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おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

映画「悼む人」

2015年02月14日 20時30分36秒 | 映画

映画「悼む人」
【監督】堤幸彦
【原作】天童荒太
【脚本】大森寿美男
【出演】出演:高良健吾、石田ゆり子、井浦新、貫地谷しほり、椎名桔平、大竹しのぶ ほか

   

死者を「悼む」ために旅をする青年、坂築静人(高良健吾)は、自分が何故そうせずにいられないのか説明ができません。
「悼む」ということは、「人の死を悲しみ嘆く」という意味ですが、静人の悼み方は違います。
先ずは「生前に誰を愛したか。誰から愛され、感謝されたか」 を調べ、事故や事件の現場に赴き死者へ語りかけます。
「あなたは****を愛し、*****から愛され、*****により感謝されました。あなたが生きていたことを私はこの胸に刻みます」
見ず知らずの死者に向かってするその行為に、いったい何の意味があるというのか。
この映画にはその答えがありません。 
問いかけるのみです。
その問いかけの中には、観た者自身の人生も含まれます。

私は誰を愛し、誰から愛され、感謝されたのか。
私が死してのち、誰がその死を悼むのだろうか。
いや、その前に、生きている間には誰の死を悼むだろうか。

・・・うん、今、わかった。
この映画を見た直後に、何だかもやもやしていたものが、今これを書きながら晴れた気がする。

私は、悲しみも嘆きも、愛もない「悼み」なんか、いらない。
それがないのなら、私が生きていたことなんか憶えてくれなくても全くかまわないや。

と、思う私は、きっと幸せなのでしょう。

俳優歴10年目という高良くんは、抑えた演技と悼む姿に漂う透明感が良かったです。
石田ゆり子さんの熱演や、その他の脇役達も素晴らしかったですが、なんと言っても大竹しのぶさんには泣かされました。
この母の愛に胸を打たれ、女性としては出来れば最期にこうでありたいと思いました。
残念な点は、ラストの歌です。
歌自体は悪くありませんが、あのシーン、あのタイミングで歌詞のある歌は邪魔です。 
音楽だけでは何故いけないのか。
この作品は結論を出さないだけに、観る者としては言葉なしに「感じる」余地と余韻が必要です。エンドロールまで歌を待てなかった堤監督の文学的センスを疑います。
おかげで、帰りに書店に寄り、原作のラストを立ち読みする羽目になりました。
でもって、そこで初めてラストに泣いたというのは、原作に負けたというしかないですね。

なんて、珍しく辛口を書いてみましたが、舞台と違って映画は観る人の数が桁違いですから、遠慮なく感想書けるところが良いですね~(笑)
全員が褒めちぎる作品なんてありえませんからね。
でもま、天童荒太さんの小説はあまりに重くて、感動した分だけ引きずりますから、私には読むにそれなりの覚悟が必要です。
直木賞を取った「悼む人」は未読だったので、映画で観られて良かったです。

コメント
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