5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

晩夏光の陰影

2015-08-16 22:32:24 |  文化・芸術
立秋も過ぎて、頃は晩夏。午後4時過ぎには少し風も立って、直射日光の焼ける暑さは感じないで済んだ。暑さは依然厳しいが、陽光にはやや衰えが感じられる。

これを俳句の世界では「晩夏光」という季語で表すのだとは、「季語集」の坪内稔典先生。

「晩夏光バットの函に詩を誌るす」

引用されたのは中村草田男のこの句。

「バットのはこ」というから、甲子園で熱戦が続く高校野球のことなのかと一瞬思ったが。坪内先生の解説を読んで可笑しかった。

バットは日本製の煙草の名前だ。紙箱にはコウモリの絵がある。その紙箱に詩を書きつけるというのだから、煙草をのんでいて思い浮かんだ句を、手近にあった煙草紙に書き留めたというわけか。

WIKIを探ると「ゴールデンバット」は日本たばこ産業から発売されている両切り紙巻煙草の銘柄。「バット」の愛称で古くから親しまれているとある。とっくに販売中止だと思ったら現在も鋭意販売中らしい。1906年に販売開始だから、今年で109年の超ロングセラーである。

1901年に生まれた草田男、子供の頃から彼の一生を通して売られていたゴールデンバットだが、愛用者には作家も多いのだという。芥川龍之介、太宰治、中原中也などが有名なのだそうだ。

昔の煙草のみたちは、煙草の紙箱にいろいろなことをメモした。自分の句をメモした草田男は、晩夏光よりも真夏のさかんな光を愛した俳人だったと、坪内先生は書いている。

草田男は1983年8月5日に亡くなっている。晩夏光の直前だった。




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