<都市再生に、新たな2つの視点>
高度成長以来、日本のまちは、中心部から郊外へ、無秩序・無計画に拡散していく、スプロール現象が続いてきました。
この結果、シャッター通りに象徴される、既存市街地の衰退、高齢化に伴う交通弱者の増加、環境破壊や公共インフラ整備・維持の財政負担増などの問題が、発生しました。
これに対して、スプロール化を抑制して、市街地の規模を小さく保ち、徒歩生活圏を作ることで、市街地を活性化し、住みやすいコミュニティを作ることを目指す、コンパクトシティの発想が生まれました。
今、このコンパクトシティに、新たに、2つの視点を付け加える必要があります。
第1は、言うまでもなく、スマートシティの視点であります。
電力・エネルギーや閑居追う問題に対処するために、電気だけでなく、その他のエネルギーや水、通信、交通、建物、行政サービスなどの公共インフラ全体を垂直『統合』して、運用の効率化を図る必要があります。
これによって、都市の持続的成長を促し、市場や雇用を創出することが、できるのであります。
とくに、大都市にとって、今後、急速に老朽化する公共インフラを、いかに円滑に更新し、効率的に運用するか、その鍵を握るのが、IT(情報技術)や通信を活用した、スマートシティの『制度』設計であります。
第2は、医療、介護・福祉インフラの再配置であります。
高齢化する、都市住民の生活の質を維持するために、欠かせない視点であります。
もちろん、コンパクトシティには、高齢者に配慮した、まちづくりの思想が、盛り込まれているが、これからは、医療、介護・福祉施設インフラを再配置あるいは、集積し、交通インフラや高齢者の居住施設と連携させていく、まちづくりがもとめられます。
ただし、施設の再配置やインフラの連携というのは、なんでも箱モノ中心の発想であります。
利用者サイドに立った、医療、福祉サービスを提供していくには、箱モノだけではなく、医療や介護サービスの供給者間の連携や再編、あるいは、それを促すための制度設計、仕組みづくりが欠かせません。
政府は、社会保障と税制の一体改革で、地域包括ケアシステムの構築を打ち出しているが、これをどう具体化させていくかが、今後の街づくりの課題の、ひとつになります。
これからはのまちづくりでは、IT・エネルギー技術者や医療・福祉関係者が参画し、箱モノだけでなく、制度や仕組みをどう設計していくがが、問われることになりましょう。