、読まれる機会を逸失する危険が多い。このような時代背景においては、この話題のブログのような「怒りの表現」が有効かもしれない。詩、散文、抒情詩、川柳などもあるが、怒りのメッセージ力には限界がある。国民は、怒りを以下のブログ主のように、感情をぶつける素朴さで立ち向かう手法はあるようだ。

これから、筆者も、少しこのブログ主を見倣い、怒りのコラムを書くのも悪くないなと思っている。よく読んでみると判るのだが、このブログ主は、単に感情の劣化から、ヘイトスピーチのような内容を含んでいない。国のスローガンとして、並べ立てた幾つもの欺瞞檄文(政策スローガン)を把握した上で、書いている。この点が、感情的発露と一線を画してところだと思う。安倍政権のスローガン手法を逆手に取るわけだ。

一昨日の、報道ステーションで、木村草太が「カウンター改憲論」を例示していた。安倍政権の立憲主義違反事項を教師として、憲法違反が起きないように、政権に対し、具体的縛りを追加条項に入れると云う改憲案は、日本会議関係者の度肝を抜いたであろう(笑)。政治家の矜持が喪失した以上、権力の横暴を許さないと云う日本憲法の立憲精神が汚されると判った以上、中学校の細かな校則のように、政権がやってはいけない具体的条項の追加と云う「禁止条項追加改憲」は、安倍のような政権が出たお陰で気づく、カウンター改憲論だ。

*以下が、「保育園落ちた日本死ね!!!」の全文とJCASTの記事である。

 ≪ 保育園落ちた日本死ね!!!
何なんだよ日本。
一億総活躍社会じゃねーのかよ。
昨日見事に保育園落ちたわ。
どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。
子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに日本は何が不満なんだ?
何が少子化だよクソ。
子供産んだはいいけど希望通りに保育園に預けるのほぼ無理だからwって言ってて子供産むやつなんかいねーよ。
不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園増やせよ。
オリンピックで何百億円無駄に使ってんだよ。
エンブレムとかどうでもいいから保育園作れよ。
有名なデザイナーに払う金あるなら保育園作れよ。
どうすんだよ会社やめなくちゃならねーだろ。
ふざけんな日本。
保育園増やせないなら児童手当20万にしろよ。
保育園も増やせないし児童手当も数千円しか払えないけど少子化なんとかしたいんだよねーってそんなムシのいい話あるかよボケ。
国が子供産ませないでどうすんだよ。
金があれば子供産むってやつがゴマンといるんだから取り敢えず金出すか子供にかかる費用全てを無償にしろよ。
不倫したり賄賂受け取ったりウチワ作ってるやつ見繕って国会議員を半分位クビにすりゃ財源作れるだろ。
まじいい加減にしろ日本。
 ≫(「はてな匿名ダイアリー」に投稿された全文)


 ≪「保育園落ちた日本死ね!!!」投稿は私です!
  30代前半。来月に息子1歳
保育園の申し込みではねられた母親がネットに投じた怒りの書き込みが話題となっている。「保育園落ちた日本死ね!!!」というタイトルで、こう書かれている。
  「なんなんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」「子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに日本は何が不満なんだ? 何が少子化だよクソ。子供産んだはいいけど希望通りに保育園に預けるのほぼ無理だからって言ってて子供産むやつなんかいねーよ」
 「不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園増せよ。オリンピックで何百億円無駄に使ってんだよ。エンブレムとかどうでもいいから保育園作れよ。有名なデザイナーに払う金あるなら保育園作れよ。どうすんだよ会社やめなくちゃならねーだろ。ふざけんな日本」
  「保育園増やせないなら児童手当20万にしろよ。保育園も増やせないし児童手当も数千円しか払えないけど少子化なんとかしたいんだよねーって そんなムシのいい話あるかよボケ。国が子供産ませないでどうすんだよ。金があれば子供産むってやつがゴマンといるんだから・・・国会議員を半分くらいクビにすりゃ財源作れるだろ。まじいい加減にしろ日本」(2016.2.15)

「理不尽さを感じて、独り言のつもりで投稿」
 汚らしい言葉が並ぶが、相当に怒っているのはわかる。街の声を聞いてみると、「気持ちはすごくよくわかる。日本が死ねは言い過ぎだけど」(双子を持つ母親)、「いま結果待ちなんです。落ちたらこうなるかも」(8か月の子を抱いた母親)、「1人目は入れなかった。1年待った。自治体選んで子どもを産むなんておかしいけど、そうしないと仕事は続けられない」(2人の子の母親)
 司会の小倉智昭「日本はどうなってるんだを『死ね』に置き換えた気持ちは伝わってきますよね」
  「とくダネ!」は投稿者に話を聞いた。東京都に住む30代前半の女性だった。事務職の会社員で、3月(2016年)で1歳になる息子がいる。育児休暇が終わって、いざ働こうと思ったらこうなったという。「理不尽さを感じて、独り言のつもりで投稿した」のだそうだ。
全国の待機児童2万3000人!保育所も保育士も足りない
 厚生労働省によると、全国の待機児童は2万3000人(15年4月1日現在)。東京が一番多くて7800人以上だ。梅津弥英子キャスターは「保育園は増えてるが、保育士が確保できないというのもあるようです」という。
 小倉「その一方で、子供作りましょう、少子化やめましょうは矛盾しているよね」 母親に優しい仕組みが出生率アップのカギだ。フランスは少子化対策が効果を上げ、先進国の中では珍しく出生率が上がっている。日本にできないのはなぜだ。  ≫(J-CAST)

最後に一言。筆者は個人的には、あらゆる手段を講じても、少子化をとめる政策は、利便性の追求、安近短な生活実態を反映する限り、土台無理があると考えている。保育園や保育士を増やしても、劇的に出生率の向上には作用しないと考える。労働集約型産業の再生でもない限り、文化文明の発達は、少子化を助長する運命だ。現在では、資本集約型産業においても、僅かな労働力費用を削減対象にし、グローバル傾向と同時進行で、労働力のフロンティアを、産めよ増やせよではなく、移民・難民の受け入れ方向に向かっている。本来であれば、成熟国家型産業構造論を繰り出すと気である。無論、保育所や保育士を充実させることに反対はしていないがだ。

このことからも判る通り、ブラック安倍のスローガン政治は、角を矯めて牛を殺すのが、精々だ。財務シロアリが、経産シロアリや総務シロアリに取って替わり、死に体の国家の息の根をとめる。大切に生きていけば、100年、500年は中の上水準の文化国家になれるものを、あたら欲をかいて、咥えていた肉片を、ワンと吠えて、水もに落とすようなものである。輸出で生きるなんて、馬鹿じゃないのか。足元の文化と知恵、藩政の特質がまだ残っている日本の良さに目を向ける、政治が必須なのだが、あまり気づいている人はいないようだ。たしかに、票には繋がらないだろうから、ブラック自民党の儘かな?せめて、グレー程度にはなって欲しいものだ(笑)。

「憲法改正」の真実 (集英社新書)
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集英社


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●「野合で結構!」そこまで言うなら「民共結構!」と言い放て

2016年03月04日 | 日記
21世紀の不平等
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東洋経済新報社


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●「野合で結構!」そこまで言うなら「民共結構!」と言い放て

開き直り、ようやく追い風が吹いてきたと思ったら、また、民主党や維新の党は、弱腰を見せた。民維新党程度で、「空気」は変らない。09年の余波が残っていると考えるのは浅はかだ。相手は暴力団と新興宗教のような連中だ。まともに横綱相撲取ろうなんてのは、百年早い。何様だと思っているのだろう。連合票と運動員確保が目的なのは見え見えだ。今どき、共産党アレルギーなんて、20世紀の遺物抱えて、21世紀を生き抜くぞ。完全に時代錯誤だ。

「民共」と言われたら、「安倍さんは、よほど共産党が怖いようだ。こんな告白を聞くと、志位さんに、後方支援を頼む気になってしまうくらいだ」その程度のカウンター当てないと、アイツらには勝てないぞ。徹底して、開き直りを見せるべきだ。志位の腹が座っているから良いものの、「民共」と言われて、「レッテル貼」だと口角泡を飛ばす態度は、器の小ささを露呈している。松野が、共産が死んでも嫌なら、排除も一つの選択だ。イデオロギー問題だから、松野も本望だろう。思想信条は自由だからな。

現実に、宮城県の民主と共産の政策協定書を見る限り、1、立憲主義に基づき、安保関連法の廃止、集団的自衛権行使容認閣議決定の撤回。2、アベノミクスによる国民生活破壊を許さず、格差是正を目指す。3、原発に依存しない社会の早期実現。4、不公平税制の抜本是正。5、米軍辺野古基地建設に反対。6、安倍政権の打倒を目指す。以上の項目が確認できるが、この協定書が本物かどうか確認はしていない。ただ、この1~5の項目を安倍晋三が聞き及んだら、「民主党には勝たせたくない」と云う個人的感情が優先するのは確実だ。“I am not Abe”と同義なのだから(笑)。

まあ、このような協定書は、各県連単位の地域事情を考慮することが多いだろうから、民主党の党の基本方針だと、一律に断定は出来ない。共産党の連携で、野党共闘が絶対有利になる地域における個別協定とみるのが妥当だが、安倍官邸は、その協定書の内容に異様に反応したと云うところだろう。それにしても、安倍一強の安倍首相の発言がコロコロと変わり出した。日々刻々、国政の主眼が日替わりメニューになっている。経済だと強調したかと思えば、せめて一つくらい「改憲発議がしたい、改憲選挙だ」党内では、改憲なんて口にしたら、内閣支持率なんて、一瞬で吹き飛ぶと危惧する声が強まっている。

アベノミクスで、政府日銀は、日本経済を底なし沼に引き摺り込んでしまった。どんなに有能な政権が出来ても、容易に、この安倍黒田が作った底なし沼から抜け出すのは容易ではない。安保関連法、集団的自衛権容認も、アメリカ・ネオコンの恫喝的圧力は相当のものだから、圧力を受ける前に、瞬間的にことを行う必要がある。外務・防衛の官僚を締めだす覚悟が必要だ。原発依存からの脱却は簡単、やれることは速攻で実施。原子力規制委員長に小出裕章を抜擢すれば良い。不公正税制も簡単、累進課税を導入、最高税率を60%レベルに引き上げる。

野田の糞野郎が以下のような事をぬかしている。許せん男だ。ドジョウの日干しにして、太平洋に散骨してしまいたい(笑)。消費増税で、国民に塗炭の苦しみを与え、一匹のシロアリさえ退治できなかった、民主党を安倍自民に売り払った野田佳彦こそ、民主党崩壊の立役者だ。標的を躱そうと、小沢元代表を矢面に立たせるなど、まったくもって卑怯の一言だ。野田佳彦や前原誠司のいる民主党だから、国民に見離されたことに気づいていない。「盗人猛々しい」とは、野田のような奴のためにある。


≪ 野田元首相、野党結集は「小沢元代表抜きで」
 民主党の野田佳彦前首相は3日、東京都内で開かれた連合の集会であいさつし、維新の党との合流時に他党との野党結集も目指す党方針について「一番足を引っ張った(小沢一郎)元代表さえ来なければ、後は全部のみ込む」と述べ、生活の党の小沢共同代表の新党参加を容認しない考えを示した。野田氏は「方針が決まってもごちゃごちゃ言うのが民主党の悪いくせだ。これまで一番ごちゃごちゃ言ったのは元代表だった」と述べ、野田政権で消費増税に反対して離党した小 沢氏を批判した。 ≫(毎日新聞)

野田よ、安倍自民に民主党を、船橋票田欲しさに「シロアリ財務」に、二束三文で売り渡したのは、オマエじゃないか。絶対に負けると信じて解散総選挙した総理は空前絶後だ。日本共産党の志位委員長の決断に、小沢一郎が強く関与していた事を知らないわけがない。その事実を、まったく知らない振りをして、小沢一郎が悪い?、良く言えたものである。オマエがいなければ、民主党ももう少し体裁を整えられたのだ。戦犯が、何を今さら。敵に塩を送ったような顔をしているが、勝栄二郎の票田工作とバーター取引したのは確実だ。悪い奴ほどよく眠るらしいが、この男は、毎晩高いびきで寝ているそうだ。こんな奴を表に出していると、民主党、完璧に負けるぜ!

岡田も、不退転の決意で政党を背負い込むつもりなら、野田や前原はいないものと思え。連合の顔色ばかり見ていると、その姿を有権者が見る。つまり、昔の民主党と何ら変わりない。それなら、比例で共産党に投票して、民意を知らしめてやろうと皮肉な対応をされてしまうぞ。21世紀に20世紀的永田町論理で動いていたら、チャンスがピンチになる。アメリカを見よ、トランプ、サンダース現象が、何を指し示しているか、特と考えることである。官公労、大企業群の「連合」に、時代は迎合的ではない。

池上彰が世界の知性に聞く どうなっている日本経済、世界の危機
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●中東は米国に見離され混沌 あまりにも身勝手過ぎるアメリカ

2016年03月03日 | 日記
大衆への反逆 (文春学藝ライブラリー)
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文藝春秋


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●中東は米国に見離され混沌 あまりにも身勝手過ぎるアメリカ 

見出し的に言えば、それにも関わらず、我が日本は、アメリカ様々一辺倒は揺るぎない。本当に、馬鹿につける薬がないほど、悲惨な状況だと言えるだろう。筆者は個人的に中国も米国も嫌いなので、どちらの肩を持つつもりもない。アメリカに負かされた記憶が心底滲みついているのだろうが、右翼、保守主義者だと名乗る連中の殆どが「親米右翼」なのだから、吹き出してしまう。せめて、アジア主義くらいの方向性を出せば、聞く耳もあるが、「アメポチ右翼」など、犬の餌にもならないだろう。その点で、西部邁や佐伯啓思の保守主義には、米国追随に似非右翼と異なる視点がある分、見どころはある。

週のビデオニュースドットコムのゲスト・高橋和夫氏(放送大学教授)は、米国コロンビア大学で国際関係論の博士課程を修了した人物なので、中東問題に関して、中立的人物とは評価できない。しかし、その人物をしても、アメリカと云う覇権国の対外政策の大きなブレを認めている。宮台真司が、アメリカの大国としての節操なき責任論に言及すると、コロンビア大学院に学んだ 神保哲生が、アメリカは二大政党制を意識するからだと軽く異議を唱えていたが、世界中に軍事力と云う暴力装置を行使する国に、二大政党制だから、軍事力行使が右左に揺れて良いと云うのは詭弁だろう。

まあ、アメリカ的視点を持つ、民主主義者と、アメリカに批判的な保守リベラル的宮台真司の組み合わせは、色んな意味でコントラストが愉しめる。彼らの丁々発止な会話は、知的好奇心を充分に満足させる。共産党志位委員長の次期参議院選における大英断にも、彼らの影響力は隠れた力になっていた筈である。これ以上、ネット番組の良さを書くと宣伝臭が出るので止めておく(笑)。本題に入る前に、以下のビデオニュースドットコムの解説記事を読んでいただこう。

 ≪ イランの国際舞台復帰で変わる中東の勢力図
中東でイランの存在感が増している。
 昨年7月に核開発をめぐりイランがアメリカなどとの間で合意したことを受けて、長年同国を苦しめてきた制裁が解除され、イランの国際舞台への復帰がいよいよ本格化してきた。特にアメリカとの関係改善がイランの中東における発言力の高まりに大きく影響し始めている。
 イランとアメリカは長年、対立関係にあった。1950年代からアメリカはイランの内政に干渉を続け、イランに対して様々な工作を行ってきた。 1953年にはCIAが中心となって、クーデターを起こさせ、民主的な選挙で選ばれたモサデク政権を倒した上で、傀儡政権を打ち立てている。
 こうした過剰な干渉がイラン国民の反発を招き、1979年、イランではイスラム原理主義革命が起こる。パーレビ王政の下で苦しめられてきた反体制勢力はテヘランのアメリカ大使館を、大使館員を人質に取った上で占拠し、それ以降、イランとアメリカの関係悪化は決定的となった。アメリカはその後、幾度 となくイランに対する経済制裁を発動したため、イランは長年に渡り、国際社会から孤立させられた上に、経済的にも苦境を味わってきた。イランを牽制するために、アメリカは隣国イラクのサダム・フセインを支援し、間接的にイラン・イラク戦争まで仕掛けている。
 一方、国際的な孤立を余儀なくされたイランが、その後、核開発に着手したことで、イランは北朝鮮、イラクと並びブッシュ大統領から「悪の枢軸」とまで罵られるようになった。
 放送大学教授でイラン情勢に詳しい高橋和夫氏は、イラン側にはアメリカが仕掛けたクーデターによって自分たちが選んだ政権が潰されたことへの恨み が染みついている一方で、アメリカは大使館を占拠されたことで覇権国としてのプライドをずたずたにされた経験が尾を引き、両国の和解はこれまで一向に実現しなかったという。途中、アメリカが対イランで雪解けムードになると、イラン側に強硬な政権ができ、逆にイランに穏健な政権ができると、アメリカが強硬的だったりと、両国の間で歯車が合わなかったことも、関係改善が遅れた一因だったと高橋氏は指摘する。
 それがここに来て、イラン側では、強硬路線だったアフマディネジャド前大統領に代わって穏健派のロウハニー氏が大統領に就任し、アメリカ側も「悪 の枢軸」演説をしたブッシュ大統領に代わり、オバマ政権が誕生したことで、ようやく関係改善の環境が整った。1979年の大使館占拠をリアルタイムで知ら ない世代が、アメリカで人口の多数を占めるようになったことも、関係改善の一助となった。
 しかし、国土、人口、石油資源、そして歴史とプライドと、あらゆる面で中東の盟主の条件を兼ね備えたイランが、制裁解除によって国際舞台に復帰す ると、中東の勢力図に大きな変化が起きることが避けられない。特に、米・イラン関係の悪化を後目に、親米国として中東の盟主の地位を享受してきたサウジアラビアへの影響は大きい。親米スタンスを維持することと引き換えに、王政の維持を許され、原油輸出で王室が莫大な富を独占してきたサウジアラビアは、昨今の原油価格の下落も相まって、かつてない苦境に陥っている。
 イランの台頭によって中東の勢力図はどう塗り変わるのか。アメリカの後ろ盾で強権的な王政を維持してきたサウジアラビアには、これからも現体制を 維持できるのか。混乱するシリア情勢や中東の歴史などを参照しながら、ゲストの高橋和夫氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。 ≫(マル激トーク・オン・ディマンド:高橋和夫氏(放送大学教授・国際政治学者)・神保哲生・宮台真司)


イランとアメリカの歴史的対立は、上記の通りだといえる。正直、中東における最大の国はどこかと問われた場合「イラン(ペルシャ)」と答えるのが正解だろう。それ程、中東における歴史的、文化的、経済的に、覇者なのだ。イランに比べれば、イラクもサウジも肩を並べるのは百年早い状況である。そのことを最も理解しているのが中国である。日本も、長い期間、その考えをもっていたが、アメリカ様に怒られて、泣く泣く、油田開発利権等を放棄させられたのだから、笑える。

第一次大戦、第二次大戦を通じて、アメリカは「火事場泥棒」に徹した。どうも、アメリカと云う国は、広い意味で、ユーラシア大陸から孤立する地政的優位さを持っていた大きな島国である。欧州で繰り広げられていた、血で血を洗う戦争において、大西洋を隔てることによって、対岸の火事、洞ヶ峠を決め込んで、武器や弾薬をせっせと生産し、双方の陣営に、それを供給する漁夫の利を得て、世界一の富を築いた。日本の朝鮮特需どころではない利益を、アメリカは得たのである。つまり、遠い地域で紛争を起こし、軍産複合企業が潤う世界戦略に徹していた。そうして、世界の軍事、経済大国が誕生した。倫理道徳の見地から評価すると、最低の国である。

二つの大戦終了後も、アイゼンハワーが退任時に“軍産複合勢力には注意せよ”と云う言葉も虚しく、軍産複合企業構造と云う、アメリカの経済メカニズムは変らなかった。その後、平和が続くに従い、この経済メカニズムは衰退してゆく。そこで、困ったアメリカは、実体のある経済メカニズムから、金融経済メカニズムを構築することになる。この流れで、安定すれば平和だったのだが、軍産複合企業群と云うのは、暴力的であり、陰謀的であった。彼らは、自分たちのコネクションを通じて、自分たちの企業群が生き残れる戦略を描いていた。そうして、世界中で紛争の火種を撒いたり、意識的に傭兵化した反政府勢力を通じて、クーデターを起こさせ、軍産複合企業群の顧客確保に奔走した。

今でも、その流れは変わっていない。ただ、極めて節操のない国であることは、今後も厄介な問題を惹き起こすに違いない。軍産複合企業群と云う暴力装置と、どこまで貪欲にして満腹を知らない金融勢力が、アメリカの二大支配権力なのだから変るべき要素が乏しい。現在行われている大統領選挙の情勢を見ても判るが、金融勢力の影響下にいるクリントンか、貧困に悩み怒る白人に支持されるトランプか、そう云う感じだ。まあ、サンダースに一定の支持が集まっている事実が、唯一、アメリカの救いではあるが、今回の大統領選で結果を出すことはない。

相当ザックリとアメリカを見てきたが、この国は、石油依存の激しい国なので、石油が喉から手が出るほど欲しがる欲望が渦巻いている国でもある。ゆえに、グリースパン回顧録ではないが、先のイラク戦争は起こされた。911事件に疑惑が湧くのも、この辺に起因している。911が、アメリカの勢力による実行ではなかったとしても、そのようなテロが起きることを黙認した可能性はかなりの確率であるだろう。つまり、イランの原油に手を出せないので、イラク戦争で石油利権を米英で独占しようとしたことは、その後の事実が証明している。

サウジとイラクの石油利権で、一息ついたのがアメリカと云う国だ。ところが、幸か不幸か、アメリカで、「シェール革命」が起きてしまい、同国は、一気に石油大国になってしまった。こうなると、節操とか民主主義とかに、本気でコミットする気のない狡猾な連中は、中東への興味を俄然失う。中東の大国が「イラン」なのは、アメリカだって知っている。石油利権への京美が削がれれば、一番喧嘩をしたくない中東の国はイランである。そうなると、サウジアラビヤが宙に浮く。もともと、いい加減な国王の国で、国家の体を為していなくても、金があるから砂上の楼閣は持っている国だ。

王族の中でも、最も教養のない皇子の後継者が権力を握ってしまったので、イランへの敵愾心を剥きだしにしている。イラクのフセインが梯子を外されたと同様に、いま、サウジやバーレン、カタール、UAE‥等、いつ内戦や市民蜂起が起きても不思議ではない時代に突入したようだ。我が国も、早期に原油の供給ルートを模索しないとヤバイことになるだろう。ロシアとのパイプを太くするか、イランとのパイプを太くするか、選択は迫っている。以上、簡単に、アメリカと云う国を評価してみたが、異論も大いにあるだろうが、大局的には、そう云う国である。

歴史の重要性を知らない国は怖い。メインの民族的意識がないのも怖い。すべてが、その時々の損得で決する。日本のマスメディアが崇めるような、アメリカンデモクラシーなど、ある筈もない。ただ単に、身勝手な国であり、歴史上、最高に無教養な覇権国家と云うことだろう。最近は、安倍政権の経緯よりも、中露英独の流動的な世界戦略の方が、よほど興味深い。感情と思い込みで政権が動いているし、言葉で言うほど、大層なことも出来ない安倍政権だが、マスメディアのヘタレどもは、大層な権力だと勘違いし、甲羅の中に頭を引っ込めている。多くの国民が、わい曲された為政を聞かせられ、大局を見失う親米にさせられている事実は、正直、手の施しようがない。

貨幣と欲望: 資本主義の精神解剖学 (ちくま学芸文庫)
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●長生きは「幸福」なのか? 切実!高齢化というリスク社会

2016年03月02日 | 日記
現代思想 2016年2月号 特集=老後崩壊 -下流老人・老老格差・孤独死・・・
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青土社


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●長生きは「幸福」なのか? 切実!高齢化というリスク社会

Wikipediaによると、「平均寿命」とは、
≪人口統計では、定常な(対象となる年の各年齢の死亡率が今後も維持される仮想的な)個体群について平均寿命を求める。つまり、平均寿命とは0歳の平均余命のことである。 平均寿命は、年齢別の推計人口と死亡率のデータを使い、各年齢ごとの死亡率を割り出す。このデータを基にして平均的に何歳までに寿命を迎えるかを出す。日本の厚生労働省が 発表している日本人の平均寿命は、ある程度以上の年齢のデータについては除外して計算している。これは、あまりに少数の高齢の人物のデータを算入すると、 その生死によって寿命の統計が大きく影響を受けてしまうからである。データ除外の基準は年度によって異なり、2009年度の調査では98歳以上の男性と 103歳以上の女性に関するデータは取り除いている[1]。つまり、日本では平均寿命は実態より短めに計算されていることになる。≫、
と云うことになる。

算出基準が違うので比較は難しいのだが、1891~1898年の古いデータでは、平均寿命男性42.80歳・女性44.30歳となっている。2015年12月現在、男性80.21歳、女性86.61歳となっているので、120年あまりで、平均寿命は概ね倍になった。最近では「健康寿命」と云う言葉もあり、その人が、健康でいられた期間を表す。アバウトだが、男性は70歳、女性は74歳となっている。 幕末明治の庶民の寿命は、信長の敦盛の一節「人間五十年」よりも短い。まあ、室町時代は不慮の死も多かっただろうし、乳幼児の死亡率、疫病、飢饉等々もあったろうから、短いのは当然だったろう。

昨日、最高裁は、認知症JR事故における家族の監督義務に関して、時代を先取りする判決を言い渡した。以下は、それに関する朝日の記事二本である。この判決は、温情に基づく名判決と評価されるだろうが、情緒に流された、温情判決と云うわけではない。日本社会の、今後30年程度に起きる問題を想定した上の判決だと考えおく必要がある。最高裁が、家族の監督責任に重きを置いた最終結論を出してしまえば、高齢者の拘束・監禁を社会に蔓延させた「元凶判決」との誹りを免れないと予測したのだろう。高齢化に関する、脅しめいた言説は、最近とみに増えている。

「漂流老人」、「下流老人」、「老々介護」、「孤独死」、「独居老人」、「介護離職」、「年金不正受給」、「介護殺人」‥等。そして、その近未来予想図から暗示的に提供される言説「世代間格差」。これらの予測が相乗的に起こす、社会現象は、国を混乱の坩堝に引き込む可能性がかなりある。実は、このような社会の出現はリアルなのに、なぜか予想図と云う形で世間に流布している。現実が、余りにも残酷で、人間の尊厳など構っていられない介護社会の現実があると云うことだろう。家族間でも起きるし、介護施設でも起きる、起きているのが現実だろう。

これらの言葉を見聞きすると、若者は、俺には関係ないで済むが、40、50、60歳になれば、自分たちの両親の問題であり、まもなく、自分たちの問題であるわけだが、何となくの不安はあるが、両親もボケないだろうし、我々もボケないよね、そう云う感覚で漠然と問題を先送りしている可能性は多いのだろう。考えたくない「日本の大問題」は経済成長とか、憲法改正ではないのは確かで、この「老人問題」一点に絞られている。町に、1000万人の痴呆老人が徘徊するような社会が、ヒタヒタと迫っている。これは、安倍政権の口先脅しではない。完璧な現実なのだから怖ろしい。

おそらく、2060年くらいまでが、この怖ろしき時代は終焉するのだが、まだ40年以上耐え抜かなければならない。問題なのは、この現象には、人口減少国家と相乗的に起きるので、問題はさらに厄介になる。この高齢化問題に政策を集中すると、40年後には、不要な施設が廃墟になる。介護労働者の過剰現象が生まれるからだ。しかし、それもこれも、戦後の急速な復興により出来上がった社会構造であり、農村共同体の崩壊だったのだから、経済成長のツケだと言える。いまさら、都会に来たのは「自己責任」と主張するのは、歴史に空白を作るようなものである。こう云う問題を解決するために、政治があり、官僚がいる筈なのだが、その多くが、自己権益を専らにしている。

 ≪ 認知症JR事故、家族に監督義務なし 最高裁で逆転判決  
愛知県大府市で2007年、認知症で徘徊(はいかい)中の男性(当時91)が列車にはねられ死亡した事故をめぐり、JR東海が遺族に約720万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は1日、家族に賠償責任はないとする判決を言い渡した。 JR東海は、男性と同居し、在宅介護をしてきた妻(93)と、当時横浜市に住みながら男性の介護に関わってきた長男(65)の賠償責任を求めていた。
 訴訟は、責任能力がない人の賠償責任を「監督義務者」が負うと定めた民法714条をめぐり、認知症の人を介護する家族が監督義務者と言えるかが争点となった。判決は、上告した妻は監督義務者に当たらないと判断し、賠償責任もないと結論づけた。
 最高裁で 2月に開かれた弁論でJR側は、男性の妻と長男が監督義務者にあたり、事故による振り替え輸送費などの賠償責任を負う、と主張。一方、遺族側は「家族だから監督義務者になるとは言えない」「一瞬の隙もなく見守ることは不可能」だと訴え、家族に賠償責任を負わせるべきではないと主張していた。
 家族の賠償責任について、13年の一審・名古屋地裁判決は、男性の妻と長男の両方に責任があると認め、全額の支払いを命じた。14年の二審・名古屋高裁は妻のみが監督義務者にあたると判断して、半額の約360万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
 最高裁判決について、長男は「大変温かい判断をしていただいた。良い結果に父も喜んでいると思います」とのコメントを発表した。  ≫(朝日新聞デジタル)

 ≪ 遺族「施錠・監禁でいいのか」 認知症で徘徊事故訴訟  
愛知県大府市で2007年、認知症で徘徊中の男性(当時91)が列車にはねられ死亡した事故で、JR東海が遺族に約720万円の損害賠償を求めた訴訟の弁論が2日、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)で開かれた。この日で結審し、判決は3月1日。認知症の高齢者が起こした事故の賠償責任を、介護してきた家族が負うべきかについて、最高裁が初めての判断を示す。
 「一、二審の判決は、認知症の人や家族にとって、あってはならない内容。最高裁には、認知症の人たちの実情や社会の流れを理解した、思いやりのある判決をお願いします」。長男(65)は弁論を前に、そうコメントを寄せた。
 JR東海から「監督義務者だ」と訴えられた長男は2年前に会社を退職。昨年2月に横浜市から愛知県大府市の実家近くに戻った。今は、父が営んでいた不動産業を継ぎ、母親(93)や妻(63)と生活している。
 事故当時、妻は介護のため、父の自宅近くに住み込んでいた。妻が片付けのために玄関先に出て、そばにいた母もまどろんだ一瞬の間に、父は自宅を出た。
 小銭も持たず、自宅近くのJR大府駅の改札を抜け、一駅先の共和駅まで列車に乗って移動。駅のプラットホーム端にある階段から線路に下りたとみられ、列車にはねられた。階段前には柵があったが、鍵のかかっていない扉から線路内に下りることができた。
 「どうして大府駅の駅員は、父を入場させたのか。なぜ共和駅の駅員は、一般の乗客と逆方向に向かう父を呼び止めてくれなかったのか」。家族は裁判で疑問を投げかけた。
 父は事故に遭った際、お気に入りだったニューヨーク・ヤンキースの帽子をかぶっていた。帽子にも衣服にも、妻が、連絡先を記した布を縫い付けていた。この名札をもとに、警察は家族に一報を入れた。  事故の約10カ月前、認知症が重くなり「要介護4」の認定を受けた際に、家族は一度は特別養護老人ホームへ の入所も考えた。だが、結局は在宅介護を選んだ。「父は住み慣れた家で生き生きと毎日を過ごしていました」。長男は振り返る。一瞬のすきなく監視しようとすれば、施錠・監禁や施設入居しか残されない。それでいいのか――。そんな思いが、事故からの8年を支えてきたという。(斉藤佑介、市川美亜子、河原田慎 一)
■介護家族、訴訟を注視  
「認知症の人と家族の会」(本部・京都市)副代表理事の田部井康夫さん(68)は弁論を傍聴した後、「最高裁では、介護する家族が免責される判決を望みます。これまでの判決はあまりに酷です」と語った。同会は一、二審の判決後に出した見解で「認知症の人の実態をまったく理解していない」などとし、判決を「時代遅れ」と批判している。
 多くの介護家族がこの訴訟に自分を重ね、注目する。一人暮らしの認知症の義父を支えるために仕事を辞めた千葉県の女性(48)は「介護で苦労した家族だけが責任を負わされた。判決が最高裁で変わらなかったら、私も介護から逃げ出したい」と話す。
 家族の責任は、いま介護中の人だけにかかわるものではない。認知症の人は2012年に高齢者の7人に1人で、25年には5人に1人になる。徘徊(はいかい)中の事故のほか、車の事故や火の不始末などのトラブルの増加も避けられず、誰もが認知症と無縁でいられなくなる。そんな社会に最高裁の判断が与える影響は大きい。
 一方、徘徊がからむ事故などの損害にどう備え、どう賠償するのかも、この訴訟が投げかける問題だ。  一般に、個人ができる対策として民間の「個人賠償責任保険」がある。火災保険や自動車保険などの特約として付ける場合が多い。日常生活でけがをさせたり、商品を壊したりして賠償を求められたとき保険金がでる。ただ一定の条件があり、すべての事故がカバーされるわけではない。
 介護関係者からは、個人の責任で賠償するのではなく、国が関わる公的な救済制度の創設を求める意見も出ている。(編集委員・清川卓史、友野賀世)  ≫(朝日新聞デジタル)


以下に、2本の関連コラムを載せておく。筆者を含めてだが、自分の両親が要介護になる。或いは、自分が、そうなると云う立場で読んでもらうと、ウンザリはするが、身につまされる。


≪ 90歳の入居者が激白!介護ホームの“悲惨なる日常”
川崎市幸区の老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で、入所者の男女3人が相次いで転落死した事件で、殺人容疑で逮捕された同施設の元職員の男は、 「(介護に)手がかかる人だった」 「ベランダまで誘導し、男性を抱きかかえて投げ落とした」 といった供述をしているそうだ。
 介護のいかなる状況にあっても、暴力や虐待は許されることでない。 だが、 「他人事ではない」ーーー。介護現場で働く人たちは、口をそろえる。 「……誰にでも、実はそういう事件を起こしてしまう立場にあるんだなぁって…」
 いや、働く人たちだけではない。
 ホームに入所している“高齢者”の方も、だ。
 現在、90歳。ご主人が要介護となり、ご夫婦で入所されている方から寄せられたメッセージを紹介します。介護現場のリアルを「我がごと」として一緒に考えてみてください。

 「Sアミューユ川崎幸町で起こったことは、他人事ではないような気がしています。殺害なんて絶対に許されることではないし、虐待も暴力もいかなる場合も許し難いことです。
でも、入所者の中には大声で喚き散らす人、たえずヘルパーを呼びつける人、自分が判らなくなってしまった人、思うようにならないとヘルパーの手をかみつく人など、さまざまです。
そんな人達の家族に限って 面会に来ることがなく、ホームに預けっぱなしなのです。
私は夫とともに、毎日、食堂で食事をしているのですが、食事は終わったのに、食べた感覚がなく「食事を早くください!」「死んでしまいます」と大声でわめいている女性がいて、若いヘルパーが優しく対応している姿に頭の下がる思いがしています。
ヘルパーさんたちがあまりに大変そうなので、食器を運ぶくらいお手伝いしようと申し出ました。 でも、絶対にやらせてもらえません。ナニかあったときに、施設の責任になるからです。
先週、またヘルパーが二人辞めてしまいました。理由は『給料が少なくて結婚できないから』ということでした。離職者があとを絶たず、その補充もなかなか見つからないので、残ったヘルパー達が、過重労働を強いられているのが現状です。
ホームには各部屋にインターホーンが設置してありますが、認知症の進んだ入所者がひっきりなしに夜間押すこともしばしばです。 夜勤ヘルパーは、その度に対応しなくてはならない。就寝前に投薬が必要な人もいるので、夜勤の仕事はかなり重労働です。
ヘルパーの中には夜勤はしない、という条件で勤務している人がかなりいるので、限られたヘルパー達が順番でやっているのです。
すぐに順番がやってくるので、真面目なヘルパーは体重は減るわ、顏はやつれるわで見ていて可哀想になります。私はいつもそんな彼等に感謝と激励の言葉を送っていますが、そんな感謝の言葉だけでは、彼女・彼らが報われません。
みなさん、献身的にやってくださります。でも、……人間には限界ってものがありますよね。
政府は施設を作る、と言っていますが、その前にヘルパーの待遇を改善すべきだと思います。ヘルパー不足は入所者へ深刻な影響をもたらしているのです。オムツ交換が4回だったのが3回になり、夜間見回りもなくなり、適性があろうとなかろうと採用するしかない。悪循環です。
高齢者へ3万円支給する余裕があるなら、介護関係に回すべき、だと思います。 ここはまさしく姥捨山です。入居者たちはみんなそういっています。 入所者は家族が介護の限界にきたために本人の意志でなく入れられた人が多いので、私のように発言できる入所者は滅多にいないと思います。 私のコメントがお役に立つようでしたら、こんな嬉しいことはありません。どうか薫さんのお力で、たくさんの方に現状を知ってもらってください」

 ■……これが介護現場のリアルです。
  介護職の方たちの多くは、「おじいちゃんやおばあちゃんに、少しでも笑顔になってほしい」と献身的に働く人たちが多い。だが、そもそもそういう方たちでさえ、常に心の葛藤に襲われるのが介護の世界だ。
 だって、関わるのは全員「人生の大先輩」。それぞれの人生、価値観で長年過ごしてきた高齢者の方に、注意するのはとても気を使う。自分の親でさえそうなのだから、他人であればなおさらだろう。 「本当にこれでいいのだろうか?」 「他にもっといいやり方があったんじゃないのか?」 そんな不安に苛まれる。
 相手が“人”である以上、10人いれば10通りの問題が起こる。一つひとつは小さなトラブルで、ちょっとした対応で処理できるかもしれない。だが、「ホントにコレで良かったのかな?」と不安になる。特に高齢者の“変化”は突然起きるので、対処が実に難しい。
 本来であれば、そういった不安を現場のスタッフたちで分かち合えればいいのだが、全員が自分の仕事でいっぱい いっぱいで時間的にも、精神的にも、余裕がない。他の職員を気にかける余裕など微塵もない。おまけに夜勤、早番、遅番とシフト勤務なので、顔を合わせるこ とも少なくなる。
 介護の現場というのは、実に「孤独」なのだ。
 さらに、平均月収は21万円程度で、他の職種より10万程低い。ただ、これには施設長や看護職員など、比較的高い賃金の職種の方たちも含めた数字なので実際には10万程度という人もいる。
 この低賃金を一般平均である30万程度にするには、年間1兆4000億円ほど必要となり(NPO法人社会保障経済研究所算出)、労働人口で単純計算すると「ひとりあたり年間3万円弱の負担」が必要になる。
 ご存じの通り、昨年、4月から介護報酬が2.27%引き下げられたが、これは2006年の2.4%の引き下げから2回目のこと。介護施設の 人権費率は約6割、訪問系介護は7割と大きいため、報酬引き下げはダイレクトに労働力不足に影響を及ぼす。前回の引き下げで労働力不足に拍車がかかったに もかかわらず、再び引き下げを決めたのは狂気の沙汰としか言いようがないのである。
  「月額1万2000円引き上げるっていってたでしょ?」
 そのとおりだ。だが、それが本当に労働者にちゃんと支払われているかどうかは確かではないのが実情なのだ。 また、前述の女性のメッセージからも人手不足なのは痛いほどわかるのだが、2020年代には、さらに約25万人もの人材が不足するとされている(厚労省算出)。
 重労働、低賃金、超高齢化社会ーーー。この先どうなってしまうのだろう……。 「高齢者へ3万円支給する余裕があるなら、介護関係に回すべき」という、“高齢者”からの意見を、どう政府は受け止めるのか。
 もし、質の高いサービスを望むなら、もっともっと介護保険料を国民が負担すべきで、それができないのであれば、サービスの質を下げるしかないと思う。
 食事、排泄、入浴のニーズに対応するためだけのサービスと割り切り、現状の劣悪な環境を変え、当然、残業はゼ ロ。1人でも離職者を減らし、1人でも多くの人たちが介護士さんを目指し、1人でも多くの高齢者がケアを受けられ、1人でも多くの家族が自分の仕事と両立 できるようにする。 「でも、それじゃあ……」
 うん。それでは……だ。だが介護現場は、頑張りすぎた。頑張らないことから、議論し直す。崩壊するよりその方がまし。
 だって、このまま質を求め続ければ、介護業界は破綻する。
 これ以上の甘えは、暴力と同じ。崩壊も、虐待も、破綻もイヤ。誰もが老いる。親も老いる。自分も老いる。その人生最後の終の住処が、こんなにも悲惨な状況じゃ誰1人、幸せにならないのではないか。 そして、私も、もっとこの闇の解決策を現場に耳を傾け探して行きたいと思っています。

*河合薫 健康社会学者(Ph.D.,保健学)。
千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。 2004年東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究。フィールドワークとして行っている働く人々へのインタビュー数は600人に迫る。医療・健康に関する様々な学会に所属し、東京大学や早稲田大学で 教鞭を取る。2月下旬発売・新刊「考える力を鍛える『穴あけ勉強法』・難関資格・東大大学院も一発合格できた!」(草思社)  ≫(yahooニュース:個人―河合薫)


 ≪ 声に出して言いにくい「日本の大問題」第2回 藻谷浩介×湯浅誠 
人口減少社会 日本人が「絶滅危惧種」になる日 地方が消滅し、都会は認知症の老人ばかり 毎年20万人以上が消える「人口減少社会」となった日本。このまま人は減り続け、地方は消滅してしまうのか。「絶滅」を避けるためにすべきこととは。地域振興と貧困問題の専門家が激論を交わした。

 ■介護離職が激増する
藻谷 団塊の世代 が生まれた直後の'50年には、日本には0~4歳の乳幼児が1120万人もいました。団塊ジュニアが生まれたばかりの'75年には、1000万人です。それが、2010年には530万人。生まれる子供の数は半分になってしまった。今の日本はまさしく「人口減少社会」だと言えますね。 例えばトキの雛の数が半分になったら、これは絶滅危惧種として保護しようという話になる。それなのに日本では、子供の数が半減しても、誰も自分たちが「絶滅するかもしれない」とは言わない。

湯浅 危機感が足りない。

藻谷 子供が生まれなくなったのに伴って、15~64歳の生産年齢人口もどんどん減っています。今、日本には就業している人が2人に1人しかいないんです。正規でも非正規 でも、パート、アルバイトでも、1週間に1時間でも働いておカネをもらっている人は、日本人の半分弱しかいない。高齢者が増えて、若い人が減っているからです。

湯浅 人口減少によって、社会はどんどん疲弊している。それはこれからもっと深刻になります。その大きな要因の一つが「介護離職」です。今、40代後半から50代の人たちが親の介護のためにどんどん仕事を辞めている。'12年のデータでは約15万人に上りました。

藻谷 まだ働けるのに、仕事を辞めざるを得ない。

湯浅 ええ。もし 要介護となっても、介護保険だけでは足りないので、子供が離職して親の面倒を見るしかない。ところが、戦後続いた人口減少で核家族化が進み、今では日本の ほとんどの高齢者は子供が1人か2人しかいません。つまり、「親なんて知らない」と言えなければ、仕事を辞めざるを得ない。
 しかも介護は、終わりがいつ来るかわからない。ようやく介護が終わって復職しようにも、年齢が足かせになって仕事が見つからない。介護中から親の年金に頼るようになって、亡くなっても仕事がないから、死亡届を出せなくなる。そうして起きたのが、年金不正受給事件でした。

藻谷 '10~'15 年の足元5年間には、団塊世代が退職していくため、就業者が220万人減ると推計されます。そして、75歳以上の人口は230万人も増えるので、介護の担い手は到底足りない。介護離職も、5年間で80万人にはなるでしょう。220万人と合わせれば、300万人も働く人がいなくなることになる。

湯浅 それだけではありません。中高年の独身の問題も広がっているんです。'05年の国勢調査で40~50代の独身者で親と同居している、いわゆるパラサイトシングルが 200万人を超えたんですが、彼らは概ね'60年頃までに生まれた人です。比較的、ちゃんと就職して、結婚して、子供を作ることが幸せだと考える、「自立」が善だという価値観で育っている。でも、実際にはそうできなかった人が200万人もいる。'05年の調査から10年たって、パラサイトシングルはもっと増えたと言われています。
 さらに、その後にはフリーターとか、非正規雇用が広がった団塊ジュニア以降の世代が控えている。経済的な理由から、子供を作るなんて考えられない人が激増しているんです。

藻谷 東京五輪が開催される2020年頃には、その人たちが45歳以上のパラサイトシングルとなって、社会問題として顕在化するでしょう。そして働いている人たちも、その時期から親の介護が始まる。働けるのに、介護でやむなく働けなくなる人が増えていく。

 ■みんな見て見ぬふりだけど
湯浅 街に認知症の老人が溢れて、その介護のために現役世代が働けなくなるわけです。経済が滞り、年金保険料の負担は増え、支給は減額。介護の虐待事件がいたるところで起こって、町が暗くなってしまう。
 経済も社会も不安だし、支える制度もないから若者は子供を作ろうと考えない。この負のスパイラルが少子高齢化、人口減少を加速させていく。そうな ることは、みんなわかっているはずです。これだけ統計的なデータが示されているのですからね。わかっていながら、見て見ぬふりをしている。

藻谷 私は今の 「経済成長が何よりも大事」という風潮自体が問題だと思っています。日本のGDP(国内総生産)は戦後ずっと成長しっぱなしでした。不景気だったはずのここ20年を見ても、総じて横ばいで減っているわけではない。貿易額に至ってはバブル期の1・5倍に増えている。その一方で子供の数は半減しています。カネを基準にすれば成長はしていても、人を基準にすれば衰退です。これが幸せと呼べますか。それなのに今の安倍政権は、まだGDPを押し上げる政策ばかりを旗印にしている。

湯浅 株価が上がっても、人口は増えない。

藻谷 アベノミクスで「円安だ、株高だ」と言っていますが、その円安のせいで日本の経常収支は昨年後半から、ついに赤字基調になった。日本からどんどんカネが出て行っているのに、「これから内需回復だ」と言っている。円安で輸入している燃料や原材料も値上がりし、国民の生活コストは上がっている。しかしほとんどの人の賃金は上がっていない。ですが、家計から支払われるコストが増えるとGDPは上がるんです。おかしいでしょう?

湯浅 介護や子育てのコストも、上がるとGDPが上がる。子供が増えない社会を進めたほうが、成長していることになる。 藻谷 欧州では子供に対して日本の4~5倍の予算をかけ、少子化を食い止めています。一方、日本では、輸出大企業を優遇して経済成長というのが最優先のまま。
 これはアメリカの銃規制問題の議論に似ていると思いませんか。オバマ大統領が「銃規制をしよう」といくら叫んでも、共和党保守派は反発しています よね。日本人なら銃規制して、町に銃がなくなるほうが、銃犯罪は減ると思うでしょう。でもアメリカでは「銃犯罪を減らすために銃を増やして自分を守るんだ」という理屈がまかり通る。これと同じで、日本では、いくら経済成長しても子供の減少は止まらないという現実に目を背けて、GDPが上がれば何でも解決するという理屈がまかり通っている。

 ■精神論では解決しない
湯浅 日本にはもの凄く強い「勤労イデオロギー」があるからでしょう。「働かざるもの食うべからず」の精神です。現役世代が多い時代はそれで良かったかもしれませんが、今の日本には働ける人が2人に1人しかいない。
 高齢者や障害者に対してはいたわりの精神があり、介護離職者にもそれなりの理解があるけど、そうではない現役世代で仕事がない人間や妻子を養えて いない人には「人間失格」という烙印を押してしまう。こういう考えの人は年配の富裕層に多くて「私たちは戦後の酷い状態でも子供を生んで子育てをした」という自負心がある。

藻谷 だから頑張りなさいと。しかし彼らもこれから必然的に年金も減るし、介護も受けられないという問題に直面する。現実を目の当たりにすれば、勤労イデオロギーが通じないことは、わかってくれるんじゃないでしょうか?

湯浅 いや、それは難しいと思いますね。なぜなら、彼らは必死に働いて、戦後の貧しい時代を生きぬいてきた。勤労イデオロギーを否定することは、自分の人生を否定することになるからです。今後10年間で団塊の世代が後期高齢者になって、要介護者が激増し、そのために介護保険や年金が崩壊しても、彼らはそのリスクを受け入れる覚悟はあると考えている。

藻谷 そこで出てくるのが、自己責任論ですね。

湯浅 はい。自己責任論は、働けないということも含め、うまくいかないのはすべてその人個人の責任だという考え方。日本人の根っこには勤労イデオロギーがあって、それが近年の経済第一の競争社会の中で強まってしまった。働けない奴は振り落としてしまえと。仕事がないのも子供が作れないのも、介護が受けられるだけのカネがないのも、「結局その人の頑張りが足らなかったからでしょう?」という風潮になった。

藻谷 自己責任論を唱える人たちは、結局は介護離職や子育て、人口減少という問題を解決できるとは思っていない。ただ、若者に頑張れと精神論を振りかざし、マイナスを押し付けているだけ。こんな状況で、若者が子供を作りますか?

湯浅 自己責任論が蔓延する社会になって、成果主義がエスカレートし、ブラック企業がはびこって、うつ病になる人が激増したのに、対策は取られなかった。「できないやつが悪いんだ」「若者がたるんでいる」と言って押し切られる。

藻谷 地方の若者も、まじめな人ほど勤労イデオロギーに染まって、未だに東京に出てくる。

湯浅 ええ。「地方消滅」と言われるのも、本来地方が支え、地方を支えるべき若者が、アテもなく東京に出て行っているという側面がある。地方の若者が東京に来るのは、「地方の疲弊」という言われ方で、東京の生活のほうがいいんだという価値観を植え付けられているのでしょう。
 仕事を求めて地方から出てくる若者は、「地元は針のむしろだった」と言うんですね。30代で定職につけなくて、結婚をする見通しも立たない。この段階で「人間失格」と烙印を押されて、引きこもりになるか、アテもなしに東京に出てくる。でも東京は家賃も高ければ、物価も高い。それなのに得られる仕事 はアルバイトなどの低賃金。それでどうにもならなくなって、生活困窮者になる人が多い。

藻谷 しかし、 「地方の疲弊」と言っている人たちは何を見て疲弊したと言っているのですかね。東京のマスコミが地方のシャッター通りを映して、地方の疲弊と言いますが、 じゃあ東京にはシャッター通りはないんですか。ちょっと駅から離れたところは軒並みシャッター街になってますよ。 確かに、地方消滅は危ぶまれます。でも、東京だって状況は厳しい。ブラック企業を除けば、仕事がないのも似たようなものです。地方の疲弊を言う人は 「東京は地方よりましなんだ」と信じたい東京の人間と、「地方の疲弊を言うことで東京からカネが来る」と思っている地方の人なのでは。

湯浅 本当は地方で生活するほうが家賃も安いし、物価も安い。
 実は2~3年前までは、僕は地方経済が良くなり、人口減少に歯止めがかかる芽が生まれ始めてきたと楽観していたんです。地方を見て回ると、闇雲に経済成長を目指して箱物を作っても今後はやっていけないと、人々が気づき始めていた。藻谷さんが提唱する「里山資本主義」のように、地域の循環型経済を目 指す機運が高まってきていた。

藻谷 しかし、アベノミクスでまた逆戻りしてしまった感がありますね。陳情に行けば、また公共事業で食えるんじゃないか。そう思う人が再び増えてきた。

湯浅 全然、地方は儲かってないのですけどね。地方の事業のカネが東京に戻るようなカラクリになっていて、地域での循環経済にならない。日本はまた、暗礁に乗り上げてしまった。

藻谷 「里山資本主義」には大きな反響がありました。自然豊かな地方で、例えば製材工場から出る木くずでできたペレットを燃料に使えば、乱高下する原油価格に悩まされなくてもすむ。地域独自の少量の農産品をブランド化する。小さな企業も年々増加し、都会から移り住む若者も増えている。東京より賃金は安くても、食べ物も近所の人たちで融通しあったりして生活しやすい環境がある。人口減少社会を乗り切るのにふさわしい、低コストで楽しい生活が実現できるのです。
 そもそも、東京は出生率が1・1しかない。それに対し、地方の出生率は1・5前後です。地方が活性化すればもっと子供が増える。

 ■「消費者」がいなくなる
湯浅 それに地域の元気なおじいちゃんおばあちゃんが子育てや介護に参加してくれる仕組みができれば、介護離職、子育て離職も減らせ経済も活性化する。そのためには核となるコミュニティが必要です。  例えば、東北の被災地ではコミュニティ作りのためにいろいろな試みが行われています。こんな例があります。学生が中心となって、仮設住宅のベンチ や棚を作る日曜大工を請け負うという活動があったんです。そしたら、力仕事だから、おじさんたちも参加してくれて、それでおばあちゃんたちが感謝して。日曜大工のチームを作るということになった。役割って与えられるだけではダメで、その仕事で感謝されることが大事なんですよね。でもその活動は、結局は自治体から勝手にモノを作るな、とストップがかかってしまったそうです。

藻谷 それは残念ですね。しかし、こういうことはやっぱり地方のほうがやりやすい。東京は人を集めるだけで施設の利用料などでカネがかかってしまう。

湯浅 何か地域でやろうとすると、いろいろな抵抗勢力がいる。さらに、目先の経済成長がすべてだという価値観では、結局カネにならないことは何もしないほうがいいということになる。この価値観を払拭しないと。

藻谷 そうですね。私たちは何も経済成長そのものを否定しているのではありません。しかし経済成長だけを求め続けると人口減少に拍車がかかり、消費する人がいなくなって、結局は経済成長の足かせになる。このパラドクスに日本人は気付いていない。
 でも日本にも稀有な例はあるんです。長野県の下條村では20年前から生産年齢人口が減っていません。そして子供の数も増えています。一定の数の子 供がいるから、保育所や小学校の数も増やしたり減らしたりしなくいい。下條村では30年も前から村を上げて子育て支援をやっています。我々も今からでも遅くはない。社会全体で子育てしたり、介護したりする仕組みを考えるべきです。

湯浅 同感です。途上国型の成長ビジョンから、成熟型の成長ビジョンへの転換が必要です。自己責任論で誰かを排除するのではなく、みんなで支えあう包摂社会を目指したいですね。

*藻谷浩介(もたに・こうすけ)/'64年生まれ。日本総合研究所調査部主席研究員、日本政策投資銀行特任顧問。地域振興の各分野で研究、講演を行っている。著書に『デフレの正体』『里山資本主義』など

*湯浅誠(ゆあさ・まこと)/'69年生まれ。社会活動家。'08年末「年越し派遣村」村長として一躍その名を知られる。日本の貧困の現実を記した『反貧困』で大佛次郎賞受賞。'14年度より法政大学教授就任予定  ≫(現代ビジネス:オトナの生活・賢者の知恵・2014年02月21日週刊現代)

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