ランゲージダイアリーのあいばゆうじさんのWeb小説『夢守教会』の第2話「痛みの在処(アリカ)」が公開されたので、今回はその感想を。
Language×Language
「夢守教会」
この第1話となる「少女のケニング」が公開されたのが3年3ヶ月前、個人的にはもうそんなに月日が経ったのか、と思うとその月日にいったい自分は何をやっていたのか?と愕然とするのですが(笑)、この第1話を最初に読んだときは、あいばさんが遺書代わりに書いた、と言ったようにその文章に詰まった思いを感動を持ってしっかりと読ませて頂いたのを鮮明に覚えています。
それからあいばさんは何作かWeb小説を公開されていて、そしてあいばファンの僕としても待っていました、という第2話公開です。
第2話の序盤からの印象でいけば、やはり執筆回数が増えて洗練されてきた、というのが第1印象。
第1話はノリと熱さがほとばしる、くらいの勢いがありましたが、今回は何ていうか文章と文章のつなぎ、というか、展開と展開のつなぎが凄く滑らかになった、という感じ=洗練されてきた、という印象でしたね(何かこう書いていると凄くえらそうですね、自分(笑))。
僕はあまりWeb小説は読んでないのですが、Web小説にはWeb小説のスタイルがあって、Webで読みやすいというのはこういうことか、というのも今回感じた点でしたね。
なるほど、区切りをある程度短くして、場面の切り替えなんかも上手く使うと、普段は読むのが疲れるWeb小説も、こういう形態なら疲れない、むしろ、次を催促してしまうようなつくりになっているわけか、と一人で感心していました。
そういう形で出来上がった第2話。
全7話構成の中の第2話、実質的にはこれが新たなる「夢守教会」の第1話となった今作。
非常に納得しながら読ませて頂きました。
これは先が非常に楽しみです。
■作中の「静」
この第2話を最後まで読んで気が付いたのですが、ああ、これは全7話の中の第2話、そういう位置づけを徹底したんだな、僕は途中まで勘違いしながら読んでいたな、つまり、これが「起承転結」の「起」ということだったんですよね。
#第1話を含めれば「承」と言えなくもないですね。
そう考えて納得。
筆者あとがきにもあるように、この第2話は「静」なんですよ。
但し、全7話まで読んだときに、戻ってこれるスタートライン、そういう感じを受けました。
奈須きのこさんの『空の境界』の第2章殺人考察(前)が丁度これと同じようなテイストを持っていて、僕はそれを映画版で観たときにさらに強い印象を持ったのですが、あの第2章も丸々「静」を描いていて、そこがスタートラインになっているわけです。
意図しているところはその辺かな?と思いながら読み進め、読み終わってから、なるほど、そういう意図だとするとこの先が非常に楽しみだな、というのが読了後の最初の印象でしたね。
途中まで僕は勘違いしてて、第1話のような完結型でいくのかと思っていたので、転じるところはどこになるのかな、なんて思いながら読んでしまったのですが、途中から気が付いて、ああ、なるほど、これを描くために丸々1話使ったのね、みたいな。
凄く丁寧に「静」を描いたのがよく伝わってきて、そういう丁寧さは僕は個人的に非常に好きなので、この先を楽しみにしてしまうわけですよ。
いくつか印象的なシーン、光景の描写、台詞なんかが散りばめてあったので、その辺を気にしつつ、続きを待つ、そんな感じ。
■二つの教会・境界
既存と模倣というワードで引っ張る形を造っているわけですが、これを軸としていくつかの対比構造がでてくる、というのがこの第2話の要の部分かな。
既存→模倣というラインであっても、そこに何かが残って、生まれてくるのならばそれで良いのではないか?何かを残せているのならばそれを肯定しよう、という優希と理子の夢守教会。
既存→模倣というラインには真実は無い、無いのならば崩壊させて新しく作り直してしまえ、というブレイン教会。
この二つの対立軸、というのがメインストーリーなんだけれども、
ここで一つ、非常に面白いな、と思ったのがブレインこと○○○○(あえて伏字)。
ブレインの僕の印象は第1話とはかなり異なるものなんだけど、彼が実は人間臭くて非常に良いかも、と思ったところ。
彼の正体はラストで明かされますが、約束、という言葉を使ったときに僕は分かりました。
で、その彼が、実は誰かを救いたいと思って、この教会を始めた、という感じがするじゃないですか。
そこが面白い。
恐らくはシーモアさんがその対象なのか?とも思うわけですが、シーモアグラスがサリンジャーの未完の物語に登場する、未完なのにその人物の結末は決まっている、というシチュエーションそのものを背負ってシーモアさんが描かれているとするならば、やはり作中でも少し触れられたように、同じ運命を持つ、終わることが義務付けられている理子との対比、という形になってくると思うわけです。
この二つの教会は共通点が多い。
誰かを救いたい、というモチベーションが原点。
その誰か、についても背負う運命に共通点が。
但しその描く結末、方向性は正反対。
ここが非常に面白いな、と思わせる、次を読みたいな、と思う点ですね。
結構、ブレインって純粋なんだなぁ。
そういうモチベーションは好きだけどね。
■あたたかさ
今回の「静」の中で、特筆したいのは優希と理子のキスシーン。
ここは非常に良かったですねぇ。凄く良かった。
エンパシー能力という、そこで使うのは卑怯じゃないか、と思わせておいて、そうきましたか。
いいねぇ。
普段の二人の会話が内容はかみあってるけど、口調がとげとげしい感じもあるんで、大丈夫か?と思うところもあったんだけど、実は心の中ではちゃんと、どころか、しっかりと頼りにしている、というのが確認できるシーン、そこにエンパシー能力を持ってくる、というのはある意味反則(笑)。
けれども、それゆえに、しっかりと、はっきりと、この上なく認識できる、そういう二人の関係。
これがまた、この物語の要なんだろうな。
あなたの痛みの在処(アリカ)は何処ですか?
■新キャラ
西條巫和(さいじょう みわ)さん。
押しです(えー)。
誰とでも敬語、というのは自分で壁を作っているともいえるので、その壁を取り払う日が来るのでしょうか?
「視える」という感覚があるかも、というのが僕個人として良い感じでした。
素敵イラストを担当されている霧生実奈さんにも是非描いて頂きたい人物です(厚かましいっつーの、自分)。
#いやー、いつも美麗イラストですよね。菖蒲さんのイラストはドンピシャです。
と、こんな感じの感想で再会した『夢守教会』。
続編、期待しております。
Language×Language
「夢守教会」
この第1話となる「少女のケニング」が公開されたのが3年3ヶ月前、個人的にはもうそんなに月日が経ったのか、と思うとその月日にいったい自分は何をやっていたのか?と愕然とするのですが(笑)、この第1話を最初に読んだときは、あいばさんが遺書代わりに書いた、と言ったようにその文章に詰まった思いを感動を持ってしっかりと読ませて頂いたのを鮮明に覚えています。
それからあいばさんは何作かWeb小説を公開されていて、そしてあいばファンの僕としても待っていました、という第2話公開です。
第2話の序盤からの印象でいけば、やはり執筆回数が増えて洗練されてきた、というのが第1印象。
第1話はノリと熱さがほとばしる、くらいの勢いがありましたが、今回は何ていうか文章と文章のつなぎ、というか、展開と展開のつなぎが凄く滑らかになった、という感じ=洗練されてきた、という印象でしたね(何かこう書いていると凄くえらそうですね、自分(笑))。
僕はあまりWeb小説は読んでないのですが、Web小説にはWeb小説のスタイルがあって、Webで読みやすいというのはこういうことか、というのも今回感じた点でしたね。
なるほど、区切りをある程度短くして、場面の切り替えなんかも上手く使うと、普段は読むのが疲れるWeb小説も、こういう形態なら疲れない、むしろ、次を催促してしまうようなつくりになっているわけか、と一人で感心していました。
そういう形で出来上がった第2話。
全7話構成の中の第2話、実質的にはこれが新たなる「夢守教会」の第1話となった今作。
非常に納得しながら読ませて頂きました。
これは先が非常に楽しみです。
■作中の「静」
この第2話を最後まで読んで気が付いたのですが、ああ、これは全7話の中の第2話、そういう位置づけを徹底したんだな、僕は途中まで勘違いしながら読んでいたな、つまり、これが「起承転結」の「起」ということだったんですよね。
#第1話を含めれば「承」と言えなくもないですね。
そう考えて納得。
筆者あとがきにもあるように、この第2話は「静」なんですよ。
但し、全7話まで読んだときに、戻ってこれるスタートライン、そういう感じを受けました。
奈須きのこさんの『空の境界』の第2章殺人考察(前)が丁度これと同じようなテイストを持っていて、僕はそれを映画版で観たときにさらに強い印象を持ったのですが、あの第2章も丸々「静」を描いていて、そこがスタートラインになっているわけです。
意図しているところはその辺かな?と思いながら読み進め、読み終わってから、なるほど、そういう意図だとするとこの先が非常に楽しみだな、というのが読了後の最初の印象でしたね。
途中まで僕は勘違いしてて、第1話のような完結型でいくのかと思っていたので、転じるところはどこになるのかな、なんて思いながら読んでしまったのですが、途中から気が付いて、ああ、なるほど、これを描くために丸々1話使ったのね、みたいな。
凄く丁寧に「静」を描いたのがよく伝わってきて、そういう丁寧さは僕は個人的に非常に好きなので、この先を楽しみにしてしまうわけですよ。
いくつか印象的なシーン、光景の描写、台詞なんかが散りばめてあったので、その辺を気にしつつ、続きを待つ、そんな感じ。
■二つの教会・境界
既存と模倣というワードで引っ張る形を造っているわけですが、これを軸としていくつかの対比構造がでてくる、というのがこの第2話の要の部分かな。
既存→模倣というラインであっても、そこに何かが残って、生まれてくるのならばそれで良いのではないか?何かを残せているのならばそれを肯定しよう、という優希と理子の夢守教会。
既存→模倣というラインには真実は無い、無いのならば崩壊させて新しく作り直してしまえ、というブレイン教会。
この二つの対立軸、というのがメインストーリーなんだけれども、
ここで一つ、非常に面白いな、と思ったのがブレインこと○○○○(あえて伏字)。
ブレインの僕の印象は第1話とはかなり異なるものなんだけど、彼が実は人間臭くて非常に良いかも、と思ったところ。
彼の正体はラストで明かされますが、約束、という言葉を使ったときに僕は分かりました。
で、その彼が、実は誰かを救いたいと思って、この教会を始めた、という感じがするじゃないですか。
そこが面白い。
恐らくはシーモアさんがその対象なのか?とも思うわけですが、シーモアグラスがサリンジャーの未完の物語に登場する、未完なのにその人物の結末は決まっている、というシチュエーションそのものを背負ってシーモアさんが描かれているとするならば、やはり作中でも少し触れられたように、同じ運命を持つ、終わることが義務付けられている理子との対比、という形になってくると思うわけです。
この二つの教会は共通点が多い。
誰かを救いたい、というモチベーションが原点。
その誰か、についても背負う運命に共通点が。
但しその描く結末、方向性は正反対。
ここが非常に面白いな、と思わせる、次を読みたいな、と思う点ですね。
結構、ブレインって純粋なんだなぁ。
そういうモチベーションは好きだけどね。
■あたたかさ
今回の「静」の中で、特筆したいのは優希と理子のキスシーン。
ここは非常に良かったですねぇ。凄く良かった。
エンパシー能力という、そこで使うのは卑怯じゃないか、と思わせておいて、そうきましたか。
いいねぇ。
普段の二人の会話が内容はかみあってるけど、口調がとげとげしい感じもあるんで、大丈夫か?と思うところもあったんだけど、実は心の中ではちゃんと、どころか、しっかりと頼りにしている、というのが確認できるシーン、そこにエンパシー能力を持ってくる、というのはある意味反則(笑)。
けれども、それゆえに、しっかりと、はっきりと、この上なく認識できる、そういう二人の関係。
これがまた、この物語の要なんだろうな。
あなたの痛みの在処(アリカ)は何処ですか?
■新キャラ
西條巫和(さいじょう みわ)さん。
押しです(えー)。
誰とでも敬語、というのは自分で壁を作っているともいえるので、その壁を取り払う日が来るのでしょうか?
「視える」という感覚があるかも、というのが僕個人として良い感じでした。
素敵イラストを担当されている霧生実奈さんにも是非描いて頂きたい人物です(厚かましいっつーの、自分)。
#いやー、いつも美麗イラストですよね。菖蒲さんのイラストはドンピシャです。
と、こんな感じの感想で再会した『夢守教会』。
続編、期待しております。