Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

演劇「大正の肖像画」

2018-06-12 | 映画・テレビ・演劇・芸能

 まだ勤めていた頃だから何年前だろう?くまさん、まめさん、山〇さん…何人かの友人と大糸線に乗って安曇野へ旅行した。くまさんがペンションを予約してくださり一泊。自転車で安曇野を回った。「ここが”早春賦”の歌の原点…」と、歌碑の建っている川のほとりで皆で合唱したり、若かったな~と懐かしく思い出す。

 その時、訪ねたのが「臼井吉見文学館」だ。小説家、評論家の臼井吉見氏は安曇野の出身。東京女子大で教えておられたこともある。その文学館で小説「安曇野」を知り、図書館に予約して読んだ。ハードカバー本で四巻まであったように思う(先日の”沙門空海唐の都で鬼と宴す”と同じ?)。
 新宿「中村屋」の創立者、相馬愛蔵(やはり安曇野の出身)、黒光夫妻が中心のの話だった。最初は安曇野が舞台で、東京へ出てからは、荻原碌山などの画家、彫刻家、文学者などが出入りしていた「中村屋サロン」の様子など…、あまりよく内容を覚えていないのだが。

 ただ、私は学生時代、会社勤務時代は中野や三鷹に住んでいたので、休日に出かけるとなれば新宿に決まっていた。JR東口から中村屋、高野フルーツパーラー、伊勢丹デパート、紀伊国屋書店あたりをウロウロするのは定番コースだったものだ。当時はよくカレーを食べていたような。今は8階建てのビルになっており、美術館フロアがあるらしい。数年前に学生時代のクラス会が開かれたのも「中村屋」のレストランだった。

 劇団民藝の「大正の肖像画」は、中村屋がパン屋だった頃の話だが、相馬夫妻の元に集まって来る芸術家の中に中村彝(つね)と言う若い画家がいた。彝と黒光さんの関係、彝と娘の俊子さんの係わりなどを知っている程度の予備知識だったが、興味と期待が大きいお芝居だった。

 👇 「民藝」の公式HPによると…
 描くことは生きること、愛すること––
 洋画家・中村彝(つね)と「中村屋サロン」に集う人びとが織りなす一時代のポートレート
 彗星のように画壇に現れ、大正期に活躍した洋画家・中村彝(つね)(みやざこ夏穂)。肺結核に侵されながらも画業に励み、新進の作家として注目された頃の彝が縁あって住むことになったのは、中村屋裏のアトリエでした。新宿の老舗中村屋の創業者、相馬愛蔵(伊藤孝雄)・良(黒光)(白石珠江)夫妻がパン屋をこの地に移したのが明治42(1909)年。急速に発展した新宿という地の利を得て店は栄え、美術家、詩人、小説家、学者、俳優などが出入りする文化サロンの役割を果たしていたのです。はじめサロンの女王相馬良に惹かれた彝の気持が、夫妻の娘俊子に移ったことから、やがて彝は中村屋を去ることに。彝を待っていたのは、病苦と孤独に耐え、命を賭して更なる高みを目指した苦闘の日々でした……。

 一幕目、舞台は下落合のアトリエ。肺結核に侵され病気と闘いながらも絵を描き続ける彝。年老いた家政婦の岡崎きい(塩屋洋子)が世話をしている。彼は水戸の生まれ。水戸藩士の息子だ。陸軍幼年学校に入学するが病気のため退学。同じ学校に通っていた兄(若くして死ぬ)の友人が無政府主義者の大杉栄。

 一幕目途中から、舞台は新宿中村屋へ移る。油絵を描き始めた彝は中村屋裏のアトリエで絵を描き始める。夫妻の娘、俊子を描いた絵「少女」が文展に入賞。

 その後も、若く溌溂とした俊子の絵を描き、ヌードを描くようになり母、黒光に反対される。
 👇は、「麦わら帽子の自画像」。

  👇は、同じく居候していたロシア人の詩人、エロシェンコの像。幼い頃に視力を失い、日本へ”あんま”の技術を習いに来たと言う放浪の人で、亡命中だった。

 「中村屋サロン」へは大杉栄と共に神近市子も登場する。大杉栄は最後は伊藤野枝と共に憲兵に殺されるが、舞台では神近市子との痴話げんかばかりしている。主人の愛蔵さんは事業家で、時々ひょうひょうと現れ、妻や若い芸術家達を自由にさせている。

 👇は、晩年の下落合のアトリエ。彝の病気が進むにつれ外へは出られないので、もっぱら静物や人物像を描いた。家政婦のきいを描く場面で、「喪服を着て、数珠を持って」と注文する。右端は黒光。(HPから)

  👇はその時の肖像画です。このようにストーリーが進むと同時に、その時々の人物の大きな肖像画がバックスクリーンに映し出されるのが印象的だった。今、国立新美術館で「ルーブルの肖像画展」を開催しているが、肖像画の面白さが少しわかった気がする。

 私の息子が学生の頃下落合に下宿していた。私も訪ねたことがある。当時もアトリエはあったのだろうが、今は「アトリエ記念館」として開放しているらしい。いつか訪ねてみたいものだ。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (なは)
2018-06-13 18:08:37
清姫様
中々の作品でしたね!地味な話でしたが演じる人たちも上手いし、彜さんの作品を時々見せながらの演出はさすがでした。
貴女の上手に紹介して下さってありがとう!
大杉栄とか神近市子とか私たちの年代のものはよく分かりましたが若い方々はどうだったでしょうか!でもこれを機会に学ばれることも多いかもですね。
返信する
Unknown (清姫)
2018-06-13 23:37:44
なはさん
劇作家の吉永仁郎さんの作品ですね。
広津家三代を描いた「静かな落日」や昨年の「集金旅行」の作者と聞き、納得しました。
少し予習をして行かないと、場面転換や登場人物の人間関係がわかりにくかったようですね。
私みたいにのめり込んでいる者には、とても興味のある舞台でした。
Toさんも中村屋美術館に一度行ってみたいとメールにありました。私は下落合にも行ってみたいと思っています。
「碌山美術館」は安曇野にありますよね。
返信する

コメントを投稿