ぶらぶら人生

心の呟き

初の訪問者

2017-10-07 | 身辺雑記
河口の部屋に、初の来客があった。(10月4日)
15歳のS少年が、還暦を超え65歳となって。

半世紀ぶりの出会いであった。
「正確には、47年ぶりですけれど…」
と、Sさん。
「高校卒業の春、K君と一緒に駅前の喫茶店でお会いしました」
と。

昭和45(1975)年の春。
駅前の喫茶店といえば、<ハクセイ>だろう。
<ハクセイ>は、ひとりでもよく利用したし、友人知人、いろいろな人とコーヒーを飲んだり食事をしたりした。
(半世紀の間に私は老い、駅前の風景もすっかり変わった。)

47年前の話を聞いて驚いた。
Sさんと<ハクセイ>に入った記憶が蘇らない。
Sさんの言に、間違いはないだろう。
その記憶が、私の頭の中から完全に消去されたことに戸惑いを覚えた。
Sさんに会うというのは稀有なことなのに、それが思い出せないとはショッキングなことであった。
政治家や官僚の、「記憶にありません」のような、計算的な事実否認ではない。
真実、思い出せないのである。
こんな形の記憶喪失もあるのかと、怖い気持ちになった。

Sさんからは毎年、年賀状が届く。
今までずっと一年一度の交流であると思っていた。

そのSさんから突然、4月に葉書が届いた。
職を辞し、故郷に帰るという知らせであった。
そのうち、ぜひお会いしたいとも記されていた。
そして、過日(4日)の訪問となったのである。

Sさんの故郷は、山に囲まれた県境の町である。
そこで、私は3年間を過ごした。
希んで住んだ町ではなかったが、山峡での生活は得がたい思い出となった。

風光に恵まれた山里であった。
四季の彩りが美しかった。
夏には河鹿が鳴き、晩秋に雪虫が舞うと、真冬には豪雪となった。
季節の輪郭がはっきりしていた。

稲作には、恵まれた環境なのだろう。
仁多米と比べ、味に遜色はないとSさん。
「ぜひ食べて見てください。美味しいお米ですから」
と、たくさんの新米をいただいた。
山峡の町の銘菓「錦華饅頭」も。
これまた素朴で上品なお饅頭であった。

格別、米飯好きの私にとっては、この上ないプレゼントである。
4日以来毎日、頬を緩めて新米をいただいている。
白く輝く新米には粘りがあり、絶妙な美味しさである。

今回は、河口の施設での対話であった。
また、家の方へ来ていただき、ゆっくり話せる日のあることを念じている。


…………………………

10月5日

ムラサキシキブの実は熟しきって。
(シロシキブの方は盛りを過ぎて、純白が汚れてきた。)


ミズヒキソウ
コメント
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