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チャン妃は、その日のうちに毒殺の刑に服しました。
最後の望みとして、王様に、そんな自分の最後の姿を見ていてほしいと言いました。
「王様をお慕いした事を後悔していると言ったのは嘘です。王様の心のすべてを欲しがったのは私です。それが愚かでした。それなのに、やっぱり最後まで傷つけてしまう私です。覚えていてください。私を。ずっと覚えていてほしいのは、王様、あなただけです。」
王様は、そんなチャン妃の願いを聞き入れ、遠く離れた楼閣から小さいその姿を見ていました。
世子は、自分の所為で母を殺してしまう事に耐えられず、父である王様やトンイに刑の軽減を懇願しました。
でも、どうにもなりませんでした。
この日を境に、世子はヨニン君を遠ざけ、食事も満足にとらず、荒れた日々を送っています。
そんな世子を慰めようと、ヨニン君は毎日のように東宮殿を訪れるのですが、会ってももらえません。
それに、たまたま出会った時、世子から“王位を争う敵だ”・・・と言われ、嘆くのです。
トンイは、世子を訪ね、そんな生活を改めるよう言い、ヨニン君の世子を思う気持ちを話すのです。そして、世子もまた自分の気持ちを偽って、ヨニン君を敵だと思い込もうとしているのをやめるよう諭すのです。
チャン妃兄と実母は流刑され、その流刑地で処刑されることになりました。
周囲は、チャン妃一派が居なくなった事で、また世継ぎの事で騒がしくなってきました。
トンイしか側室が居ない…と言う事で、次の中殿はトンイしかないのですが、やはり出自がというのがネックになってます。それに、トンイが中殿になったら、現在の世子は王位に就けないだろうとみているのです。
王様としては、トンイに・・・と思ってますが、トンイは自分が中殿になることは相変わらず拒んでいます。それが、世子とヨニン君の双方を傷つける事になると思っているからでしょう。
そして出した案が、“新しい中殿を迎える”…と言う事。
で、若い中殿を迎える事になりました。ムヨルなんぞ、あっさりとその新中殿に取り入りましたよ。
内人達は、トンイに好意的ですので、新しい中殿の生意気な態度に、ちょいと反感を抱いてますね。
ただ、そこはやっぱり身分社会。いくらトンイに王様の寵愛が集まろうと、中殿の方が位が高い訳で、トンイは中殿の方針に逆らえないんです。
新中殿は、着任早々、トンイにヨニン君の婚姻を言いだしたのです。
この時代、世子意外の王子は、結婚したら宮廷から出て行かなくてはいけなかったらしいんですよ。
世子に王位を何としても継がせたい中殿は、そういう方法でヨニン君を遠ざけようとしたんです。
これにはトンイ達を推す者たちも慌てました。王様もそうです。
なにせ、宮廷から出て私家に移ると、またも命を狙われる可能性が高くなるからです。
そこで、トンイは妙案を考え付きました。
中殿の提案を受ける代わりに、相手の女性は母である自分が選びたいと言ったのです。
周囲の者たちは、有力な両班の娘を次々と紹介。
でも、そのどれにもトンイは首を縦に振りませんでした。そして、自分が選ぶと言い、あるところを訪ねたのです。
訪ねたのは指折りの名家であるパク・トンジュと言うモノの家。その人物は、トンイの反対派である少論派の長を父に持つほどの家。少論派の大臣達は
「身の程知らず。」
と、言いながらも、有力両班との縁組になると、無下に反対も出来なくなるため、おろおろ・・・。
でもね、トンイが考えていたのは、そんな人物の娘じゃ無くて、パク・トンジュの家の家庭教師であるソ・ジョンジェの娘だったのです。
彼は、宮廷に仕えることを嫌い、貧しい暮らしをしていました。それでも、清廉潔白で頑固なまでの気まじめさを持った人物のようです。政治的なモノに関心が無く、また、嫌っていたようです。
「ヨニン君に世間が言う“力”ではない“力”を持った家門との縁組を考えています。奪う力ではなく分け合う力、恥じることを知る力、何より手にしたものが何でもない事を知る力。そんな真の力をヨニン君に与えたいのです。」
“もっと力のある家門との縁組の方が良いのでは?”・・・と聞くソ・ジョンジェに、トンイはそう答えたのです。
これは、中殿からの婚姻の話が出る前からトンイは考えていたようです。そして、ヨニン君の師匠との縁のあるソ・ジョンジェに目をとめていたようですね。
王様も、呆れてましたが、トンイを信じているため異論は無いようです。
少論派も、トンイの選択を呆れ、また喜んでいました。馬鹿な選択をした・・・とね。
でもね、ソ・ジョンジェの存在が重要だったのです。
なんと、彼の家が≪王気が流れる場所≫にある…と言うのです。つまり、あの家に住んだモノは、いずれ王になる運命にあるというのです。歴代の王様との因縁が深い場所らしいんですよ。
な~にがそんな迷信を・・・と思いますが。当時はまだまだこういった迷信やら言い伝えなんぞが大手を振っていた世の中だったんですね。特に、民衆の間では。
だから、ソ・ジョンジェの娘と結婚して私家に下がったヨニン君が、その王気の流れる場所に住んだりしたら、民衆は、絶対にヨニン君を世継ぎと思う様になる・・・ってこと。
ただでさえ、チャン妃事件以来、そんな噂が飛び交ってる時ですからね。
大臣達と言えど、そういう民衆の意を無視できないわけですから、そんな危険な事は避けたいんです。
しかし、かと言ってヨニン君をそのまま宮中に居させるのも・・・と、迷いに迷ってます。
あくまでも、ヨニンくんを私家に行かせたいムヨル。でも、それにちゃんとチョンスが対応していました。
清廉な人物・・・という公の評価の裏で、いろいろとアクドイ事もしてきたみたいなんですよ。その証拠を手に入れたチョンスは、それをネタに、ムヨルに、手出ししない様脅したんです。
結局、少論派は、そういう言い伝えを隠して、ヨニン君を宮廷から出すことを王様に提案しました。
そこで、ムヨルも賛同していくれると思っていたのですが、ムヨルが言った言葉は、それに反対するもの。
これまでも、結婚後数年の間宮廷に留まっていた王子が居たと言う例があると言う事なんです。ヨニン君の安全の為にも、私家に出すのは反対だ・・・とね。
これには、少論派も、トンイ達もびっくり。
そして、無事ヨニン君の結婚式が執り行われました。
花嫁の方が、年上なのね、きっと。姉と弟のようですもん。
王様は、これで一段落ついたものの、これからもまだ世子とヨニン君の世継ぎ争いが続く事を懸念しています。
そして、トンイの真意を問いただしました。
ヨニン君が進むべき道が何なのか・・・です。
「ヨニン君は王位につくべきだと思うか?それが、この宮廷であの子を救える唯一の道だ。」
それに対して、トンイは答えました。
「王様の世継ぎは世子しかいません。必ずそうすべきです。でも、ヨニン君が生き残る道は、ヨニン君もまた王になるしかないと思っています。」
以前トンイが言っていましたね。
世継ぎが持つ可能性が低い世子なので、“世弟”、つまり、いずれ王位につく王の弟という地位に居る事が、彼を救う方法だ・・・とね。