5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

日本はFTPでゆくべき

2011-06-23 22:46:17 |  経済・政治・国際
今日の朝日新聞の社説は『TPP―まずは交渉に加わろう』だった。

環太平洋経済連携協定(TPP)に参加するかとうかで、政府の検討作業が停まっているが、アメリカやオーストラリア、シンガポールなど参加9カ国は今秋の大枠合意を目指しているのだから、日本も『船に乗り遅れぬように』、まずは交渉に加わったらどうだというわけだ。「停滞する日本経済の突破口として貿易や投資の重要さは大震災で一段と増している」ことからすれば、「アジアの新しい経済連携」のために是非前向きに考える必要があるというわけである。

本当だろうか。

社説は、最大の懸案は「農業への影響」だとして、関係者がTPPを反対する姿勢は大震災後に強まったと書くが、大震災後にはTPP依存への不審意識が増えたというだけで、市場開放に対する農家の拒否意識は長い間の土地依存型のDNAがそうさせるのだ。被災地農家の行政的支援など当たり前のことでTPP参加とは関係なかろう。

「高齢化と後継ぎ不足、コメに代表される小規模兼業農家の競争力の乏しさなど、日本の農業が抱える課題は待ったなし」とも書かれている。たしかにその通りだが、こうした国内構造的な問題を解決するのにTPPが必要だという理由は何だ。

「国際的に対抗できるモデル」が「大規模・集約化」だというのも、日本農業の現状に対する一方的なきめつけのような気がする。「戸別補償制度を活用すれば規模拡大につなげられる」という社説子の読みも薄っぺらでたいしたことはなさそうだ。アメリカやオーストラリアの得意技の集約農業をコピーするだけで日本農業か開放され多国間農業協定は上手くいくのだと思っているわけでもあるまい。

菅政府が立ち上げた「食と農林漁業の再生実現会議」が再開したのに会議テーマを当面の復旧に限ろうというのはあまりに視野が狭いとおっしゃるが、所詮、お上の体裁作りで立ち上げる会議なのだろうから官僚に多くは求められまい。

「TPPでは、日本がこれまで結んできた経済連携協定より踏み込んだ自由化を求められる。ただ、各国とも政治的に扱いが難しい品目を抱えてもいる」という社説子。問題はここにあるのだ。

各国が締結するのはFTP(二国間の自由貿易協定)。国内農業保護と産品の輸出という矛盾した課題を慎重な外交交渉によって決めてゆくわけで、日本もすでに複数の国々とFTPを締結している。いわば、国際農業交渉の本音部分である。

一方で、TPPを朝日社説は環太平洋経済連携協定と訳しているが、英文では「環太平洋パートナーシップ」とだけ表示されているのであって、いわば各国の「建前」を理念化したもののはずだ。

「FTP先にありき」であって、スケールメリットをアピールするための「方便」がTPPというのではないのか。それが証拠に、TPPという略称は、言い出しっぺのアメリカやシンガポールのニュース記事には見つからないのである。「TPPに参加せねばアジアから遅れる」と喚くのは日本のマスコミぐらいのものだ。それこそ、アメリカやシンガポールの思う壺だろうに。

「05年に発効した米豪FTAでは、豪州からの輸入で砂糖を関税撤廃対象からはずし、牛肉の自由化もWTOの原則である10年以内を超えて18年かける。米国はTPPでも同様の仕組みにしたいようだ」と、アメリカの本音部分に軽く触れた社説子だが、気に入らないのはそのまとめ。

「各国の本音をつかみ、日本の事情を訴えるためにも、まずはTPP交渉に加わりたい。その結果、日本の国益にそぐわないとの結論に至ったら引き返せばよい。」

日本の官僚システムが一旦決めたやり方をそう簡単にご破算にすることなどないのは先刻ご承知のくせに。わが国の農業事情に即した「FTP対応型」スタイルこそ、震災直後の日本が採るべきグローバル農政があるはづなのだ。

















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