acc-j茨城 山岳会日記

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裏剣・池の平~欅平(水平歩道)

2000年08月05日 21時00分22秒 | 山行速報(登山・ハイキング)

2000/8月上旬 裏剣・池の平~欅平(水平歩道)

池の平小屋は実に落ち着ける よい小屋だ。

アルプスにある小屋とは思えないほどの静寂と 管理人さんの人柄に魅力がある。

表剣の喧騒など忘れてこの一晩、管理人さん、同宿の御夫婦とゆったり、楽しい会話と共に 過ごす事が出来た。

さあ、朝の訪れだ。今日は朝から日差しが鋭い。

昨日濡れてしまった靴下と 靴を履くのは憂鬱だけど裏剣の勇姿を望んだら阿曽原温泉目指して出発だ。


仙人池ヒュッテに着いた。 
ここは、裏剣の有名な撮影スポット、仙人池がある。 
生憎ガスがかかり池に映る裏剣を望む事は出来なかった。

池の平小屋で、ル-ト詳細をここで聞くとよいと教わっていたので、 仙人池ヒュッテに阿曽原温泉まで行く事を申し出た。 
ヒュッテのおばさんが丁寧に教えてくれた。 
「気ィつけてな。」
こんな言葉を懸けられるとなんだか道を聞いただけの 間柄のような気がしない。

そう言えばおばさんが開口一番
「裏剣はええやろ。静かで。」
といっていたが 充分すぎるほど納得できる。

道すがらなんとなく考えたが、裏剣の雰囲気は決して「静寂」だけではなく、 小屋の方々の温かい情がそれらを創り出している事に気づいた。

「また来たいな。」思わずひとりつぶやいた。


この道には隠し味がある。 
それは、点在する温泉なのだ。

今日は阿曽原までのゆったりした日程だ。 
途中の仙人温泉にゆっくり浸かっても30分。 
ここで入浴しないテはない。

小屋に入浴代400円と冷たい飲み物代300円を支払ったら子供のように 服を脱ぎ捨て、うひゃうひゃ言いながらあったかい温泉に浸かる。

これは癖になるね。イケナイね。ウシシシ。


阿曽原温泉はイキのよい御姉さんが 声をかけてくれた。
なんだかこっちまで元気になるような 気持ちのよい御姉さんだ。

テンバ代と入浴料を支払いまずは今日のねぐらをさっさとたてる。 
それから濡れた靴下とシャツを天日で干したらサンダルに履き替えて またもや温泉へ、レッツゴゥ。

ここから温泉へは約420歩ほど下った所に 湧き出ていた。


開放的な貸し切り温泉。

遥か下には黒部川。そのせせらぎとヒグラシの声を聞きながら 温泉に浸かったり上がったり。
そしてまたその繰り返し。

登山に来て毎日のように風呂に入っている不思議と幸せ。 
他じゃ味わえない山行がここにはあるといっても過言ではない。


阿曽原谷の登山道は崩落していた。 
したがって、小屋の方に連れられて関電専用道で谷越えをする事となる。


なかなかできない経験だ。ちょっと得した気分になる。 
坑内撮影したかったが、暗すぎてうまく撮る事ができなかった。


随分歩いたように思ったが数十メ-トルほどの谷の向こう岸に着いた。

先ほどお別れした池の平同宿の御夫婦が見える。 
声をかけようかと思ったが、二度お別れするのもなんだか物悲しく、静かに その場を去った。


しばらく歩くと 突如として道が平らになり、歩き易くなる。
ここからが旧日電管理歩道、通称 「水平歩道」の始まりだ。

森の中の平らな道は快適で距離もグングン稼げる。 
たまに急峻な岩切道も出てくるが恐怖というよりは爽快であり 歩くには申し分ない道であった。

狭い登山道に休憩スポットは少ない。 
名無しの滝は丁度よい休憩場所となった。

さあ、いよいよ核心部に迫ってきた。

断崖絶壁、遥か下に望む黒部川を見るにつけ目が眩む。

対岸に聳える奥鐘山の西壁もその高度感に拍車をかけているようだ。 

思わず支点の針金に手が伸びる。その手にも力が入る。 
万が一がここでは許されない。転ぶ事は落ちる事なのだ。

ザックより少しだけ横に長いテントマット。 
この時ばかりは邪魔物扱いしたくなる。

大太鼓からは目指す欅平の屋根が見えた。


真っ暗なトンネルは約150mある。 
ヘッドライトがないとここを進む事は難しい。

坑内には岩から湧き出る水が流れを造りせせらぎとなっている。 
また、この中の冷気はまるで冷蔵庫の中のようにひんやりと涼しい。 
夏の暑い盛りには丁度よく冷えた天然の暑中見舞いだ。

後立山の山並み核心部をひと通り通過するころには 高度感も鈍り、急に気温が上昇してきた。

欅平の列車アナウンスも聞こえてきて、気分はもう下山後のスカッとさわやか 飲料に気もそぞろである。

水平歩道終了点で後立山の山並みに一礼したら欅平まで一気に350mほど下る。 
せっかくの道もこの暑さで苦痛に感じてしまう。

欅平駅欅平は信じられないほどの 喧騒であった。

氾濫する物・者・モノ。 
そこには時間・予算・都合という柵が存在する。

それらの恩恵でもある冷たい飲み物を口にし満足しながらも 5時間前のあの場所へ帰りたいという矛盾した複雑な思いが交錯した。 トロッコ電車の車窓から

トロッコ電車に乗り込んで夏の 風に吹かれながらボ-っと黒部川を眺めるのも快適だ。

これで私の夏の物語も 終わりを迎える。

岩角で傷ついた手のひらをじっと眺めると、
池の平の管理人さん、仙人池の おばさん、阿曽原温泉の御姉さん、同宿した大阪の御夫婦・・・。 
出会った方々の顔が脳裏を過ぎる。 
その向こうに小窓の王の聳え立つ岩峰がチラつく。

「また、来なくちゃイケナイな。」 
そんな気持ちにさせてくれる裏剣。真髄はココにある。 
sak


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