世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●変わる世界で変わらないでいるリスク 100年戻ろうと云う狂気

2014年05月09日 | 日記
資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)
クリエーター情報なし
集英社


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●変わる世界で変わらないでいるリスク 100年戻ろうと云う狂気

 以下は、野口悠紀雄の著書『変わった世界 変わらない世界』のご本人の説明だ。論旨のすべてが正しいかどうか別にして、製造業保護に特化するアベノミクスを含む、中央集権型経済政策が如何に時代錯誤の産物であるかは、損得勘定の立場から一歩下がって眺めれば、一目瞭然の背景が世界の経済包んでいる。そのことに目を向けない既得権益勢力があるのは当然だが、そこからはみ出している人々が、それに気づかないのは、無知ゆえなのか、無気力なのか、悟りなのか、筆者には解がない。

 納得して是認できる論者は、日本では少数派だ。筆者の好みも大いにあるだろうが、それだけが理由ではない。誠実で純朴に生きる人間の価値観が、どこかで無きものになっている。それを嘆くばかりでは生きている価値もない。ゆえに、及ばずながら自己満足的にコラムを書き続けている。しかし、オヤジの死亡後に起きた骨肉の争いの経過を眺めていると、忖度で、物事が公正公平に行われることはないと気づく。「嫌われる勇気」を持たないと、物事が良い方向に向かわない真実があることを、知らされる日々だ。自分の頭と心で考え、感じ、人間的に生きることを放棄した人間は畜生なんだろうと思う。

 ≪ 『変わった世界 変わらない世界』著:野口悠紀雄---日本経済はなぜ停滞から脱却できないか

 「アベノミクスの失速」ということが言われる。しかし、安倍晋三内閣の経済政策には、もともと、公共事業の増額以外には中身がなかった。多くの人は 金融緩和が経済動向を好転させたと考えているが、日銀による国債購入額が増えただけで、マネーストックはほとんど増加しなかった。その意味で、金融政策は 空回りしていたのである。

 また、円安もアベノミクスで生じたものではない。それはユーロ情勢の変化などが国際的な投機資金の流れを変化させたことによって生じた。しかも、円 安の効果は、一部の輸出産業の利益を増大させ、株価を上げるにとどまった。実体経済は改善せず、設備投資も増えていない。円安による物価上昇で、実質賃金 は低下を続けた。アベノミクスが経済を改善しなかったことを示す何よりの証拠は、GDP成長率が、安倍晋三内閣の登場以来、低下を続けたことだ。

 2013年初めの成長率が高かったのは、住宅の駆け込み需要と公共事業の著しい増加があったためである。しかし、14年度には、こうした一時的要因 は消滅する。このため、経済成長率は大きく落ち込む可能性が強い。結局のところ、アベノミクスは、日本経済の長期的な趨勢に、何の影響も与えていない。 日本経済が長期の停滞から脱却できないのは、1990年代以降生じた世界経済の大きな構造変化に対応できないでいるからだ。

 この変化の本質が何であるかを論じるのが、4月に講談社現代新書で刊行した『変わった世界 変わらない日本』の第一の目的だ。 変化の本質を一言で言えば、市場経済の復活である。それは、分散型情報処理技術の進歩に支えられている。具体的には、大型コンピュータと電話(または専用回線)から、PCとインターネットへの転換だ。

 これは、単なる技術面の変化ではなく、経済活動の基本に大きな影響を与えた。中央集権的な経済の優位性が低下し、分権的な経済の優位性が高まった。政府や大企業ではなく、小企業や個人が重要な役割を果たすようになったのである。

 経済構造や組織の構造、そして産業構造が変化しないと、この変化には対応できない。社会主義国家とは、中央政府がすべてを決める中央集権的な国家である。したがって、情報処理技術が分散化した世界では、もともと生き延びられない宿命を負っていた。

 日本は社会主義国家ではないが、政府と大企業の力が強く、市場を中心とする分権経済とは言い難い。90年代以降の大変化に日本が対応できない基本的な理由は、ここにある。

 しかも、日本では、こうした変化が生じたこと自体がよく知られていない。取り残されているのだが、それに気づいていないのだ。 では、日本の経済構造はどのように転換すべきか? そのために何をなすべきか? 本書は、こうした問題を論じている。ただし、完全な答えを与えることができたわけではない。本書の基本的な役割は、問題の所在を認識することにあると考えている。

■アイルランドの奇跡
  『変わった世界 変わらない日本』では、アイルランドの経済発展について、かなりのページを割いた。アイルランドの急激な経済発展は、日本ではあま り知られていない。また、規模が小さいので、重要な問題ではないと考えられているかもしれない。本書が取り上げたのは、新しい経済の典型例という意味で、 重要な現象だと考えたからである。

 アイルランドは、つい最近まで、ヨーロッパでもっとも貧しい国であり、「ヨーロッパの病人」と呼ばれていた。産業革命を実現することができず、農業国のままにとどまっていた。 *それが1990年代に大発展をしたのだ。それは、世界経済の大変化にうまく対応することができたからである。その結果、工業社会の段階を経ずに、一挙に21世紀型の産業構造になった。

 ただし、経済成長が早すぎて、住宅価格バブルが起こり、それが破綻して不良債権が発生し、公的資金注入という事態になった。しかし、現在はすでにそ れから回復している。この過程は本書では十分に説明できなかったが、回復したということは、最近の一人当たりGDPを見れば明らかだ。

 多くの人は、ヨーロッパでは「ドイツの一人勝ち」が起こっていると考えている。しかし、ドイツは、日本と同じく、世界経済の大転換に適切に対応した とは言えない国なのだ。このことは、本書で示した一人当たりGDPを見れば明らかである。経済危機前の2007年、ドイツの一人当たりGDPは、アイルラ ンドの約68%でしかなかった。経済危機後の10年においても、この比率は約88%でしかない。こうしたことも、日本ではあまり知られていない。

■中国をどう評価するか 中国をどう評価するかは、難しい問題だ。
 過去20年間の経済成長率はきわめて高かったが、それは、農業国が工業化する過程では普通に見られる現象であって、格別驚くべきものではない。

 ただし、中国の経済的な実力については、日本では過小評価されている面もある。 *中国経済を担うのはいくつかの巨大国有企業だが、その枠外に民間企業も多数誕生している。これらは玉石混交だが、その中に本格的な成長ポテンシャルを持つものもある。また、本書では触れられなかったが、基礎科学における躍進ぶりも目を見張る。

 リーマンショック後に世界経済が大きく落ち込んだ時、中国は中央政府主導で4兆元の経済対策を行い、経済成長を維持した。しかし、その後遺症がいま 顕在化しようとしている。地方政府が不動産開発事業を進めるにあたって、「融資平台」と呼ばれる投資会社を作った。そして、「理財商品」と呼ばれる金融商 品を富裕層に提供して資金調達を行なった。これは、「シャドーバンキング」(陰の銀行)と呼ばれるものである。ところが、採算の取れない対象への投資も あったため、債務が返却できず、巨額の不良債権を生む危険があると言われている。 本書は、中国に関して態度を決めかねている。世界経済に大きな影響を与えているのは事実だが、こうした経済が持続的な成長を実現できるとは考えにくいのである。

 共産党一党独裁であるにもかかわらず市場経済を導入している。インターネットの利用が進んでいるが、政治システムは分権化していない。これらは根源 的な矛盾であって、どこかの時点で決着がつけられねばなるまい。こうした問題を抱えた中国は、これからどう進んでいくのだろうか?

■財政赤字の行き着く先はインフレ

  日本の財政は、歳入の約半分を国債に頼るという異常な姿になっている。今回の消費税増税は「焼け石に水」で、財政赤字はほとんど変化しない。国債残高のGDPに対する比率は、他の先進国に例を見ないほど高い。 人口構造の高齢化によって社会保障費は増大し続けるが、社会保障制度の改革にはほとんど手が付けられていない。

 それにもかかわらず日本の国債利回りが高騰しないのは、日銀が買い支えているからだ。「異次元金融緩和」の本当の目的は、国債の買い上げ(「国債の貨幣化」「財政ファイナンス」)である。

 しかし、こうした状況を続けていけば、いずれインフレになる。歴史が示すところでは、財政赤字がある程度以上になると、インフレによって国債残高の実質価値を減少させるしか方法はなくなる。

 財政赤字は、きわめて難しい問題である。どのように解決したらよいのか見当もつかない、というのが正直なところだ。【 野口悠紀雄のぐち・ゆきお 早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問】 ≫(現代ビジネス:メディアと教養)

変わった世界 変わらない日本 (講談社現代新書)
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