<「マイナス金利。」黒田バズーカ砲は、『誤爆』した>
ベストセラー『資本主義の終焉と歴史の危機』の著者・水野和夫さんは、次のように述べています。
日本銀行が、1月29日に「マイナス金利政策。」の導入を発表して以来、金融市場の混乱、銀行の預金金利引き下げなど、日本経済と国民生活は、将来の不安感から、大きく揺らいでいます…。
かねて、資本主義は限界にきているとして、『成長』という幻想を追うアベノミクスにも、異を唱えてきました。
『資本』とは、「お金を生み出すお金。」のことであり、『貨幣』そのものは資本ではなく、銀行に預けて『利子』を受け取り、株式に投資して配当や利益を得ることで初めて『資本』となります…。
このような資本の考え方は、13世紀のイタリアで生まれ、それまでキリスト教が禁じていた利子の受け取りが「正常化。」されたときから始まります。
このとき、「貨幣が『石』から『種子』になった。」(大黒俊二『嘘と貪欲』)ので、「貨幣は、『資本』と化す。」という認識が生まれました。
そして今回、「マイナス金利政策。」の導入によって、10年国債の利回り(期待収益率≒長期の成長率)が、日本で初めてマイナスとなり、ついに『石』そのものが『欠け』はじめたのでありますよ…。
年初から続く「円高・株安。」の流れを食い止める狙いであった、『奇策』とも言える「マイナス金利政策。」という「黒田バズーカ。」第3弾は、円相場1ドル=121円⇒111円に、株価は2月12日には1万5000円を下回るなど「空振り。」に終わったことを印象づけています。
なかでも目立ったのは、マイナス金利によって業績悪化が予想される銀行株の下落でありました…。
「マイナス金利政策。」導入は、「従来の量的・質的緩和に限界が見えてきた。」ということも露わにしました。
今回の「マイナス金利導入。」の問題点の第1は、「国民の財産が目減りしてしまう。」懸念があるということです…。
そうなると、将来のために消費を抑える動きや、タンス預金を増やす動きにもつながり、景気は一層冷え込んでしまうでありましょう。
ところで、世界中の資本(種子を生み出す貨幣)が『石』に戻りつつあるなか、実はこれまで最も資本ストックを蓄積できたのが日本であります…。
世界ではパソコンもつくれない国が多いのに、日本は航空機や精密機械を製造できる、高い技術力があります。
都心部では数十メートルおきにコンビニがあり、深夜でも買い物ができる…。
こうした豊かさを手に入れた日本は、もはやゼロ成長で十分でありましょう。
新規の投資も必要ないから、300兆円を超える内部留保金・利益は社員に分配すれば、景気浮揚ともなりましょう…。
『近代』の行動原理は、「より早く、より遠く、より合理的。」でありましたが、近代システムが機能不全に陥ったのなら、その反対の「よりゆっくり、より近く、より『寛容』に。」という中世の行動原理に立ち返ってみることでありましょう。
たとえば、「よりゆっくり。」は、学生が社会に出るのを遅くする(少子高齢化は最適)、26歳くらいで就職して70歳ぐらいまで働けばいい。
「より近く。」は、本格的な「地方の時代。」を迎えること、「より寛容に。」は、高額所得者が税金の「支払い。」に『寛容』になることであります…。
経済政策としては、今の安倍政権がとっている金持ち優遇政策、「株主絶対主義。」から一刻も早く『脱却』すべきです。
富裕層・高所得者層に対して絵は、相続税や所得税の課税を『強化』する、そして企業に対しては、「内部留保。」に高率の法人税をかける…。
こうしたことを通して、所得の「再配分。」を図り、格差の解消を図ることが必要であります。
これらの政策を実行することによって、財政均衡も果たし、日本は来るべき「不透明。」な時代に備えなければならないと述べているのですよ…。