2世紀に満たぬ短い歴史しか持たないこの国において、『アメリカン・ドリーム』という言葉は、実利的ではあるが、若い世代を正しい道に導く光であり、結果としてこの国の強さの潜在的熱源となってきたのでした。
そして今、米国の『格差社会』は極限にまで達しているのです。 最近ではこれに、『失望』が加わり、米国の『国のかたち』に芯を与えていた背骨が歪み始めているのです。
◇、富裕層でさえ嘆く『格差拡大』
アメリカン・ドリームの喪失について、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大学教授が、米国における貧富の格差がすでに、「ロシアやイラン並みになってしまった。」と指摘しています。
現在、米国の上位1%の富裕層が、国民の全所得の25%、富の40%を占めています。 25年前は、それぞれ12%と33%でありました。
過去10年間にトップ富裕層の所得は18%増え、高卒労働者は12%減っています。
同じくノーベル経済賞を受賞したポール・クルーグマン・プリンストン大学教授は以前、強くあるべき米国の『かたち』について、こう振り返っています。
「私が育ったのは、“米国の中産階級”の時代だった。 その社会では、極端な富裕層も貧困層も存在せず、富が広く社会に共有されていた。
強力な労働組合と最低賃金制、累進課税があり、不平等の拡大を阻止していた。」と述べています。
かっては、中産階級こそが、アメリカン・ドリームを体現する社会の中核を形成してきました。 しかし、絵に描いたような白人中産階級というのは、いまや『レア』な存在であります。
白人労働者は、成人人口の48%を占めています。 しかし、その大半が高卒以下の学歴しか持たず、大卒労働者はわずか10%に過ぎないのであります。
何が、アメリカン・ドリームを壊してしまったのか?
スティグリッツ教授は、3つの理由を挙げています。
①、まず、技術革新で多くの中産階級、労働者の職が奪われたこと。
②、次は、グローバリゼーションの中で、海外の低賃金労働との競争を強いられたこと。
③、そして、労働者の権利を守る労働組合の『衰退』であります。
前2者については、中産階級の努力ではいかんともしがたいものかもしれません。 問題は、最後の労組の衰退であります。
米国における労組は、中産階級の代弁者であり、それはすなわちアメリカン・ドリームを『担保』する存在でありました。
現在、組合参加率は12%にまで低下し、最も戦闘的と言われたUAW(全米自動車労組)が、GMなど自動車メーカーの経営危機で、完全に牙を抜かれているのが象徴であります。
GM国有化を実施した政府との交渉で、UAWは新規採用の労働者の賃金の50%切り下げを認めさせられるなど、もはや労働者の権利を代表する権利さえも失っているのです。
11年3月の世論調査では、「アメリカン・ドリームは、今も存在していると強く信じる。」と答えた割合は17%のみでした。
25年前、1986年の調査では32%でした。 また、52%の人が、「子供が経済的に成功する可能性は、自分たちより小さい。」と回答しています。
最近問題になっているのは、格差拡大が、米国の社会をいたるところで歪め、「富裕層でさえ、嘆くほど。」(スティグリッツ教授)に深刻化していることであります。 そして、この『嘆き』は早晩、『不安』や『恐怖』へと置き換わることになりましょう。
なぜなら、アメリカン・ドリームの存在こそが、この国の強さの源であり、さまざまな出自を持つ国民が集うこの国を、1つに纏め上げてきた力であったからであります。
このところ患者数が増え続け、治療の見通しが立たない病気に腰痛・膝痛があります。 65歳以上の高齢者は5人に1人は腰痛に悩んでいるといわれています。
医師たちは、腰痛・膝痛に対する消炎鎮痛剤の処方に疑問を持っていないようであります。
しかし、ほとんどの患者さんは、症状は軽くなっても完治しているわけではありません。 むしろ腰痛自体は悪くなっていて、今でも薬を飲みつづけている状態です。
念のために言うと、湿布薬も消炎鎮痛剤の形を変えたものです。
消炎鎮痛剤の治療は、血管を広げるプロスタグラジンの組成を阻害して血流を抑え、痛みを一時的に止める『対症療法』であります。
しかも、消炎鎮痛剤は皮膚から吸収される経皮吸収のクスリですから、吸収されて全身に回ります。 そうすると、全身の血管が収縮して血流が抑制されるので、血圧が上がります。
この状態が1週間や2週間程度なら破綻しませんが、1カ月から半年も続くと、強い交感神経緊張状態になります。
そのため、高血圧症や夜眠れなくなる症状が出てきます。
そのほか、肥満気味の人は、代謝が早くなって『糖尿病』を発症する可能性が高まります。
そういう患者さんは、血管が収縮しているので、すごく体が冷えています。 指先が冷たく、夏でも靴下を履かないと寒く感じるほどの冷えが出てきます。
冷えが高じると、足の指が紫色になって、最後は腐るという恐ろしい状態に追い込まれます。
よく老齢者に薬袋にはちきれんばかりの薬をもらって病院から帰ってくる人がいます。 そういう人たちの出発点は、消炎鎮痛剤の服用です。
長期間使っていれば、必ず新しい病気が上乗せされます。 治らないから飲みつづけているわけですので、消炎鎮痛剤の服用はもっと慎重にならなければいけません。
消炎鎮痛剤には湿布薬、内服薬、座薬などいろいろありますが、いずれを処方されても同じ『破綻』が出てきます。
もし、脈が速く不安になったり、冷えを感じたり、胃の調子が悪くなったら、すぐに使用を『中止』してください。
しかし、打撲や怪我などの『急性』の炎症では、激しい炎症を止めるために消炎鎮痛剤を使い、アイシングなどをして冷やす処置が必要です。
あるいは、痛みがとてもつらくいときzに、症状を何割か減らすつもりで『短期間』使うおであれば、問題はありません。 使っても1週間です。
2週間以上続けて使用すると、薬に頼る生活に入り、さまざまな病気を呼び込んでしまいます。 危険なのは、生活習慣病といわれている慢性疾患に対し、いつまでも消炎鎮痛剤を使う『対症療法』であります。
緩やかに続いている症状を長期にわたって強引に薬で抑え込むと、体が治ろうとする反応を止めてしまい、永遠に治療に到達しないからであります。
『対症療法』は、昔から行われていました。 しかし、戦前は、抗生物質や免疫抑制剤、抗がん剤などのような強い薬はありませんでした。
作用の弱い薬は、効き目もそこそこで、症状を2,3割軽くする程度でした。 ですから、医療反応もさほど抑えられませんでしたので、自分『で』治す道が残されていたのです。
ところが、現代医学は薬学とともに新しい医療を模索し、症状をたちまち『改善』(?)できる消炎鎮痛剤、ステロイド剤などの薬を開発しました。
そのため対症療法も変化して、医療が『変な』方向に曲がってしまったのです。
たしかに、これらの強い作用のある薬を使えば、たちどころに激しい炎症はおさまります。 しかし、本当は不快な『症状』は、治療へ向かう『過程』です。
その症状が抑えられると患者さんは治ったような気になり、医者も治療がうまくいっているような『錯覚』に陥り、ますます症状を抑え込むようになったのです。
その結果、病気は『治癒』せず、いつまでも『投薬』が続き、『慢性疾患』となることになり、薬を飲みつづけることになります。
フランスで、発足したオランド政権は、大統領を筆頭に、国立行政学院(ENA)卒業生(エナルク)が、中枢を占め、フランス政治・経済のエナルク支配は、ますます強まった。
フランス型の『エリート』養成校は、日本でも信奉者が多いが、これこそ、仏経済、さらには、欧州経済『停滞』の『元凶』との指摘は、増えている。
◇、企業経営者としての資質に疑問
「卒業生には、若い時から、エリートのオーラが、自然と備わる。 政治家には、人あたりが、柔らかいのに、威厳があるタイプが、目立つ。」と在仏邦人記者は、言う。
優秀な卒業生は、国務院や、会計検査院など、他機関を監督する官庁で、いきなり腕を振るう。
これだけの待遇と、地位が、保証されれば、政府高官ポストを独占するのは、当然だ。 74年、ジスカールでスタンスが大統領に、シラクが首相にと、これまでに,3大統領、7首相を輩出した。
ここで、浮上しているのが、エナルクの企業経営者としての資質に対する『疑問』で、仏経済に与える、悪影響への批判だ。
元来、行政エリートである、エナルクは、国営企業や、国策会社への天下りが多い。
保険大手アクサ、銀行最大手ソシエテ・ジェネラル、フランス国鉄(SNCF)、エアバス、エール・フランスら、のCEOも、エナルクです。
「仏企業は、仕事の実績で、社内の人間を昇進させるよりも、(外部の)エリートに、頼り過ぎる。」と指摘する経済学者もいる。 (T・フィリポン『相続人の資本主義』)
これが、社内の士気をくじく原因と指摘している。 天下り経営者は、事業の実態が、分からず、生え抜き社員と交わらず、机上の思い付き戦略や、合理化策を押しつける。
現場からのイニシアチブは乏しく、起業家精神も生まれない。
(157)、W:あなたが、2年前に『特報』とした「エネルギー(シェール・ガス)革命。」は大東亜戦争敗戦時に『匹敵』するほどの、大きな「(経済を、中心とした)環境変化。」である、としていますね。
しかし、このことは、「だれも、容易に信じる人は、いない。」と、思いますよ…。
1945年の敗戦時には、財閥解体もあり、知人の大地主は、「農地改革。」により、『不在』地主として、土地を取り上げられ、『零落』してしまいましたが、一方、全国の小作農家は、土地を取得し、その後のインフレにより、みな、大変な資産家に、成り上がっています。
そして、これと、似たような変化であると、1991年のソ連『崩壊』の「東西冷戦・終結。」の時にも、述べて、レポートにしていたでは、ありませんか?
(158)、A:そうでしたね…。 その時のことを、追録してみると、
【 東西冷戦の終結により、西側先進国10億人で、高成長を愉しんでいた、「快適な温泉。」に、いきなり、東側、そして後進国30億人の「低賃金労働力。」が、オホーツク海の『流氷』のような氷水となって、なだれ込んできたような、ものであります。
同じことを、例えれば、快適な猛暑(現在のような)の海辺で、ビキニ姿で、ビーチ・ボールで、楽しんでいるところに、いきなり、周りが、オホーツク海の流氷の海岸に、変貌してしまったようなものと、言えましょうか…。
これまで、年々、物価が上昇するインフレ経済を、前提として、「借金による、資産取得を図る。」という、「成功体験。」は、一転して、デフレ経済に、方向転換した、経済環境になったため、例えば、「住宅ローン破たん。」などについて、厳重警戒の必要があると考えます。 (以下略)】
という、ことでした…。
(159)、W:そして今回の場合は、1991年の「東西冷戦終結」に増して、1945年の「大東亜戦争敗戦。」にも、相当する、大変革(この世の流れが、大きく変わる…、良い方向へ)が、起こるだろうというのですね?? (やはり、信じられないなあ…。)
たしかに、人類生存のための2大要因である、「エネルギーと食糧価格の大幅下落。」は、人類にとっては、大いなる『朗報』であると思いますねえ…。
(しかし、現在の世界のマス・メディアの報道は、『干ばつによる、食糧価格の暴騰。』など、『真逆』であります…。)
(160)、A:「世界の流れが、大きく変わる…。」というのは、「政治、経済、医療、教育…など。」、広い分野において、起こることでは、ありますが、目に見える『環境』としては、経済において、『判然』とするものと、考えています。
どのような、『変化』が、私たちの生活環境に生じてくるかは、今後、みなさんと考えていきたいものと、思いますが、そのことのヒントとしても、30年前の「小林(宏)論文。」は、「温故知新。」の役割を、果たしてくれそうに思うのです。