ぶらぶら人生

心の呟き

懐かしい<はったい>

2010-08-30 | 身辺雑記
 今朝、朝日俳壇を読んでいて、懐かしい言葉に出逢った。
 久しく忘れていた<麨(はったい)>という語に。

    麨(はったい)や昭和貧しくなつかしく  (川西市) 上村敏夫
                            <大串 章・稲畑汀子選>

 子どものころの私は、<はったいこ>と言っていた。
 どんな字を書くかも知らず、季語であることも知らず。

 懐かしい味である。
 食料の乏しい時代だったので、格別おいしかった。
 お砂糖の入った粉を、そのまま食べると、よく粉を吹き散らした。麨を口に入れた状態で、うっかりものを言ったり笑ったりしたのだろう。
 お湯でかき混ぜた麨は、少し大人の味がした。

 麨は、今でも簡単に入手できるのだろうか?
 舌は、香ばしくて美味しかったと覚えているけれど、素材も製法も知らなかった。
 <麦を炒って挽いた粉>が、麨であるということも。
 
 <麨>を漢和辞典で確かめた。
 <麦+炒>=<麨>、ということのようだ。
 麦が収穫されると<麨>が作られたのだろう、夏の季語となっている。

 昭和20年前後、戦争末期と戦後のひと時は、物資が格別乏しかった。特に食べ物に関しては、子ども心にも、悲惨さを覚えたものだった。
 主食のお米が入手できず、父母は苦労したに違いない。
 それにしても、牛馬の飼料となる麬(ふすま)や糠(ぬか)までも、主食とせざるを得なかった、そんな惨めな経験を持つ世代は、ごく限られているのだろう。

 遠くなった昔を思い出す朝であった。
 

 (添付写真 今日は久しぶりに俄か雨が降った。紅葉を待たず落葉したモミジ葉も、雨に濡れた。)

        
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2 コメント

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はったいこ (庚午)
2010-08-31 15:35:57
はったいこ、とても懐かしい言葉です。
ここらでは、麦こがしと云うようです。
私が幼稚園の頃、転んで上の歯茎をぶっつけて、生え変わる前の前歯がぶらぶらになってしまい、毎日こうせんをかいて食べさせられていました。大好物のこうせんがすっかり嫌いになるほどに。後にこのこうせんは、はったいこだと言うのを知りました。
こちらで始めて漢字を見て、私も国語辞典を引いてみました。
こうせんは香煎とありました。はったいこも麦焦がしもみんな同じもののようです。
裸麦や大麦を炒って粉に挽いた物、戦時中は、うちの畑で取れた麦を炒って石臼で挽いて作りました。黄な粉も大豆を炒って挽いて篩いにかけて作っていました。
私のうちは農家でも旧い家でもなく、石臼もありませんでしたが、その度に近所で借りてきてゴリゴリと挽いていました。二人で回すと軽いので手伝っていましたよ。早く回してしまうと粗く引けてしまうので、ゆるくゆるくゴロゴロ回しました。
懐かしさを思い出させていただきました。

今日も、まだ暑い。台風が来ているようですが、今年はまだ8号9号か、番号が若いですね。例年9月も半ば頃からが、こちらは台風のシーズンですが、今年はどうなのでしょう。毎日太陽ぎらぎら、少しもやっている日は光化学スモッグ注意報、雨は全くなしです。

急に秋が来ると、これまた体のスイッチの切り替えが大変です。対応に怠りないよう頑張りましょう。
Unknown (ふゆ)
2010-08-31 21:51:41
<はったいこ>を知る世代の下限は、何歳くらいなのでしょう?
懐かしい味、懐かしい言葉ですね。俳句で出逢わなかったら、多分思い出すこともなかったでしょう。
辞書や歳時記で、<香煎>ともいうことを初めて知りました。
<こうせん>とおっしゃっていたのですね。
私の場合、もし俳句が、<香煎や昭和貧しくなつかしく>となっていたら、直ちに心が揺さぶられることはなったでしょう…。

祖父母の家には、石臼があったのを思い出しました。私の父は転勤族でしたから、育った家に石臼はありませんでしたけれど……。

沖縄は台風の影響を受け、北海道の一部では豪雨の被害と、小さな島国なのに、あちらこちら大変ですね。
こちらは、猛暑日と熱帯夜が、当たり前のような毎日です。週間天気予報によると、この先も同じような暑さが続くようです。
ちょっと長すぎる夏です。

でも、明日から9月。
初秋の爽やかな大気を待ち望んでいましょう!

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