『
太宰治全集 2』(写真左の本)
昭和35年に、筑摩書房から発行された16巻からなる全集の第2巻(二十世紀旗手 他十四編)を読了。
昭和35年に初読。今回、全作品を再読した。本の傷み具合からすると、繰り返し読んでいる作品もあるのだろう。
傷みの原因のひとつは、昭和35年という発行年にも関係があるのかもしれない。戦後15年を閲してはいるが、まだ紙質や製本に多少の問題があったのかもしれない。
長らく帰宅していないので、施設の方へ持参している小説が少ない。
机上に並べている本の中から、数日前から上掲の本を読み始め、今日、全作品を読了。
2段組みで、活字も小さく、ハズキルーペをかけて読む。
2巻の中では、やはり「富嶽百景」がいい。
全作品が、太宰治の文体なのだが、作品の味わいは、それぞれかなり異なる。誰の作品であっても、作者の個性と無縁ではないが、太宰治の場合は、特に、その折々の自己がそのまま反映された作品が多い。作品によっては、読者の私自身が、作者の苦悩で、心苦しくなることもある。
その点、「富嶽百景」は、太宰治の心の安定期に書かれているだけに、文章も穏やかで味わい深い。それでいて、やはり太宰治ならでは作品である。
下掲の写真は、この本に添えられた御坂峠から見た富士山と太宰治の文学碑(「富士には月見草がよく似合ふ」と刻まれた碑)である。
巻末には、亀井勝一郎の解説文が添えられている。(私は、亀井勝一郎も好きので、その文章に出会えるのも嬉しい。)