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おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

「SWAN LAKE」マシュー・ボーンの白鳥の湖

2010年06月27日 00時53分47秒 | バレエ/ダンス
「SWAN LAKE」マシュー・ボーンの白鳥の湖

チラシに「世界中が震撼した脅威のバレエ」と書いてあるこのマシュー・ボーンの「白鳥の湖」は普通のバレエのそれとは大きく違います。

なんたって、白鳥が男です。もちろん王子様も男性。
あ、王子の母親、王妃さまや王子のガールフレンドは女性ですよ。
だから全員が男というオールメールの舞台ではなくて、つまりその気(どの気?)
のテイストがあるわけ。
もっとも、今回の「SWAN LAKE」は想像していたほどにはその気(だから、どの気?)は私にはあまり感じられなかったし、白鳥は性別も生き物の種別としてもどこか超越した存在に見えました。
そのわけは、前に来日した時から随分と演出が変わったからだそうな。

ま、それはともかくとして。
古今東西、王子さまだの王族っていうのはほとんど幸せそうじゃないのよね。
この王子は、つまりエリザベートのルドルフ皇太子みたいな人です。
母親の愛情に飢えている孤独な王子さまなんですけどね、もういい加減に大人です。
それで、母親恋し…っていうのも、まだ幼いうちならともかく、あまり大きくなってから母親の愛に飢えすぎて必死に求めると…なんていうか、体が大きいだけにしがみついたりしているうちになんか妙な方向にいきそうで、ちょっと危険な愛の香りがプンプンと匂っている…という、そんな感じね。
それでまた、この王妃さまも王妃さまで、たぶん独身なんだろうけど、まだ充分に若く美しくて次々と若い男とよろしくやっているしで、母親ってよりは女だしで、そんなこんなの設定は元ネタの「白鳥の湖」とはもう全然別物です。
あ、もちろん音楽は例のチャイコフスキーの音楽ですけど。

つまりこの物語はまあ面白かったし、ダンスも素晴らしく(バレエを褒めるにはあまりに疎くてボキャ貧な私)、予備知識があったからチラシのうたい文句ほどには「震撼」はしなかったけど、とても貴重な舞台が観られて良かったと思います。

…なんて、あまりに突然すっ飛ばした感想にするのもなんだけどね(笑)

正直言って、この舞台の本当の感想といえば、この前書いた「私の頭の中の消しゴム」じゃないけれど、ラストで死んでしまったのはやっぱりある意味ハッピーエンドな気がしました。
白鳥も王子も、あんまり唐突に死んでしまったので驚いたけど。

なんかね、今までいろいろと舞台を観てきたけれど、つまり「永遠の愛」というのは、愛し合う二人共々か、またはどちらかが亡くなってしまうか、それとも「二人の愛はこれからが最高潮」みたいなその時点で、蛇の生殺しのように引き裂かれて離ればなれになってしまうかの、そのパターンでしか成立しないんじゃないかと思う今日この頃だわ。
なぜなら、愛そのものを壊してしまうのは結局当人たちだもの。
恋愛とは決して普遍ではないらしく、共に生きていれば何がしかの変化がある。
ところが、生き別れにしろ、死に別れにせよ、二人が離ればなれになるとしたら恋愛の想いだけは心に残り続けて、愛を壊すものが何もなくなるからいつまでも愛は続く…という、そういうことかもしれないな……。
もしくは、シラノみたいにずっと片思いとかね。
…というのはもちろん、私の勝手な感想で、この舞台とは直接関係ないです(笑)
だって、恋愛…つまり恋心の入った愛がいつまでも続く物語って、今まで見たことないし……って、あ、そうだ!「春琴」の二人と、「ヘアスプレー」のお父さんお母さんがいたか!
そうだった! いや~、よかった、よかった!、とりあえず(笑)

あとはね、王子の心の空洞を埋めた白鳥が、その逸脱ゆえに仲間の白鳥たちから攻撃されて殺されてしまったのは、衝撃といえば衝撃でした。
王宮で居場所がなくなった王子と、逸脱したがゆえに仲間から排除された白鳥。
死んでしまった白鳥が、やはり突然亡くなってしまった王子を抱いて、二人の世界に逝ってしまったラストは、悲しいというよりはやっぱり私には「ある意味で幸せ」に見えて、でもだから「これはもしかしたら淋しい王子の妄想かもしれないな」とも思いました。
「僕と同じように一人ぼっちで淋しい白鳥が迎えに来てくれて、僕だけのものになりました」…というような、ね。

なんていうか、素敵なバレエを観に行って、そのダンスの見事さや美しさにはもちろん魅せられたにせよ、結局物語を見て余計なことを考えちゃう私って、つくづくと、少なくともバレエに関しては「猫に小判」なのかも。

あ~あ、なんか、脈絡もなくだらだらと書いちゃった