今宵も劇場でお会いしましょう!

おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

朗読劇「私の頭の中の消しゴム」感想その四

2010年06月05日 18時45分05秒 | リーディングドラマ(朗読劇)

「私の頭の中の消しゴム」中川・内山ペア
感想その三の続きです。


このペアは内山理名さんがお姉さんっぽい感じがして、殊に恋愛に関しては女性のほうがリードしているような、そんな恋だったような気がします。
あっきーは、その私生活においての恋愛事情は私らファンが知る由もないので(笑)彼自身はともかくとして、あの彼が作り上げた浩介のキャラというのは、崎本さんが演じた以上に、いかにも恋愛には初心者で不器用な様子で「可愛い男」という感じです。
「本人は大真面目だけど女の子の扱い方がわからずに墓穴を掘ってしまい、だけどそこが女性にとっては愛おしい」という、非常にお得な愛すべき青年でありました(笑)
なので、前半に「クスッ!」と笑える箇所がいくつかあるんですけど、これは、あっきーの浩介のときのほうが笑いが多く、その観客の笑いの中に暖かさが混じります。
それはまあ、あっきーのファンがたくさん観に来ていたからというのもあるんでしょけどね、もしかしたら内山理名さんがわりと落ち着いている感じで、受け止めるタイプの女性だったので、あっきーが演じた「恋愛に慣れていない男、感情を上手く出すことが出来ない人」の役が余計に際立ったのかもしれません。

そして、時に可愛く時には激しい、いささか幼いところもある直情型とも見える中川・浩介は、彼が幼い頃に母親から捨てられたことについて、いかに深くトラウマがあり傷ついているのかということが痛いほどに伝わり、その痛さに私は泣いている場合じゃなくなってしまいます。

前に「中川晃教さんは熱く、崎本大海さんは深かった」と書きましたが、あっきーの浩介は、「愛する人に捨てられること、去っていかれること」に対してとても強い拒否反応を示し、その感情の発露は恋人の薫に対して、時にとても強い激情となって向けられます。
薫が倒れた姿を見て、その体を抱いて大声で叫んだ場面もそうでしたが、私が特にそれを感じたのは、最期のほうで薫がとうとう行方を隠して施設に入ってしまったその時です。
浩介は「なぜ俺を捨てていったんだ!」と叫びます。
もちろん、薫は浩介を捨てたわけじゃない。たぶんそれは薫の両親が二人のためにそうして娘を連れていったのだろうし、薫自身も愛する人のために身を引いたのだろうということは、たぶん浩介だってわかっているはずなんです。
それでもなお、あのように大きな声で怒りに叫ばずにはいられない、その強い悲しみと痛み。
たとえ薫がどのようであれ、たとえ記憶が無くなって数々の失敗を繰り返し、手がかかったとしても、自分を忘れてしまっても、「ただそばにいて欲しかったのに」という想い。
…そうして「愛した人は誰も彼もが自分を捨てて置いて行ってしまう」と云わんばかりの叫びに私は泣いてるどころではなく、この人に「何とかそうでないことを教えてあげたい」とか思ってしまうのです。

だからこそ。
この二人の舞台のラストは、感動というよりは私にとってはとても感慨深く、涙がじわりと滲みました。
浩介の顔もわからず何もかも記憶を失った薫は、でも初めて出会った頃の浩介の姿を毎日絵描き続けていました。
彼女の心の中では浩介はまるで彼女の「愛の象徴」のように、いつも寄り添っているのです。
彼女はその心において、もう浩介から決して離れず、浩介は彼女の心から置き去りにされることはありません。
そしてまた浩介も、たとえ彼女がこの世を去ったとしても、いつまでも彼の心の中には彼女の姿と愛は消えず、いつでもどんな時でもずっと二人は寄り添いながら生きていくに違いありません。

それ故に、
私はこの悲しい物語を、それでもなお、一人の男が永遠の愛を手に入れた「幸せの物語」と思うのです。


長い観劇記にお付き合いいただいて、どうもありがとうございました。


朗読劇「私の頭の中の消しゴム」感想その三

2010年06月05日 10時35分34秒 | リーディングドラマ(朗読劇)

「私の頭の中の消しゴム」感想の続きのそのまた続きです。

この朗読劇は日替わりで出演者が変わり、全八組の役者さん達が演じています。
私が「中川晃教/内山理名」ペアの舞台を二回観たのは予定通り。
「崎本大海/鈴木亜美」ペアは予定外で、急遽に当日券を買っての観劇でしたが、
同じ演目で二組のお芝居が観られたのはとっても良かったです!

どっちが良いとか上手いとか、そういう見比べ方ではなくて、役者さんが違うとたとえ演出が同じでもそれぞれに趣も違ってくるので、受け取る側としても心の動きが微妙に変わります。
それは、役者さんの実力や解釈の違いでもあるんでしょうけれど……なんていうかね…「人」が出るんですよ、それぞれの役者さんの、その人本来の人柄みたいなものがその解釈や感情の露出に表れているような気がします。
この世に同じ人がひとりもいないように、もし誰かが誰かと同じような運命を辿り、同じような人生を送ったとしても、人の心の中は決して誰ともピタリと同じになることなどは有り得ないのだということがよくわかります。
もし私がもっとお金持ちだったら、ぜひとも他のペアの舞台も観てみたかったです!

というわけで、前回の「感想その二」で、崎本さんと亜美ちゃんで泣かせてもらった感動の場面について書きましたけど、その「おいで」の場面は中川ペアでは泣きませんでした。
それを言えば、私はあっきーこと中川晃教さんは特別に好きでずっと見続けていますが、今回の舞台に限らず、今までに彼の演技を「泣きながら観た」ということは、ほとんどないような気がします。
「泣かせてなんぼ」のような今回の劇で、それはどうよ? と思うかもしれませんが、劇場内の他のお客さんたちは皆さん泣いていましたし、終演後も涙が止まらずに席を立てない人まで何人もいたくらいですから、べつにあっきー達の回が良くなかったわけではありません。
ただ、「感動」=「泣く」という図式が、私はあっきーの時には自分の中で成り立たないのだろうという気がします。
泣かなかったけれど、だからと言って感動してないわけではなく、むしろ余計に多くのものを感じ取るので、それだけに想うことや心を重ねることが多く、ただ「悲しい」とか「可愛そう」に終始することができないのかもしれません。

そんなわけで、
「ええ~~っっ! まだ続くのか?!」って我ながら思うけど、これからがやっと「中川・内山」ペアへの感想です。

…って、ごめんなさい!
この続きを書いたのですが、文字数が多すぎたせいか最後までアップされませんでした。
なので、さらにさらに「感想その四」に続きます。


朗読劇「私の頭の中の消しゴム」感想その二

2010年06月05日 00時14分47秒 | リーディングドラマ(朗読劇)

ということで、前回の「私の頭の中の消しゴム」感想の続きです。
今から何も考えずに書きますが、たぶん話は長いですよ~(笑)

私は子供の頃はあまり泣かないほうだったと思うんですが、今になって、特にここ二、三年くらいはかなり涙腺がゆるくなったような気がします。
でも、その泣きのツボっていうのがどうも周囲とズレているんですよねぇ(笑)
映画館や劇場では、周りが泣いてない場面でダダ泣きしていたり。
かと思うと、みんなが泣いているところで、わりとシレっとしていたりしてね。

それでちょっと思い出したんですが、この朗読劇の映画版を観た時に、私が特に印象深く、たぶん一番泣いた場面って、この舞台では登場しなかった場面なんです。
ヒロインの薫がすっかり記憶を失ったある日、彼女は街のコンビニに連れて行かれます。
そのコンビニは実は貸切状態になっていて、店内には彼女がかつて大切に想っていた人々…両親などの家族や友達が店内にいて、コンビニのお客さんを装って普通に買い物をしていたりします。
薫はその店内にいる人達の顔も名前もすっかり忘れているわけですが、「なんだかここは暖かくて気持ちが良い場所だ、まるで天国にいるみたいだ」と思うわけです。

記憶は亡くしても、目に見えない愛に包まれ、満ち足りたその表情、そして彼女を愛する人たちの暖かい顔を見ていると、私はたまらなく涙があふれてどうしようもない。
そして、ひとたび涙腺が緩んでしまうと心がとても敏感になって、その後は何度も涙か出てしまいます。
たしか、浩介が施設に入院している薫に会いに行くところで、ひとりで車を運転している、その何でもないような道すがらの場面も、それが泣かさせるような場面ではなかったのに泣きながら見ていたように記憶しています。

で、その私の最大の「泣きのツボ」だった場面がなかったこの朗読劇で、今回私が堰を切ったように涙があふれたのは、崎本大海さんが薫に声をかける台詞で「おいで」と言った場面です。

これは朗読劇なので、基本的に台詞は本を読んで進みます。けれども一箇所、二人が本を置いて立ち、普通に台詞を言って芝居をする場面がありました。
記憶が薄れゆく薫に、浩介が壁に貼り付けたメモを見せながら、二人でそのメモをひとつひとつ読んでいくところです。
「困ったときは浩介に連絡する」とか、「浩介はこの(写真)の人」とか…。

その場面に入る前に、浩介が日記を閉じて薫に向かって「おいで」と促すんですよね。
その時の崎本さんは、静かに日記を閉じて立ち上がり、数歩を歩きながら、とてもやさしく「おいで」と声をかけるんです。
日記を書いて(読んで)いる時の「想い」から、リアルなその場面の「気持ち」にシフトした瞬間のようにも見えました。

その声はまるで、小さな女の子に言うように、とても慈愛に満ちていて、彼女をどんなにか大切で愛おしく可愛く想っているかが、そのたった一言でわかる響きでした。
ただいてくれるだけでいいんです。彼女がいるだけでただ幸せなのだということが伝わり、ほんとうに胸が熱く、切なくなりました。
それで、鈴木亜美さんが演じたの薫もこのときにはもう、あどけないほどにとても可愛くて、素直で、彼を無条件に信じきって頼っているのがよくわかります。
けれども、この幸せな二人の時間はもうあと僅かで、いずれ思い出となる時間。
いつでも幸福は、そして愛も悲しみも、その思い出に止まりながら、けれどもさらさらと時は流れていきます。
一瞬、一瞬は惜別の繰り返しで、その流れる時の愛おしさに私は泣けてしまいます。
わりと明るい場面だったかもしれませんが、涙があふれてどうしようもありませんでした。

この崎本・鈴木ペアの終演後、会場内全体がスタオベしたのには納得です。
私ももちろん、すぐに立ち上がって拍手させてもらいました。

あ~、やっぱり話が長くなりましたね(笑)
でも、まだ続きがあるんです。
だって、中川・内山ペアを見て思ったことが書けてないし。

なので、またしても次回に続きます。