幼児化する日本は内側から壊れる | |
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東洋経済新報社 |
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●経済諮問会議から、経済学者、経産、財務等の官僚を排除せよ
以下の真壁氏のマネタリーベースの解説は、一応理屈が通じる。しかし、最終的な見通しは、円安、円高、どちらにでも転ぶし、当然、株安、株高の両方の可能性があると云う事なので、何も予言していない経済予想になっている(笑)。たぶん、真壁氏は正直な人なのだろう。ただ、残念な点は、外需への視線が強すぎて、内需目線が軽視されている点がきになる。アベノミクスが絶望的失敗に終わっているのは確実だが、未だ「やめます」とは宣言していない。つまり、トンデモナイ経済政策は継続中と云うことになる。
相当以前から、需給のバランスが問題だと言われているのに、その点を意識した経済政策は手つかずだ。おそらく、念仏のように規制緩和を強化してしまえば、タクシー業界のように、需給のアンバランスに拍車が掛かるだけである。宿泊に「民泊」など云うのも、供給過剰で、気がつくと、女房付き民泊なんて倫理にも劣る現象が起きるだろう。内需が人口減少に伴って、先々細るばかりだと云う悲観論が多いのだが、市場ベースは、そうであっても、工夫はまだまだ可能である。
現存する既得権勢力の産業を入れ替え、同じものを生み出すとしても、未来展望の観点から、官民一体で決意すれば、新産業に差し替えられる旧産業分野はごまんとある。電力エネルギー供給システムには、一部風穴が空いたが、エスタブリッシュメントの抵抗が強く、彼らをねじ伏せる力量ある政治は期待薄だ。しかし、地産地消的エネルギーのシステム構築が、共同体自治のモデルケースになることも考えれば、適度なケーススタディーの実践場となるだろう。問題なのは、そのムーブメントを推進する言論がない。哲学を引っ提げて、国民の間にムーブメントが起こせる言論人が出てこないと辛い。
人口減少国家であるからと言って、何もかもが縮小するだけではない。内需産業の質的変化は、資産を持つ人々の消費を喚起するわけで、彼らが消費してくれる安心感を政治が提供できるか、そういう社会政策上の問題も大きいだろう。社会保障支給が細る情報だけを流し続ける世の中で、財を持つ高齢者の財布を緩めさせるのは困難だ。高齢者が、「それなら安心だ、このサービスを受けてみよう」そういう少子高齢化社会を活気づけるアイディアの不足が、日本経済がデフレ脱却しない元凶だ。経済諮問会議の類から、経済学者を締め出す試みなども面白いだろう。歴史的大転換時には、「餅屋が癌になる」。
≪ 円高・株安からの脱出を阻む「アベノミクス逆回転」のメカニズム
■世界市場が落ち着きを取り戻すなか、
なぜ日本だけが取り残されるのか?
足もとの世界の金融市場における株式や為替などの展開は、一時期の不安定な状況からだいぶ落ち着きを取り戻している。その背景には、サウジアラビア やロシアなど主要産油国が生産維持で合意したことにより原油価格が反発していること、ECBや日銀の金融緩和策維持の方針が明らかになったことなどがある。
また、米国のFRBは3月の定例委員会で利上げを見送り、今後の金利引き上げ回数が2回程度にとどまることを示唆した。昨年12月時点の4回の利 上げ予想が2回に引き下げられたことは、投資家に大きな安心感を与えた。そうした要因で主要投資家の心理状況は改善し、欧米や中国など主要な株式市場は堅 調な展開になっている。
そんななか、わが国の株式市場は低迷が続いている。欧米や中国など主要株式市場の動きから取り残された格好だ。わが国の株式市場にモメンタムが出ない理由の1つは、昨年までの円安・ドル高の傾向が変化していることがある。
2011年秋口まで続いた超円高の動きは、その後、堅調な米国経済の動向を反映して円安・ドル高の方向に動き始めた。それに伴い、自動車などわが国の主力企業の業績は大きく改善し、アベノミクスの経済政策効果もあり、株価を押し上げることになった。
しかし、昨年末にかけてのドル高・原油安の影響で、米国の製造業の業績懸念が浮上し、少しずつ為替市場の動向に変化が生じ始めた。
日銀はマイナス金利にまで踏み込み、円高の流れに歯止めをかける試みをしているものの、今のところ、期待されたほどの効果は出ていない。今後、円高がさらに進むようだと、アベノミクスの効果が逆回転し始めることにもなりかねない。
短期的に見ると、為替相場を動かす最も大きな要素は金利だ。一般的に、投資資金は金利の低い通貨から高い通貨へと流れやすく、低金利通貨は弱含み になりやすく、高金利通貨は強含みの展開になりやすい。そのため、為替相場に大きな影響を与えるのは、2つの通貨間の金利差ということになる。過去の相場動向を分析すると、為替の動向は、名目ベースの金利からインフレ率を差し引いた実質ベースの金利に反応することが多い。
ドルと円の実質ベースの金利を見ると、米国のFRBは昨年12月に金利を引き上げたものの、今後の引き上げペースは当初の予想よりもかなり緩やかになるとの見方が有力だ。一方、足もとで米国のインフレ率は少しずつ上昇する気配を見せている。その結果、米国の金利は思ったほど上がらず、消費者物価指 数の予想が上がる分だけ、ドルの実質ベースの金利を引き下げることになる。 逆に、わが国では日銀のマイナス金利の実施もあり、表面金利は下がっているものの、わが国経済のデフレからの脱却が遅れていることもあり、期待インフレ率は低下している。そのため、円の実質ベースの金利はむしろ上昇傾向にある。そうした実質ベースの金利差を見る限り、円が買われやすく、ドルが売られやすくなっている。
また、米国の企業業績が悪化したことも無視できない要因だ。米国企業の業績は昨年夏場以降、マイナスに転じている。主な理由はドル高と原油安だ。 産業界からは政策当局に対してドル高是正の要請が強まっている。オバマ政権としても、今秋の大統領選挙を控えてその要請を無視することはできない。
■為替市場で円高・ドル安が進む理由
アベノミクス逆回転のメカニズム
ヘッジファンドなど大手投資家は、円安・ドル高の方向性に変化が出たことを見逃すはずがない。特に為替担当のアナリスト連中は、米国政府の為替政 策に関する姿勢には極めて敏感に反応する。彼らは、米国政府のドル高に歯止めをかけたい意向を敏感に読み取ったはずだ。そして、そうした米国政府の政策の変化を利用して、ドル売り・円買いで収益を上げることを考えたはずだ。
それは、シカゴの為替先物の投機筋(ノンコマーシャル)の持ち高(ポジション)が、昨年までのドル買い持ち・円売り持ちから、円買い持ち・ドル売り持ちに変化していることを見ても明らかだ。 ヘッジファンドのマネジャー連中とメールのやり取りをすると、一部のファンドが為替のオペレーションに加えて、日本株の売買も積極的に行っていることがわかる。円が上昇すると、わが国の主力輸出企業の収益状況は悪化することが想定される。
彼らは円相場と日本株の関係を使って、積極的に円を買い上げて円高傾向にする一方、株式の先物を売って株価を押し下げることを狙っているように見える。そうしたオペレーションは、日本の株式市場が世界から取り残されるように低迷している理由の1つかもしれない。
そのほか、原油価格下落に伴って有力SWF(ソブリン・ウエルス・ファンド)や、アベノミクスに失望した海外ファンドが、保有する日本株の売却に走っているとの観測が出ていることも、日本株市場にはマイナスの要因になっている。
足もとの円高・日本株安は、これまでアベノミクスがもたらしてきた円安・株高の成果を逆回転させることになりかねない。
■「日本だけ蚊帳の外」は長く続かない
今後の不安は米国経済のピークアウト
ただ、ヘッジファンドなどの投機筋が円高・日本株安を狙っても、その傾向が永久に続くことはあり得ない。彼らは、基本的に買ったものは売り、売ったものは買い戻しをする。ということは、日本株だけが売られ続けることは考え難い。
ということは、短期的に見ると、「日本株だけ蚊帳の外」という状況は長続きせず、どこかで売り持ちになっていた部分の買い戻しが入るはずだ。そうなると、日本株も徐々に上昇余地は出てくると見る。 現在、安倍政権は来年4月の消費税率の再引き上げを実行するか否かを検討しているようだ。そのために、海外の著名経済学者を呼び寄せ、意見を聴取している。それは、おそらく一種のアリバイづくりとも見える。
すでに市場関係者の多くは、「安倍政権は消費税率の再引き上げを延期せざるを得ない」との見方に傾いている。それが実際に発表されると、株式市場 を取り囲む状況はかなり変わる。今年から来年にかけての駆け込み需要の盛り上がりは期待できないが、来年4月以降の反動による落ち込みは考えなくて済む。 それは、わが国の株式市場には大きなプラスとなって作用する可能性が高い。
一方、金融市場にとって無視できないリスクは依然残っている。原油の過剰感は完全に払拭されていない。中国経済の減速に歯止めがかかったわけでもない。欧州の難民問題や英国の国民投票など、不透明感もある。
また、少し長い目で見ると、上昇過程がそろそろ7年を迎える米国経済に、今年から来年にかけてピークアウト感が出ることも懸念される。そうしたリスクを考えると、世界の主要株式市場は、年初来の売られ過ぎからやや回復している局面と考えるべきだ。
今後、そうしたリスク要因、特に米国経済のピークアウトが顕在化すると、世界経済が下落傾向に突入することが考えられる。その場合には、ドルはさ らに売られ、世界の主要株式市場は振れ幅の大きな不安定な展開になることが予想される。株価がある程度戻っても、本当の意味で安心はできない。
≫(ダイアモンドONLINE:経済・時事―今週のキーワード・真壁昭夫)
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