最近の自分の記事を見るに、いかに自分が『狼と香辛料』にハマっているかが手に取るように分かってしまいます。
それくらい好きなわけですが、ストーリーとして面白いのも当然ありますし、ホロとロレンスの若夫婦?のいちゃいちゃぶりも大好きですし、またこの作品をひときわ際立たせているのが、経済をベースにしたお話しだから、というのもありますね。
経済を取り扱っている、とは言っても、非常に分かりやすく丁寧に書かれているので、ハードルは低く設定されていると考えてもらって良いのではないかと思いますし、むしろこれを機会に少しでも経済に興味を持ってくれたなら日々の生活が少しだけ楽しくなるのではないでしょうか、なんて思ってしまいます。
世の中の仕組みとか、経済の仕組み、なんていうのは、知らなければ知らないで何とか生きていけるのですが、こういうご時勢ですから、知らないよりは知っているほうが良いですし、何故?とか思える機会が単純に増えるだけでも目の前にあいてる落とし穴にみすみすはまらないで済んだり、とかそういうことはあるんじゃないかと思うんですよね。
僕の場合、大学でそういうのを勉強していたというのもあるんですが、そのときの「きっかけ」とか「モチベーション」、「発見」なんかがいまだに役に立ってるなと思うこともあるんですよ(もちろんその応用という意味で)。
結局のところ、ガンダムダブルオーの台詞じゃないんですが、自分の経験したものでしか理解できないわけで、特に失敗事例とか、死ぬほどトラブったプロジェクトで身に着けた経験はそうそう忘れない。
で、勉強してからって役に立つわけじゃないんですが、それは即物的に役にたつわけじゃなくて、そういう経験をしたときに吸収率というか、成長率というか、選択肢の幅が広がる、とかそういう意味で勉強したことが実際の経験を経て身になってくる、という感じですかね。
最近、出張が多かったので今年はあまりリクルータとして学生の皆さんにお会いする機会が減ってしまったのですが、それでも何人かの学生さんとはお話させてもらっていて、仕事の内容とかを紹介させてもらうことがあるんですよね。
僕の仕事の場合、お客様が製造業、金融業、流通業と幅がありますが、基本的には海外進出もしているし、その戦略と勢いたるや、本当にいつも勉強させてもらっています、という感じなんですよね。
だから、そのお客様の戦略に併走する必要があるわけで、そういう点をお話させてもらっています。
最近も何人かの学生さんに会っていて、丁度その日、1ドルが90円台に突入した日だったんですよね。
当然、僕は自分の仕事の紹介もするわけだから、お客様の戦略やこういうニーズがあって、こうしていくべきなんだよね、なんて話をしてたんですよ。
で、入社の動機なんかも聞かれるわけですよ、当然。
で、僕が学生のときは1ドル79円に突入した時代でね、なんて話をすると、学生さんのほうが「???」という感じになってしまうんですよ。
つか、そんな昔の話すんなよ!って感じなんでしょうけど(笑)。
つまり、その前日のニュースで何故トヨタの社長がしきりにインタビューを受けているのか?ということがピンと来ないんですね。
当然と言えば当然なんだと思うんですよ。
僕もそれを実感するのはやはり社会人になって、お客様のところに行って、怒られていたりするときに、お客様の本音として、非常に厳しい競争化で勝ち抜いていかないといけない、そしてそれに応えていかないと僕らはお金をもらえない、というリアルに触れて初めて理解し始めるからなんだよね。
だから学生さんには面白おかしく、ええっー!!みたいなエピソードを交えながら、お客様のニーズ&戦略に応えていく仕事ってのはこんな感じっすよ、とできるだけ興味を持ってもらうこと重視で説明するようにしてるんです。
・・・・・・、それで本当に興味を持ってくれたら僕も本当に嬉しいんですが(笑)。
と、そんなリアルに仕事の話で興味を持ってもらうのも面白いと思うんですが、その下地として『狼と香辛料』とか読んでもらっても面白いんじゃないかな、と思うんですよね。
#もちろんそれは学生さんには決して言わない事なんですけどね(笑)。
最近だと、サブプライム問題とか言われてるじゃないですか。
これって何なの?自分に関係するの?
つか、そもそも海外の話でしょ?
と思う人も少なくないかも・・・、しれません。
でもね。
大きな問題なんで個人には関係なくない?と思っていても、どこかで必ず関係してくる、というのが経済の面白いところでもあり、怖いところでもあるんですよね。
例えばバブル経済。
「バブルへGo!」なんて映画もあったから、バブル経済とかバブル崩壊とか、そういう言葉は耳にしたことがあるんじゃないかと思いますし、多分僕と同年代、もしくはもう少し上の世代の人なんかはよーくご存知だと思うんです。
今学生の皆さんにはたぶん、過去の遺物っぽく聞こえるんじゃないかと思うんですが(笑)、実体の無い経済、とか、バブルが崩壊してそこから不況がずっと続いたんでしょ、という感覚はお持ちになってるんじゃないかな、と思います。
では、このバブル経済はどうやって始まったのか?
というのに興味を持ってもらうと、今起きているサブプライムローン問題も理解しやすくなると思います。
バブル経済のハジマリは85年のプラザ合意(プラザホテルで合意したからプラザ合意)から始まるわけですが、このプラザ合意とは、当時経済の強かった日本、ドイツ(正しくはG5)に対してアメリカが貿易赤字の解消を目的として、みんなでドル安誘導しましょう(ドル安になると輸入が減るから貿易赤字も減る)、という協調政策を取ったことから始まるんですよね。
当時、もともとインフレ抑制のために金融引き締めで金利を上げてたアメリカなんですけど、資本(つまりお金)っていうのは、金利の高い国に集中するものなんですよ。
そりゃその国の通貨を買えば金利が高い、というだけでも低いところに預けるよりはマシですから。
いわんや大規模経済をや、ということです。
でも逆に金利が下がると資本は逃げるんですよ。
もしくはもっと金利が高いところがあれば、そっちへ逃げてしまう。
インフレは何とか脱したけど、金利を下げてドルの魅力が薄くなっちゃうと、今度はドル売りになって不安定になっちゃう。
そうなると世界経済はアメリカという巨大なマーケットに向ってモノを流しているわけだから、そのドルが不安定になっちゃうと世界経済が混乱しちゃう(それは避けたい)。
そうすると今度は日本は金利を上げられない。
プラスしてドル安基調ということは、円高になってるわけで、日本の輸出産業は思いっきり為替差損をこうむるわけです。
#トヨタなんかは当時為替が1円違うだけで物凄い数字が変わってきてしまう、という状態だったわけです。
#北米市場にめっちゃ輸出してたのでね。
だから内需拡大を期待して低金利政策を取ることに。
だから異常な低金利が続く、ということになるわけですね。
そうすると何が起こるか?というと、低金利だから銀行からお金を借りるにはもってこいなわけで、そこに不動産投資ブームがやってきて拍車をかけるんですよ。
銀行もバンバン貸す。
企業も民間も、円が強いから海外でブランド品も安く買えるし、消費しまくるわけですよ。
これがバブル経済。
別に稼いでいるわけじゃないのに、不動産とか勝手にどんどん値があがってっちゃう。
#「狼と香辛料」で言えば、黄鉄鉱の値段がどんどんあがっていったシーンがまさにそれ。
#そしてそれは大暴落を起こす、まさにバブル崩壊っと。
まあ、そんな実体の無い経済がいつまでも続くわけがなく、あまりのバブルっぷりに不動産売買に関する抑制が90年に通達され(いわゆる総量規制)、消費税導入と連鎖するような形で急速に経済が縮小、91年にバブル経済は終焉を迎えるんですね。
で、さらにここから92年か93年くらいだったと思うけど、BIS規制っていう国際的規制が始まって(これも元を正せばデリバティブのリスク管理とかで、アメリカの大手銀行とかが破綻したのがきっかけ)、自己資本比率の低い銀行は倒産の危険性が高いってゆうので、導入されちゃったんだよね、たしか。
これがどういう結果を生むかというと、いわゆる「貸し渋り」になるわけですよ。
何故か?
自己資本比率8%以下の銀行は国際業務ができなくなるっちゅー内容なので、日本の金融機関は自己資本比率が低かったから、長期プライムとかの筆頭が取れなくなって、儲けも無くなるし、そもそも国際業務もできなくなっちゃうと困るので、体質の改善とか融資内容の見直しが始まるんですよね。
プラスしてバブル期の不動産融資のツケ。
これが回収不可能の焦げ付きをたくさん出して、銀行も窮地へ。
融資内容の見直しと相まって、貸し渋り、つまり中小企業とか融資リスクの高いところには貸さなくなって、それで資金調達が出来なくなって、どんどん不況が深刻化していく、と。
#その貸し渋りを解消しようと思って出来たのが、新銀行東京だったんだけど……。
つまりですね、バブル経済なんて、普通に生活してたら関係ないじゃん、と思っていたのに、崩壊の余波は普通の生活にまで及ぶことになってしまうわけなんですよね。
不況になると、給料が上がらない。
だって、モノを買わなくなるし、モノを買わないということは、モノを作ってる人、売っている人に給料が入らない。
給料が入らないと余計にモノを買わなくなる。
という悪循環を繰り返すことになっちゃうからですね。
ひじょーに長くなっちゃったけど(笑)、サブプライムローンの問題も、対岸の火事じゃないわけですよ。
日本もそろそろ金利上げようとしていたじゃないですか。
でも、それも先延ばしになっちゃう。
今、アメリカの金融はサブプライムローンの焦げ付きで信用を失ってるし、アメリカはしばらく金利下げたままになると思うんですよね。
すると日本が金利上げたら、資本も流れちゃうし、そうなるとドル不安に拍車がかかっちゃう。
ここ数日の円高、ユーロ高は、それにプラスしてもともと火種だったオイル不安とかが重なった結果ともいえますよね。
で、円高が進むと、やっぱり製造業は厳しい。
80年代、90年代に比べると、そういう為替リスクや人件費を考慮して、かなりローカル化が進んでいるけれども、それでもやはり厳しい。
その円高基調で商売をするんだから、価格を下げないと売れない。
#ローカル化を進めるということは、日本から仕事も無くなる、という側面もあるわけですし。
価格を下げるためには人件費をカットしたり材料費をカットしたりしないといけない。
すると、今仕事をしている僕らの給料が下がったり、ヘタをすると職を失いかねないわけです。
もう全然対岸の火事じゃない。
という感覚も仕事をし始めるとすぐに体感できるので(笑)、そういう仕組みを予め知っておくとそれなりに対処できることもあるかもしれません。
やっぱりそういう状況下で凄いなと思うのは、お客様たる製造業の皆様。
彼らは物凄く考えてる。
本当に頭が良くて、いつも僕らは怒られてる(笑)。
マーケットを常に意識して動いているのは強いですね。
僕にとってはこういうお客様がマーケットそのものなんだけれども、こんな感じのダイナミズムを感じられる、というのが仕事の面白さでしょうか。
もう書き始めたら止まらなくなってしまって申し訳ないんですが(笑)、つまり何が言いたかったか、というと『狼と香辛料』が面白いです、ということだけだったんだけどなぁ、おかしいなぁ。
#しかもうろ覚えで書いてるから、間違ってたらごめんなさい。
最も、僕は個人的にこの『狼と香辛料』で一番面白いと思っているのは、ホロとロレンスの若夫婦?のいちゃいちゃぶりなんですが(経済関係ないじゃん!!)。
というわけで(どういうわけだ)、『狼と香辛料』、個人的に超・お勧めです。
■
狼と香辛料 DVD1
■
狼と香辛料 第5巻(電撃文庫)
■
清浦夏美 旅の途中