acc-j茨城 山岳会日記

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水無川・デトノオオナデ沢

2007年09月05日 18時21分59秒 | 山行速報(沢)

2007/9月上旬 水無川・デトノオオナデ沢

妄想

朝。台風一過のなんとやらを期待していたが、生憎の霧雨模様。 幸い水量は、ほぼ平水。

デトノオオナデ沢は下部の大滝と上部のスラブ登攀が魅力。 沢といいながらもザックの中にはフラットソ-ルを忍ばせ、上部スラブに寄せる期待たるや すでに現実を凌駕し、妄想の世界に突入せんばかりであった。

『空高く、快適な登攀。右を見ても左を見てもどこでも登れそうなスラブ。 世の中の誰かが決めた正義なんてココでは通用しないのだ。 いつもの時間はタイクツだけど、今日という日は辛いことすら痛快だ。』

前夜の泊場・キャンプ場から先に車を進める。 
予定していたオツルミズ沢出合より遥かに先の十二平まで車で入ることができ、雨も上がったことから 決行とした。 

 

大滝

水無川本流右岸の踏み跡をしばらく行くとデトノアイソメ。 
ここは例年、遅くまでスノ-ブリッジの残る場所らしいが今年はただのゴ-ロ帯。 荒れた両岸の草付で微かに痕跡を感じる程であった。

デトノアイソメから東不動沢を10分、右岸から出合うのがデトノオオナデ沢。 出合から下部の大滝、120mが望める。 
いくつかの滝を越えると大滝は僅かな水流を落としながら立ちはだかる。 この直線的な流れが実にイイ。 
念のためザイルを出し、登攀開始。 見た目ほどの困難は無く、スルスルとザイルは伸びる。ツルベで合計4ピッチ、上部3ピッチ目が少々緊張する場面。

中間部でゴ-ロ帯となり、辛い登り。 しかもこの辺りからガスが濃くなり、なんとも嫌な予感。 

スラブ

滝を2つ越えると一気に視界も広がるはずが、ガスで開放感も半減。 
上部スラブに多大な期待をしていたので残念だった。しかし、期待が大きすぎて現実にガッカリ するよりは良かったのかもしれない。 
ここで、靴をフラットソ-ルに履き替える。吸い付くようなフリクションに気を良くして グイグイと登っていく。 傾斜も増してくる頃、右へ右へと寄りながらスラブを登れば藪に突き当たる。 ヤブにつかまり強引に行けば数分でヒョッコリと登山道に出る。

さて、問題はココからだ。

予定では廃道になったかすかな踏み跡を下る予定であったが、地図の荒山と現地標識の荒山 の位置が違っており右往左往。 ようやく踏み跡を見つけ下り始めるが、途中でロスト。 視界が悪く、想定していた鉱山道尾根を特定できなかったことが大きい。

『磁石の針は従順に北を指し示す。モチロン、疑うべくもない。 だけど、いま自分がどこにいるのか判らないとしたら、それは喜劇だ。 主人公のボケにツッコミは必要。37歳の地図はそんな場面に役に立つ』 

 
決断

時間が差し迫り、日没まであと一時間半と言うところで、ひとつの決断を下す。 
それは「尾根にこだわらない」ということ。 こういうとき、ザイルや登攀具があれば選択肢は多いから安心だ。 
幸い、支沢を下っていくらもせずに東不動沢の大滝が確認できた。 
沢床へは緩い草付を上流へ向けてトラバ-ス気味に行けば問題なかった。

『何とか生きた心地に胸をなでおろす。迷い流され翻弄するのも、まあ実力か。 美徳も何もありません。自分を取り戻せたならば後悔なんてしないのです』

そこからいくつかの滝を懸垂下降しデトノアイソメについたのは夕闇迫る時刻。 
あとは帳の下りた踏み跡をヘッデン頼りに行くが、チト辛い歩きであった。 それでもやはり、痛快な山であったことは言うまでもない。 
同行の友に感謝。 
 

sak