世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●“NO1”キープために世界に迷惑をまき散らす 米国はいつ悶絶するか

2014年05月28日 | 日記
ロシアの論理―復活した大国は何を目指すか (中公新書)
クリエーター情報なし
中央公論新社


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●“NO1”キープために世界に迷惑をまき散らす 米国はいつ悶絶するか

 ウクライナでは、新大統領の選出を待っていたかのように、ウクライナ東部ドネツク州の親ロ勢力への武力攻撃が再開された。その再開は、第一波、二波に比べ強大で、新ロ派民間人を爆撃するアメリカ風の攻撃形態である。第二次大戦において、米軍が用いたわが国への爆撃を彷彿とさせるものである。パイロットは攻撃地点に誰が立っているか、籠っているかに関わらず、無差別爆撃で邪魔者をせん滅しようとしているようだ。今現在、ウクライナ新政権(ロシアは新政権と云う言葉使わず、現在も暫定政権扱い)は悦に入り、米国務省はロシア・プーチンがどのような動きをするか注意深く見守っているに違いない。以下は朝日のウクライナ情勢の報道である。


 ≪ ウクライナ軍、空港を奪還 親ロ派50人死亡
 ウクライナの アバコフ内相は27日、前日に親ロシア派武装勢力が一時制圧した東部ドネツクの国際空港について、軍の奪還作戦が成功したとし、「空港は完全にコントロー ル下にある」と話した。親ロシア派幹部によると、同派の戦闘員50人以上が死亡。親ロシア派の攻勢に、政府は制圧作戦を強化する考えだ。
  現地の軍広報官によると、武装勢力は26日午前4時半に空港を占拠。軍が明け渡すよう求めたが、拒否したため制圧作戦を開始。空港を空爆した。
  また、東部ルガンスク州の国境で27日未明、武装勢力の車両数十台がロシア側からウクライナに侵入。国境警備隊と戦闘になり、迫撃砲など武器を積んだ数台を取り押さえたが、大半は国境を突破したという。
  ヤレマ副首相は「対テロ作戦はテロリストが一人もいなくなるまで続ける」と語った。広報官は「武装勢力のすべての拠点を把握している」と明言。「彼らが武器を手放さないならば、『精密誘導兵器』による攻撃を開始する」と話した。
 一方、ドネツク市内は緊張がさらに高まっている。26日夕に銃撃で1人が死亡した中心部の主要鉄道駅が27日朝、閉鎖された。
 地元メディアによると、親ロシア派はドネツク南近郊の鉄道に地雷を敷設。ドネツク州の港湾都市マリウポリに向かう物資輸送の要で、ウクライナ当局が撤去した。ドネツク西の鉄道でも道床が破壊された。  文民の国際監視団を派遣する欧州安保協力機構(OSCE)は27日、市東部を巡回していた4人のチームと前日夕から連絡が取れなくなっていると明らかにした。
 ≫(朝日新聞デジタル:キエフ=石橋亮介、喜田尚)

 朝日の記事は、すべてウクライナ、キエフ政府側の伝聞記事であり、朝日の記者が見聞きした生情報ではない。つまり、記者クラブ情報だと認識しておくべきだろう。特に 『 現地の軍広報官によると、東部ルガンスク州の国境で27日未明、武装勢力の車両数十台がロシア側からウクライナに侵入。国境警備隊と戦闘になり、迫撃砲など武器を積んだ数台を取り押さえたが、大半は国境を突破したという。』辺りは見てきたように記者が配信している。西側報道のプロパガンダ報道とは、なるほどこういうものかと感心させられる(笑)。

 おそらくだが、ロシアのプーチン大統領の腰は重いと思われる。その理由は、ウクライナ東部や南部に、あからさまな介入は国際世論上有益ではない、と判断していると思うからだ。西側陣営の1割か2割の人間が、ウクライナ新政権の、独立運動に対する弾圧の度が過ぎているのではないか?と云う疑問が湧くのを待つ感覚なのだろう。

 ウクライナ新政権の動きを絶え間なく監視し、EU加盟の上、NATOへの加盟を明確にする時点まで、耐え忍ぶのではないのかと考えられる。ロシアと云う国、プーチンと云う人物、ともに外交戦略はオバマ政権などが足元にも及ばぬ強靭さがあり、ウォッカでも飲みながら時機到来を待つに違いない。

 プーチンは、今回のウクライナ新政権の爆撃、無差別攻撃に関し、イタリアのレンツィ首相との電話会談で「ウクライナ暫定政権による東部での軍事作戦は、即時停止が必要だ」、「ウクライナ暫定政権と東部の親ロシア派の対話による問題解決が必要だ」と穏健風、弱腰風発言をしているが、「ウクライナ新政権」とは言わず「ウクライナ暫定政権」と云う表現をしている。多分、ここが今後のウクライナ問題のキーポイントになりそうだ。

 つまり、ロシアや中国が今回の選挙で選ばれたポロシェンコ大統領やヤッエニュク首相のウクライナ政府を、正式なウクライナ政府と承認しない状況が継続する問題を西側は抱えてしまった。国際外交のゲームが行われているわけだが、戦略的にはプーチン側が断然有利に見えてくる。なぜなら、現在のアメリカの優位性が存在する前提が、第二次世界大戦後の戦勝国の枠組みで成立していることだ。ゆえに、中国もロシアも経済的に滅茶苦茶な状況でも、国連の常任理事国に君臨しているのである。ここが味噌なのだ。英仏は大戦の影響をいまだに引き摺り、回復の兆しさえ見えていない。彼らが踏ん張っていられるのも常任理帰国いられる故の部分が多いのだ。

 国際関係において、国連の常任理事国である地位は、多くの力を与えられ、戦後は、そこから始まっている。つまり、常任理事国は国際競争において、下駄を履いて地球上を歩いていると云うことだ。常任理事国の中で、英国はギブアップし、アメリカ一人勝ちの時代が続いた。そうして、世界中に欺瞞のアメリカンデモクラシーを押しつけ、強要してきたのが米国だ。しかし、ロシアはプーチによって理事国らしい剛腕を再構築した。中国は未だ道半ばだが、GDPだけ見れば、米国を追い抜くところまで這い上がっている。フランスは何とか常任理事国らしい状況にしがみついているが、右翼勢力の抬頭で、足取りは相当にヤバそうだ。

 単純に色分けは難しいのだが、ロシア、中国を核とするユーラシア勢とアメリカ一国の争いに収斂されつつあると見るべきだ。英国は運命的に米国と共同歩調をとるだろうが、頼れる相手ではない。戦後の枠組みを重視するとなれば、「中露対米国」と云う図式が、素朴に浮かんでくる。中国やロシアは、民族的団結を含むナショナリズム国家性をもっている。そして貧困に強く、人命への価値観が、欧米諸国とは異なる。時には破滅的武器使用も辞さないナショナリズム性を有している。それに対し、アメリカの云う国家は、何を持ってナショナリズムを育てるべきか、初歩的段階から脱していない。にもかかわらず、通常兵器で世界一だし、経済も欺瞞だらけでありながら世界一をキープしている。

 なにが言いたいのかと云えば、捨身でも勝利をもぎ取る気構えが出来るのが、中国、ロシアであり、捨身から遠ざかろうとする国民を抱えているのが、アメリカである。もう完全に受け身な癖に、ユーラシア勢の抬頭許すまじと云うナンバーワン気質が抜けなくなっているのが、アメリカと云う国である。逆に考えれば、気の毒だが、米国民をまとめる錦の御旗が「ナンバーワン」なのである。それゆえに、その力の衰えを糊塗しようと、911はじめ、テロ戦争、金融経済、サイバー戦争など、次々と新たな関心事をねつ造せざるを得ない、気の疲れる国家なのである。この程度のことは、プーチンも習近平も知っている。以下は、ロシア外交防衛政策会議議長ルキャノフの、ロシアNOWに掲載されたオピニオン、充分な論考が加えられている。毛嫌いせずに読むことだ(笑)。

 ≪ なぜ中国にロシアが必要か

【 プーチン大統領は、大統領選前に書いた論文で、ロシアは“中国の風”をうまく帆に受けて自国の発展の追い風にしたいと述べていた。ヨットマンなら誰でも 知っていることだが、海が時化て突風が吹いているときは――今世界は嵐が吹き荒れている――ヨットの操船はすごく難しいけれども、その代わり操船がうまくいったときには、目的地にずっと早く着ける可能性がある。この点、プーチン訪中は期待を裏切らなかった。】  

 露米関係の危機を背景に、この訪中は、ロシアによる新たなパートナーの模索だと解釈されている。ロシアは、前から宣言していたアジアへの“転回”をいよいよ開始したのであり、ウクライナをめぐる対立は、その触媒になったという訳だ。

 とはいえ、露中接近はロシアにとって必要なので、中国はその資源を利用するために近づけてやったにすぎないとの見方があるが、これは皮相に過ぎよう。中国は自らの政策の基盤を固めるために、相手におとらずロシアを必要としているのだ。

 中国包囲網
 中国は現在の世界情勢に不安感を抱いている。その不吉なシグナルになったのが「アラブの春」だ。強力な海外の勢力が内政不安に付け込むことができる――。こうした非常に危険なモデルとして、中国は「アラブの春」を理解した。ましてや、米国はこれと時を同じくして、アジアでの新政策を宣言したのだから、なおさらだ。見た目の慇懃さにもかかわらず、この政策は、当然、他ならぬ中国抑止を目的としている。

 中国は隣国たちと多くの領土問題を抱えているが、それは長い間「休眠状態」にあった。ところが、それらは今やみんな目を覚まし、もはや局地的な問題のレベルではなくなっている。プーチン大統領が上海を訪れたときはちょうど、中国とベトナムの関係が緊迫し、中国人の避難にまで至った。日本、フィリピンとの関係も緊張している。最近、アメリカのオバマ大統領が太平洋諸国を歴訪した際は――おそらく初めてのことだと思うが――米国は、同盟国の領土問題において、あらゆる手段で援助するとはっきり示唆した。

 中国の内憂外患
 こうした“外患”に加え、中国の発展モデルに関する熱い議論もある。中国経済は減速し、専門家らは好ましからぬ傾向を指摘しているのに、絶えざる急成長こそは、中国の政治体制および共産党の権力基盤の要なのだ。昨年末に開かれた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会では、多くの国内問題が指摘されている。それらの問題の一部は、最近30年以上の絶えざる成長による経済の過熱と関係しており、また別の一部は、社会的、経済的格差の拡大で、国民の大半が置き去りになっていることとかかわっている。こちらの問題も克服されていない。

ウクライナ情勢
 習近平氏は、2012年に国家主席に就任して以来、つまり現在の危機のはるか前から、中露関係を新たなレベルに引き上げたい意向を強調してきた。
 なるほど、中国がウクライナ情勢を警戒しているのは事実だ。中国自身、国内に少なからぬ分離主義の問題を抱えているので(新疆ウイグ ル自治区、チベットなどのほか、台湾との問題もある)、あらゆる国境線の変更には神経質であり、ウクライナ問題でまともにロシアを支持することは期待できない。
 だがそれと同時に中国は、以下の点を強調している。我々は、ウクライナ問題の大本の原因を理解しており、ロシアが米国の長年にわたる旧ソ連圏での政策に対して行動を起こしたことも弁えている、と。

 しかも中国は、米露の対立でロシアが負けることを望まない――それは米国を強めることになるから。米国が近い将来中国の戦略上のライバルになることは必至だと、中国は理解しているのだ。
動機1:グローバルな三国時代
 では、中国をロシアに接近させた具体的動機は何か?
 第一に、グローバルな戦略的均衡の問題がある。中国は、世界における自国と他の国の位置を、3つの超大国――中国、米国、ロシア――からなる“三角関係”を通して見ている。それぞれの角の重要度は、それが他の2角に対してもつ関係による。もし、ある角が、他の一つの角との関係を失うか損なうかすれば、その角は、中国人の観点からすれば弱くなる。なぜなら、第3の角への依存度が増すからだ。

 動機2:地域の安全保障
 第二は地域の安全保障だ。中国の隣国たちが、この国の興隆を背景に自信を失うにしたがい、米国の対中圧力は増していく。ところが、ロシアは(中央アジア諸国をのぞけば)、中国との間に領土問題がない唯一の国だ。だから、中国にとっては“最大限綱領”は、領土問題でロシアの支持を取り付けることだが、これは期待薄で、ロシアは中立的立場をとるだろう。だが、少なくともこれは反中国ではない。

動機3:エネルギー安全保障
 第三に、安定したエネルギー供給だ。中国は伝統的に世界市場に依拠してきたが、世界各地で緊張が高まるにつれ、軍事的、政治的要因も考えざるを得なくなった。ロシアは、仮に深刻な対立がどこかで生じても、米国海軍が輸送ルートを遮断できない唯一の供給元だ。今のところ、こんなシナリオはありそうもないが、近現代史は、何でも起り得ることを再三示してきた。

動機4:世界経済を牛耳る米国
 第四はグローバルな影響力の問題だ。ウクライナ危機は一つ予想外な結果をもたらした。米国は、ロシアに圧力をかけるために、世界市場の機能に介入しようと政治的テコを使った。つまり、ロシアの複数の銀行を国際決済システムから外したり、格付け会社や国際金融機関に働きかけたりした訳だが、中国はこれを看過しなかった。こういうやり方は、米国と深刻な対立に陥った国すべてに適用され得るからだ。したがって、中国はロシアと同じく、世界経済における米国の独占状態を弱めることに関心がある。

 動機5:発展の新たな刺激
 第五は発展の新たな刺激。中国は他の多くの国同様、輸出に依拠しており、国外の状況、景気に左右されるので、絶えず新たな市場を開拓しようとしている。
 一方ロシアはといえば、最近まで、経済的不均衡に陥ることを危惧し、中国からの大規模投資には慎重だった。だが、政治的接近は、こういう経済関係も促すことがある。プーチン訪中はそのことを示した。  
もちろん露中関係は、気楽な散歩にはならない。二つの、隣国同士でそれぞれに帝国的性格を濃厚にもつ巨大な国は、摩擦を起こしたり、 利害を対立させたりすることは避けられない。だがそれは自然なことだ。問題は今対立点がないことで、仮に将来問題が生じたとしても、それに対処するノウハウをもつことである。ロシアは、中国に比して脆弱な経済を政治的な能力と経験で補うことを学んでいかねばならない。この点では、今のところ、ロシアに一日の長がある。
 ≫(ロシアNOW:オピニオン:フョードル・ルキヤノフ、政治学者、外交防衛政策会議議長。)

中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義
北野 幸伯
草思社


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