5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

カニとマグロ

2015-12-12 21:50:54 |  経済・政治・国際
昨日の夕刊も今日の朝刊も、眼を引く「カラー段広告」はそのすべてが「カニ」づくしだった。

ボーナスが出そろったタイミングだからだろう。寿司チェーンの「かにフェア」、通販専門会社の「カニ特集」、伊豆の温泉旅館の「カニパック」、旅行業者の「カニ・カーニバル」と並んだだけで、もう満腹気分になってしまう。それにしても、こんなに蟹ばかり売って資源は枯渇しないのだろうか。

海鮮で日本人の大好きなものがもうひとつある。マグロだ。

寿司ねたの代表格となって久しく、あって当たり前、美味くて当然という感覚の消費パターンになったせいか、蟹のように広告に載ることもなくなったが、近所の回転すし屋では「マグロ解体ショー」がある日は、客が押しかけるほどの人気が持続しているようだ。日本人の飽食は続いている。

さて、ポッドキャストの「ライフスタイル・ミュージアム」、今週のゲストは東京・築地市場のマグロ仲買人、生田よしかつ氏だった。彼の声質は、亡くなってもうだいぶんになる義兄のそれに似ているなあと思いながら、その話を聴いた。

生田氏はもちろん商売人ではあるのだが「魚を賢く食べて、賢く増やす」を力説するコンサバ・リベラル派だ。資源枯渇が危ぶまれるマグロの話から始まった。

国際自然保護連盟が太平洋黒マグロは絶滅危惧種だと宣言したこともあって、日本でも「魚は獲り過ぎてはマズイだろう」と今年からは、未成魚(30キロ以下、子供を産んでいない魚)には規制がかかり、30キロ未満の黒マグロは4007トン制限となった。

かかった迄は良かったのだが、これには別事情があって、実は去年の未成魚は3800トンしか獲れなかったのである。これでは、実際には獲り放題が続いていることになるではないか。業界同士で「まあうまくやってね」といった制限にならない制限だったことだったわけだ。

さらに、産卵期のマグロは一か所に集まる習性があり、餌を喰わないから、網を撒けばそれこそ一網打尽だが、日本ではこれには制限は掛けていないから獲り放題となる。獲れば売れるから獲るのだ。

一方、産卵期のマグロは獲らない欧州では、大西洋黒マグロがV字回復をしてきている。規制をすれば資源は3年もあれば回復するのだ。福島の原発沖は4年間漁業をしていないせいで、魚量は増え魚体は大きくなった。食べて美味い魚がいるのに、売れないという現状はいかにも残念である。

海を休ませれば魚は増えるのだから、日本に今必要なのはルールである。現状のようにプレイヤーにルールを決めさせるのではなく、政府がしっかりとクオータ管理をするべきだ。

「あんなに大きかったほっけがなぜこんなに小さくなったのか」という著書もある生田氏はこうも言う。

すばらしい漁業環境を国の周辺に持ちながら、資源をないがしろにする日本漁業は儲からず、大事にした北欧は儲かっている。漁獲枠個別割当制度を政府が採用し主導したノルウエーは、今や引く手あまたの「我が世の春」である。その漁師は30代と若いが、日本は60代とここでも高齢化が進んでいるから、野放図がこのまま続けば日本漁業の将来も危うくなると云えそうだ。

築地は来年、豊洲に移転する、今年は最後の暮れと正月ということで忙しさもひとしおだろう。本まぐろの美味いのは今だそうだ。資源はちゃんと残して少したべようではないか。




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