5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

能登の塩田

2012-08-30 22:24:50 | たべもの
「はたらくオトナの昼ご飯をのぞき見!」という昼飯がテーマのNHKTVバラエティ「サラメシ」。 俳優の中井貴一がちょっとユーモラスな解説ナレーションで楽しませてくれる。

今週放送分の中に「夏の日射しで極上の塩を作る男たちの弁当」というものがあった。「塩田」といえば、赤穂などの瀬戸内を想起するが、このロケは石川県は奥能登の珠洲市である。能登半島に塩田があったとは知らなかった。

ここでは「揚げ浜塩田」と云い、砂地を平らに拡げて作った塩田に、眼前の日本海からくみ上げた海水を、「おちょけ」とよばれる撒き桶で均質に撒いて、夏の直射日光で水分を飛ばし、砂の上に残った塩を集めて出来た「かん水」を、さらに大釜で煮詰め、結晶化した塩を取り出すという、手作業による昔ながらの製法を今も残している土地である。

番組は元教師の老「浜師」とその教え子、そして「釜炊き」の男性3人の昼食を軸にして、いまは珍しくなった揚げ浜の製塩作業を紹介している。あかるい夏の能登半島もなかなかいいなと思いながら番組を観ていた。

大岡信の「折々のうた」の夏の項に、沢木欣一の俳句が載っている。

「水塩の点滴天地力あわせ」

昭和31年の「塩田」に所収とあって、いわゆる「社会性俳句」の中心にいた作者が、能登の原始的な揚浜塩田を訪れたときの作だと書かれている。

単純な重労働を繰り返すうちに濃くなった「水塩(みずしお)」というのは、かん水のことだ。したたる水塩のしずくは辛酸の結晶。その一滴一滴に、天地が力を合わせている感じがするというわけである。

同じ能登の塩田でも、60年前と今とでは浜師たちの働き方や弁当の中身は大いに違ってきているのだろうが、地球温暖化の進む今、天日に焼かれる塩田作業は却ってシビアになりつつあるのではなかろうか。ミネラル豊かな天然塩があるのだから熱中症はだいじょうぶだろうが。





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